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では、本編どうぞ
澁谷かのんが唐可可とスクールアイドルをやると決意してから数日が経った。
授業中、体育館の床、そして校舎の窓ガラスがかすかに震えるたびに、生徒たちは不安そうに顔を見合わせる。
テレビでは「小規模な群発地震」と報じられていたが、天城ヒロトは、それをただの自然現象だとは思えなかった。
ポケットの中で、金色に輝くスパークレンスが微かに熱を帯びている。
まるで“何か”が目覚めようとしているように──胸の奥に不穏なざわめきが残った。
⸻
「ワン、ツー、スリー、フォー!」
「可可ちゃん、ワンテンポ遅れてるよ!」
「は、はい……!」
昼下がりの結ヶ丘中庭。
フェス本番を控え、澁谷かのんと唐可可、そして嵐千砂都の三人が汗を光らせながらダンス練習を続けていた。
千砂都は動きを確認しながら、間違いを的確に指摘する。
その姿はまるでプロの講師のようだ。
かのんの動きも、日を追うごとに洗練されていく。
真剣な眼差しと息の合ったステップ。
その姿を見守っていたヒロトは、水のボトルを持ちながら小さく呟いた。
(……この調子なら、きっと大丈夫だ)
あの日以来、ヒロトは彼女たちのサポート役として、マネージャーのように動いていた。
裏方ではあるが、彼にとっては何よりも誇らしい時間だった。
「──はい、天城くん来たから少し休憩にしようか」
千砂都の声に、練習は一旦中断される。
地面にへたり込む可可。
かのんは息を整えながら、ヒロトからボトルを受け取ると豪快に水を飲んだ。
「ありがと、天城くん!」
「気にしないで。それより、順調そうだな」
「うん! ちーちゃんのおかげで、だいぶ上達したんだ!」
かのんがそう言って笑顔で踊りの一節を見せる。
その瞳は、もう“歌うことを怖がっていた少女”ではなかった。
──人は、誰かと結び合うことで輝ける。
ヒロトは、あの夜に見た星空の下の彼女を思い出しながら、静かにその光を見つめていた。
⸻
そして──月日は流れ、ライブ当日。
春の夜風が少し冷たく、空には三日月が浮かんでいた。
特設会場には無数の観客が集まり、ライトの光が街を照らしている。
控え室の中。
かのんは手を握りしめて震えていた。
「かのん……手、震えてるデス」
「う、うん……やっぱり、緊張するね……」
「大丈夫デス! たくさん練習したデス! きっと大丈夫デス!」
その言葉に、かのんは微笑む。
胸の鼓動は早い。でも、その隣には可可の笑顔がある。
それだけで、不思議と勇気が湧いてきた。
遠くから、前の出場チームの歓声が聞こえてくる。
次は自分たちの番──
ライトが揺れ、風がカーテンを揺らした、その瞬間だった。
⸻
咆哮。
地鳴りと共に、ゴルザの巨体が地面を割って現れた。
黒い装甲のような皮膚が鈍く光を反射し、全身を震わせるたびに大気が唸る。
その巨腕が振るわれるたびに、衝撃波が吹き荒れ、フェス会場のテントや照明塔が次々と吹き飛んでいった。
その上空を、月を背にして旋回する影。
翼が月光を弾き、甲高い金切り音を響かせながら舞い降りる──メルバ。
鋭い嘴から光弾を放ち、逃げ惑う観客の群れの先で爆炎が上がる。
熱風が吹き抜け、夜空に黒煙が渦を巻いた。
会場は一瞬で地獄と化した。
「──可可ちゃん! 大丈夫?」
瓦礫に身を隠していたかのんが顔を出して可可を探す様に辺りを見回す。
「かのん──私は大丈夫ですが……衣装が」
そう言ってお互い衣装を見る。
所々、破れなどが目立っていた純白の衣装は、粉塵を纏い黒く汚されていた。
「──人もいなくなってしまいました」
可可の言葉を聞いてかのんが観客席の方を見る。
光の海みたいになっていた観客席も今や暗闇に覆われたかの様に人一人も居なくなってしまった。
「このままじゃ──ライブが出来ない」
その様子を見て落ち込むかのん達を尻目に遠く離れたビルの屋上に立つヒロト。地獄とかした街並みを見つめていた。
胸ポケットの中──スパークレンスが、まるで鼓動するように熱を帯びていた。
「……やっぱり、来たか」
彼は小さく息を吐き、夜空を仰ぐ。
月の向こう、ゆらめく残光の奥に、“何か”が自分を呼んでいる。
ヒロトはポケットからスパークレンスを取り出した。
「逃げるわけには、いかない……!」
その瞬間、
