ニュース見てたら「アイドル部」なるものを作るみたいで
学校でアイドルが本格的になりそうですね(*ˊᵕˋ*)
いずれ、アイドルの甲子園とかも出てくるのだろうか……
さて、今回は少し長めになってます
気軽にどうぞ(^ω^)_凵
──朝の通学路。
空は澄み渡り、東京湾から吹く風が散る桜と共に制服のスカートをふわりと揺らしていた。
昨日、歌うと決意したかのんは、登校して早速可可とどんなライブにするか話し合おうと考えていた。
けれど、結ヶ丘女子高等学校の正門前では、いつもより騒がしい声が響いていた。
その中心に立つ三人の姿──険しい空気が漂っている。
「スクールアイドルは、必要ありません!」
その声の主、葉月恋。
整った姿勢と冷たい瞳が、まるで音楽そのものに線を引くようだった。
彼女の前で、唐可可が必死に反論する。
「でも! スクールアイドルは……みんなを元気にできるデス!」
その声は拙くも、真っすぐだった。
けれど恋は静かにため息をつく。
「理想だけでは、学校は動きません。結ヶ丘の名を軽々しく使って欲しくはありません」
その言葉に、周囲の空気が重く沈む。
可可は唇を噛み、視線を落とした。
その瞬間、二人の間にかのんが一歩踏み出した。
「──可可ちゃんは、間違ってないよ」
その声に、全員が振り向く。
かのんは可可の肩にそっと手を置き、まっすぐ恋を見つめた。
「歌で誰かを元気にしたいって気持ちは……結ヶ丘の理念、“音楽で結び未来を開く”と同じだよ。
だから、可可ちゃんの想いを否定しないで」
その言葉に周囲がどよめく。
普通科の生徒が音楽科の葉月恋に意見するなど、前代未聞だった。
しかし、かのんは怯まなかった。
恋の瞳が一瞬揺れ、沈黙が落ちる。
そのとき──
「面白いわね」
穏やかな声が割って入った。
理事長が現れ、微笑みを浮かべながら三人の前に立つ。
「あなたたちが目指す“スクールアイドル”。もし本気なら、一つ提案をさせてください」
「提案……ですか?」とかのんが尋ねると、理事長は静かに頷いた。
「今度、この地区で“スクールアイドル・フェス”という合同イベントが開催されます。
もし、そこで1位を取れたら──理事長権限でスクールアイドル部の設立を認めましょう」
「本当デスか!?」
可可の瞳が一気に輝く。
恋は驚いた表情を見せたが、理事長の真剣な眼差しに何も言えなかった。
可可は拳を握り、声を上げる。
「やるデス! 絶対、1位になるデス!」
その勢いに場の空気が和らぐが、かのんの胸にはわずかな不安が残っていた。
多くの人が集まるフェス。
人前に立つだけで声が震える自分が、果たして歌えるのだろうか──。
(……大丈夫、きっと)
そう自分に言い聞かせながらも、胸の奥は重かった。
⸻
夕陽が傾き始めた放課後。
学校から少し離れた公園の一角で、かのんは袖をまくり、エプロン姿でたこ焼きを焼いていた。
目の前には業務用の鉄板。どう見ても歌の練習ではない。
「可可ちゃん……ほんとにこれで歌えるようになるの?」
「大丈夫、人前慣れるデス!」
千砂都が笑いながら手を振る。
「これは修行だよ、かのんちゃん! “おいしい笑顔を届ける練習”ってことで!」
「う、うん……そういうことにしておくね」
次々と訪れるお客さんに愛想笑いをしながら、かのんはたこ焼きを焼く。
油が弾けて小さな悲鳴を上げながらも、必死に笑顔を作る。
「──熱っ!」
それでも、声はどこか震えていた。
いつものように、喉が固くなる。
結局、笑顔を浮かべるだけで一言も大きな声を出せないまま営業が終わった。
「だぁ〜疲れた……」
「結局、歌えなかったデス……」
「次、行ってみよう!」
今度はショッピングモール。服屋で撮影会。
千砂都がカメラを構え、可可がポーズを取る。
「かのんちゃん、もっと笑って〜!」
「む、無理ぃっ!」
レンズを向けられた瞬間、顔が真っ赤になって逃げ出してしまう。
