変な女子に目をつけられてしまった哀れな男   作:無無

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後書きに書いてますが、一旦更新停止します。


終幕:無人島試験

 最終日の点呼では、戸塚を除く全員の存在が真嶋によって確認された。

 リタイア者である戸塚は、点呼時の欠席対象には含まれないため、減点は入らない。

 ちなみに戸塚がリタイアした経緯についての詳細な説明は未だ行っていない。

 正午に行われる結果発表を前にして、不穏な空気を漂わせ、クラスの和を乱すのは忍びなかったからだ。俺が言っても、説得力はまるでないのかもしれないが。

 点呼の前、戸塚のリタイアについて俺がクラスメイトにした説明は極めてシンプルだ。

 

 昨日の21時過ぎ、スポット探索中の戸塚と遭遇し、いくつか言葉を交わした後、別れ際に戸塚が足を滑らせて地面に転倒。泡を噴いて気絶している戸塚が中々目を覚まさなかったので、大事を取って船まで運びリタイアの手続きを取った。

 以上だ。

 これだけ聞くと、めちゃくちゃ俺が怪しく思えてしまうが、これがありのままの真実だから仕方がない。

 嘘を混ぜれば、後で戸塚に看破されるだろうしな。

 まぁ、結局のところは戸塚次第だってことだ。戸塚に命運を握られていると思うと、ゾッとする。

 俺はあいつの匙加減で、クラスメイトを暴力でリタイアさせる悪人になるかもしれないし、逆に憔悴したクラスメイトを救った善人になるかもしれないのだ。

 2つに1つ。

 戸塚の倒れ際のセリフを思い返すと、善人扱いされる可能性は極めて低そうではあるが。

 後ほど船で再会するであろう戸塚の口からどんな発言が出てくるかを懸念していると、背中をくいっと引っ張られる。

「......なんだよ」

「犯行動機はなんだったのでしょうか?私の見解としては、日頃の恨みを晴らしたかった、という線で今のところは捜査を進めていますが」

「犯行した前提で話を進めるな。俺は無罪だ」

「ほうほう......つい先ほど、放火の件で無罪である私を執拗に追及してきた男の発言とは思えませんね。なんと面の皮が厚い男でしょうか」

 さっきの件を根に持っているらしい森下がむっとした顔で反論してくる。

 予想はついていたが、森下は俺が戸塚を手にかけたんじゃないかと疑ってきている。

「言っとくが、お前は推定無罪だからな。もし、Dクラスの誰かしらがお前の犯行を証明する証拠品を持っていれば、すぐにでも有罪判決が下る」

「無罪なのに、証拠なんて出てくるはずないじゃないですか。芦名善が捏造でもしない限り」

「するわけないだろ。森下でもあるまいし」

「......」

「......」

 疑惑を向けられた者同士、火花が散っていた。

 そんな険悪なムードが漂う中、仲裁に入ったのは白石だ。全く期待はできない。

「落ち着いてください......お友達同士が喧嘩するところは見たくありません。芦名くんも森下さんも私はちゃんと信じていますから」

 宥めるような声で悲し気に白石が訴えかけてくる。

 最近の白石は様子がおかしいから、また変なことをぶっこんでくると警戒していたが、案外普通だな。なんか逆に不安になるくらいだ。

 白石は、森下に体を向けると、きゅっと手のひらを絡ませた。

「森下さん、私は信じています。森下さんは頑張りすぎるところがありますが、だからといって他のクラスの方々の迷惑になるような放火行為なんてするはずがありません」

 それはさながら敬虔な聖女のような立ち振る舞いだった。

 ほんのりと頬を上気させた吉田が、息を呑んだのがわかった。

 次に白石は、俺の方に近寄ると、同じように手を絡ませてくる。

 

「芦名君のことも信じていますから。人の目がない暗い森の中で、孤立した戸塚くんを闇討ちして強制的にリタイアさせるなんて鬼畜の所業を芦名くんがするはずありません。証拠の捏造も勿論ありえません。いくら芦名くんが森下さんの行動に日々頭を悩ませていたとしても、他のクラスに根回ししてまで、森下さんに犯罪行為の濡れ衣を着せて、クラスから排除しようとなんてしませんよね」

