光と歌のステラノート   作:ミヤイ

13 / 13
あっという間に年末年始になりました!
今年どんな年でしたか?

政治も大きな動きを見せたように私達もこれから前向いて頑張っていかないといけないですね笑

ちなみに自分は、変化の年でした笑
来年はどんな年になるか楽しみです


第12話 ゼロから1へ

 ──光の巨人が消えたあと。

 

 神津島には、奇妙なほどの静けさが訪れていた。

 しかし、それは“安堵”ではない。

 むしろ、嵐の直後のような、息を潜めた恐怖の静寂。

 静かに朝焼けが大地を包んでいく中、

 かのん達が避難していた洞穴には、波の音と遠くのざわめきだけが響いている。

 

 ヒロトは岩壁にもたれ、荒く息を吐いていた。

 額には汗。腕には土の汚れ。

 ティガが倒れた際の反動が、まだ身体を蝕んでいる。

 

「ヒロトくん、大丈夫……?」

 かのんが震える声で聞く。

 

「だいじょうぶ……だよ。ちょっと、転んだだけ」

 

 明らかなウソだった。

 けれど、その嘘に気づきながらも、かのんは強く言えなかった。

 彼の顔色があまりに悪いからだ。

 洞穴の奥で、すみれと可可が息を整えている。

 

「はぁ……はぁ……っ、さっきの……何デスか……あの怪物……!」

「う……うそでしょ……? 島が……ぐちゃぐちゃじゃない……!」

 

 目に浮かぶのは、破壊されたステージ。

 レッドキングが吐いた岩石弾で木材は砕かれ、照明もスピーカーも全てが吹き飛んでいた。

 

 そして──

 彼らを救ってくれたあの光の巨人が、倒れ、消えてしまったこと。

 

(……どうして……あの巨人は、いなくなっちゃったの……)

 

 かのんの胸に、深く冷たい不安が沈む。

 外では、島民たちの怒号や泣き声が遠くから聞こえる。

 

「……Sunny Passionさんの二人、大丈夫かな」

 かのんは震える声で呟いた。

 

 すると、洞穴の入り口から影が差す。

 

「……かのんちゃん!」

 

「摩央さん!? 悠奈さん!?」

 

 Sunny Passion の柊摩央と聖澤悠奈が、砂埃をまとって走り寄ってきた。

 

 ふたりの顔は驚くほど蒼白だった。

 

「よかった……無事で……!」

「島、もう……めちゃくちゃで……」

 

 その声はいつもの明るい太陽のような輝きではなく、

 曇った空の下で泣き出しそうな“人間の声”だった。

 

「……ライブどころじゃ……もう、できないかもしれない……」

 

 摩央が握りしめた両手は震え続けている。

 

「だって……ステージも、道も……

 島の人たちの家だって……被害が出てるんだよ……」

 

 かのんの胸がぎゅっと痛む。

 

「わたし達……何のために頑張って来たんだろう……」

 

 悠奈が絞り出すように言った瞬間──

 洞穴の奥に、重い沈黙が落ちた。

 

 可可も、すみれも、かのんも……

 誰も何も言えなくなる。

 

 光の巨人がいなくなった絶望。

 島の未来が揺らいでいる現実。

 Sunny Passion の希望が折れかけている姿。

 

 そして──

 ヒロトは岩壁に寄りかかりながら、自身の手をじっと見つめていた。

 レッドキングの凄まじい怪力が未だ手の感触として残っている。

 

(……あれじゃ、勝てない。

 今の俺じゃ……怪獣に……)

 

 握った拳が震える。

 

(……まだ終わりじゃない。

 だけど……次に勝てる保証は……)

 

 ヒロトは顔を伏せた。

 

 その時だった。

 

 ──ゴゴゴゴゴゴ……

 

 地面の奥から、低く、鈍い音が伝わってくる。

 

「ま……まだ揺れてる……?」

「違う……これ、地震の揺れ方じゃない……」

 

 摩央の表情が強張る。

 

 島の地面が波を打つように震え、洞穴の砂がわずかに跳ねた。

 

 島全体を包むような不気味な唸り声が地中から響く。

 

「……もしかして……あいつ……まだ……」

 

 ヒロトの脳裏に、地面を突き破って出現するレッドキングの姿が浮かぶ。

 嫌な予感が背筋を走る。

 

「ヒロトくん……? 顔色が……」

 かのんがそっと問いかける。

 

 ヒロトは小さく息を吸った。

 

「……たぶん、まだ終わってない」

 

「え……?」

 

「あの怪獣……あれは地下に潜っただけだ。

 多分……また戻ってくる……」

 

 洞穴の中の空気が一気に重く沈んだ。

 

「そ……そんな……!」

「ちょ、ちょっと待ってよ! あんなのがまた来るって……

 一体、どうなるのよ! 

