ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

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第51話 禁断の火 (The Forbidden Fire)

プロスペクター・ステーション、マダム・ヤンのドック。

 

「穴熊部隊」が持ち帰ったコンテナを開封した瞬間

 

その場にいたジャンク屋たちの目が釘付けになった。

 

 

【規格外の心臓】

 

「……おいおい、本物かい」 マダム・ヤンが、葉巻を揺らしながら唸った。

 

コンテナに収められていたのは、ジオン公国軍の次期主力機「ゲルググ」に搭載される予定の

 

超高出力ジェネレーターのコア・ユニットと、試作ビーム・ライフルの収束レンズだった。

 

「こいつは金になる。ブラックマーケットに流せば、巡洋艦が一隻買えるよ」

 

「売らない」

 

ハンス・シュタイナー中尉が即答した。

 

「俺たちは金が欲しいんじゃない。……『力』が欲しいんだ」

 

ハンスは、整備ベッドに横たわる“ビッグX”の愛機――

 

ザクII・高機動『最下層』カスタムを指差した。

 

「このパーツを使って、こいつにビームを撃たせる」

 

ヤンが呆れて笑った。

 

「工兵さん、正気か? ザクのジェネレーター出力じゃ、ビーム・ライフルは起動しない。

 ゲルググのパーツを移植しようにも、ザクのフレームじゃサイズが合わずに自壊するよ」

 

「分かってる」

 

カツオ・イトウが、図面を広げた。

 

「だから、内蔵はしません。……外付けにします」

 

 

【携帯する発電所】

 

カツオのプランは、常識外れだった。

 

ゲルググのジェネレーターを、MSの動力源としてではなく

 

「ビーム・ライフル専用の携帯発電機」として独立稼働させる。

 

「ザクのバックパックに、このジェネレーターを『ランドセル』のように背負わせます。

 そして、そこから太いケーブルで、手持ちのライフルに直接エネルギーを供給する」

 

カツオが説明する。

 

「つまり……『動く砲台』になれってことか?」

 

ビッグXが、嫌そうな顔をする。

 

「ただでさえドムの足で重いのに、背中に発電所まで背負うのかよ! 重量がハンパねえぞ!」

 

「文句を言うな、ビッグX」

 

ハンスが溶接機を構えた。

 

「お前のザクは、既に推力だけなら高機動型(R型)並みだ。重量増は推力で相殺できる。

 ……問題は、この急造ライフルが、暴発せずに撃てるかどうかだ」

 

作業が始まった。

 

ザク・マシンガンのフレームをベースに、ゲルググの収束レンズを強引に接合。

 

さらに、冷却用のパイプを銃身に巻き付け、見た目はまるで「鉄パイプの塊」のような

 

醜悪な大型兵器が組み上げられていく。

 

 

【招かれざる客】

 

ドックの外では、不穏な空気が流れていた。

 

「穴熊部隊」が持ち帰った『お宝』の噂は、瞬く間にステーションの裏社会に広まっていた。

 

ドックの入り口で、見張りをしていた“ルーキー”クェン兵長が、監視モニターの異変に気づく。

 

「……中尉! ドックの外に、武装した男たちが集まってます! ……MSもいます!」

 

モニターに映ったのは、赤い塗装を施した「ズゴック(宇宙仕様)」と、数機の作業用ポッド。

 

このステーションを縄張りとする武闘派ギャング団、通称「レッド・スネーク」だ。

 

『中のジャンク屋!聞こえるか!』

 

ドックのスピーカーがハッキングされ、ドスの効いた声が響く。

 

『テメェらが持ち込んだ「マ・クベの秘宝」、俺たちに寄越せ!

 さもなくば、ドックごと宇宙の藻屑にするぞ!』

 

「……嗅ぎつけるのが早いな、ハイエナどもめ」

 

ヤンが舌打ちをする。

 

「どうする? ここでドンパチやられたら、私の店が潰れちまう」

 

カツオは、組み上がったばかりの「鉄パイプの塊」――試作ビーム・バズーカを見つめた。

 

「……テストが必要ですね」

 

ハンスがニヤリと笑った。

 

「ああ。ちょうどいい『的』が向こうから来てくれた」

 

 

【禁断の試射】

 

ドックのエアロックが、強制開放された。

 

侵入してきたのは、赤いズゴック。

 

アイアン・ネイルを光らせ、ドック内の資材を破壊しながら進んでくる。

 

『出てこい、ネズミども! 宝はどこだ!』

 

その前に、黒煙と蒸気を吹き出しながら、異形の巨人が立ちはだかった。

 

ザクII・高機動『最下層』カスタム。

 

その背中には、不釣り合いなほど巨大なコンテナ(追加ジェネレーター)を背負い

 

右腕には、ケーブルで繋がれた巨大な砲身を抱えている。

 

「……よう、赤マムシ」

 

ビッグXの声が響く。

 

「俺の新しい『オモチャ』の実験台になってくれるって?」

 

『ハッ! なんだそのツギハギのゴミは! 動けるのか!?』

 

ズゴックが、頭部ミサイルを発射する。

 

「ビッグX! 回避はするな! 重くて動けん!」

 

カツオが通信で叫ぶ。

 

「シールドで受けろ! そして、撃て!」

 

ビッグXは、左肩のスパイク・シールド(ジムの装甲で補強済み)でミサイルを受け止めた。

 

爆風の中、右手の「試作ビーム・バズーカ」を構える。

 

「……コーチ! ヒューズが飛んでも知らねえぞ!」

 

ビッグXがトリガーを引く。

 

背中のゲルググ用ジェネレーターが唸りを上げ、極太のケーブルを通じてエネルギーが奔流する。

 

ザクの腕が、反動で軋む。

 

 

ズギューーーーン!!

 

 

放たれたのは、細く鋭いビームではない。

 

収束率の悪い、荒れ狂うような『濁流のビーム』だった。

 

だが、その威力は絶大だった。

 

『な、なんだこれはぁぁぁ!!』

 

ビームの濁流は、ズゴックの片腕と半身を蒸発させ

 

そのままドックの壁を貫通し、宇宙空間へと突き抜けていった。

 

 

ボシュゥ……

 

試射一発で、手製の銃身から白煙が上がり、冷却液が漏れ出した。

 

背中のジェネレーターも、過負荷で緊急停止する。

 

「……マジかよ」

 

半壊したズゴックの中で、ギャングのパイロットが戦慄していた。

 

「ザクが……ビームを……!?」

 

ビッグXは、煙を上げる砲身を突きつけた。

 

「……次はお前のコックピットだ。消えな」

 

ズゴックと手下たちは、這うように逃げ出した。

 

「……ふう」

 

カツオは、へたり込んだ。

 

「一発撃ったらオーバーヒートか。……とんでもない欠陥兵器だ」

 

ハンスは、まだ熱を帯びている砲身を満足げに叩いた。

 

「だが、撃てた。……これで俺たちは、連邦の戦艦とも渡り合える『牙』を手に入れた」

 

プロスペクター・ステーションの無法者たちは知ることになる。

 

最下層から来た『穴熊』が、『龍の息吹(ビーム)』を手に入れたことを。

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