デビルサマナー葛葉ライドウ 対 神魔狩りのツクヨミ   作:木下望太郎

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序  悪魔を駆る者、神魔を狩る者と相対す

 

 個を捨て、己を捨て、帝都と世を護るため、ただ一振りの研ぎ澄まされた刀となる――それが悪魔召喚師(デビルサマナー)、十四代目葛葉ライドウの在り方だった。

 だが。揺らぐはずのない己が、捨てたはずの自己が。目の前の光景に、ほんのわずか――いや、確かに動揺していた。

 

 目の前の敵――ライドウとそう変わらない齢格好、体にぴたりと合った黒いジャケットを着込み、奇妙な黒い仮面をかぶった男――が真っ直ぐにライドウを指差す。

(みだ)りに神魔(じんま)を使い、世を乱す悪党め……その愚行、この十六夜月(いざよいづき)が止めてみせる」

 

 男の手にした(ふだ)――霊符や護符の類というより、西洋かるた(トランプ)のカードのような形――が白く、月光に似た清澄な光を帯び出した。

 

 ライドウの傍らでゴウト――黒猫の姿をした従者であり先達者――が声を上げる。

「いかん、来るぞ! こちらも悪魔を――」

 

 返事はせず、ライドウは黒いマントの内側、学生服の胸元へと手を伸ばした。そこに吊るしたホルダーから一本の管を抜き出す。ライドウの魔力を感知したそれは緑の光をこぼしながら、ねじ式のふたをひとりでに開いていく。

 管から溢れた、緑の光が放たれる。

「悪魔召喚……『ガシャドクロ』!」

 

 同時、十六夜月(いざよいづき)と名乗った男の手から、白い光を帯びた札が放たれる。

神魔顕現(じんまけんげん)……『がしゃどくろ』!」

 

 ライドウの持つ管から走った緑の光は、やがて骸骨の形を取る。人間の全身骨格、ただし恐竜の骨格模型のように巨大な姿。ガシャドクロは牙を剥き、刃物のような爪を敵へと振るった。

 

 十六夜月(いざよいづき)の札から(ほとばし)った白い光は、やがて骸骨の形を取る。ただし全身骨格ではなく、岩のように巨大な頭蓋骨(ずがいこつ)。その頭にはまるで腫瘍(しゅよう)のように、人並の大きさの頭骨(とうこつ)がいくつもいくつもついていた。

 がしゃどくろは自らとそれら頭骨の、眼窩(がんか)という眼窩(がんか)から紫の光を漏らしつつ、激しく転がりガシャドクロへと打ち当たる。

 

 二体の巨大な髑髏(どくろ)は互いの体を打ち砕き、白い骨片へと散り。やがてそれぞれ、緑と白の光となってかき消えた。

 

 ゴウトが声を上げる。

「何だと……! バカな、あのような悪魔見たこともない……同じ名の、見知らぬ悪魔だと……?」

 

 十六夜月(いざよいづき)の傍らで、桃色の髪をした女学生が声を上げる。

「何あれ……! 見たこともない神魔だよ、気をつけて! いざよいくん!」

 

 ライドウはマントの裾をさばき、手にしていた刀を構え直した。

「何者だ……君は」

 

 十六夜月(いざよいづき)と名乗った男は、奇妙な仮面の奥で――目元のみが開いており、よく見れば鳥居を図案化したような意匠が大きく全体に施されている――ライドウを見据えた。

 背筋を伸ばした男はマントを(ひるがえ)した。新たな札を掲げ、油断無く身構える。齢若い声が凛と響いた。

 

「俺は十六夜月(いざよいづき)のツクヨミ。人に仇なす神魔(じんま)を狩り、国家とこの世の安寧を護る者。人呼んで――神魔(じんま)狩りのツクヨミ」

 

 

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