デビルサマナー葛葉ライドウ 対 神魔狩りのツクヨミ 作:木下望太郎
満月のツクヨミ。
助けに来てくれたというなら、これ以上なく心強い存在だった。だが、そもそもどうしてここに? 妙な気配を感じて来たと言ったが、組織の許可なく持ち出すことのできない、神宝の面と神魔札を持って?
天井に開いた穴から、満月の
「運が良かったね、
むつは、は? とでも言いたげに口を開け、思い切り顔をしかめてみせた。
満月が準備運動をするように指を握っては開きつつ、ライドウを見据える。
「俺はあのライドウとかいう奴をやる、お前は神魔どもの相手をしてろ。倒す必要はない、足止めして弱らせてくれりゃあいい。そんで、俺の方もライドウを痛めつけたら、トドメはお前に任せてやるよ」
近寄り、ぽん、と肩を叩いてくる。
「カワイイ後輩へのプレゼントだ、首謀者を討つ手柄をくれてやる。ただし確実に殺せ、命乞いのたわ言には耳を貸すな。後は、他の雑魚どもの始末は俺に任せろ」
だが、ライドウもすでに新たな神魔を
「悪魔召喚、『ジャックフロスト』!」
ヒホホー、と甲高い声を上げて飛び出たのは、青い帽子をかぶった雪だるま。それが降らせた氷雪が、ライドウの体と周囲の炎上を消し止める。
一方、土偶の姿をした神魔も回りの神魔らに助けを求めていた。
「んごぉおおおてめええらああ! 何とかしろおおお!」
人形のように傍観していた六体のうち一体、三つ首の大
その光景に違和感を覚え、
だが、その感覚を頭の中で言葉にするより早く、土偶が向かってきた。
「てめえええらあああ! 何だか知らねええがぅおれ様のテキかああ!? カツかあああ!? ビフテキ派かビーフカツ派かはっきりしろこらああああっっ!」
「くっ!」
とにかく、今は満月の指示に従う。満月はライドウとの戦いに専念してもらい、自分は神魔たちを相手にする。
札から現出させた英雄『フィン・マックール』の槍が防御の構えを取り、土偶の突進を受け止めた。
満月は手にした複数の札を放つ。
「行け、ポチコロ、ワンスケ、タマサブロー! 俺の忠犬『
札から飛び出たのはころころと丸みを帯びた、三体の犬――の置物が動き出したようなもの――。小型犬のような声で何度も鳴きながら、ライドウ目がけて走りくる。
「く……?」
その愛らしさに虚を突かれたか、ライドウの動きが一瞬止まったが。刀の横腹を振るい当て、三体まとめて薙ぎ払った。
傍らの黒猫が口を開く。
「ライドウ、あやつらはやる気だ! 今は戦闘に専念せよ、対話を試みるのはこの場を切り抜けてからだ!」
「……了解した」
ライドウは表情なくうなずき、刀を構え直す。満月へと跳び込みざま刃を振るった。
「オイオイ……勇ましいのは結構だがな。その程度で抜けると思ったか?」
満月の体に打ち当たる寸前、刃は鋭い牙に咬み止められていた。六つの口の牙――三つ首の屈強なシェパード犬、二体の『ケルベロス』によって。
満月は喉で、クク、と笑い、次の札に手をやる。
「さあて、こいつで終わり――」
そのときにはすでに。ライドウは咬み取られたままの刀を手放し、大きく跳び退いていた。
「悪魔召喚。
抜き放つ管から溢れた緑の光が実体を取る。それは屈強を越えた屈強、ぎちり、と
「何ぃ……!」
満月がつぶやきを漏らし、二体の――三つ首犬の――ケルベロスが、驚愕したように口を開け。くわえていた刀が床に落ちた。
ライドウは自らの獅子に命じた。
「ケルベロス。【
背を丸め、大きく息を溜めた一拍後。獅子の口から吹き出す炎の気流が、覆いかぶさるように満月を襲った。
「ぐおおおっ!?」
どうにか横へと跳び、難を逃れた満月だったが。二体の犬が身を呈して炎を食い止めてくれなければ、間に合わなかった。
「アーノルド……シルベスター! よくも貴様、俺の犬たちを……!」
黒い煤と化して漂い、札へと還ったケルベロスたちの名を呼び、満月は拳を震わせた。
ライドウは首を横に振る。
「もう、よすんだ。これ以上争う必要はないはず、当方は対話を希望する」
傍らでは獅子が鋭い爪の伸びる足で床を踏み締め、いつでも跳びかかれる体勢を保っている。
満月は喉の奥で
「後悔するぜ……この俺を本気にさせたことをな……!」