スパークレンスを掲げた腕を中心に光が溢れ、周囲の景色が白一色に染まる。
──天へ昇る光柱。
それは夜を切り裂く閃光の槍となり、街全体を照らし出した。
⸻
白光の中から、静かにその姿が現れる。
銀と赤、そして紫の体色。
黄金に輝く両眼。
まるで神話の守護者が時を越えて蘇ったかのように──ウルトラマンティガが立っていた。
ティガはゆっくりと構えを取る。
ゴルザの視線が赤く光り、低く唸るような咆哮を上げた。
瞬間、地面を割って突進する。
ティガもそれに呼応するように地を蹴った。
巨人と怪獣、二つの質量がぶつかった瞬間、夜空を震わせるほどの衝撃波が走る。
ゴルザの拳がティガの胸を打ち、ティガもその顎を右ストレートで返す。
衝撃でゴルザの牙が砕け、唾液のような粘液が飛び散る。
しかし、背後から迫る影──メルバ。
翼の一撃がティガの背を裂いた。
火花が散り、ティガは一瞬ひざをつく。
その隙を逃さず、ゴルザの尻尾が振り抜かれる。
重く鈍い音。ティガの身体がビルの壁に叩きつけられ、コンクリートが崩壊する。
瓦礫が降り注ぐ中、ティガは腕をつきながらゆっくりと立ち上がった。
「……まだ、終わらせない!」
ティガは低く構え、腕を交差してほどく。
その体色が赤から青紫へと変わり、鋭いフォルムへと変化していく。
スカイタイプ──スピードと空戦に特化した形態。
夜空へと飛翔するティガ。
青い残光を引きながら、一直線にメルバへ突進した。
メルバが翼をはためかせて上昇、ティガがそれを追う。
空中で二体が交差するたび、鋭い閃光が走る。
まるで金属同士が擦れ合うような轟音、火花、衝撃波。
その攻防は、まるで稲妻が踊るようだった。
メルバが光弾を放つ。
ティガは急降下でかわし、背後へ回り込むと、両手を広げて集めたエネルギーを右手に集中させて光の光弾を放つ。
──ランバルト光弾。
光弾がメルバの左翼を貫く。
怪鳥が悲鳴を上げ、バランスを崩して墜落した。
ティガが追撃。
降下の勢いそのままに、踵落としがメルバの胸を直撃。
爆炎が夜空を裂き、街を真昼のように照らした。
⸻
地上では、ゴルザが再び吠える。
爆炎の中からティガが姿を現し、今度は赤く輝く光に包まれた。
パワータイプ。
腕部の装甲が厚くなり、全身から熱気が立ち上る。
ゴルザが両腕を振り上げて突進。
ティガはそれを受け止め、拳と拳が衝突する。
爆音。地面が陥没する。
ティガが押し負けず、逆にゴルザを押し返す。
渾身のアッパーが怪獣の顎を打ち上げ、巨体がよろめく。
しかしゴルザも反撃。尾を薙ぎ払ってティガを吹き飛ばす。
ビルの外壁を突き破り、瓦礫の中に倒れ込むティガ。
胸のカラータイマーが青から赤へ変わり点滅を始めた。
そのとき──。
遠くから、微かな歌声が風に乗って届いた。
⸻
♪ ──駆け抜けるシューティングスター!
追いかけ星になる〜
煌めけ〜 ♪
かのんと可可の歌声。
震える夜空に、小さな光が一つ、また一つと瞬く。
その光は、少女たちの“想い”が形になったかのように、ティガの全身へと流れ込んでいった。
「……これが、人の……光……」
ティガの身体から淡い輝きが溢れ出す。
夜空を切り裂くように立ち上がり、接近してきたゴルザへ渾身の一撃を入れて最後の構えを取る。
両腕をクロス。
そして、解き放つ。
光が集まる。
「──ゼペリオン光線ッ!!」
L字に組まれた腕から放たれる白金の閃光。
それは街を包み、夜を越えて天まで届くような眩さを放った。
光線がゴルザの胸を貫き、爆炎が夜を照らす。
その衝撃で崩れたビルの影が、まるでスポットライトのように二人の少女を照らした。
ティガは静かにゴルザの爆煙を見届け、空を仰ぐ。
遠くから響く歌声に合わせるように、微かに頷いた。
そして、光となって空へ溶けていった。
⸻
瓦礫の上に並んで座るかのんと可可。
焦げた匂い、壊れた街。
それでも夜空には無数の星が瞬いている。
「……歌えたね」
「はい……歌えました!」
二人の頬を伝う涙が、月光に照らされて煌めく。
かのんはそっと空を見上げた。
──小さな私たちの歌を誰かが受け取ってくれたなら良いな。
少女たちの歌と巨人の光。
その共鳴が、この夜、確かに世界を照らしていた。
如何でしたか?
今回は、戦闘シーン多めに書きました。
次回にかのん目線で戦闘中何が起こったのか描ければいいなと思います。
次回もよろしくお願いします。