ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

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第83話 女神の迷宮(ラビリンス) (The Goddess's Labyrinth)

廃棄コロニー「アイランド・イーズ」内部・シリンダー港湾部

 

「ボーン・ヤード、砲撃開始!敵の目を引きつけろ!」

 

シャリア・ブルの指揮のもと、特務艦がコロニー外壁に向けて弾幕を張る。

 

その隙を突き、カツオの「ストライカー・カスタム」

 

ビッグXの「ザクII【最下層(アンダードッグ)】カスタム」

 

そしてハヤブサ率いる数機のMSが、崩壊した港湾ブロックからコロニー内部へと滑り込んだ。

 

 

【鏡の回廊】

 

内部は異様な光景だった。

 

かつて人々が暮らした大地(居住ブロック)は剥がれ落ち

 

空には巨大な採光用ミラーが砕け散って浮遊している。

 

太陽光が乱反射し、視界は極めて悪い。

 

「……気をつけろ。レーダーが効かねえ」

 

ビッグXが警戒する。

 

その時、一筋のビームが予測不能な角度から飛来し

 

ハヤブサの部下のザクⅡの肩を掠めた。

 

「なっ!?どこからだ!?」

 

『……反射だ』

 

ハンスの声が通信に入る。

 

『浮遊するミラーを利用している。

 ……敵は、どこに鏡があり、どう撃てばビームが屈折して届くか、全て計算済みだ』

 

そこは、C.E.R.E.S.(ケレス)が構築した、光と死角の迷宮(ラビリンス)だった。

 

 

【狩人の視点】

 

『……C.E.R.E.S.(ケレス)、予測ルート修正。……エリアB-4への誘導完了』

 

コロニーの深部、かつての市街地を見下ろす高台に

 

漆黒の機体「ペイルライダー・デュラハン」が佇んでいた。

 

コックピットの中で、グリム少佐の瞳は冷たく凪いでいた。

 

彼の視界には、網膜投影によってコロニー全体が「グリッド」として表示され

 

カツオたちの未来位置が赤いラインで予測されていた。

 

『……鼠が袋小路に入った。……重力制御、解放』

 

グリムがスイッチを押す。

 

それは、コロニーの姿勢制御用スラスターをハッキングし

 

意図的に「遠心力(重力)」を発生させる罠だった。

 

 

【重力の檻】

 

ズンッ……!

 

突如として、カツオたちの機体に強烈なGがかかった。

 

無重力空間を浮遊していた彼らは

 

突然、地面へと叩きつけられる。

 

「ぐっ……!重力発生だと!?」

 

ビッグXの驚いた声をあげる。

 

「……狙いはこれか!」

 

カツオのストライカー・カスタムもまた、姿勢を崩す。

 

背中のスラスター、分厚い増加装甲、そして何より背負っている実体剣『紫電』。

 

その全てが、重力下では「(かせ)」となる。

 

『……ようこそ、私の庭へ』

 

グリムの声が響く。

 

宇宙(そら)に浮かれた貴様の機体は、大地ではただの鉛の塊だ』

 

廃墟のビルの陰から、デュラハン隊の伏兵であるリック・ドムIIたちが姿を現し

 

動きの鈍ったカツオたちへ一斉射撃を開始した。

 

 

【鉛の塊の使い道】

 

「ちッ……!重くて動けねえ!」

 

ビッグXが盾を構えて防戦一方になる。

 

カツオのストライカー・カスタムも、四方からの砲火に晒されていた。

 

C.E.R.E.S.(ケレス)は、カツオが「重さに耐えきれず足を止める」と予測していた。

 

だが。

 

「……鉛の塊、上等だ!」

 

カツオは、背中の「紫電」を抜刀した。

 

その重量は凄まじく、機体のマニピュレーターが軋む音が聞こえるほどだ。

 

しかし、カツオは逆転の発想をした。

 

「……スラスター、全開ッ!」

 

カツオは、機体を「持ち上げる」のではなく、地面スレスレを「滑走」させた。

 

ホバー走行に近い形だが、刀の重量をあえて前方へのモーメント(回転力)として利用する。

 

「なっ、なんだあの動きは!?」

 

ジオン兵が驚愕する。

 

重力に押し潰されるはずのジムが、まるで倒れ込むような前傾姿勢で

 

地を這う猛獣のように突っ込んできた。

 

 

【予測不能の太刀筋】

 

『……目標、接近。……迎撃確率98%』

 

C.E.R.E.S.(ケレス)が最適解を出す。

 

ドムの一機がヒート・サーベルを構えて迎撃に出る。

 

だが、カツオの攻撃は

 

C.E.R.E.S.(ケレス)のデータベースにある「連邦軍教本」には存在しないものだった。

 

「……邪魔だぁぁッ!」

 

カツオは、スラスターの推力を乗せたまま

 

紫電を「横薙ぎ」ではなく、地面ごとえぐるように「擦り上げた」!

 

ガギィィィン!!

 

火花と共に、ドムのヒート・サーベルごと、機体の下半身が叩き斬られた。

 

ビームによる溶断ではない。

 

圧倒的な質量による、物理的な破壊。

 

「……質量(おもさ)があるからこそ、一度動き出せば止まらない!これが慣性だ、グリム!」

 

カツオのストライカー・カスタムは、返り血(オイル)を浴びながら、瓦礫の山を突破した。

 

その先には、冷徹にこちらを見下ろす「首なし騎士(デュラハン)」の姿があった。

 

『……ほう。……私の計算を、蛮勇で越えてきたか』

 

グリムのデュラハンが、ゆっくりと巨大なヒート・ランスを構え

 

高台からカツオの目の前へと降り立った。

 

『だが、ここからは格闘戦(クロス・レンジ)だ。……技量と演算、どちらが上か試してみようか』

 

迷宮の最奥で、二つの「異形の騎士」が対峙する。

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