ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

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第79話 豊穣の女神 (The Goddess of Agriculture)

暗礁宙域「シップ・グレイブヤード」外縁部、チベ級重巡洋艦ブリッジ

 

墓場の外縁に潜むジオンの『デュラハン』部隊。

 

その旗艦のブリッジで、グリム・ローゼン少佐は漆黒の宇宙を冷徹に見つめていた。

 

「……ようやく見つけたぞ。あの時、ジャブローの混乱から逃げ出した『失われた環(ミッシング・リンク)』を」

 

モニターに映し出されているのは、霧の中を彷徨う黒い影。

 

RX-80DR「ペイルライダー・デュラハン」だった。

 

連邦が開発したペイルライダー・シリーズの試作機でありながら

 

呪われたシステム「HADES」を搭載せず

 

現在は単純な自動操作AIによって

 

デブリ帯に侵入する者を排除する「自動防衛装置」と化していた。

 

「少佐、準備は整っております」

 

副官が報告する。

 

「我々には極秘裏に開発した対ニュータイプ用OSCeres(ケレス)があります。

 これをあのデュラハンのフレームに組み込めば、連邦の模造品ではない

 真にジオンの理念を体現した最強の騎士が誕生します」

 

「ああ。HADESなど、パイロットの脳を焼き尽くす欠陥品に過ぎん。

 ……我らが必要とするのは、制御された『豊穣(ケレス)』だ」

 

グリムは不敵に笑い、立ち上がった。

 

「出るぞ。私の『ゲルググ・イェーガー』を用意しろ。

 ……カツオ・イトウたちの介入は許さん。邪魔立てするなら、まとめて墓場の塵にしてやる」

 

 

【圧倒的な暴力】

 

一方、シップ・グレイブヤード内部。

 

特務艦「ボーン・ヤード」のブリッジでは、カツオとハンスが必死に指示を飛ばしていた。

 

「ビッグX!深追いするな!そいつの動きは『人間』じゃない!」

 

カツオがマイクに向かって叫ぶ。

 

モニターの向こうでは

 

ビッグXが駆る「ザクII・高機動【最下層(アンダードッグ)】カスタム」が

 

黒い亡霊(デュラハン)に翻弄されていた。

 

コクピットには、無骨なケーブルで繋がれたHADESの中枢ユニット(ハロ=マロン)が鎮座し

 

ビッグXの神経とリンクしているが、それでも追いつけない。

 

『……くそッ!速え!スラスターの光が見えねえから、距離感が狂うんだよ!』

 

ビッグXが叫ぶ。背中のボール・アームで迎撃しようとするが

 

デュラハンのヒート・ランスはその隙間を正確に縫ってくる。

 

「……AI制御による『躊躇のない特攻』か」

 

ハンスが舌打ちをする。

 

「生物としての『恐怖』がない分、限界ギリギリのGを平気で出してくる。

 ……これでは、マロンの『殺意感知』も機能しない!」

 

『……こいつ、空っぽ。……心が、ない!』

 

マロンの悲痛な声が響く。

 

その時、宙域に鮮烈なビームの閃光が奔った。

 

「――そこまでだ、野良犬共」

 

 

【黒い狩人の介入】

 

濃霧を切り裂き、真紅と黒で塗装された流線型の機体が現れた。

 

グリム少佐の愛機、「MS-14JG ゲルググ・イェーガー」だ。

 

「グリム……!ここまで嗅ぎつけてきたか!」

 

カツオが息を呑む。

 

「カツオ・イトウ。貴様らに構っている暇はない。その機体(デュラハン)は、私が頂く」

 

グリムのゲルググは、驚異的な推力でビッグXのザクを弾き飛ばすと

 

デュラハンとの一騎打ちに持ち込んだ。

 

『……目標、脅威判定。……排除モード』

 

デュラハンが、無機質な動作でランスを突き出す。

 

「……ふん。所詮はプログラムか。芸がない」

 

グリムは、精密射撃特化のイェーガーでありながら、あえて格闘戦の間合いに踏み込んだ。

 