「擁護してくれるのはありがたいんだが、具体的すぎないか?」

 森下でさえ言葉を濁していたというのに、闇討ちってはっきり言ったぞ、こいつ。

 それに何故だが、期待するように大きな瞳をキラキラと輝かせているし。

 むしろ、俺に闇討ちや濡れ衣を着せるといった所業をやっていてほしいと言わんばかりの期待に満ちた眼差しだ。

「......手、放してくれ。周りの目がこわい」

「あっ......」

 吉田含む白石ラブ勢の眼光が突き刺さって仕方がない。

 俺は手を放そうとしない白石を強引に振り切って、言った。

「そろそろ、撤収作業始めようぜ」

 試験の結果発表は正午。

 それまでに、この1週間で出したゴミや購入した物資の後片付けを済ませなければならない。

 俺達の担当は釣り小屋スポットとその周辺。

 範囲は狭いため、そう時間はかからないと思うが、早く行動しておいて損はないだろう。

 会話を切り上げた俺達は、掃除用具を手に取り、目的地へと足を進めた。

 

 ───────────────────────────

 

 結果発表の正午を前にして、生徒達が浜辺に集結しはじめていた。

 Cクラスは2日目に大量リタイアしているため、スタート時に比べれば、このだだっ広い浜辺も些か寂しく感じる。

 アナウンスによると、現在はポイントの集計中とのこと。

 あと、ほんの数分で今回の特別試験における、クラス間の勝敗が決定する。

 浜辺に集まった生徒の誰もが手に汗を握り、自分達のクラスの勝利を願っている。

 この無人島での生活が楽しい思い出に終わるのか、それとも苦渋に塗れた思い出に終わるのか、それは結果次第で変わる。

 ──結局、龍園が俺達に再びコンタクトを取ってくることはなかった。

 龍園は失敗したのだ。

 Bクラス、Dクラスのリーダー情報の奪取に失敗し、俺達との契約は不履行となった。

 結果、一方的な利益を俺達Aクラスは享受することとなった。

 スタート時に与えられた300ポイントを1ポイントも使わずに維持し、なおかつスポット占有によって得られたポイントも甚大だ。

 まず、負けることはない。

 他の3クラス、全てからリーダーを当てられるような事態になれば、あるいは結果は変わっていたのかもしれないが、その確率は戸塚の脱落によって極めて低くなった。

「随分と余裕そうですね、芦名善。ここは周りの空気に合わせて、人並みにハラハラドキドキする姿を見せた方がクラスメイト達からはウケが良いと思いますよ」

 にゅっと姿を現し、声をかけてきたのは森下藍。

 こいつには、今回も色々とかき乱された。

「周りの空気に合わせて、なんて言葉をお前の口から聞くとは思わなかったな──それに、俺だって緊張はしてる。結果発表の後、のことについてだけどな」

「......あと、ですか?」

「戸塚の件だよ。戸塚がリタイアしたことに対して、俺に疑いを向けてきているのは何もお前だけじゃない。目を覚ました戸塚の発言次第で俺の運命は大きく変わる。クラスメイトに手をかけた暴君として爪弾き者にされるかもしれないし、逆にクラスメイトの窮地を救った善人として賞賛されるかもしれない」

