引退したいオールマイト vs 自首したいAFO vs 何も知らない緑谷出久   作:バケギツネ

28 / 28
緑谷出久は奮闘したい。

 

◆side:AFO

 

【僕の名前は死柄木(わたる)。世界から個性を奪う存在だ。】

 

 甥っ子の声は静かだった。事実を淡々と読み上げるような口調。

 

 そんな彼の手によって、平和の象徴の身体は軽々と持ち上げられている。

 

『ちょ、ちょっと待ってくれ! 世界から個性を奪う? 一体どうしてそんな事を。』

 

【・・・別に? ただの興味本位さ。叔父さんだって。一度は憧れただろう? 自分だけが特別な存在である事に。】

 

 渡の放ったその言葉は、まるで自分自身に言い聞かせるような、苦しそうなものだった。

 

『嘘はよくないな。本当の狙いは別にあるんだろう?』

 

【・・・・・・何の話かな?】

 

『やっぱり君は与一の息子だ。お父さんに似て、嘘を吐くのに向いてない。』

 

【知ったような口をっ!】

 

 その一言が、彼の神経を逆撫でしたようだ。

 

 怒気を孕んだ叫びと共に、地面が唸る。土砂が隆起し、歪な怪物へと形を変えていく。

 

 同時に渡の背中からは、鱗と爪をきらめかせた龍が生え出ていた。

 

 そんなモンスター御一行様が、僕に向かってやって来る。

 

 あ、やばいやばいやばい。今の僕は満身創痍だってのを忘れてた。

 

 イボの個性も、全因解放も間に合わないし、普通に死、

 

「MANCHESTER SMASH!!」

 

 お、ありがとう。緑谷少年。

 

 強烈な踵落としで、僕に迫っていたモンスターを蹴散らしてくれた。

 

『あの、ほんとに面目ない。』

 

「いえ。貴方は下がっていてください。ここは僕が。その代わり、もしもの時は頼みます。」

 

『え、あ、うん。』

 

 緑谷少年は、僕を庇うように前へ出て、次々と遅い来るモンスターを、見事な体捌きでいなしてくれる。

 

 それより、もしもの時? 頼む? 一体何の話だったんだ?

 

 今すぐ聞きたいけど、緑谷くん今はモンスター達の相手で忙しそうだからな。邪魔しちゃ悪いし、

 

【これは、どうなってるんだ?】

 

 ふと渡の方へ視線を移す。彼の顔には明らかな動揺が浮かんでいた。

 

【オールマイトの個性を奪えない? なんだこの個性因子は。まるで“残り火”のように消えかけている?】

 

 よく分かんないが、どうやらオールマイトからは個性を奪えないらしい。

 

 そういやオールマイトの個性は、緑谷君に譲渡済みなんだっけか。それが原因かもしれない。

 

 逆に言うと、緑谷君が渡に触られたら、個性を奪われる危険があるって事か!

 

「DELAWARE SMASH!!!」

 

 そうこうしてるうちに、緑谷君はモンスターを全て片付けてしまったらしい。

 

 デコピンで放った風圧の弾丸で、正確に渡の腕を撃ち抜いていた。

 

【っ...!】

 

 渡の手から解放されたオールマイトは、ズルりと崩れてその場に倒れる。

 

 え、えっと、オールマイト大丈夫だよね? ピクリとも動かないんだけど。

 

 だが、そんな僕の心配を他所に、渡と緑谷君はバチバチに睨み合っている。

 

【緑谷出久。オールマイトの息子か。】

 

「いえ、違います。」

 

【え、そうなの?】

 

「はい。」

 

【あ、そうなんだ。えっと、とにかく君も中々厄介そうだ。オールマイトの個性は奪えなかったが、君の個性の方はどうかな?】

 

『・・・・・・』

 

 これ、ちょっと不味いか?

 

 幾ら緑谷君が強くても、相手はNo.1ヒーローを、瞬殺する程の腕前だ。流石にきつい。

 

 そして、緑谷君のOFAが奪われでもしたら、僕が与一と再開できるチャンスも永遠に失われてしまうだろう。

 

 うん。激まずだねこれ。

 

 この際ヤケクソになって、辺り一面に全因解放でもばら撒くか?

