夢の一年戦争記   作:マッキンガムⅡ

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第6話

「――――――とまぁ、以前にそういうことがありまして。あれから遥香ちゃんに一般常識を教えるというか、彼女の飽くなき探求心を満たす係になったといいますか。どうしようるい先生。なんなん御門コンツェルンの娘って。百歩譲って教えてんのはいいけど数回軽く誘っただけでなんでコッチがアッチにハンティングされてる気分なんよ?俺自体がミステリーってかコンチクショー…」

 

 

気分はまさにドリームカクテルマグマッ!でも現実はサービスドリンク。

悪酔いはダメ、絶対。おにいさんとの約束だッ

 

 

「遥香ちゃんはそういうの好きみたいだから…彼女の常識からしたら珍しいものとか、一般的に見ても可愛い動物とかに目がないみたいよ。あと、私と飲んでいるんだから他の娘の事より私の事で一緒に盛り上がりたいな」

 

 

心なしか頬を膨らませている恩師に対して、やっぱりどっか子供っぽいなぁと思いつつも彼は謝罪をする。

 

 

「あ、すみませんるい先生…つい愚痴りたくなってしまって―――――まぁ、冷静になって考えてみれば『相手が誰であれ自分らしくあればいい』だけっすもんね」

 

「あ、私が教えたこと覚えててくれてるんだ…うん、今のでチャラにしてあげる」

 

 

ちょるい。

 

 

「そういや先生が前に言ってた話は進展どうです?威厳がどうのこうの話していたじゃないっすか」

 

 

『大人の女性になればなめられらくなっていくんじゃないか』と思って―――――とかなんとか、目の前の女性がいってたようなことを彼は覚えていた。

 

率直に言えば発想が子供っぽくねえかと彼は思っている。

『大人の女性』になればではなく『大人としての威厳』こそ必要なのではないかとも思っていた―――――年頃の男子学生は兎に角、意気がいい傾向にある。元気が有り余っており、また目に見えてわかる迫力、つまり威厳のある人物の言う事には素直に耳を傾けやすくもある。

 

るいは見た目からして威厳というよりも可愛さや色気といった面で魅力的な女性であると思われるので、彼からしたらるいの努力の方向性はちょっとピントが合ってないような気がするのだ。なんせ男子高校の異性の若い女性教師ともくれば、生徒から関心を引こうと余計に生意気な言動をされても仕方がない。

 

 

「う~ん、それなんだけど…自分に自信が中々持てなくて。ちょっとしたドジとかも多いし、それを生徒に見られがちなのよねぇ…」

 

「それはもう練習と根性あるのみっすよ、るい先生」

 

「そういうものなのかしら」

 

「そういうもんっす。『自分を信じられるって書いて省略すれば自信』っていいますしね。自分自身がまず『自分』を信じきれないとどうしても不安が生まれちゃいますし、それはどうやったって相手に伝わっちゃいます。学生なんて若いからそこら辺の機微にも敏感に反応しますよ――――先生の思っている以上に生徒は先生の事を良くみてますからね、特に授業中とか見られてなんぼの職業でしょ」

 

 

そこらへんの機微を感じさせないために自分という地盤を練習と根性で鍛え固めなおして不動のものとし、それが威厳となって自分を人に言ったり行うことが出来る―――それこそが自信を持ちうる人間であると彼は父親から教わっていた。

その為に狂気の沙汰とも思える鍛えられ方と教えられ方をされたのだが、まぁ彼個人としては今となっては面白かったと振り返られる。許しはしないが。

 

 

「そういわれると…なんかそう思えてきたわね…何故か妙に説得力があるような」

 

「まぁ一つの考え方ですよ。るい先生は立派に先生してます、その証拠になめられることはあっても、否定されたり無視されたりはしないでしょ?先生としてみられているからこそ初めて何らかの反応があるんです、最初から先生として見られてなきゃ見向きもされないって俺は思います。生徒に教える立場でしょうけど、逆に生徒からも色々と教わることも多いと思います、今はムリに威厳を求めるよりも、一緒に成長する先生を目指すってのも一考の余地はあるかと思いますよ」

 

 

まぁ、急いては事を仕損じるっていいますしねー、と彼は続けた。

彼からすればあくまで持論を述べただけであったが、るいにはどこか響いたようであり、真剣な表情になっていた。

 

 

「やっぱり君は凄いわよねぇ…教育実習の時から一本筋が通った男の子だとは思ってたけど」

 

「おれ、るい先生にそこまで言われるほどなんかしましたっけ…?」

 

「私が教育実習の時は共学の学校だったけど、貴方が結構モテてたってのは話したわよね?」

 

 

そういわれると、確かそんなことを話されたことを彼は思い出していた。

 

 

「はい、確かに話してましたね…でもおれバレンタインのチョコとかもらった記憶とか無かったっすよ、周囲の友たちは何故か貰えてましたけど。だから俺って男として魅力なんかなぁとか思ってました」

 

「それはね…私に相談しにきた子たちは皆、先ずは義理チョコで貴方の周囲を攻めて、貴方の情報を集めてから本命の貴方に告白するつもりだったらしいわ。でも、あなたチョコをもらった友達の恋路とか一生懸命になって応援したでしょ」

 

「そりゃそうですよ、せっかくの機会なんですもん人の恋路は応援するべきでしょ」

 

「そうしたらね、最初は義理のつもりで渡したチョコとかプレゼントが、貴方に渡した相手の事を話してもらっているうちに徐々に渡した相手を本気で好きになっていったらしいわ。バレンタインのときとか、イベントの時にいきなり告白するのは皆躊躇ってたみたいよ」

 

「うーん。つまり俺はさながら恋のキューピット?本人無自覚の」

 

 

バレンタインでのチョコゲット数ゼロ更新記録保持者が恋のキューピットとか笑えねえ、高嶺の花男?(無自覚)とか誰得だよ…と虚しさが鳥取砂丘のように彼の心象世界に広がっていった。

よかったな、もし日本一の砂丘だったら自衛隊の演習場だぞッ

 

 

「ま、まぁ俺に魅力がない訳じゃなかったわけだ…ここから素敵な出会いがあればいいなぁ、っていうか恋愛の感情がいまいちわからんから出会ったとしてもどうしていいのか判らん。どうしよう、るい先生…」

 

 

困ったことに恋愛経験なんぞないから困ったもんなのだ、彼としては出会いを求めていはするけども人を好きになることはあっても愛することがなかったが故にこの手の話題が苦手だったのだ。

ちなみに好きの対象は男女ともに同じ扱いである―――これではどうにもあかんと彼の父親は生前思っていたが、彼の母親はあんたもそんなもんだったでしょと呆れ顔だったのを彼は知ることはなかった。

 

 

「うーん、そこら辺はなるようにしかならないとしか言えないわ。恋愛の形って人それぞれだしね…お互いに切磋琢磨しながら色々と教えあいましょ」

 

 

そういうとるいがグラスを傾けてきたので、彼は呼応するようにして自分のグラスを傾けたのだった。

 

 

 

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