彗星と竜の舞踏会   作:マッキンガムⅡ

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第2話

「マナの光、か」

 

「そうだよー、マナつかえるのがにんげんでー、マナつかえないのがノーマ」

 

「…万能にして無限の力とは胡散臭いにもほどがあるな。人間から稀にノーマが生まれるというのも原因究明されていないのが納得できない」

 

「くさいの?マナって」

 

「そういう意味ではない、怪しいと思っているのだよ」

 

 

そもそも万能の力とか言っておきながらノーマ出生対策できていない時点でダメなのではないかとさえフロンタルは考える。

ノーマだからといって全く平和に貢献できないわけでもあるまいに―――ノーマというだけで世界的に法律によってアルゼナルという隔離施設に収容され、そこでしか生きることを許されない―――また奉仕しなければならないとまでされる徹底ぶりには呆れすら覚えてしまう。

 

 

「あやしくはないよ!あやしいのはドラゴンだよ」

 

「次元を超えてやってくる巨大生命体か。生身で世界を超えるとは恐れ入る限りだ」

 

「ドラゴンをやっつけるのがメイルライダー!あたしもいつかなるんだ!」

 

「その意気込みはいい、髪をひっぱらないでくれると尚いいのだが」

 

「んー…やだ!」

 

「そうか、残念だ」

 

 

意識を取り戻してから数日たったある日、フロンタルはアルゼナル内にある教室で一緒に授業を受けた際に知り合った子供たちに髪を引っ張っぱられて遊ばれていた。

初めての異世界の現実にフロンタルは内心ため息をつく。

あの日、意識を取り戻し戦闘映像に驚愕していたフロンタルに『先ずはここついて知ってもらうとしよう』といい医師であるマギーに紹介されたのがここの教室だった。

 

先ずは尋問――実際はマギーとエマによる簡単な質疑応答――が行われたが、結果としてこの年齢になって子供たちと一緒に勉強するとは予想もしなかった。

流石に監視はされているようだが、フロンタルとしてはそれでも寛容な対応をされているものだと怪しんでしまう。

世界で初めての男性のノーマということで、移動するたびに好奇の視線を向けられるも納得は出来なくもない。

もっとも、仮面をつけているのだから怪しまれているのもあると考えられるが…

 

 

(どう扱っていいものか悩んでいる、とみるが果たしてどうなることか)

 

 

通常ならシンギュラー反応があったらドラゴンによる侵攻なのだが、まさか人間が出てくるとは思ってなかったらしい。シナンジュについてもメイという人物を中心とした技術者たちによって現在、整備という名の解体調査が行われているとの事。

モビルスーツという異世界の技術で製造された機体であるのに加えて、装甲材をはじめとした未知の物質――特にサイコフレーム――はかなり興味を持たれている。

此処の司令にも後で会うことになっているのだが、その前にアルゼナル側が此方にこの世界のことを知る機会を作ったのは意図的なものであるとフロンタルは察していた。

そうこうしていると教室の入り口が開き、見慣れない女性三人組が入ってきて辺りを見渡し始め、フロンタルと目が合う。

 

 

「本当にここで教えられてたのね…」

 

「お、ホントにここにいた。例のノーマ」

 

「ふふふ、こんにちは噂のノーマさん」

 

 

蒼髪のツインテールの髪型をした女性を筆頭に、飴をなめている小柄な娘、ウェーブががったピンク色の長髪女性がそれぞれフロンタルに話しかけてきた。

表向き驚愕と興味が勝っているが、立ち位置から此方がどう動こうとも対応できるようにしているあたり警戒は怠っていない様だ。

 

 

「はじめまして、私はフル=フロンタルというものだ。失礼だが君たちは?」

 

「私は第一中隊隊長のサリア。真ん中の小柄なのがヴィヴィアン、子供たちに接しているのがエルシャよ」

 

「おいっす!よろしくなー」

 

「よろしくお願いしますね、フロンタルさん」

 

「こちらこそよろしく頼む」

 

 

そう答えるとヴィヴィアンが楽しそうに話しかけてきた。

 

 

「じゃじゃーん、クイズです!フロンタルはノーマ?それとも人間?」

 

 

とても楽しそうにクイズを出されたフロンタルだったが、そのクイズが出た瞬間に周りの空気が一瞬だけ止まったかのように感じた。

 

