「メールかー…えーと何々…サークル設立の申請手伝ってくれてありがとう、今度お礼するね、か。別にいいのにねぇ」
随分と律儀な子だこと、と彼はナオのことを評価していた。
ナオからしてみればサークル設立の申請を手伝ってくれるし、お金を出してくれるし経理の仕事まで学んできてくれるしで、ここまでしてもらっていいんだろうかという申し訳なさからお礼したいだけなのだが…彼は自分の行いがどれだけ献身的か理解はこれっぽっちもしてない。
それはさておき、こんなメールが来たからには次の指名はナオちゃん一択だった。
「ご指名ありがとうございます―――――それじゃあ、乾杯」
「乾杯」
コン、とお互いのドリンクを突き合わせて先ずは乾杯する二人。
最初は取り留めもない話題からだったが、次第にメールの話題になっていた。
「そういやさ、ナオちゃんサークルの調子はどうなのさ?おれは書類作成手伝ったり裏方作業していたから、実際の活動までは詳しく実態を知らないけど首尾は上々そう?」
「うん、おかげさまで盛況だよ――――お兄さんが言ってた通りに結構需要があってね、思いのほか大人数になったから、今度合宿を開くことになったんだ」
合宿を開くまでに大きくなったんかーと彼は感慨深げに頷いていた。
アルバイト先の上司たちに色々と怪しまれながらも懸命にアルバイトして得た経験と資金が活用されているようで、嬉しさも一入だったのだ。
そんな彼をみて最初は嬉しそうにしていたナオだったが…ちょっと考えるそぶりを見せた後、思い切ったかのように彼に話しかけてきた。
「それでね、出来たら一緒に合宿会場の視察についてきてほしいんだ…嘘でいいから恋人として来てくれたら、きっと彼女も諦めるって考えてる」
はて。彼女とは何ぞ――――あぁ、ナオちゃんに恋心を抱いている女子大生の件か、と思い至った彼だったが、ナオがそんな作戦を提案してきたことに驚いていた。よくもわるくもまっすぐな彼女のことだから、地道に説得を続けると思っていたからだ。
「欺瞞作戦とはやりますねぇ――――――――って俺が恋人役って大役を請け負っていいのかな、恋愛のことは勉強真っ最中な素人だよ?」
「うん、お兄さんにしか頼めないんだ…ボク、ほかに頼れる男の人がいなくて」
お願いします、と上目遣いにナオちゃんにお願いされた彼は―――――快く引き受けることにした。断る理由などどこにもなかったからだ。
「いいよ、手伝ってあげる。合宿場予定地とか、必要な物品とかがあったらリストアップしておいてね。経費で落ちるかもだし、落ちなくてもプレゼントするベー」
「―――――ほんとうにありがとう、お兄さん…」