『第一中隊総がかりなのに、まるで相手になっていないなんて…』
『もうじき弾薬も底をついちゃう、どうするの?』
「どうするって言っても――――?移動熱源の接近あり!?みんな注意して!!」
新しいシンギュラー反応があったという通信があり、警戒するとパラメイルと思わしき見知らぬ機体が現れた。
未知なる存在と交戦するも圧倒的に押され内心で焦っているところに、またもや新しい敵かとの考えが一瞬サリアの脳裏をよぎる。
しかしシンギュラー反応がなかったことを訝しみ、その機体がパラメイルよりも早く移動してくることに驚愕する。
行く道に立ちふさがる数多のドラゴン達をものともしない戦闘力、そして何よりも圧倒的な存在感に心のどこかで感動すら覚えてしまっていたのだ。
『―――見せてもらおうか、新しい敵の力とやらを』
この一か月で聞きなれ始めた声が――サリアにはフロンタルの声がいつもと違って、第一中隊のみんなを安心させるかのように言っているように聞こえた。
その通信が聞こえるや否や、ナオミやロザリーがすぐに反応する。
『―――フロンタルさん!!』
『―――おせえんだよ借金王!』
『申し訳ない、支度に時間がかかったのでね。さて、そこの機体のパイロットに告げる。速やかに投降せよ、さもなければ…』
フロンタルの投降勧告に対して謎の敵機はライフルと思われる武器を向けることで意思表示を行った、その瞬間フロンタルは告げる。
『了解した―――貴公は撃墜する』
ドラゴンたちを従えていた敵機とシナンジュが、まるで踊っているかのような機動戦を繰り広げはじめる様をただただ第一中隊の面々は見ているしかなかった。
フロンタルの機体はパラメイルの倍はあろうかという巨体でありながら、パラメイルよりも圧倒的な早さで戦場を駆けていた。
――――まるで彗星みたい、そうナオミは思った。
支援しようにもその速さからフロンタルに対する誤射すら考えられる、それよりも重要なのが自分たちに襲い掛かってくるドラゴン達に対して対応するのが手一杯なのがナオミたちの現状だったのだ。
これではフロンタルさんも――――そう心配するナオミだったが、それどころか。
『うそでしょ、フロンタルさんが圧している……?』
新たしい敵機を相手にしながらも、次々に周囲に展開していたドラゴン達とも戦闘を行うフロンタルに第一中隊の面々は畏怖すら覚えていた。
シナンジュがライフルから光を放った―――牽制射撃を行ったかと思えば、その射撃が射線上に吸い込まれるようにして入ってきてしまったドラゴンを撃墜する。
ならば接近戦をと感じたのかドラゴンはシナンジュに接近戦を挑むも、あえなく光の剣にて首をはねられていく。
大型も小型も関係なくドラゴン達は、等しく彼の前には落とされていった。
新しい敵―――アンノウンも被害を抑える術がないのか、シナンジュ相手ろくに反撃も出来ずに苦戦しているようだった。
シナンジュが常にドラゴンに纏わりつくように移動している為、相手がうまく狙いを定められないのだろう。どうにかドラゴン達からシナンジュを引きはがそうと試みているようだが、隙あらばアンノウンを狙撃しているフロンタルの強かさにナオミは内心で舌を巻くしかなかった。
そうしていると、どこからか歌が流れてきていたのをナオミは聞いた。
知らないはずなのに…どこか懐かしさすら覚えてしまう、そんな歌を。
その発生源は、こちらに向かってきているヴィルキス―――――反省房にいるはずのアンジュが歌っていたのだ。
『……偽りの民が、なぜ真なる星歌を?』
アンジュの歌に対して敵機から一つの影が現れる、あれは人だ―――まごうことなき人影だったのだ。その現実にナオミは血の気が引く思いだった。
そんなナオミを後目に黄金に輝くヴィルキス、それを操るアンジュと敵機の人物がかにやら会話を交わしたかと思ったら、通信が入った。
『シンギュラー反応が急激に低下――――すべてのシンギュラーが閉じます!』
撤退していくドラゴン達を追撃することをフロンタルはしなかった、向こうから撤退してくれるのであればこちらにとっては有難いことに違いないのだから。
『――真実は、アウラと共に――』
そういうと消えゆく敵機の姿をフロンタルは見送るしかできなかった―――近くにいたアンジュを巻き込んでしまう可能性があり、加えて次元を超えられたらシナンジュにはどうしようもなかったからだ。
『――帰るとしようか、我らのアルゼナルへ』
そういうとフロンタルは帰投するべくシナンジュをアルゼナルへ向け、進み始める。
その姿に続きながら、ナオミは敵が言っていた言葉が引っ掛かっていた。
(……偽りの民って、どういうことだろう)
その疑問もアルゼナルの被害を見るや否や、ナオミは頭の片隅に追いやるしかなかった。