「えーっと何々…『娘が好きな人が出来たらしいので、ショックで仕方がありません。自棄酒するので例のお酒ください』―――あれってそんなにがぶ飲みするもんじゃないんだが…大丈夫か?いややっぱダメか――――『自棄になるひとにはあげません』っと」
彼がメール友達に返信すると、速攻で『酷いッ!』と返信が返ってきた。
酷くはないはずである。むしろ良心的な対応をしているのではないかとすら彼は考えていたが、まぁ親からしたら不安なんだろうな…とも思えた。
どうにも家業を継ぎたくないらしい娘さんとどう接したらいいのかとか、娘さんが発明家を目指しているらしくそれ自体は応援してあげたいが安定している家業を継いでほしい親心の葛藤による愚痴を聞いてあげるなど、彼はメール友達として親身になってあげてきたつもりである。
(発明家、ねぇ―――――)
「というわけで同じ発明家を志す娘さんを抱える親父さんからこういうメール来てるんだけどどう思う、みおえもん?」
「――――――――――」
彼がメール画面を見せた途端、口に含んでいた酒をブフォッと勢いよく吹き出したみおえもん。すんでのところで彼が腕をひっこめた為、彼のスマホにかかることはなかった。プロレスラーの入場みたいな吹き方だったな、とかかなり的外れな感想を抱いていた彼だったが、ゴホゴホせき込む彼女をみて心配になった。
「……大丈夫?きっと疲れがたまってるのよ…今日はもう切り上げようか、みおえもん?」
「――――――――――――だ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます、このメールの方とはお、お友達かなにかで?」
「えーとね、アルバイト先の地鎮祭で来てくださった由緒正しい陰陽師の方らしいんだ。当時のアルバイト先の上司から紹介されてね、なんか知らないけど俺が気に入られたみたいでメールアドレス交換したんだ。それ以降ちょくちょくメールでやり取りしてる方で、みおちゃんにあげたお酒も時々送ったりしてるよ」
あういうのって凄いよね~神職的なのってかっこいいわーと地鎮祭の感想を宣う彼を見て、この人の人脈どうなってるん?と不思議に思うみおだった。
「へ、へ~そうなんですか…あ、あのう貴方的には陰陽師ってどう思います?」
「んー…伝統的職業だよねぇって感じかなぁ。このメールに書いてある娘さんの立場からしたら心中複雑だろうけど」
「………その心は?」
「こういう職業って伝統だろうけどさ、もし別の職業になりたいのなら親もその娘も大変だろうなぁと思うんだ。生まれながらに職業が限定されているってのは将来は安定だけど、逆に言うと人生を拘束しているようなもんじゃない…親としちゃ子供の夢を応援したい気持ちと安定した職業についてほしいって思いが葛藤するんじゃないかなぁ…」
「…そう、ですかね」
「そうそう。娘さん側からしたら人生拘束されるってのも納得いかないだろうし、やっぱり今の時代はいろいろな職業があるから、夢の職業になりたいって思うのもしょうがないことだと思うんだ」
どうしたもんかね~出来たら腹割って話し合わせたいんだけどね~と宣う彼を見て、みおは意を決したかのような表情をした。
「その子も、一度親と話してみたいと思うとウチは思います。やっぱり家族の事ですから心配になるんも当然ですから。でも、その子も応援してくれる人がいるから頑張れると思います――――――――その人にそう伝えてくれませんやろか?」
「お、みおちゃんもそう思うか。お互い判らないままギスギスするより、一遍大ゲンカになったとしても分かり合う為に努力したほうがいいよね」
相談乗ってくれてありがとう、というと彼はポチポチとメールを打った―――今のみおちゃんの意見をそのまま反映させた内容である。
後日、彼の元に一通のメールが送られてきた――――『無事に娘と分かり合えそうです、娘の夢を応援したいと思います』という内容で。