デビルサマナー葛葉ライドウ 対 神魔狩りのツクヨミ 作:木下望太郎
事前に見つけていた、
この場所にたどり着くまでに何度か
登美のり子が指輪の力で
あらかじめ見つけておいた、床の崩れた――階下の天井の崩れた――穴。その前に並んでしゃがみ込み、満月といつは下の部屋をのぞいていた。
満月が小声で言う。
「儀式の前に、特別な装束にお着替え中……だったら楽しめたんだがな」
眼下の登美のり子はスーツ姿のまま、部屋の中央で四方に立てた笹竹に
いつが眉をひそめる。
「さすがにそれはどうなんです。だいたいこれだってのぞきみたいなマネ……」
満月はかぶりを振ってみせた。
「お前と出会ったとき最初に言ったはずだ。一つ、俺の品性に期待するな。二つ、俺の約束を当てにするな」
「いや初めて聞きましたよそれ」
肩をすくめ、満月はまたかぶりを振った。
「細かいことを気にする奴だ。それより、動きがあるようだぜ」
祭壇の中央に据えられたのは一抱えほどの大きさの
のり子自身は祭壇から下り、その手前の床に描かれた
いつが眉根を寄せる。
「
加えるなら、取引したばかりの場所で何らかの儀式を行なおうというのも、どうも性急な話に思えた。
それほど復讐とやらを急いでいるのか。あるいはこの場所に何らかの意味があるのか――源平だか応仁の乱だかの古戦場だったとは小耳に挟んだことがある、その怨念なり霊力なりを利用しようとしたか。それとも歴史には残されていない、国津神の血が流された場所ででもあったのか――。
満月がそう考えるうちにも、眼下ではのり子が指輪をはめた手を掲げ、宣言するように言葉を発していた。
「
そこで言葉を切り、喰らいつくように犬歯を剥いて笑った。
「――などと、長々と言葉は連ねまいよ。まつろわぬ者たる我は待った、天津神どもの喉笛かき切る時を! 我らとは何の因果も無き、貴様らもしかし待っただろう、封を解かれ思う様力を振るう時を! 我が前に来たれ、喜べ! 息が枯れ血が枯れ果てるまで力を使わせてやる、我が復讐にその手を汚せ!
六つの名が呼ばれると同時。のり子が中心に立つ
六体の悪魔――
満月は無言で眉間にしわを寄せた。
いつの言うとおり、術式としてはあまりにちぐはぐだったが。天津神への復讐――広間での口振りからして、復讐とやらの対象は直接的な意味での神ばかりではない。古代に天津神の勢力が作り上げた王朝を
そして今、こうも言った、七十二柱の悪魔のうち六体を求めた、と。無論復讐のためであろうが、なぜその六体を、いったい何をしようと――。
考えるうちにも、階下ではのり子が声を飛ばしていた。
「よく来た、そう
馬の頭をした者と黒竜がうなずき、祭壇の前へと進み出る。人型の者のうち二体が付き従った。
いつが小さく声を上げた。
「そうか……聞いたことがあります、ソロモン七十二柱の悪魔にはそれぞれに能力があると。確か先の二者は死者の霊を呼び出すことに長け、後の二者は多くの人や物を、瞬時にあるいは高速で移動させる力があったはずです」
ふん、と満月は息をつく。
「なるほどな。お仲間の霊を呼び出して一緒に復讐する、ソロモンの指輪と悪魔どもはそのための手段ってわけだ。ふぅん、
適当なことを口にしつつ、満月は階下に鋭く視線を投げていた。
あの四体には霊を召喚させるとして、残り二体は何だ。ただの護衛か、それとも。そして祭壇の中心にある、土偶は?
考える間にも四体の悪魔は祭壇に向かって
声のうねりがいっそう高まり、
登美のり子は空を打つように、指輪をはめた拳を掲げた。
「来たれ国津神よ! この地にかつて
その宣言と共に、まるで暴風に吹かれたように。
それらの光が祭壇の中央で球状に集まり、膨れ上がり、さらに光が強まり。
か、と破裂するような音と共に、辺りを閃光が白く包む。
「ぐ……!」
登美のり子は両手を顔の前に掲げて目をつむる。
階上の満月らさえ、とても目をつむらずにはいられなかった。
やがて光が収まったとき、紫の電光が
「く……!」
学帽を目深にかぶり、刀を帯びた学生服の男。
「何が起こった、ここはいったい……大丈夫か、ライドウ」
男にそう呼びかける黒猫。
そして。
「ずっどおおおぉぉん! ぅおれの時代がキタぁぁぁぁ! ぅおまえは青か? 黄色い青かあああああっ!!」
わけの分からぬ言葉を叫ぶ、等身大の土偶――の姿をした神魔らしきもの――がいた。登美のり子の用意していた土偶を踏みつけ、粉々に蹴散らして。