ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle- 作:Ginさん
「……アキラたちか。律儀な奴らだ」
カツオは暗号通信を解読しながら、その内容に目を見開いた。
『……コーチ、これを受け取ってくれ。俺たち「ホッジポッジ隊」から、これまでのお礼だ』
アキラの声が、ノイズ混じりに響く。
『正規の補給ルートからは外した。……ジャブローで試験運用中だった「尖った」機体を
タカシが書類を捏造してここまで回したんだ。受け取り場所は、デブリ帯の座標104。
……アンタにしか、乗りこなせないぜ』
【新たなる牙】
指定された座標に漂っていたのは、連邦軍の輸送コンテナだった。
カツオは、ハンガーに鎮座するその機体を見上げ、圧倒されている。
「……こいつが、アキラたちの言っていた『プレゼント』か」
そこに鎮座していたのは、RGM-79FC『ストライカー・カスタム』だった。
ジム・ストライカーをベースに、宇宙空間での白兵戦に念頭に大幅な改修が施された機体だ。
全身に配置された増加装甲「ウェラブル・アーマー」と
それとは対照的なほど巨大な背部バーニアが、この機体の異常なコンセプトを物語っている。
「近接戦闘に特化した高機動型ジム……。ハデスもケレスも載っていない、普通の『MS』だ」
カツオがコクピットに手をかける。
「ああ、だがフレームが別物だ」
ハンスがコンソールを叩く。
「カツオ、こいつの姿勢制御プログラムは
お前の操縦ログに合わせて極限までレスポンスが上げられている。
……少しでも気を抜けば、お前の首がGでへし折れるぞ」
「……望むところだ」
カツオは静かに笑った。
「……面白い。俺の『間』に、どこまでついてこれるか試してやる」
【模擬戦開始】
ボーン・ヤードから少し離れたデブリ帯。
カツオのストライカー・カスタムの前に、ビッグXの「ザクII・高機動【
『……へへ、コーチ。新しいおもちゃの具合はどうだい?手加減は無しだぜ!』
ビッグXの隣では、ハロに収まったマロンが赤く光る。
『カツオ、いくよ!ハデス、限定起動!』
模擬戦が始まった。
ビッグXのザクが、ハデスの補助を受けた猛烈な加速で距離を詰める。
背中のボール・アームから放たれるマシンガンの弾幕がカツオを襲う。
「……マロン、いい動きだ。だが!」
カツオはストライカー・カスタムのスラスターを一気に吹かした。
ドッ!!
胃の腑を押し潰されるような加速。
だが、機体はカツオの脳が描いた軌道と寸分違わず
デブリの間を縫うように鋭角に折れ曲がった。
「……速い!姿勢制御が追いついている!」
カツオは驚愕した。
これまでのジムやザクでは、加速の後に「機体の揺り戻し」があった。
しかしこのストライカー・カスタムは、強靭なフレームと姿勢制御バーニアが
強引にその揺れを抑え込んでいる。
【技量と機械の対話】
『うおっ!?消えた!?』
ビッグXの視界から、ストライカー・カスタムが消失する。
カツオは、三次元空間の死角――真下から、爆発的な踏み込みでザクの懐へ飛び込んだ。
「チェックだ、ビッグX!」
カツオがツイン・ビーム・スピアを突き出す。
『……させるかよッ!』
ハデスの予測機能が働き、ビッグXは辛うじてスピアを回避する。
だが、カツオは即座にスピアを連結・回転させ、追撃の構えをとった。
「……素晴らしいな。感情の抑制も、AIの補助もいらない。
……自分の意志が、そのまま指先まで伝わる感覚だ」
感情を消すのではなく、感情を乗せた「技量」を100%受け止めるための、極限のレスポンス。
カツオはこの機体が「
【不足しているもの】
数セットの打ち合いの後、カツオは機体を停止させた。
『……参ったぜ、コーチ。そのジム……いや、ストライカー・カスタムか。
化け物じみた反応速度だな』
ビッグXが息を切らしながら通信を送る。
「……ああ。だが、一つだけ問題がある」
カツオは自分の操縦桿を見つめた。
「この機体のポテンシャルを最大限に引き出すには
今のツイン・ビーム・スピアでは『間』が合わない。
……突きや払いではなく、もっと鋭く、最短距離で敵を断つ
この機体の『速さ』を殺さない武器が必要だ」
高機動・高精度のステップ。
それを活かすには、より重心が安定し
一撃のもとに勝負を決める、究極の「近接兵装」が欠けていた。
【ハヤブサの呼びかけ】
模擬戦を終え、ボーン・ヤードへ帰還しようとする彼らに
シップ・グレイブヤードの主・ハヤブサからの通信が入った。
『カツオ、聞こえるか。……お前さんの新しい機体、いい動きだったぞ』
ハヤブサの声は、どこか興奮を含んでいた。
『その機体に合う「牙」を探しているなら、丁度いいものがある。
……さっき、うちの回収班がシップ・グレイブヤードの深部で見つけてきたんだ。
連邦の規格じゃねえ、かと言ってジオンのヒート兵器でもねえ……妙な代物をな』
「妙な代物……?」
『……ああ。見た目はただの「太刀」だ。
だが、そいつの刀身からは、とんでもねえ高出力の熱源反応が出てやがる。
……興味があるなら、俺のところへ来な』
カツオは、ストライカー・カスタムのカメラを、ハヤブサの示す暗闇の先へと向けた。
そこには、自分とこの機体の運命を切り拓く、新たな力が眠っている予感がした。