デュラハンの刺突を、スラスターの微細な噴射のみで紙一重に回避。

 

「貴様の動きは『最適解』しか選ばない。ゆえに、読みやすい」

 

グリムのゲルググが、デュラハンの死角に滑り込む。

 

ビーム・マシンガンではなく、牽制用のバルカンと、マニピュレーターによる関節技。

 

それは、相手を破壊するためではなく、「無傷で捕獲する」ための、あまりにも高度な手技だった。

 

 

【踏みにじられる抵抗】

 

「……化け物かよ、あいつ」

 

ビッグXが呆然とする。自分たちが死ぬ気で戦っていた相手を

 

赤子の手をひねるように無力化していく。

 

「いかん!奴はあの機体を持ち帰る気だ!」

 

ハンスが叫ぶ。

 

「ビッグX、阻止しろ!あれがグリムたちの手に渡ったら、厄介なことになるぞ!」

 

「おうよ!させるかァ!」

 

ビッグXがザクのスラスターを吹かす。

 

「マロン! 力貸せ! ぶちかますぞ!」

 

『……うん!ビーム、いくよ!』

 

ザクの背負ったキャノンとマシンガンが一斉に火を噴く。

 

だが、グリムは振り返りもしなかった。

 

「……邪魔だ」

 

グリムの僚機であるデュラハン隊のリック・ドムⅡ(ツヴァイ)が数機

 

絶妙なタイミングで射線上に割り込み、シールドで攻撃を防ぐ。

 

その隙に、グリムのゲルググは、デュラハンのメインカメラとセンサーを正確に撃ち抜いた。

 

ガクン……。

 

視界を奪われたデュラハンが、動きを止める。

 

「……確保した」

 

グリムの指示により、部下のドムたちが電磁ワイヤーを撃ち込み

 

デュラハンをがんじがらめにする。

 

 

【Ceresの胎動】

 

グリムのゲルググが、鹵獲されたデュラハンの前に立ち

 

カツオたちのボーン・ヤードを見下ろすように対峙した。

 

『カツオ・イトウ。……感謝するぞ。

 貴様らが露払いをしてくれたおかげで、無駄な弾を使わずに済んだ』

 

グリムの通信が、ボーン・ヤードのブリッジに届く。

 

「グリム……!その機体を使って、何を始める気だ!」

 

カツオが問い詰める。

 

『……実験だ。HADESのような狂兵器ではなく

 パイロットと共鳴し、その能力を耕し、実らせるシステム……Ceres(ケレス)のな』

 

グリムの声には、狂気ではなく、純粋な武人としての野心が満ちていた。

 

『連邦は、人を部品として使い潰す。

 だが私は、人の可能性を極限まで引き出す。……このデュラハンが、その証明となるだろう』

 

グリムは、追撃をしようとはしなかった。

 

目的である、デュラハンの鹵獲は達した。

 

これ以上の戦闘は「Ceres」移植のスケジュールを遅らせるだけだった。

 

『さらばだ。……次に会う時は、この「首なし騎士」に新たな「魂」が入った時だ。

 その時こそ、貴様らのHADESと決着をつけよう』

 

漆黒の闇の中へ、デュラハンを牽引したジオン艦隊が消えていく。

 

カツオたちは、その圧倒的な実力差の前に、ただ見送ることしかできなかった。

 

「……Ceres(ケレス)、だと?」 シャリア・ブルが、青ざめた顔で呟いた。

 

「……豊穣の女神の名を借りた、新たな悪夢か。……マロンくん、聞こえるか。

 ……我々は、とんでもないものを呼び覚ましてしまったのかもしれん」

 

シップ・グレイブヤードの静寂が、以前よりも重く、冷たく感じられた。




新年あけましておめでとうございます!
楽しいお正月をお迎えでしょうか。2025年は大変お世話になりました。
本年も皆様に楽しんでいただけるような作品をたくさんお届けできるよう頑張ります!
幸多き一年となりますよう、心からお祈りしています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします!
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