彗星と竜の舞踏会   作:マッキンガムⅡ

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第10話

「こうやって改めてみると、かなりの被害ね…」

 

 

フロンタル達はドラゴンの大攻勢が仕掛けられた後、その対応に一晩中――主に負傷者救出、その手当やシステム復旧などに追われていた。

一夜明け改めて被害状況の確認を行っていた第一中隊の面々やエマ監察官は改めてみて溜息をつく。

 

 

「アルゼナルが半分はやられちまったようだし、地上に出てる部分が滅茶苦茶になっちまった」

 

「…地下の施設もかなり損害が出ている、しかもパラメイルの発着デッキが使えなくなってしまったのは非常に痛い」

 

「第二中隊が全滅、第三中隊はパラメイルを全機ロスト、か……再編成も難しいわ」

 

 

 

一気に戦力がなくなったといっても仕方がない有様にサリアは頭を抱えた、これでドラゴンの再侵攻があったらひとたまりもないからだ。

皆が暗い表情をする中、フロンタルはヴィヴィアンの姿が見えないことに気が付いた。いつもこういう時には皆と行動しているというのに―――それを察したサリアはフロンタルに話しかけた。

 

 

「ヴィヴィアンなら寝てるわ。いくら起こしても寝ていたから、そのままにしてきたの。こういうときに休めるなら休ませてあげたほうがいいと思って」

 

「―――ひとつ、聞いてもいいかしら」

 

 

そういうアンジュにクリスが反論しようとするも、無言で手をクリスの前に出して制止するフロンタル。こういう時には情報整理することが命の有無を左右することもある、何よりも重要なことだと実感しているからだ。

 

 

「なにかね?」

 

「今まででドラゴンが直接、アルゼナルを襲撃してきたことってあったの?」

 

「―――いや、あたしが知る限りじゃ初めてだ。あんなパラメイルもどきもな」

 

 

問いかけてくるアンジュに対してヒルダがそう答え、話を続ける。

 

 

「あいつはドラゴンを従えていた―――これはちょっと面倒なことになってきたね」

 

「……知的生命体と思われる存在が率いているのが分かったからな、少なくとも単なる捕食目的でこの世界に出現している線はなくなったというわけだ」

 

「フロンタルの言う通りさ、あいつらは何らかの目的があって侵攻してきている。それをアタシたちが邪魔してきたんだ、そんなあいつらが今回邪魔だった私たちの本拠地を突き止めた―――また襲ってきてノーマを全滅させるまで止まらないだろうさ」

 

 

 

そういうとため息をつくヒルダ。続けて彼女はどう思う?という感じでフロンタルに目をやってきたので、フロンタルは答える。

 

 

「私も同意見だ、きっと彼女たちは再度くるだろう―――世界を超えてまで欲しかる何かを得るまではな」

 

「……そういえば、あの敵機が撤退したのはアンジュが来てからだよね。あの時のヴィルキスは全身が光り輝いていたけど、何かしたの?」

 

「私にもわからないわ。ただ、お母様の歌―――永遠語りを歌っていただけよ。それにヴィルキスが反応したのは確か」

 

「とりあえずは現状を報告するとしよう。そして訊かなければな」

 

「訊くって、だれに…?」

 

 

クリスにそう問われたフロンタルは不敵にほほ笑む。

 

 

「当然、指令殿だ」

 

 

 

 

 

 

臨時の指令室にいたジルは硬い表情をしたアンジュとナオミ、そしてフロンタルが来たのを見て『何かあったのか』と声を発する。

そして何があったのかを問われた。ドラゴンのことも、アルゼナルのことも、洗いざらい最初から説明してほしいとアンジュに問い詰められた。

 

 

「…長くなるが、話すとしよう」

 

 

 

 