 巨人ですら勝てなかった相手に……」

 

 すみれの声が震える。

 彼女の様子を見てそれぞれの表情が曇る。

 怪獣による進行により全てを失った焦燥感と恐怖がこの場を支配する。

 少し時が流れてから柊摩央が口を開いた。

 

「──兎に角、状況を確認しましょうか」

 

 その一言に誰もが首を縦に振って荒れ果てた島の様子を確認するのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 倒れた家屋。

 砕け散った瓦礫。

 道は裂け、木々はなぎ倒され、潮の香りに混じって焦げた土の匂いが漂っている。

 そして──

 かつて歌うはずだったステージ。

 支柱は折れ、床板は粉々に砕かれ、照明は海へと転がり落ちていた。

 六人は、変わり果てた光景を見て唖然とした。

 

「……っ」

 

 摩央は思わず息を呑み、悠奈は唇を強く噛みしめる。

 

「……ひどい……」

「……これ、全部……」

 

 言葉が、続かなかった。

 Sunny Passion にとっても、かのん達にとっても、

 この島は“夢を歌う場所”だったはずなのに──

 今は、ただの戦場の跡でしかなかった。

 ヒロトは、崩れたステージの残骸を見つめたまま、動けずにいた。

 

(……俺が……もっと強ければ……)

 

 レッドキングの圧倒的な怪力。

 守れなかった島。

 壊れてしまった、人の営み。

 

(……守るって、言ったのに……)

 

 拳を握る指先が、白くなる。

 

「……俺は……何をしてたんだ……」

 

 その呟きは、誰にも届かないほど小さかった。

 

 ──その時。

 

 砂を踏みしめる音と共に、ひとりが前へ出た。

 髪を揺らし、胸を張って立つ唐可可。

 可可は、瓦礫の向こうに広がる島を真っ直ぐに見据え、

 はっきりと、力強く言い切った。

 

「今こそ──

 スクールアイドルの出番デス!」

 

「……え?」

 

 かのんが驚いて振り返る。

 すみれも、摩央も、悠奈も、ヒロトも──全員が可可を見る。

 

 可可は、少しだけ震えながらも、笑顔を作った。

 

「私たち、既にこの状況を経験してマス! 

 あの日、何も無いところで……歌ったからこそ

 今日がありマス!」

 

 一度、ぎゅっと拳を握る。

 

「だからこそ──歌うべきデス! 

 明日を笑って迎える為に」

 

「可可ちゃん……?」

 

 かのんが息を呑む。

 

「スクールアイドルは、

 楽しい時だけ歌うんじゃないデス。

 みんなが泣いてる時、こわがってる時──

 明日に向かって立ち上がる為に歌うデス!」

 

 その言葉に、すみれの目が揺れた。

 

「……ふん。

 アンタにしては……たまには、まともなこと言うじゃない」

 

 そう言いながらも、声はかすかに震えている。

 摩央が、そっと前に出た。

 

「……歌う、って……

 こんな状況で……?」

 

 可可は、はっきりと頷いた。

 

「デス! 

 怪獣を止める力はなくても、

 人の心を応援することは……できマス!」

 

 悠奈の目に、うっすらと涙が浮かぶ。

 

「……島の人たち、みんな……怖がってた……

 逃げるだけで……」

 

 かのんは、崩れたステージを見つめ、そして──

 胸に手を当てた。

 

(……歌えない理由なんて……どこにもない……

 あの時もそうだったから)

 

 彼女は、静かに一歩、前へ出る。

 

「……可可ちゃんの言う通りだよ」

 

「かのん……」

 

「ステージが壊れても、

 音響がなくても……

 私たちの“想い”までは、壊れてない」

 

 かのんの声は、まだ震えている。

 それでも、確かだった。

 

「私たちは……

 みんなの“心”のために、歌うんだよ」

 

 ヒロトは、その背中を見つめていた。

 怪獣と戦う力はない。

 けれど──

 この光景は、“光の巨人”とは違う光。

 きっと人が人を想う時に生まれる暖かな光。

 

