彗星と竜の舞踏会   作:マッキンガムⅡ

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第3話

「サリア、先ずはどこから案内する?」

 

「―――――そうね、先ずは顔合わせも兼ねて人が多い場所から周りましょうか」

 

「今の時間だとジャスミンモールかしらね、行ってみましょう」

 

 

女三人寄れば姦しいとはよく言ったものだとフロンタルは痛感していた。

指令室を出てからというもの――――やはり興味はあるのかヴィヴィアン達は積極的にフロンタルへ話してかけており、それが2人分ともなれば尚更であったのだ。

ついでにいえば、周囲に女性しかいないという奇妙な状況もフロンタルには違和感があった。ネオ・ジオンにも女性士官がいないというわけではなかったが、ここまで極端な環境下に置かれるなど想像しようはずがない。

 

 

「おや、三人とも珍しい客を連れてきたじゃないか」

 

 

壁にジャスミンモールと書かれた場所に来ると、店主と思しき女性が声をかけてきた。

 

 

「こんにちは、ジャスミン。今回はこの人にアルゼナルの中を案内をしているの」

 

「ジャスミン、ポテチちょーだい」

 

「やっぱりいいわねえ、この下着……でも値段が、ねぇ」

 

「………二人とも、今は任務中よ」

 

 

仮にも任務中だというのに約二名ほど自然体でショッピングをしているし、なんならサリアが静かに怒っているのも気のせいだろうとフロンタルは思うことにした。

 

 

「はじめまして、私はフル=フロンタルというものだ。ここは商店のようだが」

 

「そうさ。スプーンからパラメイルの武装までなんでも取り揃えてやるよ、金額次第でね」

 

「地獄の沙汰も金次第、というわけか」

 

「おや地獄とはひどい言い草だね、市場原理に基づいた良心的価格で売っているだけさ」

 

「うっそだー、ちょーぼったくりじゃんか。色々揃ってるのはホントだけど」

 

 

そういって辺りを見渡すヴィヴィアンにつられて周囲を見やると…衣類や食料品、嗜好品、遠くには物々しい雰囲気を醸し出している兵器群まで取り揃えてあるのが見て取れた。

 

 

(なるほど、なんでも取り揃えているようだ。ジャスミンという女性は侮れないな)

 

 

軍事基地内、それに絶海の孤島であるアルゼナル内に店舗を構えておきながら、なんでも取り揃えてみせるという手腕にフロンタルは内心舌を巻いていた。

ネオジオン軍、通称袖付きを率いていたフロンタルだからこそ判る。戦争において最も難しくかつ重要なのが物資の補給確保である。

 

戦闘区域に近づくにつれ当然危険度も高くなるが、補給する人員は非戦闘員であることも多い。当然護衛なども付くがその分目立って敵に狙われやすいので、安定して補給を受けられるということは自然と難しくなる。

 

その為、いくらノーマがマナに比例して圧倒的少数だとしても一拠点に補給される量は膨大なものとなる――――当然ながら軍事物資が優先されるだろうに…まさか嗜好品や遊具まで取り揃えてあるとは信じられなかったが、フロンタルの目の前にあるのだから彼は現実を受け入れるしかない。

 

 

「ここで商品を買うにはキャッシュが必要になる。働くことでキャッシュは稼ぐことは可能だけれども、メイルライダーはその中でも別格さね、花形とされる最大の要因だね」

 

「なるほど、分かった―――サリア、私はどのようにしてキャッシュを稼ぐことになるのかな?協力するとは言ったが、何をするのかまでは知らされていないのだが」

 

「…それならこれからメイルライダーになってもらう予定だそうよ。先日脱落者が出たから、その穴埋めに」

 

 

サリアから知らされる事実にフロンタルは内心で驚いていた。

以前にフロンタルを興味深げに見ていたマギーの様子からモルモットにでもされるかと考えていたのだが、いい意味で予想外だったからだ。

 

 

「――ほう、正体不明の男をいきなり花形のメイルライダーになるとは思わなんだ。ジル司令も思い切ったことをするものだ」

 

「つまり、アタシたちと同じ部隊ってこと!改めてよろしくー、フロンタル」

 

「よろしくお願いしますね、フロンタルさん」

 

 

ヴィヴィアンとエルシャからは歓迎されているようだが、サリアは何か思うところがあるのか表情にやや硬さが見て取れた。

 

