ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

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第66話 白きR-1A (The White R-1A)

サイド4「ムーア」宙域。

 

ジオン軍の超大型空母「ドロス」は巨大な廃墟の塊となっていた。

 

その格納庫内部に造られた「シップ・グレイブヤード」の集落で

 

ハンス・シュタイナー中尉たちは、先住者たちに包囲されていた。

 

 

【亡霊たちの審判】

 

格納庫の床には、朽ち果てた艦船の残骸が積み上げられ

 

その上に掘立小屋のような居住区が形成されていた。

 

そこに、旧ザク、ジム、ボールなど

 

敵味方入り乱れたMSの混成部隊が、ボーン・ヤードの一行に銃口を向けていた。

 

リーダーとして前に進み出たのは、全身を白い機体番号のない「高機動型ザク(R-1A型)」だ。

 

そのパイロットは、通信で威圧的に尋問した。

 

『この宙域は、我々の生存圏だ。所属と目的を述べよ。抵抗すれば、ここに沈める』

 

ハンスが応じた。

 

「我々は、戦争から逃れてきた漂流者だ。

 貴様らと同じ『最下層の住人』だ」

 

『そのデカい船は、連邦の特務艦と見受けられるが?』

 

「盗んだ。連邦軍の機密物資を積んでいる。……だが、それを売るつもりはない。

 我々は、船の修理と補給、そして静かな休息を求めているだけだ」

 

"教授"ビタム曹長が、ハンスに耳打ちする。

 

『中尉、あれはR-1Aだ。性能は旧型でも、パイロットは相当な手練れですよ。

 それに、このコロニーの住人は、ジオンと連邦の混合。交渉は慎重に』

 

 

【シャリアの証言】

 

緊迫した膠着状態を破ったのは、船内に残っていたシャリア・ブルだった。

 

彼の脳波は安定し、ブリッジの通信機を通して、外のMSに語りかけた。

 

「……待て。その白いザクのパイロットよ。……お前は、ドズル中将の……腹心か?」

 

その言葉に、白いR-1A型ザクが一瞬、動きを止めた。

 

『……何者だ、貴様は。なぜ、その名を知っている』

 

「私は、シャリア・ブル。……かつて、木星船団を率いていた男だ。

 ……中将閣下の『宇宙戦の哲学』を、貴様の操縦に見る」

 

「……!!」

 

白いザクのパイロットが、外部スピーカーで声を荒げた。

 

『馬鹿な!シャリア・ブル少佐は、ソロモンで戦死したはずだ!』

 

「私は死んだ。……全てを失ってな。

 だが、貴様は生きている。……ドズル中将が、ここへ逃がしたのだろう」

 

シャリアの言葉は、まるで亡霊の囁きのように、R-1Aのパイロットの核心を突いていた。

 

このドロス残骸は、ドズル・ザビが敗戦時に見捨てなかった

 

数少ない忠実な部下たちが逃げ込んだ「秘密の隠れ家」だったのだ。

 

 

【契約】

 

沈黙の後、白いザクのパイロットは、周囲のMSに武器を下ろすよう命じた。

 

『……格納庫へ来い。話を聞こう』

 

白いR-1Aのパイロットは、ドズル艦隊の元エースパイロットだった。

 

彼は、シャリアの記憶が本物だと確信した。

 

ハンスたちは、ボーン・ヤードをハンガーに固定し、格納庫の居住区画へ向かった。

 

元エースパイロットは、顔を見せなかったが、通信で交渉を続けた。

 

『我々は、この宙域の平和を乱す連中を嫌う。貴様らの船には、追っ手がいるだろう?』

 

「その通りだ。グリム少佐のゲルググ・イェーガーだ」

 

ハンスが認めた。

 

『ジオンの特務部隊か。……厄介だ』

 

パイロットは条件を提示した。

 

『貴様らをここに滞在させる条件は二つだ。一つ、船の物資は、公平に分配する。

 

二つ、貴様らが持っている「機密情報」を、我々に譲渡せよ』

 

ハンスが振り返り、カツオと目を合わせる。

 

「機密情報……『HADES(ハデス)』のデータのことか」

 

カツオは、マロン(ハロ)を抱きかかえていた。

 

「……彼らは、自分たちの安息を守るために、その『パンドラの箱』を開けさせようとしている」

 

 

【鉄と鋼の誓い】

 

ハンスは、静かに答えた。

 

「HADESのデータは渡せない。……あれは、人類を滅ぼしかねない禁断の兵器だ。

 売ることも、利用することもできない」

 

『ならば、貴様らは敵と見なす!』

 

再び、周囲のMSが銃口を向け始めた。

 

「待て」

 

ハンスが制した。

 

「データは渡せないが、『技術』は渡せる」

 

ハンスは、ビッグXの脚なしザクを指差した。

 

「この機体は、連邦の最新鋭パーツと、ジオンの技術で組み上げられている。

 俺たちは、そのノウハウを持っている。……この船で、貴様らのMSを修理し、強化する。

 その技術を、互いの命を守る盾とするのはどうだ?」

 

沈黙が支配した。

 

この集落の住民たちにとって、MSは命綱だ。

 

その修理技術は、金よりも価値がある。

 

『……いいだろう』

 

白いザクのパイロットが、重い口を開いた。

 

『貴様らの技術が、我々の生存権を確保すると誓うのなら。

 ……ただし、約束を破れば、即座に、貴様の船ごとドロス残骸に溶かしてやる。

 ……ようこそ、【シップ・グレイブヤード】へ』

 

 

こうして、「穴熊部隊」は、ムーア宙域の亡霊たちとの一時的な同盟関係を築いた。

 

シャリア・ブルは、ドロスに残されていた古い木製の椅子に座り、ブリッジを見つめていた。

 

「……あの男は、ドズル中将の意志を継いでいる。

 ……そして、この集落の者たちを、次の戦いのための『駒』として温存している」

 

「次の戦い、ですか?」

 

カツオが問う。

 

「そうだ。……連邦との戦争は終わっても、彼らの『意地』は終わらない」

 

シャリアは、遠い目をした。

 

「……そして、我々の『復讐者』であるグリムは、もうすぐここへやって来る。

 この集落全体が、戦場となるだろう」

 

マロンのハロが、カツオの肩で揺れる。

 

『……カツオお兄ちゃん。……私、この船の中の……あのMSのパーツを調べていい?』

 

「あのMS?」

 

『……ビッグXお兄ちゃんのザクじゃないよ。……船のハンガーにある、連邦のMS……』

 

ボーン・ヤードのハンガーには、ペイルライダーの予備パーツの他に

 

その母体となったMS、そして、さらなる謎を秘めた機体の残骸が運び込まれていた。

 

カツオは、マロンの言葉に、新たな予感を感じていた。

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