(……これが……人を想う光……)

 

 

 六人の前にあるのは、

 崩れ落ちたステージの残骸と、静まり返った瓦礫の山。

 

「……本当に、何も残ってないね……」

 

 悠奈が呟く。

 それは諦めではなく、現実を確かめるための言葉だった。

 

 摩央は、ゆっくりと辺りを見回す。

 

「……でも。

 “ゼロ”なら……作れるよ」

 

「え……?」

 

 かのんが振り返る。

 

 摩央は、壊れたステージの柱を拾い上げた。

 

「私たちはね、

 最初から何でも揃ってたわけじゃない。

 島のライブだって……

 全部手作りだった」

 

 悠奈が小さく笑って頷く。

 

「音響も、照明も……

 自分たちで運んで、組んで……

 失敗も、いっぱいして……」

 

 すみれが腕を組む。

 

「……ふーん。

 つまり、プロの“ステージ作り”ってわけ?」

 

「そういうこと!」

 

 摩央が少しだけ、いつもの明るさを取り戻した笑顔を見せた。

 その時、可可が瓦礫の中にしゃがみ込んだ。

 

「この板……まだ、使えるデス」

 

「え?」

 

 可可は、割れていない床板を叩く。

 

「少し、ヒビあるけど……

 乗るだけなら、大丈夫デス!」

 

 かのんの目が、ぱっと輝く。

 

「……ほんとだ。

 全部壊れてるわけじゃない……!」

 

 ヒロトは、黙ったまま周囲を見渡し──

 倒れた照明スタンド、折れた鉄骨、流木。

 

(……“ゼロ”じゃない。

 まだ……残ってる)

 

 彼は、ふっと息を吐き、前に出た。

 

「……俺も、手伝う」

 

「ヒロトくん……?」

 

「歌う場所を作るくらい……

 怪獣に比べたら、よっぽど……」

 

 言葉を濁しながら、瓦礫を持ち上げる。

 その動きはぎこちないが、確かだった。

 

 ──こうして、即席ステージ作りが始まった。

 

 割れた木材を選り分ける。

 使えるもの、使えないもの。

 長さを揃え、石で支え、ロープ代わりに布を結ぶ。

 

「そこ、もう少し右デス!」

「はいはい、指示が細かいわね!」

 

 すみれが文句を言いながらも、きっちり作業を進める。

 かのんは、床板の上に立って確認する。

 

「……凄い……

 立てる。歌える……!」

 

 悠奈は、壊れたスピーカーの残骸を見つめて、首を振った。

 

「音は……地声だけだね」

 

 摩央は即答した。

 

「それでいい。

 むしろ──それがいい」

 

「え?」

 

「島の人たちに届くのは、

 機械の音じゃなくて……

 “生きてる声”だから」

 

「そういう事ならみんなに手伝ってもらおう! 

 軽音部に掛け合ってみる!」

 

 その言葉に、同意した悠奈は、一目散に学校の方へ向かって駆け出した。

 その会話を聞いたかのんは胸が熱くなる。

 

(……誰かを想う気持ち

 人と人が結び奏でる歌……)

 

 やがて──

 完璧とは程遠い、小さなステージが出来上がった。

 

 照明もない。

 幕もない。

 

 けれど──

 

 ゼロから作った、“歌うための場所”。

 かのんは、ステージの端に立ち、深く息を吸った。

 

「……ここが、私たちのステージだね」

 

 すみれが、ふっと笑う。

 

「悪くないじゃない。

 ……瓦礫の上にしては、ね」

 

 可可は、満面の笑みで両手を広げた。

 

「完成デス! 

 ゼロから──

 ちゃんと、始まったデス!」

 

 その瞬間、

 遠くで、誰かの足音が聞こえた。

 

 振り返ると──

 瓦礫の向こうに、怯えながらもこちらを見つめる島民たちの姿があった。

 小さなステージに、

 小さな希望が──

 静かに、集まり始めていた。




いかがでしたか?
壊れたステージを立て直す話でした。

歌もそうですが、人が生きてる中で一人で完結出来る生活なんてないですよね
自分たちが使ってる衣食住だって誰の手によって生まれている
生きるとは繋がることなんだと思います
そんな事を作品に落とし込めたらいいなと思います
これからも応援よろしくお願いします

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。