冒険者ワイ、薄汚れたハーフのエルフとダークエルフ(幼女)を買う 作:冒険者モブ
3人が街を出ようとすると、狩人の少年が入り口の近くで待っていた。
「…行くんだろう、索敵程度はやる…師匠に頼まれたからな」
「…というか、転移の後何処に居たんだよ…」
グレイの言葉に、少年はごく普通に答えた。
「転移した直後に、腹拵えをしていた。干し肉では足らない」
「…そうかぁ…」
「…にしても、街の飯は美味かった。師匠に街に行く許可を貰うのも、考えるか」
その目をほんの少しだけ輝かせて、少年はパーティに加わった。
「…あぁ、ゴブリンの残党はいない、全て…冒険者と聖騎士達が片付けた…後は敵の本拠地のゴブリンどもだけだ」
「なら、素早く行きましょうか!主よ、我らに駿馬の如き風を与え下さい…《
シスターはそう言うと、全員にバフをかけた。
「…《
「ふむ…これなら…すぐに着く」
そう言うと同時に、少年の姿は掻き消えた。
「私達も行きますよー!」
シスターの声に従い、受付とグレイは戦場を駆ける
周りはゴブリンの死体、敗れてしまった冒険者の死体…それらが無造作に転がっている。
それを尻目に、シスターと受付は素早く駆ける。そして、そんな二人を追いかける様にグレイも後に続いた。
そして…ゴブリン達の本拠地…森の奥深くにある、掘り尽くされた廃坑。
ギルドマスターが投げた槍が廃坑の目の前に突き刺さっている。
聖騎士や冒険者の姿は無い、皆廃坑の中だろう。
「到着…と、《
シスターはそう言うと、杖を持ちながら廃坑の入り口を見つめる。
「…さて、敵の首魁…ゴブリンロードと邪教徒を倒すとしましょうか…先鋒は私が務めます。2人はその後に続く様に」
そう言って、受付は廃坑へと歩を進める。
「あ、待ってくださいよ〜!もう…行きますよー、グレイさんっ!」
「ちょ…息切れた…休ませて…」
ぜーはー…と息を荒げるグレイに、シスターはもう、と頬を膨らませる。
「体力ないですね〜…《
「これだと身体元気だけどメンタル的に疲れてるってば…!」
シスターに手を引かれながら、グレイも廃坑へ歩を進めた。
廃坑の中は嫌になる程静かだった。
戦闘音がなく、ゴブリン達の気配もない。
そして、聖騎士や冒険者達の姿が、影も形もなかった。
廃坑の壁に刻まれた剣の切った跡や、砕けたゴブリンの鉄兜や槍が散乱している事から、戦闘が起きていたのは間違いない。
「…これは」
「あれ?冒険者や聖騎士の皆さん…居ないですね…」
「…なんか、猛烈に嫌な予感するんだが…??」
そんなグレイの言葉と同時に、3人の足元に紫の魔法陣が現れる。
「…っ!転移魔法陣…!?魔力探知や魔法陣の痕跡はなかったはず…!」
「…っ…!グレイさん!手を…!」
受付は魔法陣から2人を逃がそうと手を伸ばし、シスターは分断される可能性が高いとグレイへと手を伸ばした。
しかし、無情にも転移魔法は作動した。
♢
グレイは気付けば、知らない場所に居た。
周りを見渡すと、とても高い天井と、遠くにゴツゴツとした岩肌が見える…が、その岩肌はよく見ると動いていた。
グレイは何が動いているのか、と目を細めて見つめ…強い吐き気を覚えた。
悲惨過ぎる光景だからだ。
壁の中に、人とゴブリンが無操作に埋め込まれている。
腕だけが飛び出ている者、顔が半分埋もれた者、片足と腕が人体では考えられない位置に配置され、口元だけが露出し、痛みで叫び声を上げる者まで居た。
…そう、この壁に埋め込まれた者達は…全員、生きている。
『うふふ!どうかなぁ?ワタシの作品?すごく…酷くて、悲惨で…ステキでしょ?』
嫌に甘ったるい声が響く。
「グギャァァ!!」
それとほぼ同時に、目の前に黒いゴブリンが現れ、ナイフを振り下ろして来た。
「…っ!?…《
一瞬だけ驚くものの、グレイは《
至近距離から放たれた《