 

 

「そのクイズは正解があるのかね?」

 

「およ、質問で返されるとは。正解はフロンタルが知ってるっしょ」

 

「私はマナが使えない故に定義的にはノーマということになるが、人間のつもりだよヴィヴィアン。マナの有無で人間かどうか判断するなど下らないエゴに過ぎないと私は考えるが」

 

 

そういうと心底不思議そうな顔をするヴィヴィアンと子供たち、驚愕するサリアとエルシャ、そして教師の女性。

その周囲の様子を見て、世界観が違うとここまでのズレが生じるのものなのだと痛感するフロンタル。

 

人間が生むのは人間なのだ、マナが使えないというだけで人間ではないと扱われるのは生物学的にありえないと考えるフロンタルだった。

むしろマナの力を使うことができないノーマに対して何らかの救済措置を講じるべきなのではないかとすら思ってしまうが、この話をしてもらちが明かないと思いなおしてここに三人が来た理由を訊いてみることにした。

 

 

「それはそうと、サリア達はなぜここに来たのかな?大方の予想はついているが」

 

「…ジル司令がよんでいるわ、貴方と話がしたいって」

 

 

世界初のノーマの男性と司令を本当に会わせていいのか若干の迷いがあるのだろうが、そこは命令どおりにしなければならないと思っているのだろう。サリアの表情がわずかばかりに強張った。

ヴィヴィアンとエルシャも迷いはあるようだが、サリアが返答すると二人ともこちらを見ながら頷く。子供たちも真似をしてか一斉に頷いていた。

 

 

(さて、鬼が出るか蛇が出るか)

 

 

フロンタルは腰を上げて、三人に誘導され教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

しばらくアルゼナル内を歩くと、指令室と思しき場所に案内されたフロンタル。前にいるサリアが先導して、ほかの二人はフロンタルの背後からついてきていた。

 

 

「例のノーマを連行しました」

 

「入れ」

 

 

その一言を聞くとサリアが中に入っていったので、続いて入っていくフロンタル。

そして部屋の中には黒髪の女性が一人、そしてその側にはエマ監察官がいた。

 

 

「私はジル、ここの司令だ。お前の名前はフル=フロンタル。異世界から来たと話しているそうだな」

 

「ああ、そうだ。既にそこにいるエマ監察官や医師に話している限りではそうなる」

 

「そして我々が知らない技術で作られた機動兵器――――こちらで調べさせてもらった限りではシナンジュとかいったか。あれに乗って現れた、と」

 

「不本意ながらそうなるな。本来ならば屍にでもなっていても不思議ではないのだが…捨てる神あれば拾う神ありといったところでな、こうして私は生きている」

 

 

そうフロンタルが話すと、何か思うことがあるのかジルは一瞬だけ表情を硬くする。

 

 

「…神、か。まぁいい。率直に言おう、お前には我々に協力してもらう」

 

「嫌だといったら?」

 

 

そう言うやいなや、いつの間にか後ろにいたサリアによってフロンタルは銃口を後から突き付けられた。

ジルと名乗った人物が真っ向からこちらを見定めようとしていることが伺え、またサリアが決断を促すようにして銃口を後頭部に押し当ててきたのも本気で処分することを考えているのだろうと感じられた。

 

 

「……これが我々としての答えだ、死にたくなければ協力しろフル=フロンタル」

 

 

本来であるならば問答無用で処刑されても仕方がないはずの身だが、こうして生かされているのには何らかの理由があるとフロンタルは感じていた。

死んだはずの身が生きているということ。

それは何かなすべきことが残っているからではないか。

この世界において、『フル=フロンタル』としてなすべきことがきっとあるのだと。

 

 

「イエス、マム」

 

 

その可能性を信じて、目の前の人物に敬礼をもって返答する。

 

 

「…後のことは追って指示する。サリア、先ずはフロンタルにアルゼナルを案内しろ」

 

「イエス、マム!」

 

 

フロンタルと同じようにジルに敬礼をするサリア。

そしてサリアに促されフロンタルは背中になんとも形容しがたい視線を感じながら、これからのことを考えつつ…指令室前で待機していたヴィヴィアン、そしてエルシャと合流して指令室を後にした。

 

 

 

 

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