デビルサマナー葛葉ライドウ 対 神魔狩りのツクヨミ 作:木下望太郎
満月とライドウの攻防を横目に、
瀬戸大将の体にひびが走り、半ば砕けて膝をついたが。完全に防御された土偶は跳ね返るように飛び、距離を取った。
「ぐぐぐううううっっ……ぅおのれえええっっ!」
土偶は怒ったように体を震わせ、近くで佇む六体の神魔に目を向けた。
「てめええらああ! 命ずる、ぅあの
「御意のままに」
六体の神魔の目が光り、
――やはり、おかしい。
今まで、ライドウと呼ばれた男が神魔たちを
だが、先ほどライドウと土偶が、満月の放った炎に巻かれたとき。ライドウは新たな神魔を
明らかにおかしい。土偶と六体の神魔がライドウの管理下にあるものなら、まずライドウの炎を消そうとするのではないか。
それが、六体の神魔は土偶に命じられるまで何もせず、命じられた後も土偶の炎だけを消していた。一方ライドウの方も、近くにいた神魔たちに命令することなく、わざわざ別の神魔を
そして今も、ライドウは土偶や六体の神魔に加勢を求めることもない。逆に、土偶は六体に命じ、自分の味方をさせようとしている。
つまり。六体の神魔はライドウではなく、土偶の方に仕えている。日本の土偶と西洋の悪魔になぜ主従関係があるのかは不明だが。
不明といえば何より、土偶とライドウの関係性が分からない。自分を召喚したご主人サマだと土偶は言っていたが、そのくせライドウを気づかう様子もない。果たしてどこまで真に受けたものか。
じりじりと迫る六体の敵を前に、新たな神魔を複数展開させつつ。ライドウの方を向いて
「ライドウ! と呼んでいいか、話がある!」
ライドウが
「説明してくれ、この土偶たちと君はどういう関係にある! 君の目的は何だ、この土偶たちは何だ! いや、そもそも……何者だ、君は」
ライドウは変わらず硬質な表情でいたが。口の端を、わずかに緩めた。
「感謝する。自分は
そこでなぜか視線を逸らせ、学帽を目深にかぶる。
「君の言い方に
満月が両手の指をわななかせ、ちいぃっ、と後を引くように舌打ちをする。
「何やってるド新人! そいつのたわ言に耳を貸すなと言ったろうがっ! もういい、俺様がきっちり見せてやるよ……正義の力って奴をなぁ!」
満月が放った札は
「その手は既に――」
炎に包まれつつも、ライドウは傍らの、雪だるまのような神魔に指示を出そうとしたようだが。
それより早く、満月は次の手札を繰り出していた。
「創成神魔札! 煽れ、『イシュタル』! 『オルクス』!」
女神が杖から放つ光が、怪人が放つ黒い波動が、ライドウと神魔らを薙ぎ払う。
その勢いをこらえ切れず倒れ込むライドウ。と、同時。
「ぐああっ!?」
ライドウを包んでいた炎が、音を立てて激しく燃え盛る。ライドウの背丈を越えるほど、さらにはそれを倍して天井へ炎が届くほど。
炎の煽りを受けた雪だるまの神魔が、ヒホホ~、と悲鳴を上げて溶け去った。
満月は得意げに炎を指差す。
「俺のイシュタルとオルクスは煽り上手でな、火勢を瞬時に倍化させる。いい感じに焦げ目がついたらお次はこいつだ、千早に千草、千歳、千尋!」
ばらばらと床に落とした四枚の札、そこから次々と猫が現れた。錆び色混じりのキジトラ、茶トラにサバトラ、黒と、毛色も様々な猫はいずれも二本の尾を揺らしていた。頭に五徳――鉄の三脚台――をかぶった『五徳猫』。
猫たちは鳴き声を上げながら二足で立ち、腹のポケットのような所に前足を突っ込み。どうやって入れていたのか、自分の体ほどもある花火玉――一尺玉というのか――を取り出した。
そして、未だライドウを呑み込む炎に向かって。ボウリングのように、花火玉を転がした。
「ぐうう……!」
炎の只中でもがきつつ、ライドウが懐に手をやる。神魔を封じているらしい管を手に取ると思えたが。
抜き出したのは、一丁の
「何!?」
目を剥いた満月が的から外れるべく横へ飛び、床を転がる。
ライドウが連続で引き金を引いた。その弾丸の標的となったのは、満月でも五徳猫でも、転がりくる花火玉でもなく。
体のいずれかに銃弾を受けた悪魔らはよろめき、その隙に
そして、炎に触れた花火玉は次々と引火、爆発し。建物を揺るがす轟音と共に、ライドウは爆炎に呑み込まれた。