同時に至近距離からの爆風を受け、グレイも受け身を取りながらゴロゴロと地面を転がった。
「ギギャァァァ!!!」
それとほぼ同時に、壁の中に埋め込まれていたゴブリンが叫び声を上げ、ぐったりと動かなくなった。
吹き飛ばされた黒いゴブリンは苦々しい表情で起き上がると、ナイフを構え直す。
『すごいすごーい♡完全な不意打ちに対応できるなんて、偉い子ね〜!」
また、甘ったるい声が響く。
「お前は誰だ!2人を何処にやった!」
『えー?敵にそんな事聞くの〜?純粋なボクちゃんで可愛いでちゅね〜♪』
愉快そうに、声は響く
その直後、グレイの目の前に巨大な半透明の映像が映し出された。
それと同時に、黒いゴブリンは跪き頭を下げる
『見えてますか〜?見えてますね〜?改めて…貴方達を派遣した教会の敵…変異種のゴブリンロードくんと〜…邪教徒のルルアでぇす♪』
映し出されたのは、黒い肌に白い紋様を幾重にも張り巡らせた筋骨隆々なゴブリンロードと、そんなゴブリンロードに、優しく抱えられた1人のエルフだった。
エルフの見た目は長い銀髪を三つ編みにして肩から垂らし、陶磁器の様な白い肌と男を煽情する様な体を、シスター服で包んでいる。
しかし、翡翠のような瞳は淀み濁り切っていた。
そして、受付とシスターは、見える位置にロープで縛られ吊るされていた。
『じゃあ、キミにルールを説明するね?
ルールは簡単♪キミはこれから黒いゴブリン、ボブ、ジェネラル、そしてこの変異種のロードくんを、倒したら勝ちです♪
逆に…キミが一度でも、死んでしまったら…シスターちゃんと悪魔殺しちゃんは…ゴブリン達のお相手を…キミが諦めるか、魂のストックがなくなって死ぬまで…いーっぱい、相手して貰うコトになるかな♪
でも〜…さっきキミがやった様に、ゴブリンは一撃で倒せる訳じゃないよ
これは、ワタシだけの魔法。《
簡単に説明すると、ワタシはワタシ自身や、他人の魂を『繋ぐ』事が出来るの。
繋いだ魂はお互いに、片方が怪我を負った時にもう片方が肩代わりしたり…逆も出来るし…
ワタシがさっきの様に、繋いだ魂が死ぬ時に、もう片方にその死を押し付ける事も出来るの♪
だから…キミの周りに埋め込まれた人と、ゴブリンは…それぞれキミとゴブリンの死んで良い回数みたいなモノだよ♪
でも…流石にキミみたいな子に無理難題を押し付ける程、ワタシも酷くはないの。だから…黒いゴブリンは、後1000回、ボブは1500回、ジェネラルは…可愛いキミの為に、オマケして100回♪代わりに…ロードくんは〜…150回!この回数、殺せたら、キミの勝ち♪
キミが勝ったら、シスターちゃんも悪魔殺しちゃんも、ちゃんと無事に解放するし、ワタシも抵抗はしないよ?
それじゃあ、説明は終わり♪頑張って、殺してね♪』
プツリ、と映像が消えると同時に、黒いゴブリンは立ち上がり、一気にグレイへと距離を詰めた。
♢
黒いゴブリンとグレイの戦いを、邪教徒は眺める。
「イケイケ〜がんばれ〜♪」
どちらを応援しているのか分からないが、声援を送っている。
「…そのシスター服、そして
縄に縛られたまま、受付はそう問いかける。
「…えぇ、その通りよ。悪魔殺しちゃん。それにしても、まさか聖女のシスターちゃんと同じ街に居るなんて思ってなかったわ」
「…何故、こんな事を?」
その言葉に、リリアーナはピクリと身体を震わせる。
「……何故?…主は私の子を救わなかった、理由はそれだけで充分よ…」
酷く冷たい声で、リリアーナは答えた。
「…それに、妙な動きをしないで頂戴?あの子と私はいつでも結魂《ソウル・リンク》で繋いで…私はいつでも自害出来る事、忘れないで頂戴?」
縄を爪で切ろうとしていた受付と、変異種のゴブリンロードへ魔法で攻撃を叩き込もうとしていたシスターは、その動きを止めた。
「…良い子ね、じゃあ…大人しく、あの子の勇姿を見ていなさい」