運命の始まり   作:マッキンガムⅡ

22 / 22
キリが良いので投稿。


第19話

スフィア王国大使館内にて、カレン=クラヴィウス秘書官は新たなる王命を通信越しに受けていた、その内容は簡単に言うと『スフィア王国の代表として―――外務局と協調して事態収拾にあたれ』というものだった。

 

事態収拾にあたっている間はフィーナ姫には朝霧家にて滞在してもらうことになり、期せずしてフィーナ姫は本来通りの留学期間のままになったことを過ごしてもらうことになっていた。

 

本来ならば危険な事態にも発展しかねない状況下でフィーナ=ファム=アーシュライトの留学を続行など危険視されるのだが――――よりにもよって財団がすでに月に拠点を構えており、さらに別拠点を構えていることが想定されているのだ。

 

既にスフィア王国側にも財団関係者からの圧力もかかっており、その対応に忙殺されてフィーナ姫の地球留学反対派も派手に動くことが出来ない。

 

同じく外務局も右往左往の大騒ぎである有様であるらしいが、それも仕方がない事であろう。

地球連邦がロームフェラ財団の月の施設を査察するのだ、表面的には平和的な交渉とはいえ自国の領土にかつての敵国であった地球連邦を招き入れるのは抵抗感が強い事は想像に難くない。

 

ロームフェラ財団との協力によって生じた莫大な権益を勝手に放棄するわけにもいかず、外務局はスフィア王国政府………ひいてはアーシュライト王家の意向を無視して動くわけにもいかない。

 

 

 

その点において、政治にも軍事にも即応出来てかつ地球連邦政府との共同作業を行うともなれば――――それらをすべてこなせる権限を持つのは秘書官兼駐在武官として地球との交渉を一手に担っているカレンしかいないという事情もあった。

 

 

 

(率直に言って…かなり不味い状況であることには間違いない)

 

 

 

下手に月に地球連邦の勢力を入れるのを断れば地球連邦との関係悪化も考えられ、そうなればフィーナ姫の地球留学続行自体が難しくなる――――それだけは絶対に阻止せねばならない。

 

 

 

…かといって地球側の要求通りにすれば無条件で月の領土にあるロームフェラ財団との共同施設を査察されることになる。

 

それはスフィア王国の領土主権を侵害することになり、なによりロームフェラ財団側への背信行為と取られかない。

 

今やスフィア王国が存続していく上で重要になりつつある研究施設や研究都市となっている施設に多大な影響を保持しているのだ、ロームフェラ財団への関係も保持しておかなければならない。

 

それは地球側にも言える事なのだが、それを差し置いてロームフェラ財団への実質的な干渉に踏み切ったということは何か裏があるに違いないとカレンは踏んでいた。

 

 

 

(何より…彼が無策で当たるはずがない)

 

 

 

そう――――当のロームフェラ財団のトップであるレイ=ザ=バレルがこの状況下で無策であたるはずがないという確信がカレンにはあった。

 

ロームフェラ財団の理念は『月と地球の交流促進』であり、それが乱されることをひどく嫌う傾向が財団の行動からも読み解くことが出来た。

 

そんな財団がわざわざ地球側を刺激するような真似を自発的にするのか、という疑問が湧いてくる。

 

もしかして…この問題すら彼が仕組んだ壮大な計画の一部なのではないかと、とすら思えてしまう。

 

 

 

「クラヴィウス秘書官、外務局から出向してきたエステル=フリージア司祭がこちらに到着されました。執務室へお通ししても大丈夫でしょうか?」

 

 

 

大使館職員の声掛けに思考の沼に入りかけたカレンだったが、すぐに気を取り直す。

 

 

「通してください」

 

 

カレンの返答に分かりました、と大使館職員はカレンの執務室から立ち去っていった。

 

