夢の一年戦争記   作:マッキンガムⅡ

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第1話

その建物は見た目からして絢爛豪華だった――――お金がある人たちが遊ぶというイメージのクラブ…彼本人としては行きたくないかといえばうそになるが、少なくとも縁がないものと思っていた。

 

 

(しかし、妙な店員につかまっちまったからなぁ)

 

 

たまたま通りがかった通り、いつもと違った道でも通ってみるかと思ってあるいてたら、妙に小奇麗な店員らしき女性から声をかけられた。

すくなくとも彼自身にはピュアなんて自覚はない。むしろ邪念を抱いているとさえ彼自身は思っていた。

 

 

「まぁ来ちまったもんは仕方がない、ここは癒されるとしましょうかね…あん?」

 

 

今年成人になったばかりの彼は特段飲酒に慣れているわけではないが、物は試しだと思いなおしてホストガール一覧を見ると…驚くことに見覚えがある顔があった。

 

 

「どうかされましたか?」

 

「いや、なんでもないっす。指名はこの人でお願いします」

 

 

ちょっとした悪戯心と好奇心から、彼はとあるホストガールを指名した。

そして案内されるがまま席に着き指名したホストガールが来るのを待った―――待っている間に周囲を見渡すと本当にピュアな人間というだけで集客しているのだろう…いろいろな人たちがいて、眺めているだけでも飽きないなと感想を抱いた。

 

 

「はじめまして、るいよ。よろしく―――ね…」

 

「何やってんすか先生」

 

 

そうしてやってきたのは、街中を歩けば男が全員振り向くであろう美貌をもち、かつプロポーション抜群の美女であった。

その美女を前にして何事もなく自然体でいられることに周囲の客らしき男性が驚いていたが、それはさておき。

 

 

「……あなたは確か?」

 

「うす、お久しぶりです。なんかよくわからんうちにこの店に誘われて、物は試しと思いまして来てみたら…教育実習の時に来てた先生いたから吃驚しましたよ。確か今は先生やってるんですよね?」

 

「ええ、まぁね…あのね、ちょっと相談なんだけど」

 

 

そう言われたるいは若干気まずそうしていたが、意を決したのか話し始めた。

 

 

「実はね、憧れの先生には成れたんだけど…今のままじゃ生徒になめられてしまっているようなことがあって、悩んでるの。もしかしたら『大人の女性』になればなめられらくなっていくんじゃないかと思って―――――お願い、このお店のでのことは二人だけの秘密にしておいて」

 

「いいっすよ、ちゃんとした理由があるなら。バレない様にしないといけないっすね」

 

 

そう言われると安心したのか、ホッと胸を撫で下ろするい。

その反動で胸が揺れていたが、ミジンコほども彼の心は動じもしかかった。

彼は外見より中身派なのだ。

 

 

「でも意外ね、君ってこういうのニガテっぽっかったイメージだったわ」

 

「ニガテっていうか、ワザと距離を置いてはいましたね。親父に亡くなるまで『俗世に現を抜かすな』ってえんえんと言われてましたから」

 

「……亡くられたの?」

 

 

悲しそうに目を伏せるるいをみて、彼は話題をミスったと思い慌てた。

自分が泣くのはいいが、他人を泣かせる趣味は持ち合わせていない性分だったからだ。

 

 

「ええ、まぁ……これでまぁ名実ともにフリーターってわけです」

 

 

彼がそういうとクスっと笑うるい、そんな彼女を見てほかの客がホストガールから嫉妬されていているのを彼は知らないし、知っても知らん顔するであろう。

 

 

「取り合えず、乾杯しましょう。おれはこの何とかライトでいいや。先生は?」

 

「ここでは先生は止めて、るいってよんでくれると嬉しいな…」

 

「じゃ、るい先生は俺の個人的なイメージでワインねー」

 

「…イジワル」

 

 

少女のように拗ねるるいを見て、そこらへんがまだ子供っぽい仕草するからなめれてんじゃね?と内心思う彼だったがおくびにも出さない。だしてはならないのだ。

 

 

 

「とりあえずカンパーイ」

 

「乾杯」

 

 

 

コン、と二つのグラスが音を奏でるのを切欠にして何方ともなく話始める二人だった。

 

 

 

「そういえばフリーターって言ってたけど、今までなんのアルバイトをしてきたの?」

 

「色々っすねぇ…接客業や事務方、清掃業や警備、それとたまに農業ヘルパーとかもしてます」

 

「あの頃も言っていたけど、中々やりたいことが見つからない感じ?」

 

「そうっす、中々見つかんねえっすよ…」

 

 

 

ごくん、と一口飲んでみた、軽い口当たりにこれは飲みやすいなぁと彼は感心していた。

 

 

 

「見つかるといいわね、やりたいこと」

 

「――――とりあえず、一個見つけましたよ」

 

「え、早速見つけたの?」

 

「ええ―――――とりあえずここに通ってみて、いろんな人の姿を眺めていたいと思います。お客さんもホストガールも一緒に楽しそうにしてる姿を見ていると何か見つかりそうな気がしてまして」

 

 

 

これからは退屈だけはしなさそうだ、と彼は正直に笑っていた。

そんな彼を見てるいも辺りを見渡すと―――――本当に楽しそうにしているみんなの姿があった。そんな風に静かに飲んでいると、るいが不意に笑い出した。

 

 

「ほんとそういうところよねぇ…」

 

「んぁ?るい先生どうしたの」

 

「今だから言うけど、あなた結構モテてたわよ。少なくとも教育実習中に相談に五人は来られたわ―――――友達感覚で」

 

「最後に不服そうな語感がなければ完璧だったなぁ~」

 

 

 

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