 

 いやでも、味方に当たっちゃう可能性があるしな。

 

 うん。ごめん緑谷君。今の所、僕は何も貢献できそうにない。

 

「St. Louis SMASH!!」

 

 そんな中でも緑谷少年は果敢に攻める。僕が食らえば、背骨が1発で折れそうな強烈な飛び蹴りだ。

 

【エニー・テレポ】

 

 しかし渡は瞬間移動で、蹴りを放った緑谷君の背後を取る。

 

【さあどうなる?】

 

 渡の手が緑谷少年の首へと伸びて、そしてすり抜けた。

 

【っ!残像か...?】

 

 緑谷少年の姿は虚像のように霧散する。本物の彼は、渡の背後で腕を振り上げていた。

 

「DETROIT SMASH!!!」

 

【っ、キメラ!!!】

 

 渡の背後にワニのような尾が生える。リーチで勝るその一振りが、緑谷君の拳が届くより早く、彼の胴体を打ち据えていた。

 

「っ、うおおおお!」

 

 だがそれでも緑谷君は止まらない。受け止めた尻尾を脇に抱え、振り回して地面へと叩き付けていた。

 

「WYOMING SMASH!!!」

 

 地面へ倒れた渡へと、緑谷君は追い討ちをかける。

 

【ワープゲート。】

 

 しかし渡は、地面に発生させたワープゲートに沈みこむようにして、その攻撃を回避していた。

 

【流石に君も友達の個性を使われれば、動揺くらいはしてくれるかな?】

 

 そして、別のゲートから現れた渡の手からは、煌めく汗が爆ぜている。

 

【爆破。】

 

 爆豪少年の個性が、緑谷君へと襲い掛かった。その威力は凄まじく、爆風は遠く離れてた僕の元まで届いたほどだ。

 

【おっと、少しやり過ぎてしまったか、】

 

「DEXAS SMASH!!」

 

 緑谷君は防御すらする事なく、前進していた。爆風から飛び出した彼は、渾身の拳を渡に見舞う。

 

【アイアンボール+衝撃波+バリア。】

 

 その一撃は、渡が即興で作った盾に大きなヒビを入れ、彼の身体を大きく後退させていた。

 

【なあさっき、爆破をモロに喰らったはずだろ?】

 

「普段喰らってた爆破の方が、威力も殺意も、もっともっと強烈なので。】

 

【え? 友達に何してんの爆豪勝己(あの子)・・・】

 

 爆豪君にドン引きつつも、渡は攻撃の手を緩めない。

 

【ならこうしよう。爆破+竜巻。】

 

 渡の両手には、竜巻と爆破が同時に発生していた。

 

【サイクロン・ハウザー。】

 

 竜巻の回転に乗った爆破は赤い渦を巻いて、緑谷君を飲み込もうと迫り来る。

 

「っ...!」

 

 そんな攻撃を前にしても、緑谷君の瞳からは闘志が消えていなかった。

 

 彼は拳を握りしめ、渾身の一撃に備えている。

 

「DETROIT SMASH!」

 

 緑谷君が一気に腕を振り抜いた。

 

 超パワーのSMASHが、爆風へと放たれて、

 

【ワープゲート。】

 

 緑谷君の拳が、彼の真ん前に出現したワープゲートに吸い込まれる。

 

「まずっ、」

 

 その直撃、緑谷君の背後に出てきたゲートからは、彼の右腕が飛び出して、彼自身に命中する。

 

 緑谷君はワープゲートによる撹乱で、自分で自分を殴ってしまった形だ。

 

「んぐっ...!」

 

 思わずふらついた緑谷君の目の前には、サイクロン・ハウザーがすぐそこまで迫っていた。

 

 爆風の渦巻きは無防備な緑谷君の全身を飲み込む。

 

【ちょ、緑谷君!】

 

 彼は倒れ伏し、その巨体は地面にぶつかって鈍い音をたてていた。

 

【安心してくれ。緑谷出久は死んではいないよ。】

 

 緑谷君の元へと瞬間移動した渡は、彼の身体へと手を伸ばし、

 

「DELAWARE DETROIT SMASH!」

 

 緑谷君は立ち上がる。焼け焦げたボロボロの身体のまま。

 