可可と千砂都は苦笑しつつも、何度もチャレンジを続けた。
そして最後に、公園の小さなステージで模擬ライブ。
だが、かのんの声はまたしても出なかった。
「……ごめん、また……出なかった」
その声は震え、か細かった。
そのとき、背後から冷たい声が落ちる。
「もうやめなさい。醜態を晒して、結ヶ丘の品位を落とすだけです」
葉月恋だった。
腕を組み、冷たい表情のまま三人を見下ろす。
「夢を語るのは自由。でも努力が結果に結びつかないのなら──それはただの自己満足です」
かのんは唇を噛み、拳を握りしめた。
悔しくて、情けなくて、涙がこぼれそうになる。
そんなかのんの前に、可可が一歩出た。
「葉月さん! それは言い過ぎデス!」
「そうだよ、かのんちゃん頑張ってるじゃん!」千砂都も叫ぶ。
けれど恋は、微動だにせず冷たく返す。
「事実を言ったまでです」
その言葉が胸を刺す。
けれど、かのんは静かに二人の肩を押さえ、前へ出た。
「……いいの、可可ちゃん。ちーちゃんも」
そして、恋を真っすぐに見つめた。
「──それでも、私は歌いたい」
恋の目が揺れる。
「何のために?」
「誰かを笑顔にしたいから。怖くても……その気持ちだけは、絶対に諦めたくないの」
その言葉に、恋は息を呑み、静かにその場を去った。
⸻
夜。
ひとり、ベンチに座っていたかのん。
手に残る冷たい風。今日一日の失敗が脳裏をよぎる。
「……また、歌えなかった」
自嘲のような呟きがこぼれたそのとき、足音が近づく。
「──澁谷さん?」
振り向くと、ヒロトが立っていた。
彼は穏やかに笑い、隣に腰を下ろす。
「泣いてるの?」
「泣いてないよ……風が冷たいだけ」
かのんは無理に笑った。
ヒロトは夜空を見上げながら、静かに言った。
「澁谷さんって、ひとりで全部抱え込もうとするよね」
「え……?」
「人はね、独りじゃ輝けない。
誰かと出会って、想いを交わして、繋がるから光になるんだ。
星が一つじゃ夜を照らせないように、君の歌も誰かと結んでこそ輝く」
その言葉に、かのんの頬を涙が伝う。
「……でも、私、迷惑ばかりで……」
「迷惑なんかじゃない。君の歌を聴きたい人がいる。あの可可も、もちろん俺も」
ヒロトは優しく笑う。
その笑顔が、かのんの心を解いていく。
かのんは涙を拭き、立ち上がる。
「ありがとう、天城くん」
夜風を切って、再び走り出した。
向かう先は、可可のもと。
公園のステージ。
そこでは、ひとり可可が汗を流しながら練習を続けていた。
息を荒げ、倒れそうになりながらもステップを踏む姿。
「可可ちゃん!」
かのんの声に、可可が顔を上げた。
「かのんさん!? どうしたデスか!?」
かのんは息を切らしながらも、真っ直ぐ可可を見つめる。
「私、歌いたい! 可可ちゃんと一緒にスクールアイドルやりたい!
歌えなくて迷惑かけるかもしれないけど……それでも──!」
夜の光が、二人を包む。
可可の瞳が潤み、かのんを抱きしめた。
「可可は、最初からずっと……かのんさんと一緒にスクールアイドルがしたいデス。
一緒のステージに立てるだけで、もう幸せデス!」
「……可可ちゃん……」
「たとえ1位を取れなくても、かのんさんは可可の中で本物のスクールアイドルデス!
尊敬してるデスよ!」
「──ありがとう、可可ちゃん」
涙を拭い、かのんは微笑んだ。
そして、可可の手を取る。
「それと──これからはもう“かのん”って呼んで欲しいな」
「……はい、かのん!」
夜風が優しく吹き抜けた。
遠くから、ヒロトが静かに見守る。
手の中のスパークレンスが淡く光った。
(これで一旦は大丈夫そうだな……)
──だが、その光は次なる試練の予兆でもあった。
如何でしたか?
今回は、かのんの揺らぐ気持ちなどを表現したヒューマンドラマみたいなお話になりました
誰だって悩んだり迷ったりすることもあるけど、かのんみたい仲間がいると全然違いますよね