ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

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第49話 亡霊船と暴れる鉄塊 (The Ghost Ship and the Rampaging Iron Mass)

プロスペクター・ステーションから数千キロ離れた、デブリ(宇宙ゴミ)の密集地帯。

 

そこに、ジャンク屋たちの間で「幽霊船」と呼ばれる影が漂っていた。

 

近づく者を無差別に攻撃する、沈黙の輸送船だ。

 

 

【暴れ馬のロデオ】

 

「うおぉぉぉッ!! 速すぎだ、この野郎!!」

 

デブリ帯を疾走する一機の影があった。

 

“ビッグX”准尉が駆る、「ザクII・高機動“最下層”カスタム」だ。

 

リック・ドムの脚部スラスターが火を噴くたび、機体はカミソリのように鋭角的な加速を見せる。

 

『ビッグX! スロットルを緩めろ! 機体が分解するぞ!』

 

後方の小型作業艇(ランチ)から、カツオ・イトウが警告を飛ばす。

 

「分かってらァ! だが、勝手に吹け上がるんだよ!」

 

ビッグXは、悲鳴を上げる操縦桿と格闘していた。

 

カツオが書き換えたOSは、異なる規格のパーツ(ドム、ジム、ボール)の出力を「喧嘩」させたまま

 

無理やり推力に変えている。

 

その挙動は、まさに暴れ馬(ロデオ)だった。

 

「だが……!」

 

ビッグXは、目の前に迫る巨大なデブリを

 

背面のボール用アーム(サブ・アーム)を振るう反動を利用して、急旋回で回避した。

 

「……慣れれば、とんでもねえ動きをしやがる!」

 

 

亡霊の防衛システム】

 

「……見えたぞ。あれが『幽霊船』か」

 

“教授”ビタム曹長の旧ザクが、センサー画像を共有する。

 

デブリの奥に漂っていたのは、ジオン公国軍の旧式輸送艦『パプア級』だった。

 

船体はボロボロで、エンジンは停止している。

 

だが、船の周囲には、不気味な光が漂っていた。

 

ピ、ピ、ピ……

 

「熱源感知! ……小型です! MSじゃない!」

 

“ルーキー”クェン兵長が叫ぶ。

 

闇の中から現れたのは、ドラム缶に手足をつけたような、急造兵器「オッゴ」の群れだった。

 

一年戦争末期、ジオンが物資不足で投入した、学徒兵などが乗る特攻兵器だ。 だが、今のオッゴには生体反応がない。

 

「無人機か!?」ハンス・シュタイナー中尉がランチから分析する。

 

「いや、簡易AIによる自動防衛モードだ。

 ……母船(パプア)を守るようにプログラムされている。

 近づく者は全て敵と認識する『忠犬』どもだ!」

 

 

【鉄塊の舞踏】

 

数十機のオッゴが、一斉に襲いかかってきた。

 

120mmマシンガンとロケット弾の雨が、旧ザク二機を釘付けにする。

 

「くっ! 数が多い! しかも小さいから当たらない!」

 

教授とルーキーが防戦一方になる。

 

「どけェ! 俺がやる!」

 

ビッグXのカスタム・ザクが、スラスター全開で突っ込んだ。

 

 

ズガガガガッ!!

 

 

その機動は、常識外れだった。

 

ドムの脚部で直線加速し、ジムのバックパックで急停止

 

さらに背中のボール・アームがデブリを掴んで「支点」にし、あり得ない角度でターンする。

 

オッゴのAIは、この不規則すぎる動きを予測できない。

 

「へっ! ついてこれねえだろ!」

 

ビッグXは、ザク・マシンガンを撃ちまくりながら

 

背中のボール・アームで近くのオッゴを直接殴り飛ばした。

 

「オラァッ! 三刀流だ!」

 

カツオは、モニター越しにその戦いを見て、戦慄した。

 

(……あの機体は、乗り手を選ぶ。だが、ビッグXのような

 『野性的な勘』を持つパイロットには、最強の武器になる!)

 

 

【パプアの積み荷】

 

オッゴの群れを全滅させた彼らは

 

沈黙するパプア級のエアロックをこじ開け、船内へと侵入した。

 

船内は真空で、無重力空間には、干からびた乗組員の遺体が漂っていた。

 

「……何ヶ月も前に死んでるな。酸欠か」

 

ハンスが呟く。

 

彼らは、貨物ブロックへと向かった。

 

「マダム・ヤンが欲しがってた『お宝』ってのは、何だ?」

 

ライトが照らし出したのは、厳重に梱包されたコンテナの山だった。

 

そのコンテナには、特徴的な『壺』のエンブレム――

 

マ・クベ大佐の私設部隊のマークが刻印されていた。

 

「オデッサの亡霊が、ここにもいたか」

 

ハンスがコンテナの一つを開ける。

 

中に入っていたのは、金塊でも宝石でもなかった。

 

鈍く光る、円筒形のパーツと、高出力のジェネレーター部品。

 

「……こいつは」

 

カツオが目を丸くする。

 

「ビーム・ライフルの『エネルギーCAP(Eパック)』と

 ゲルググ用の『ビーム・ジェネレーター』の予備パーツです!」

 

ジオン軍が遅れて開発した、ビーム兵器の実用化パーツ。

 

これがあれば、ザクのような旧式機でも

 

ジェネレーターを換装することで、ビーム兵器の使用が可能になる(かもしれない)。

 

「……なるほど。マ・クベは、この技術を本国に持ち帰ろうとして、失敗したのか」

 

ハンスは、ニヤリと笑った。

 

「マダム・ヤンには、船のスクラップと、半分のパーツを渡そう。……残りの半分は、俺たちがいただく」

 

「いただくって……まさか」

 

ビッグXが、自分のカスタム・ザクを見た。

 

「俺のザクで、ビームを撃てるようにする気か!?」

 

「実験材料は山ほどある」

 

ハンスは、コンテナの山を見渡した。

 

「次の『狩り』に備えて、牙を研いでおくぞ」

 

彼らが『幽霊』を接収しようとしたその時、カツオの通信機が、新たな信号を傍受した。

 

『……こちら、サイド6駐留・連邦軍パトロール艦隊。

 ……所属不明機に告ぐ。直ちに武装を解除し、停船せよ』

 

宇宙の無法地帯にも、法の番人が近づいていた。

 

しかも、その声には聞き覚えがあった。

 

あの、宇宙に上がった直後に遭遇した、サラミスの艦長――ヴェイン大佐の声だった。

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