 あとは龍園みたく、クラスを支配する恐怖の象徴として恐れられる可能性だってある。

 そうなるのだけは死んでもごめんだが......未来は誰にもわからない。

 高度育成高等学校に入学し、高校こそは平穏な学校生活を送ろうとした俺は、結局こうやって矢面に立たされることになった。

 そうなってしまったのは、今、こうして隣にいる森下藍のせいであって──もしかしたら、バスで森下の隣に座ったあの瞬間から、俺の運命は狂い始めていたのかもしれない。

「お前にはやられっぱなしだが......戸塚の件は言い訳の余地もなく、100%俺が蒔いた種だ。どんな結果でも甘んじて受け入れるつもりだ」

 そう言うと、森下はぽかんと口を開けてから、急に何故か自信ありげな笑みをうっすらと浮かべる。

 やれやれと肩をすくめてから、俺の肩にぽんと小さい手を乗せた。

「珍しく弱音を吐くじゃないですか。でも、不安がる必要なんてありません。私がついていますから」

「......それが一番の不安要素なんだけどな」

「芦名善は失礼な方ですね。後で泣くほど私に感謝することになるというのに」

「言ってろ。まぁ......そこまで豪語するっていうなら、1%くらいは期待しておいてやるか」

 期待しても、期待しなくても、結果は変わらない気がした。

 けれど、この絶体絶命の状況であれば、森下にだって、せめて1%くらいは期待しても良いかもしれないと思った。

 そう、森下に向けるには勿体ない感情を抱いていると、拡声器を手に持った真嶋が壇上に上がっていた。

 真嶋の登壇に生徒達の表情に更なる緊張感が走る。

 じっと身を固くする生徒達に前に、開口一番に真嶋は、労いの言葉をかけた。

「──であるからして、総じて素晴らしい試験結果だったと思っている。ご苦労だった」

 ......さて、もうそろそろか。

 数秒間の間を空けた真嶋が、厳しい顔で口を開く。

「では、これより特別試験の結果発表を始める。なお、結果に関する質問は一切受け付けないものとする。自分達で結果に向き合い、次の試験の糧にしてもらいたい」

 結果に関する質問は禁止。つまり、最終的なポイントの詳細も知ることはできない。

 他クラスのリーダー当てに成功したのか、はたまたどのクラスにリーダーを当てられたという情報も秘匿され、あくまで自分達で予測を立てることしかできない。

 まぁ、ある程度は見当はつきそうなものではあるが。

「では、これより......特別試験の結果発表を始める。最下位は──Cクラス、0ポイント」

 0ポイント。試験結果としては絶望的なポイントだが、特に驚いた様子を見せる生徒はあまりいなかった。

 過剰なまでの物資の購入、加えて2日目の大量リタイアを考えれば、妥当な結果だ。

 おそらく、龍園はリーダー当てによってポイントを得る算段だったのだろう。

 しかし、結果は0ポイント。Aクラスの生徒達が、龍園に月2万ポイントを譲渡するという契約も帳消しになった。

 残念ながら、龍園が今回の特別試験で得られたものは何もなく、見事なまでの大敗に終わったというわけだ。

「続いて3位はBクラス、120ポイント。2位はDクラス、195ポイント」

 ここで大きなざわめきが起こる。歓声が湧き上がる方に目を向ければ、そこには困惑しつつも2位という結果に歓喜するDクラスの生徒達。

 結果発表前はお通夜みたいな雰囲気だったのに、随分な変わりようだ。

 

「では、最後に1位を発表する。Aクラス、544ポイント」

 

 瞬間、先ほどのDクラスの盛り上がりの比じゃないくらいに、Aクラスがどっと湧いた。

 2位のDクラスに大差をつけての大勝利。

 狂喜乱舞する自クラスの生徒達を、落ち着くように諫めた真嶋は、高々と試験の終了を宣言した。

 しかし、なおもAクラスの生徒達は興奮が冷めやらないようで、クラスメイト同士で喜びを分かち合っている。

 1週間に渡る無人島試験は、これにて閉幕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




毎度、拙作をお読みいただきありがとうございます。
いただいた感想は全てに目を通し、楽しく読ませていただいています。
誤字脱字の指摘も大変助かっています。

次の更新についてですが、一旦停止することにします!
拙作を1話から通してお読みいただいている皆様なら既にお気づきかと思いますが、主人公の言動と行動と心理状態がしっちゃかめっちゃかでわんだほーい状態なんですよね......
感想でも何件かちらほらと頂いてますが、それがもうボディにクリティカルヒットしてまして、ぐうの音も出ない状況です......
結構これは自分でも自覚していて、面白そうな展開にするために強引にキャラを動かしてるんですよね。大変よろしくないです。
読み物としては致命的だと思うので、一旦プロットとキャラ設定を見直してから、再開したいと思います。

次回「再来 邪推する王」
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