彗星と竜の舞踏会   作:マッキンガムⅡ

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第8話

ヒルダの家族とヒルダの邂逅を思い出し、その認識の違いがどうにも引っかかるフロンタルはさっそくノートに軽くではあるがまとめておくことにした。

 

ヒルダに『ママ』とよばれていた女性は実の娘であろうヒルダに対して明確な敵意をもって『化物』と呼んでいた、それは父親と思しき男性も同様であったことに引っ掛かりを覚える。

ヒルダが間違えている可能性もあったが、あそこまで真剣な眼差しで『ママ』をみていた彼女の表情から嘘には思えない。

しかし女性たちはヒルダのことを『化物』としてしかみようとしていなかった、微塵も自分たちの娘である可能性を疑うことなく。

 

 

(まるで恣意的な洗脳を受けているかのようなものだな―――違和感を覚える)

 

 

ヒルダの様子から、あの農園がヒルダの実家であることは間違いないであろう。そうなるとあの夫婦もヒルダの実の親であろうことは推測できる。

そうなるといよいよ判らなくなってきた、あの様子から考えられるにヒルダは最初はマナを使える人間によって育てられたはずだ。

後天的にマナの光を失ったからと言って、実の親が子供の存在を認識ごと消去できるかといえばそうはならないだろう。そうなるとヒルダのように後天的にノーマであることが判明する事例も少なからずあるはずだった。

 

 

「…何者かの手によるもの、と考えるのが自然か」

 

 

神の見えざる手、というものか―――そうフロンタルは仮説を立てていた。

そうでもなければ『世界が足並みをそろえて』ノーマを差別的に扱えるわけがない、と考えるが何のメリットがあってそうなっているのか。

平和になったからと言って政情も異なるはずの世界各国が足並をそろえて統一した法律を作り、アルゼナルという箱庭すら作ってみせた理由がまるでみえてこない。

本当に神がこの世界にはいるのかもしれない。そう考えるが、一笑に付す。

神などいるわけがない、しかしマナの光を見つけたであろう何者かの意志は数百年は存在しているであろうと考えられる。

そんな存在は神といっても仕方がないのだろうか――

 

 

「それでも、世界を勝手に思うがままにしていい理由にはなるまい」

 

 

そう言った瞬間にアルゼナルが大きく揺れた、それが何を意味するのかフロンタルは瞬時に察する――ドラゴンによる襲撃だと。

 

 

『――フロンタル、無事か?』

 

「ジル司令か、私は無事だよ。今の大きな爆発音は?」

 

『ドラゴンだ、アルゼナル直情に異常な数のシンギュラー反応が確認された。残念な知らせだが―――お前のパラメイルが先ほどの攻撃によって破壊されてしまった』

 

「ならば白兵戦の準備でもするとしよう」

 

『いや、お前には地下に行ってもらう』

 

 

地下?いったい何があるというのだろうか―――フロンタルは問いただす間も惜しいと考え、すぐに返答する。

 

 

「イエス、マム。地下に行けばいいのだな」

 

『メイがそこで待っている、整い次第すぐに出撃しろ』

 

 

出撃?ほかに自分が乗れるパラメイルなどあるのだろうか―――そう考えると、まさかと思った。自分が乗っていた機体といえば、たった一つしかない。

そう考えると自然と大胆不敵にほほ笑んでいた、きっと『彼』は今まで待ってくれていたのだと思うと申し訳なさと嬉しさで心が満たされるのを自覚するフロンタルだった。

 

 

 

 

 

 

――――やはり私はこの席に座るのが落ち着くな。

 

 

ある機体のコクピット内にてフロンタルは各種センサー類などのチェックを行っていた。落ち着くとともに嬉しさが込み上げていた―――あの状態からここまで完璧に修復および改修をしてもらえるなどパイロット冥利に尽きるというものだったからだ。

 

 

『フロンタル、機体の調子はどう?』

 

「すこぶる良好だ、整備感謝する――――発進はあそこを通ればいいのかな?」

 

『そうだね―――整備班、例の機体が出るよ!!』

 

 

メイがそういうと整備班の面々が目を輝かせて――アルゼナルの危機にもかかわらず、モニターを注視していた。

未知の鼓動が織りなすエンジン音、彼自身が言っているように調子がいいのが伺える――――その様はまさに心拍音であるかのようにメイは感じていた。

この未曾有の事態にも対処できるであろう『彼ら』をみて、メイは戦況を把握していないにもかかわらず、勝てると確信していた。

 

そんな彼女たちの視線を受けて、フロンタルは告げる。

 

 

 

『フル=フロンタル――――シナンジュ、出る』

 

 

パラメイルとは根本から異なる出力だからこそ出せる圧倒的加速力をもって、新たな翼を得たシナンジュは地球の重力に負けずに飛翔する。

新たな舞台が、目の前に拡がっていたのだから。

 

 

 

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