間も無くして大使館職員に案内されてきたエステルが入ってきた、その表情をみたカレンは何かがあったのかは知る由もないが―――エステル=フリージアは確かに人として成長したのだなと直感した。

 

 

 

「エステル、急な要請にもかかわらず、よく来てくれました」

 

「いえ、私は大丈夫なのですが――――先程フィーナ様と朝霧さんが二人だって大使館から出て行かれたのを見かけましたが、何かあったのですか?」

 

「そのことは気にしなくても構いません、私の仕事が一つ増えただけの事ですから」

 

 

 

そういって嬉しそうに笑う目の前の女性を見て、不思議そうにするエステル。

 

カレンはふと思う。エステルにもそういう存在が現れてくれることを願いつつも、一方で現実と向き合うことにした。

 

 

 

「それよりも―――要請した件について状況を説明しましょうか」

 

 

 

月側、つまりスフィア王国として地球との折衝はカレンに一任されていること。

 

そして地球連邦政府は地球に存在するロームフェラ財団の施設を査察することに決定して軍隊を派遣することに決定されたこと。

 

外務局長と話して教団の代表としてエステルを派遣してもらった事。

 

 

 

 

「貴女を呼んだのは教団としての立ち位置をききたかったからです。外務局長が来られると思ってましたが、その局長が代理として貴女を強く推薦した――――先ずはその理由を訊いておく必要があると私は考えています」

 

「…教団としては静観したいといった立ち位置であると外務局長より説明を受けておりますし、私自身も今はそうすべきと考えております。いたずらに地球との関係悪化を招くべきではないかと」

 

 

 

それと、とエステルは言葉を続ける。

 

 

 

「推薦された理由は私が『財団の代表と直接連絡を取る事が出来る』立場にいるからでしょう。実力も見させてもらったと話されましたが…」

 

実力と言っても人脈での評価が多大であり、実務能力は評価されるほどの事はしていないと捉えている為にエステルはやや不満そうにするのを隠そうともしなかった。

 

それを見たカレンは苦笑しつつも、エステルの性格的にそうなるだろうと納得していた。

 

 

 

「やはり彼は…レイは貴女にも連絡先を渡していましたか。他には何か渡されたり話されてませんか?」

 

「いえ…あの方からは渡されておりませんが――――別の方からセフィリア女王からの依頼でと渡されたものならばあります」

 

 

 

 

そういってエステルは懐からフィアッカから預かったものをカレンに見せた、それをみたカレンはやはりそうか、と思った。

 

 

 

「奇遇ですね。私もある人物から『セフィリア様からの依頼』だといって同じものを預かっています」

 

「え…」

 

 

驚くエステルを見て、さもありなんとカレンは思った。カレン自身も内心で亡くなった先代女王から同じものを託された仲間がいるとは記録媒体の中身を把握するまでは思ってもみなかったからだ。

 

 

「此方の中身は調べさせてもらいましたが、先代女王からのメッセージ…そしてある機動兵器のデータが不完全ながら入っていました。きっと貴女の預かったものと合わせて初めて、ちゃんとしたモノになるように細工がしてあるはずです。一緒にみてみましょうか」

 

 

そういってカレンの視線は執務室にあるパソコンに向けられた。

 

その動作に釣られてエステルも自然と視線をパソコンへ向けた、その仕草を見たカレンは立ち上がりエステルに手を差し伸べることで立たせて、執務室にある自分の仕事をする席に一緒に戻りパソコンの電源を入れて起動させた。

 

 

「この記録媒体のデータを託された当の本人である貴女が良いでしょうから…エステル、貴女が最初に見なさい、私も一緒に確認します」

 

 

そう話しながら、カレンは意図せずとはいえエステルを巻き込んでしまうことに申し訳なさも感じつつ――――しかしそれを表に出さずに淡々とパソコンを操作していった。

 

その動作はカレンが抱く迷いなど微塵も感じさせなかった。




思いつくままに書いているので大丈夫なのかとちょい不安。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。