デビルサマナー葛葉ライドウ 対 神魔狩りのツクヨミ 作:木下望太郎
「何……!」
アラハバキに相対し、今後の策を思い巡らせていたライドウは、突然の闖入者の方へと身構える。
顔全体に大きな鳥居の意匠を施した、奇妙な黒い面をかぶった男。声と、黒い洋装に包まれた体格からして自分とそう変わらない年齢か。
「いったい何者だ」
つぶやくゴウトの声に、驚いたように一瞬だけ目を見開いた後。
「何者だ、って? 正義の味方さ」
ゴウトが耳を震わせ、ライドウも眉を寄せる。
目の前の男はゴウトの言葉が聞こえている。魔力霊力の類を持たぬ者には、ゴウトの言葉は猫の鳴き声にしか聞こえない。つまり、この男も何がしかの
しかし、正義。正義、か――
正義の味方は高らかに続けた。
「この廃屋を神魔で溢れさせたのもお前か。いったい何を企んでいる」
刀の柄から手を離し、ライドウは押し留めるように掌を向けた。
「誤解だ、自分は――」
仮面の奥の目が刺すようにライドウを見る。
「しらを切る気か。その神魔たちはお前を主と呼び、ひざまずいていただろう」
卓球の試合でも見ているように、ライドウと
身を反らせて突然叫ぶ。
「そうだああああっっ! このぅおれ様たち悪魔はあああ、極悪
「なっ――」
ライドウが言葉を失っている間に、アラハバキの手で黒く指輪が光る。
同時、六体の悪魔はライドウに向かい、改めてひざまずいた。
「我ら、ライドウ様の
「やはりな」
「怪我はありませんか。どなたか知りませんがなぜここに、いや――」
「それよりも、お前を止めるのが先決。話は後で聞かせてもらおう……命まで奪うつもりはない、大人しく投降するんだ」
ライドウは抑えるように、片手の掌を再び
「待て、当方も対話を――」
アラハバキが高く声を上げた。
「対話をするつもりはねえええってよおお! 行くぜ野郎どもおおお!」
六体の悪魔が叫びと共に立ち上がる。
仮面の奥で男の目が険しくなった。
「抵抗するか……! 行け、
そこでなぜか言葉を止め、咳払いした後。
「行け、
男が放った札から白い光が放たれ、それが
「やはり、あやつも
ゴウトの声と同時、ライドウは刀を抜き放つ。
「魔を
繰り出す無数の剣閃が龍の放った炎を斬り裂く。火炎は無数の火の粉と散り、刃からこぼれる緑の
「何……!」
入口の扉に半身を隠しつつ、女学生ほどの齢の少女が顔をのぞかせた。
「大丈夫、いざよいくん!? あいつ強いよ!」
ライドウを見据えたまま
「ああ……! だが、退くわけにはいかない。俺が護らなきゃ、俺しかいない。平和も、君も、そこに倒れてる人も、護れるのは俺しかいない」
「……っ」
ライドウは。無意識に、歩を引いていた。
個を捨て、己を捨て、帝都と世を護るため、ただ一振りの研ぎ澄まされた刀となる――それが
だが、今。自分はそれを実践できているのか、そうしているのはむしろ目の前の男ではないか――そんな思いに駆られ、捨てたはずの自己がほんのわずか――いや、確かに動揺していた。
目の前の敵は真っ直ぐにライドウを指差す。
「
男の手にした
ゴウトが声を上げる。
「いかん、来るぞ! こちらも悪魔を――」
返事はせず、ライドウは黒いマントの内側、学生服の胸元へと手を伸ばした。そこに吊るしたホルダーから一本の管を抜き出す。ライドウの魔力を感知したそれは緑の光をこぼしながら、ねじ式のふたをひとりでに開いていく。
管から溢れた、緑の光が放たれる。
「悪魔召喚……『ガシャドクロ』!」
同時、
「
ライドウの持つ管から走った緑の光は、やがて骸骨の形を取る。人間の全身骨格、ただし恐竜の骨格模型のように巨大な姿。ガシャドクロは牙を剥き、刃物のような爪を敵へと振るった。
がしゃどくろは自らとそれら頭骨の、
二体の巨大な
ゴウトが声を上げる。
「何だと……! バカな、あのような悪魔見たこともない……同じ名の、見知らぬ悪魔だと……?」
「何あれ……! 見たこともない神魔だよ、気をつけて! いざよいくん!」
ライドウはマントの裾をさばき、手にしていた刀を構え直した。
「何者だ……君は」
男は背筋を伸ばし、マントを
「俺は
再び、ライドウを真っ直ぐに指差した。
「護ってみせる、この世と平和を。俺は、正義の味方だから」