キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話 作:鈴木颯手
廉頗が負けを認めたことで戦は終わった。白老や桓騎、変態仮面等は山陽全体の平定の為に残るみたいだけど俺はそこまで付き合う気はない。というよりもこの戦には飽きていたから一足先に帰らせてもらう事にした。
「ん。帰る。褒美は呂不韋が適当にやっておいてって伝えて」
「フォッ!?」
白老は驚いていたけど俺はさっさと軍勢を離れていく。次は何処に行こうか。楚か、斉か。楚なら南蛮との戦いもあるから稼げるし久しぶりに行ってみようかな?
「あ、ボロ布君」
「ッ!? お前は炎鬼!!!」
そうして帰路についていたら何とボロ布君と再会した。凡そ一年ぶりか。山陽攻めの前哨戦のような形となった小規模な戦いでお邪魔した時以来だった。まさか参戦しているとは思っていなかったけどよくよく考えたら魏との前線で戦っていたんだし参戦するのは道理か。
「手柄立てた?」
「当り前だろ! 敵将の一人、輪虎を討ち取ってやったぜ!」
「おめでと?」
誰? 知らん名前出てきたけどこの喜びようからきっとそれなりに強い将軍なんだろう。廉頗将軍以外だとどれもどっこいどっこいだったし分からないけど。
「そういう炎鬼も手柄を立てたんだろ?」
「ん。廉頗将軍との戦いは久しぶりに楽しめた」
「楽しむような相手じゃないと思うがな」
聞けばボロ布君は和睦が決まった後に本陣に来たらしい。その時には俺は既に寝ていたから分からなかったが廉頗将軍の一撃を喰らって天下の大将軍の凄さをその身で理解したんだとか。通りで一回り程強い気配を感じさせるようになっているわけだ。鑑定で調べてみれば明確に一年前よりも強くなっている。廉頗将軍と比べれば雑魚だけど少しずつ強くはなっているようだ。
「炎鬼はこれからどうするんだ?」
「楚に行く」
「楚? って事は秦を出るのか!?」
「ん」
山陽はつまらない戦だった。味変として他国に行って戦うのも悪くはない。むしろそうした方が良い。今の気分のまま戦場に出ても秦の兵士ごと切り捨ててしまいそうだ。いや、それだと桓騎とか呂不韋とか困るだろうから変態仮面と傲慢糞野郎の軍勢だけを切り捨てるか。考えていたらイライラしてきた。
「ん。今から韓を攻撃する」
「は?」
「傲慢糞野郎と変態仮面を思い出してイライラする。ストレス発散する」
「すとれ……? ってオイ!」
韓の城ならば文句はないだろう。久しぶりに全てのスキルを使ったせいか体が異様に戦いを求めている。発散しないと途中で暴発しそうだ。秦や楚でそれは避けたいしな。
そういう訳で手ごろな韓の城を殲滅しよう。ついでにそのことで楚から褒章を貰えばいいな。くれるとは思えないけど。
数日後、とある韓の城が地図上から完全に消え去る事になる。
山陽の勝報を聞いた呂不韋はまた一つ、秦の領土が広がった事に満足感を得ていた。秦の領土が増えるという事はそれすなわち呂不韋の懐に入る金が増えるという事であり、更に権力を拡大させたという事でもあった。
「しかし炎鬼は楚に向かってしまったか。褒美を与えたかったのだがな」
しかし、功労者の一人でもある炎鬼は既に楚に入ってしまっており、論功行賞では炎鬼の伝言通りに呂不韋が預かる事になっていた。とはいえこれは今に始まった事ではない。気分が乗らなければ呂不韋に報奨金を預けて各地を放浪する事が多々あり、今回のだけではなく呂不韋が預かっている金はかなりの金額に登っていた。
-呂不韋が使いたいなら使ってもいいよ
-フハハハハハ!!! 金の事で炎鬼殿に頼み込む事などあり得ないからな! 大事に保管しておこう!
-ん。ありがと。
呂不韋としては炎鬼が預けている金に魅力は感じない。自らの懐には預かっている金をはるかに超える量をしまい込んでいるからだ。しかし、権威よりも金を優先する炎鬼が金を預けた上に使っても良いと言われるという事はそれだけ信用されているという事でもある。呂不韋はそのことに満足していた。
例え呂不韋が秦を裏切り、他国に寝返ったとしても炎鬼ならば秦よりも呂不韋を取ると明確に理解できたからだ。炎鬼という最強の札を常に使える状態にあるというのは呂不韋に大きな余裕を生み出させていた。
「さて、炎鬼殿が戻ってきた時に備えて最高の料理や酒を用意しておくとするか」
炎鬼は本当に気分で呂不韋の元を訪れる。事前に分かっていればいいが何の把握も出来ていない時にふらりと訪れる事もあるために呂不韋は常に最高の料理や酒を準備していた。その大半は自らで消費することとなっているが炎鬼の信頼を得られると考えれば必要な出費だった。故に彼がそれらの準備に妥協することはない。
そしてこれらの呂不韋の準備が炎鬼にふるまわれるのは凡そ一年先のこととなる。
紀元前241年。秦を滅ぼすべく六か国による合従軍が侵攻を開始した。奇しくも