 

「…サリア隊長殿、と呼んだほうがいいかな?」

 

「――っ、サリアのままでいいわ。これからよろしくフロンタル」

 

 

ハッとした様子で慌てたようすで返答するサリアを不思議そうに見るヴィヴィアン、そしてあらあらと微笑ましいものを見守るようなしぐさのエルシャ。

一方でシナンジュではなくパラメイルという機動兵器に乗って戦うと知らされたフロンタルは、展示されている兵器から機体サイズを推測していた。

 

 

(…モビルスーツよりは一回り小型の機体か)

 

 

「次は食堂に行きましょうか、きっと暇を持て余している子たちもいるはずよ」

 

 

エルシャの鶴の一声で食堂へと向かうことになったようだ。

じゃあねー、ジャスミンに元気よく声をかけるヴィヴィアンとは裏腹に心ここにあらずといった表情を浮かべるサリアを不思議に思いながら、食堂へとフロンタルは足を向けた。

 

 

 

 

 

 

「――噂をすれば何とやらだ。例のノーマさんがお出ましだ」

 

 

食堂につくや否や、赤髪のツインテールの女性から声をかけられた。

その声につられてその方向を見やると四、五人ほどグループで席について談笑中だったようだが、赤髪の女性がフロンタルに話しかけたことで話が中断してしまった。フロンタルは声をかけられた以上は無視するのは良くないと思い返答する。

 

 

「はじめまして、私はフル=フロンタルという、きみは?」

 

「あたしはヒルダ。また新しい、しかも珍しいおもちゃが来たもんだな」

 

 

そういってニヤニヤするヒルダ。

不穏な気配を感じたがフロンタルはいったん見送り、ほかの女性たちにも目を向ける。それをみたサリアが簡単に自己説明を補足する。

 

 

「ヒルダの前に座っているのがナオミ、おさげの子がクリス、茶髪の子がロザリーよ」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「……よろしく」

 

「よろしくな、フロンタル」

 

 

どこかぎこちなさがある三人の様子にフロンタルは訝しんだがノーマとは基本的に女性だけであり、アルゼナルに男性がいること自体がイレギュラーなのだということを思い出して三人の反応にも納得がいった。

 

 

「あの、フロンタルさん。身体の調子はどうですか?」

 

 

慣れてもらうのにも中々に時間がかかりそうだな、とフロンタルが考えているとナオミという女性が不安げな様子でフロンタルに問いかけてきた。

 

 

「調子はいいな。その様子だと君が手当してくれたのか」

 

「はい、みんなのおかげで無事に済んでよかったです」

 

「それに関しちゃ、あたしも加わるけどねぇ」

 

 

性根が優しいのだろう、フロンタルの無事をするや安心した様子を見せるナオミ。

そこにアルコール臭がする女性が加わってきた。

軍医である彼女―――マギーは昼間から飲酒しているようで、ほろ酔い加減で頬がやや赤い。フロンタルが見た限りでは足元はしっかりとしているので、大丈夫ではあるのだろう。

 

 

「マギーか、その節は世話になった」

 

「別にいいさ、それがあたしの仕事だしねえ。役得もあったし」

 

「役得?」

 

「なーんでもないよ、あ、そうそうコレ渡しに来たんだった」

 

 

そういうとマギーは一枚の書類を取り出して、フロンタルに突き付けてきた。

それを見ると信じられないものが書いてあったので…念のためにフロンタルは確認する。

 

 

「……何かな、これは」

 

「何って請求書さ。医療費にパラメイル代と初期装備費用もろもろ合わせて200000000キャッシュだよ」

 

「200000000キャッシュ!?プッ、ククク、おいナオミ、借金王ってあだ名は返上だな!」

 

「うわー、まさかの新たな借金王がでてくるとか予想外すぎる」

 

「さすがに哀れだね…」

 

 

女性陣に一気に哀れの視線を向けられ、さらに唐突に突き付けられた一枚の書類に内心納得しかねるが、死ぬよりは良いかと思い直すことにしたフロンタル。

しっかりと書類を受け取り、懐にしまう。

 

 

「私の機体はいつ受領になるのかな?早めに借金を返せるように尽力しよう」

 

「それなら今日中には終わるはずだよ。サリア、ついでにハンガーにも案内してあげなよ。メイも呼んでたからさ」

 

 

 

 

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