彗星と竜の舞踏会   作:マッキンガムⅡ

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第16話

数日後、アンジュとモモカ、ナオミ――――そしてフロンタルの姿はミスルギ皇国の海上にあった。

あの場にいても何にもならないという共通見解を持ったので脱出を図ってみたら―――思いのほかスムーズに機体を奪えたので、フロンタル達はそのまま脱出を決行した。

 

 

 

『リベルタス…人類への反抗作戦と言っていたな。ジル司令たちがおそらく我々が次元転移する前に交戦していたミスルギ皇国へと向かっているはずだ。最短ルートを予測して航行しておけば問題あるまい』

 

『―――――フロンタルさん、けっこう無茶しますね。私が第一中隊の周波数で呼びかけてみます』

 

 

ナオミの呆れるような発言を聞き流しつつ、フロンタルはエンブリヲという存在について考えていた。アンジュもナオミも彼と会っていたが、話を詳しく聞くとその時間が重なっていたのだ――――偏在しているとしかいわんばかりに。

もし偏在しているというならば物理法則など無視できるだろう。

フロンタルとしては事と次第によってエンブリヲを射殺することも考えていたが、それは無駄であると感じたのは正解だったようだ。

 

 

 

『…繋がりました、フロンタルさん!』

 

『――――友軍機の認識コードを確認した、応答しろ。アンジュ、ナオミ、フロンタルなのか?』

 

『…その声はヒルダか。その通りだ、三人ともに無事だとも―――ジル司令はどうした?」

 

『……そこらへんは後で説明するよ、先ずはアンタらを回収しないとね―――アウローラを浮上させな!!』

 

『『『イエス、マム!!』』』

 

 

 

 

 

 

見知らぬ戦艦―――可潜戦艦アウローラというらしい―――に回収されて整備と補給を受けることが出来た三人は一先ず安心したのだったが、一日後に指令室へ呼ばれたので行ってみると、そこには見知った人物が見知らぬ立場になっていたことに驚いていた。

 

 

 

「ようこそ…アウローラへ。あたしが総司令のヒルダだ」

 

 

そんな三人を見て珍しいものを見たといわんばかりに笑うヒルダに、フロンタルが不思議に思いながら声をかける。

 

 

「このような戦艦があったとはな…ヒルダ、ジル司令はどうした?」

 

「ちょいと訳ありでね、ジル司令には引っ込んでもらったよ。今は軟禁してあるが、しおらしいもんさ」

 

 

肩をすくめていうヒルダをみフロンタルはなるほど、と思った。

この艦に来てからというものジル司令の顔を見ないのが不思議だったからだ。

 

 

「クーデターでも起こしたな。そうでなければジル司令が大人しく指揮権を譲るとは思えない。まぁ、ジル司令の思いつめたような雰囲気では上手くいくものもいかなくなるだろう……何かを強行しようとして問題でも起こしたとみえる」

 

「相変わらずはっきり言うねぇ、フロンタルは……ま、そういうところがいいんだけどさ」

 

「む?なにかいったかねヒルダ」

 

「―――なんもいってねえよ、バカ。とりあえずはヴィルキスやシナンジュが戻ってきただけでも、大きく行動が変わってくるってもんだ。向こうがお前らを逃がしたのだって理由があるはずだしな」

 

 

逃げれたのではなく逃がしてもらった――そうともなれば話は大きく変わってくる。

わざと逃がされた、というのはプライドが高いアンジュにとって何より神経を逆なでされる行為だったからだ。

 

 

「……なるほどね、どうりで簡単に脱出できたわけだわ。私たちを『反乱分子を見つけ出すための餌』としたわけか―――なめた真似をしてくれるわね」

 

「逆に言えば相手の行動がわかるというものだ、そう悲観するものでもあるまい」

 

「相手の行動ってなんですかフロンタルさん?」

 

「そうだな、私なら――――」

 

 

突如、大きな爆発音がしたかと思うとアウローラを大きな揺れが襲う。

 

 

「―――まとめて始末する」

 

 

