夢の一年戦争記   作:マッキンガムⅡ

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第3話

家電量販店――それは家電を展示して販売したり、家電のほかにもいろいろ売ったりしているお店である。そんなところに彼の姿はあった。

 

 

「たっけえな、除湿器……買えないこともないけど、ちょいと今月懐がきつくなっちまうなぁ」

 

 

洗濯時に愛用していた除湿器が故障気味で動作不良を起こすようになってきてしまっており、仕方なしに買いに来たのだが―――値段が微妙に高くて手が出せない。

 

 

「いっそのこと自分で修理――――は出来ないからなぁ…機械につよい知り合いなんていないし」

 

 

どうしたもんかと独り言ちていると、彼の背中におずおずといった感じで声がかかってきた。

 

 

「あの、るいさんのお客はんですよね?…私でよければ直しましょか?」

 

「…?あれ、君は確かドリームクラブの…ええと、みおさんだっけ」

 

 

振り向いたらそこには彼がおぼろげながらに覚えていた顔があった。

 

 

「はい。覚えてくださってたんですね、ありがとうございます」

 

「ホストガールの中で珍しい眼鏡っ娘だったからね。それはさておき…直すってのはどういうこと?」

 

「うち、発明家やってまして…機械いじるのが好きなんです。唐突とは思いますけど私でよければお役に立てならなぁと思いまして…どうですやろか」

 

 

渡りに船といわんばかりの提案に彼はすぐに頷いた、彼としてもできれば修理して使いたい方向だったからだ。眼鏡っ娘のお願いというのもポイント高かった。

 

 

「おお、正直助かるよ。謝礼もするからさ、こちらからお願いしたい」

 

「おおきに、それじゃあ品物はどうしましょうか…お手数ですけど今週お店まで持ってきてもらえます?」

 

「…確か持ち込み料を払えばいいんだっけか。了解、持っていくよ」

 

 

 

 

 

 

こういったクラブに家電製品を持ち込むのは俺ぐらいだろうな、と思いつつ彼は今日もドリームクラブに来ていた。

目的は当然、アレである。

 

 

「――――あ、お客さんお待ちしてました。みおです、今日はよろしくお願いします」

 

「お待たせみおちゃん、今日はよろしくね~」

 

 

そう。邪な目的など一切ない、知人に家電修理を依頼しに来たのだ。

受付の人から何の目的で家電製品を持ち込むのか訊かれたので、正直に『修理依頼に来ました』といったら『当店ではそのようなことは承っておりません』と呆れられた。

一応、事情を説明すると『――――あぁ、みおさんですか…』と何故か遠い目をした受付さん。取り合えず、お疲れ様ですと声をかけてきてあげた。

きっと彼女も苦労しているのだろう。

 

 

「あぁ、そうそう。みおちゃんお土産にお酒も持ってきたけどいるかい?」

 

「お酒、ですか?―――――――ってこれ神便鬼毒酒じゃないですか!?どうやって手に入れはったんですか?相当珍しいはずなのに…」

 

「んー、なんかウチの先祖がその酒蔵の人の知り合いと仲良かったみたいでさ、今でも縁があって家に定期的に届けてくれるんだよね。おれもちびちび飲んでるけど、結構おいしいよ。よかったら飲んで~」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

妙に神妙になりながらお酒―――神便鬼毒酒を受け取るみおをみて、彼は疑問に思いながらも『受け取ってくれるならいいか~』と気楽に考えていた。

 

 

「それにしてもありがとうね、みおちゃん。新しく買うにもお金がかかるし、こいつに愛着もあるからさ、直してくれるの本当に助かる」

 

「いえいえ、こちらこそありがとうございます。ウチの発明で見事にバージョンアップさせてみせるさかいに期待しとってください」

 

 

ふんす、と自慢げに胸を叩くみお。

そんな彼女の胸が振動により揺れるが、彼は靴紐がほどけていることに気が付いて結ぶ為に屈んでいたので、みおの胸を見ていなかった。

彼が靴紐を結び終わると、二人は先ずはドリンクを頼んで乾杯した。

 

 

「発明ね~、みおちゃんはすごいな。普通、アイデアを閃くだけでも大変なのにそれを実現させちゃうんでしょ?今までどんなの作ってきたのさ」

 

「えーと、最近のでいうと潤いドライヤーとかありますね。一つのドライヤーからシャンプー、リンス、そして温風まで出る優れもんです――――実際に試したらプログラミングをミスってしまったのか勢いがありすぎて使いもんにならんかったんで失敗ですが…」

 

「んー…失敗いってもある程度は形になったんでしょ?ならすごいじゃない。あとは用途を変えてみるとか、色々と試行錯誤していけばいいじゃん。その潤いドライヤー、出力とか形状を変えればなんでも洗える機械とかにならないかな」

 

「――――なるほど。アイデアを形には出来てるから、あとは活用方法次第ってことですか。お客はんもなかなか機転が利きはりますね」

 

「ははは、褒めても注文しか出来ぬぞよ―――――フライドポテトお願いします。あ、その潤いドライヤーよかったら頂戴。使い方工夫してみるわ」

 

「ホントですか!?ありがとうございます。私、人の役に立つ発明がしたくってこっちに来てるのでそう言ってもらえると嬉しいです…あの、お客はんがよかったらですけど、ほかの製品のテスターもやっていただけませんか?」

 

 

上目遣いに彼をみやるみおに対して、彼は「勿論」と快諾する。

 

 

「いいとも。そういう道具をどう使うか考えたりするのも楽しいからね、こっちからお願いしたいぐらいだよ」

 

 

そういって笑う彼を見て、みおもまた笑うのだった。

 

 

 

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