むかしむかし、あるところにある人間がいました。

その人間は人類が繰り返す戦争や、それに比例してぼろぼろになってゆく地球にウンザリしていました。

平和や友愛、平等――――そんな綺麗な言葉を歌っておきながら、人類が行ってきたのは真逆の行動でした。

このままでは人類は滅んでしまう。なら新しい人類を作ればいいのだと、その人間は思いつきました。

そして人間は思考のみであらゆるものを操作できる高度情報化テクノロジー、マナを使う人類を生み出すことに成功しました。

これで人類は滅ばずに済む。理想郷も生まれる―――そうなるはずが、どうしても埋まらない穴がありました。

なぜか、稀にマナを扱えない、あるいは失ってしまう人類が生まれてしまうのです。

その事実はマナを扱う人類を不安がらせました、また争いの世界になるのではないかと。

人間は不安の矛先をマナを使えない人間に向けることで、理想郷を維持しようと考えました。そうするとマナの社会は安定していきました、不安の頬先を得ることで心の安寧を手にしたからです。

しかしそれでも完全には安定はしませんでした、マナを得る前の人類が抵抗してきたからです。

そんな彼らを前に人間は決死の抵抗をし、見事に撃退しました。

それでも失ってしまったものも当然あります。

前の人類によって、人間が作った兵器を一つ盗まれてしまったのです。

しかし前の人類には使えないようにされていた兵器を前に、前の人類は絶望しました――――自分たちと同じように不当に扱われている存在、マナを使えない存在がいることを知るまでは。

前の人間たちとマナを使えない存在が手を取るには時間はかかりませんでした、お互いに人間が敵だったからです。

そうして出来た反人間勢力は兵器を使える者の出現を待つことにしました、そして現れたのです、鍵を開けることができる存在が。

しかしその存在をもってしても人間にかなうことは出来ませんでした。鍵を開けることができても、十全に扱うことができていなかったからです。

一度失敗している以上、もう失敗は許されません。次こそは―――

 

 

 

「そしてヴィルキスを操るもの―――アンジュ、お前が現れた。ヴィルキスを十全に使うための最後のカギである歌を知っているお前がな」

 

「――なるほど。しかし、それだけではドラゴンについて説明がつかないのだが?」

 

「話すよりも直接見たほうがいいだろう――――ついてこい」

 

 

そうして指令室を去っていくジルの背中を追うフロンタル達が向おうとした矢先、アラートが響き渡る。

 

 

『総員第一種戦闘態勢、ドラゴンです!居住区内に出現しました!!』

 

「居住区といえば―――ヴィヴィアンがいるのであったな、今ので起きていればいいのだが」

 

「そんな悠長なこと言っている場合!?すぐに向かうわよ!!」

 

 

 

 

 

 

別動隊が居住区内から死に物狂いで何とか小型のドラゴンを追い出したらしく、フロンタルたちが合流するときには、第一中隊の面々が外にて小型のドラゴンと対峙していた。

 

 

「――観念しな、トカゲ野郎……ってなんだ?」

 

「~♪~~♪」

 

「歌っている、のか?しかもあのメロディって…」

 

「永遠語り?」

 

 

なぜ目の前のドラゴンがそれを知っているのかは分からなかったが、自然と一緒に歌いだすアンジュ。危ない、と誰かが叫ぶも小型のドラゴンから敵意がまるで感じられないことにフロンタルは訝しんだ。

 

 

――なぜだ、なぜ知っている……まさか――

 

 

アンジュと一緒に歌っていたドラゴンが光に包まれたかとおもうと、その中から現れた『人物』はいつものように振舞っていた。

 

「ここでクイズです。ノーマなのにドラゴンになれるのってなーんだ?」

 

 

そういってヴィヴィアンが気絶したのをみたフロンタルは頭の中の情報が噛み合うのを感じていた。

皆が驚いていると、ジル司令が唐突に『全員ついてこい、見せるものがある』といいどこかへと足を向けて立ち去っていく。

もちろん、全員ついていかないわけがなかった。

 

 

「「「イ、イエス、マム!!!」」」

 

 

そして焼却場――――ドラゴンの死体を焼却する場であるはずの所―――をよく見ると、中に人型の死体が混ざっているのを遠くからでも確認できた。

それを見たフロンタルはやはりな、とつぶやく。

 

 

「――よくある話だろう、化物の正体が人間でしたなんて。お前たちには権利がある。人類に反旗を翻す―――リベルタスを行うか、今まで通りにドラゴンを『狩って』生活を送るかを。返事はいい、行動で示せ」

 

 

 

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