運命の始まり   作:マッキンガムⅡ

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第10話

朝霧達哉、フィーナ=ファム=アーシュライト、そしてカレン=クラヴィウス。

 

地球にある月の大使館の執務室の中に三人の姿があった―――達哉とフィーナは正式に付き合うことをカレンに認めてもらう為、大使館を訪れていたのだ。

 

 

 

 

「カレン、先ずは礼を言います――――あなたのおかげで月への即時帰還要求を半月程度に抑えてくれた事、感謝してます」

 

「――――いえ、私だけでは抑えきれませんでした。実は財団の方からも私への助力あってこそ、月への即時帰還要求を半月程度に抑えることが出来たのです」

 

「……どういうことですか?」

 

 

 

達哉が疑問に思うのも当然だろう、ロームフェラ財団という組織が月の王女の為とはいえ、通常なら個人の為に動くとは考えにくい。

 

 

 

「財団が……確かに私の地球留学の際にも協力してくれたとの話だったけど、一体なぜ…?」

 

「それは判りません。しかし、財団側から圧力がかかったからこそ…強行しようとした月の貴族たちも黙らざるを得ない状況になりました」

 

 

それを聞いたフィーナたちはますます混乱しそうになった、なぜ財団がそこまでしてくれたのかが不明だからだ。

 

しかし混乱する時間も惜しいと言わんばかりにカレンが佇まいを直したのを見て、二人は緊張を新たに月の駐在武官と相対する。

 

 

「――――それでは、フィーナ様、達哉さんに改めてお伺いします。今日、この場に来られたということは二人の交際を認めてほしいということで間違いないでしょうか?」

 

「はい」

 

「ええ」

 

 

 

言葉少なく、しかし力強く頷いた二人を見てカレンは内心で嬉しく思いつつも、冷たい現実を告げることを辛く思った。

 

 

 

「……それが最悪の場合――――月と地球の戦争になったとしても、ですか?」

 

 

 

「なっ…」

 

「何故そうなるのですか、答えなさいカレン!」

 

 

絶句する達哉と激昂するフィーナ。

 

二人からしたらなぜそうなるのかが全く分からないからだ、そういう反応しても仕方がないとカレンはどこか冷静に分析していた。

 

 

 

「今回の月の留学に関して月もですが、地球側も紛糾したそうです。月の王族を留学させるとは何事か、と。それを収めたのが財団の息がかかった政治家たちです。つまり財団は今回の留学の成功に関して並々ならぬ熱意を持っているのです」

 

 

用意された紅茶を一回飲んでから、カレンは続きを話し始める。

 

 

「財団側は『月と地球の交流促進』という名目の元、民間としては月と地球の交流を独占してきた過去があります。そして地球で得た莫大な利益の余剰分を月へと投資することで両国の交流を維持させてきました」

 

「「………」」

 

「もし今回の留学が失敗に終わる、或いはお二人が結ばれることによって月と地球の両国間の情勢が悪化した場合、財団はこれまで行ってきた行動…その成果そのものを失いかねないのです。財団側としてはそれだけは避けたいはず」

 

「それは…」

 

「その場合、財団が地球連邦政府に月への対抗措置を要求しかねないのです。そうなれば財団が持つ技術の軍事転用が行われ、地球側から月への攻撃が可能とさせることも考えられます。その結果が戦争―――第五次オイディプス戦争となりかねないのです」

 

「――――――それほど、財団は凄い技術を持っているんですか?まだ地球には月へと行く技術すらないというのに」

 

「達哉さん、それは違います」

 

 

 

え、と呆けたような声を上げてしまう彼を見てカレンは同情する。自分も事実を知ったとき、同じような声を上げたからだ。

 

 

 

「月へと行く技術どころか、財団はもうすでに月に独自の活動拠点を持っている可能性すらあるのです――――月のフォン=ブラウンという街に月と財団が共同出資してできた技術開発拠点がありますが、セフィリア様が崩御されて月と地球の関係が一時的に悪化した時期から…その拠点における財団の動きがきな臭くなっています。私どもも可能な限り調査しましたが『NDP』という単語ぐらいしか判明しませんでした」

 

「私たちが結ばれることによって月と地球の両国間の情勢が悪化させなければいいのね?その為には先ずあなたに認めてもらえればいい、と。」

 

「……そうなります。となると…そうですね。財団の方は私の方で対応させていただくとして――――達哉さんには試験を課したいと思います」

 

「試験、ですか」

 

 

 

自分がチャンスを与えるとは思ってみなかったのだろう。二人とも意外なものを見るような表情で自分を見るのをみて、カレンはそうとらえた。

 

 

 

「その『結果』を見て今後の事は検討させて頂きます」

 

「その試験の内容は?」

 

「剣道の試合をしてもらいます―――――フィーナ様と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほどな、だから竹刀を振って自己練習をしていたわけだ」

 

 

夏休みのはずの達哉がある日から、朝霧家の庭にて竹刀を振るい始めたのをみて不思議に思ったラウが声をかけると…達哉が大まかに事情を説明してくれた。

 

フィーナが剣術の達人であるカレンから10本に1本とれるほどの腕前である事。

 

一方の達哉は素人であり、しいていうなら体育の授業で習った程度である事。

 

そんな二人が試合を行い、その結果を見てから二人の交際を認めるかどうかを判断する、とカレンから言われた事。

 

 

 

「達哉……カレン=クラヴィウスは確かに『結果をみて判断する』と言ったのだな?」

 

「はい。だから俺…1週間で少しでも上達しなきゃいけないんです」

 

 

 

(……なるほど、カレン=クラヴィウスも中々面白い機転を利かせる)

 

 

 

「……ムリだけはするなよ、熱中症にでもなったらそれこそ洒落にならん」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 

頑張ります、と熱意が籠った返事をして再び竹刀を振るいだす達哉を見てラウは思案する。

 

下手にお節介を焼いて馬に蹴られたくもないが、無為に何もしないというのもどこか気が引ける。さてはて、どうしたものか。

 

―――そう考えるとラウの携帯端末に電話がかかってきた。その相手が表示されている画面を見て、ラウはとある案を思いついた。

 

 

 

 

「俺だ――――少し待て。後で電話をかけなおす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウは鷹見沢家の自室にてスーツに着替えてから、先ほどかかってきた相手と電話を再開させていた。

 

 

『代表…本当によろしいのですか?今まで一向に応じてこられなかったのに、秘密裏にとはいえお会いになるとは』

 

「かまわん、今回ばかりは情勢が変わってきたからな。万が一メサイアが露見したとしても、決して此方から手を出すな。専守防衛に努めよと通達を出しておけ」

 

『――――はっ、了解しました』

 

「我々の訓練が無駄に終わってほしいものだが…まぁいい。それで月行政府からの回答は?」

 

『仰られていた通り、『いつでも対応可能』だと先方に伝えたところ…本日の20時に満弦ヶ崎にある月の大使館まで来られたし――――だそうです』

 

「判った、あちらにもそれで大丈夫だと連絡を頼む」

 

『了解しました』

 

 

 

 

ピッと軽快な音がなりラウに通話が切れたことを知らせた。そして通話が終わると、彼は携帯端末で時間を確認する。

 

――――指定された時刻まで、まだ時間があることに気が付いた。

 

ラウは自室にあるパソコンの電源を入れ、そして画面が映し出されるのを確認する。

 

あるプログラムを開こうとすると、暗証コードを求められたのでラウは手慣れた様子でコードを入力し、プログラムを起動させて作業に入っていった。

 

 

 

program:new destiny plan

code:X-666S legend

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