ドラゴン、つまり真なる地球の人類によって行われる侵攻―――つまりアルゼナルがある地球へフロンタル達が帰ることになるまで、わずか一日だった。
タスクが焔龍號―サラマンディーネの機体――を模した機体である龍神器をナーガ協力のもと分解・整備して徹夜して学んだ技術をもとに整備された各機を前にして、全員が各々の覚悟をもって事に臨んでいた。
『こちらは総司令、近衛中将サラマンディーネである!誇り高きアウラの民よ。アウラという光を奪われてから幾星霜の月日を経て、ついに反撃の時が来た』
見事に堂に入った宣言をもって、サラマンディーネは近衛中将として指示をだす。
この侵攻でけりをつける――――その意気込みが自然と籠る。
サラマンディーネの目の前にいるドラゴン達にもそれがひしひしと感じ取れた。
『今こそ我々の真の敵――――エンブリヲにしらしめる時が、やってきた。この出撃をもって我ら地球の民の意志を示すのだ!!全軍、出撃せよ!!!』
ドラゴン達と共に大空を飛翔する、そんな幻想的な光景を見てタスクがこう話すのを通信越しにフロンタルは聞いた。
『―――世界が違っても、わかりあえるものなんだな』
分かり合える――つい最近までは敵であったドラゴン達、新たる地球の民たちとの戦争を乗り越えて分かり合う、その現実が如何に尊いものなのかを知っているフロンタルはドラゴン達と共に飛翔していることを感慨深げに見ていた。
分かり合うことが如何に難しいかをわかっていた、アースノイドとスペースノイドの対立を知っているからこそ、フロンタルは目の前の光景に尊さすら覚えていたのだ。
『アンジュたちはまっすぐ上を目指してください、次元回廊を通過するまではナーガとカナメを護衛につけます』
総大将であるサラマンディーネからの連絡を受けて機体を上昇させていく。
そして次元回廊が開かれた――――それと同時に一斉に皆が飛び込んでいき、世界を超えてアウラ奪還のために戦うのだ。
『アルゼナルの面々は私たちが同行しているとは知らないはずだ、先ずは我々が接触して事情を説明するとしよう』
『――そうしてもらえると助かりますわ、『赤い彗星』殿。こちらとしても悪戯に戦力を消耗したくはありませんから』
『―――いくわよ、みんな』
そうしてフロンタル達は次元回廊を通る、自分が自分でなくなっていくのに自分が形成されていく不思議な感覚を覚えながらも、フロンタル達は元の世界へと帰還を果たした。
『あれは―――暁ノ御柱、ってことは戻ってこれたの?』
『そうみたい、だね』
アンジュの言葉にフロンタルはシナンジュに入っているデータと照合をする―――
確かにあれは暁ノ御柱であった、つまりアンジュたちの現在位置はミスルギ皇国上空である事は間違いない。
『妙だな。話では確かサラマンディーネ達も、暁ノ御柱付近に次元転移するはずだったはずなんだけど…』
言われれば、と周囲にドラゴン達の姿はあれどサラマンディーネ達が搭乗する機体―――焔龍號や竜神器たちの姿が周囲にないのはこちらの予定とずれている。
タスクの言葉にフロンタルは考える――――今まで自分たちはドラゴン達の出現をある程度把握できていたのだ、それがエンブリヲにできないはずがないと。
『…罠か。各員に告げる。警戒を怠るな、先ずは合流を最優先とする』
そうフロンタルがいうとすぐに通信が入ってきた、その識別反応は友軍であるサラマンディーネの参謀役を務めるカナメからのものだった。
『―――――こちらカナメ。どうやら、してやられたみたいです。現在、敵パラメイルと思しき機体四機と交戦中!!』
やはり罠だったか。そう思う反面、予想外に少ない敵の数にフロンタルは驚きを覚えた。ドラゴン達を抑えるのには頭数が足りない、アルゼナルの精鋭ともいえる第一中隊の面々ですら中隊規模で編成されていたのだから。
『相手、普通のパラメイルじゃないみたいですわ――――黒いヴィルキスといった風貌の機体です。おそらくはエンブリヲが造ったラグナメイルかと』
サラマンディーネの言葉にアンジュたちは慌てて機首を変更して、合流しようと機体を加速させていく。
そんな中、敵機に近づいていく中で慣れた感覚が強くなってきていることにフロンタルは内心不安を覚えていた。
敵機がいる戦闘区域から発せられる三つの感覚が、どう捉えても第一中隊の面々―――エルシャ、サリア、クリス―――のものであったからだ。
残る一つにも覚えはあるが……『彼女』はまだメイルライダーにはなっていないはずだ、それにラグナメイルとやらに乗っているわけがない、そう懇願するしか今のフロンタルには出来なかった。