 渡が勝利を確信し、個性を奪おうと自らに近付く機会を、ずっと伺っていたのだろう。

 

【アイアンボール+衝撃波+バリア、んぐっ!!!】

 

 狙い澄ました会心の一撃は、渡の防御を粉砕して、彼の顔面を捉える。

 

 殴られた勢いでそのまま地面を転がる渡は、今日初めて地面に背中をつけていた。

 

【ハハッ参ったね。爆豪勝己といい、君といい、最近の子供達はとんでもないな。......まあ、未来の事を考えれば、その強さにも納得がいく。】

 

 少しふらつきながらも立ち上がった渡は、深く息を吸う。次の瞬間には、その目つきと纏う雰囲気が変質する。

 

【半分ほど、本気を出すとしようか。】

 

 渡の掲げた右手が光る。その中心には高密度に圧縮された個性因子の力が収束していた。

 

 あんな出力の全因解放。僕にはとてもできない代物だ。アレで半分の本気? イカれてる。

 

 って言うか、あんなとんでもないのをぶっ放したら、いくら緑谷君でもタダでは済まないぞ!?

 

【緑谷出久、君は強かったよ。だけど相手が悪すぎた。僕の目指す明るい未来の為に、君の(こせい)を奪わせてもら、】

 

『いや、そうはさせないさ。』

 

 声が響いた。

 

 聞く人を心から安心させる、力強くも優しい、そんな平和の象徴の声が。

 

『何故って?』

 

 空気が震え、戦場が圧倒的な存在感で満ちていく。

 

 岩のように隆起した筋肉に、全身から溢れ出す光り輝くエネルギー。

 

『私が、来た!!!!!』

 

 そこに立っていたのは、完全復活を果たしたオールマイトだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

エンカウント率ぅ(作者:フドル)(原作:ONE PIECE)

 とある時期から何故か原作キャラとエンカウント(強制)するようになったオリ主が、これは呪いだと思いながらもエンカウントしたキャラ達から逃げたり、仲良くなったり、戦ったりする話。▼ なおエンカウントするキャラは高確率であのお方。


総合評価:18734/評価:8.84/連載:41話/更新日時:2026年01月04日(日) 18:21 小説情報

僕のヒーローアカデミア 継承の黎明(作者:伽華 竜魅)(原作:僕のヒーローアカデミア)

もしも"個性"を受け継いだ時から歴代"個性"を発現させたら?そんな物語


総合評価:7106/評価:8.44/連載:37話/更新日時:2026年06月18日(木) 13:00 小説情報

【悲報】目覚めたら巨人だった【敵じゃないよ】(作者:佐東)(原作:進撃の巨人)

目が覚めたら進撃の巨人世界で無垢の巨人になってた。▼「オ゙エ゙ア゙ア゙!ガオガオ!」▼(俺は敵じゃない!善良な巨人なんだ!)▼何とか人類の味方になったり人間に戻ったりしたい男の話。▼↓なんとなくのイメージ図を載せてみたり。▼【挿絵表示】▼心優しい化け物になる人外転生が好きなので自給自足しました。誰か書いてください。▼☆カニ・バ・リズム☆様からイオリのファンア…


総合評価:12756/評価:8.41/連載:40話/更新日時:2026年05月12日(火) 18:00 小説情報

ミーア・キャンベル()の憂鬱(作者:星乃 望夢)(原作:機動戦士ガンダムSEED DESTINY)

転生先は特大の死亡フラグが待っているあのプラントの歌姫()ミーア・キャンベルだった。


総合評価:17616/評価:8.88/連載:47話/更新日時:2026年01月08日(木) 00:00 小説情報

進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……(作者:感謝君)(原作:進撃の巨人)

信じられないと思うが聞いてくれ ▼俺は昨日までしがない大学生としてベッドに転がりながらいつも通り動画を見て惰眠を貪っていたんだ▼別にトラックに轢かれたとか、手違いで殺しちゃったから転生させるね!おじいさんにあった訳でもない▼気付けば俺はだだっ広い平原の真ん中で全裸で突っ立っていて▼鋼のような肉体に転生していたんだ▼……進撃の巨人の世界に……▼


総合評価:5620/評価:7.27/連載:188話/更新日時:2026年06月23日(火) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>