デビルサマナー葛葉ライドウ 対 神魔狩りのツクヨミ 作:木下望太郎
――一方、その少し後。
夕暮れの山上展望台、むつから突然連絡を受け、待ち合わせることとなったその場所で。
「むつ、先に言っておく。……すまない、君の気持ちに応えることはできない」
「え……」
彼のパートナーたる
その目をとても見ていられず、
「本当にすまない、だが今後世の安寧を護る身として、男女のことに
「ぶ……っはは! ははは、え、何、え~? いやもしかして、わたしが? 告白するとか思ってたワケ? そのために呼び出したって? いざよいくん相手に~? はは、あっははは!」
手を叩き、身を折り曲げて、制服のスカートからのぞくひざを何度も叩き。ピンクに染めた髪を震わせながらひとしきり笑った後。
「キっモ」
言葉を失って固まる
「いやいや、そりゃあさ? ここ夜景スポットではあるけどさ、まだ夕方だしね? 突然山の上呼び出して告白とか、無いって思わないかなあ? ていうか、そうだ――」
不意に表情を消し、気をつけの姿勢を取る。
「ごめんなさい。気持ちは嬉しいけど、いざよいくんの想いに応えることはできないから。ちょっとムリだから」
「ちょ……ちょっと待て!?」
固まっていた体を無理やり動かし、
「待て、何だよこれ! 何で俺の方が振られたみたいになってるんだよ!? そんなつもりじゃ、ただ俺は今後っ、ツクヨミとして戦うことになるはずだしっ、その、ツクヨミと! パートナーとして! 間違いがないようはっきりとけじめを――」
激しく身振り手振りをしながら熱弁する
「はいはい、きみがマジメなのは分かってるよ。それにしたってここまでワケ分かんないこと言うとは思わなかったけどねー」
首をかしげ、
「いざよいくんは心が童貞なんだね。ヤバみ~」
「どどっ――」
息を詰まらせた
「――って、そういうことを女子が口にするんじゃあない! ……大体何だ、急に呼び出したり。初任務の指令もまだ下ってはいないはずだろう」
「それね。ま、仕事関係っちゃ仕事関係なんだよ? はいこれ」
悪びれもせず、むつは足下に置いた大荷物を手にする。キャリーケースから取り出してみせたのは、
「な……っ」
またも一瞬固まった後、
「何を、何で持ち出したこんな物! だいたい君はっ、任務でもないのにっ、神の力を宿した面を許可も無く――」
「まーまーまー、言ったじゃん仕事関係っちゃ仕事関係だって。カワイイいざよいくんへ、むつおねーさんからの心づかいだよ」
さほど分厚くもない自分の胸を、むつは拳で、どん、と叩く。
「ちゃんと許可もあるんだから。本人と最終メンテしとく、って持ち出したんだよ。
「おねーさんって……君の方が半年早生まれなだけだろ」
ふふん、と、むつは息をついて笑う。
「おねーさんの言うことは聞いときなさいって。さもなきゃ多分初任務の真っ最中にビビって、もう一回戦い方のおさらいするハメになるよ?」
「なるかっ!」
「いやなるって」
「ならない!」
「じゃあ賭ける? 負けた方のおごりでモス食べ放題ね」
「いいだろう」
深く息をついた後、
「話はまあ分かったが。訓練だとしても人目を避ける必要がある、組織の施設内で良かっただろう。なぜこんな所で待ち合わせを――」
むつは自分のスマートフォンを操作し、ネットの画面を
むつは、に、と歯を見せて笑う。
「実戦で訓練、やっといた方がいいでしょ? 幽霊が実際出るんならツクヨミ様の力で
「分かったよ。……ありがとう、むつ」
ちゃんと聞いているのかどうか、むつは不意に手を打った。
「あ! そっか、アレかぁ! いざよいくんが告白とか何とか思ったのってさぁ」
にんまりと微笑む。
「アレ覚えてたんだよね? 幼稚園の頃さ、大きくなったら結婚しようって言ってくれたの」
むつとは幼なじみだった。小学校の低学年に、親の仕事の都合で
武内家は神代の昔からツクヨミの組織を支える名家。一方十六夜月の家はツクヨミに関わる神社の傍系であり、組織にとっては末端の事務方でしかなかった。引越しも仕事の都合、組織の都合だ。
高校に入ってクラスメートとしてむつと再会するとは思わなかったし、ましてや自分が
思い切り顔を背ける。
「そんなわけ、だいたい昔言ったのはそっちだろう! 大きくなったらお嫁さんに――」
そこで無理に言葉を切り、何度も大きく咳払いする。意識して表情を消した。
「――それより。訓練なら早く始めよう、面と装束をくれ」
むつがツクヨミの仮面と、装束一式の入ったキャリーケースをよこす。
公衆トイレにでも入って着替えようと――幼い日にテレビで見て憧れた変身ヒーローとは違い、いささか間抜けなことにツクヨミの変身方法は着替えて仮面をかぶるだけだ――、
あっ、とむつが声を漏らした。
「今度は何だ」
小さく口を開けて黙った後、むつは歯を見せて笑った。
「どーでもいいんだけどさ。エロかったよ今の、いざよいくんがネクタイ緩めるとこ」
「……知るか」
「次、誰かに告るときはさ。ネクタイ緩めながらしたらいーよ」
「だからっ、俺が告白したみたいな言い方を……!」