それが正解だといわんばかりに次々と大きな揺れが起こり、周囲の海ごとアウローラを揺らし続けていた。

指令室にいたオペレーターのヒカルがモニターをみて、ヒルダに報告する。

 

 

「海上から多数の爆雷を投げ込まれている模様、爆雷がレーダーに反応しません!!」

 

「――ソナーをうて!爆雷に埋まっちまう前に艦を浮上させる!!―――パラメイル隊も全機だせ、あたしも出る!!!」

 

『『『イエス、マム!!』』』

 

 

ヒルダの指示にて動き出すアウローラ、そして鋼鉄の鳥たち―――パラメイル隊も慌ただしく準備しながら、出撃の時を待つ。

フロンタルはヒルダと共にカタパルトデッキへと移動しながら、こんな手を思いつくのはサリアかクリスあたりだろうな、と考えていた。

 

海上にアウローラの姿が現れると同時に滑り込むようにしてコクピットへ乗り込み、カタパルトデッキにシナンジュを移動させたフロンタルは宣言する。

 

 

『フル=フロンタル。シナンジュ、出るぞ!』

 

 

紅き単眼の巨人が、いま群青の海から飛翔する――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アウローラが浮上してきたこと、そしてフロンタル達が出撃してきたのをサリア

達は確認した。

 

 

『――ようやく顔を出したわ』

 

『みんな無事、か。誰か当たって死んでればよかったのに…』

 

『ここを通すわけにはいかないわ……子供たちの為にも』

 

 

 

どうやら爆雷をばら撒く案はサリアの発案だったようだ。

共通の通信チャンネルにてこちらに悪態をついている姿をみて、ヒルダは指令としての責務を果たさんと背筋をただす。

 

 

『こいつらは敵だ――――気持ちを切り替えな!パラメイル隊はフォーメーションを崩さずに爆雷をまき散らしている雑魚共を殲滅しろ!!あいつらはあたしらで迎え撃つ!!!』

 

 

そうして繰り広げられる戦場の華―――爆撃を行っていた無人機を相手に果敢にパラメイル隊が次々に挑んでいき、新たな家であるアウローラを守るために戦っていた。

 

 

『フロンタル相手に手加減なんて出来ない、一斉に収斂時空砲を使うわよ!』

 

『サリア、あれはまだテスト中だから使ってはダメだとエンブリヲさんが――』

 

『そんなこと言ってはいられな――――ッ!?』

 

 

そんな隙など与えんよ、と何時の間にか単眼に睨まれていたサリアは死を覚悟した――――が、撃たれたのはラグナメイルの左足でありコクピットである胸部は明らかに外されていた。

サリアは思わす共通の通信チャンネルを開き、フロンタルに怒った。

 

 

『……そうやって、手加減をして!私をバカにするのも大概にしなさいフロンタルッ!!』

 

『馬鹿になどしていない。敵として取るに足らんと訂正させてもらいたいな』

 

『―――――――ッ!!!』

 

 

 

ギシリッ、と無意識のうちに歯軋りをしたサリアを宥める様にクリスが通信を行う。

 

 

 

『サリア、一旦退こう。それ以上ラグナメイルを壊しちゃったらエンブリヲ君に怒られちゃう――――ほら、エンブリヲ君から退くようにって連絡きた』

 

『―――――――撤退よ』

 

 

 

そういうとサリアは機体を巡行形体へ機体を変形させ離脱する―――それに続くエルシャやクリスを見て、ナオミは一安心した。

 

 

『はぁ、はぁ……なんとか死人を出さずに済んだ』

 

『ねえねえ、フロンタル。サリアと仲悪かったっけ?』

 

『いや、そんなことはない。しいて言うなら、あそこで挑発してさらなる成果を得たいと考えていた』

 

『酷いねぇ、仮にも元隊長相手に容赦ないことで』

 

 

ヒルダからというわれると思わず肩をすくめるフロンタルだったが、もうこれ以上は成果を得らえれないと考えるとシナンジュの向きをアウローラへと向けた。

 

 

『―――戻ったら作戦会議を開くよ、時間が惜しい』

 

『『『イエス、マム』』』

 

 

 

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