機械にだってココロはあるもん!   作:難聴系以下略

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プロセカ本編は基本的に登場人物の悩みを解決するのにバチャシン達が手助けしてくれるのが殆どですが、せっかくならバチャシンも曇らせたいよね!という悪魔みたいな意志から生まれた作品です。



VOCALOID曇らせ -Leo/need 鏡音リン編-

 

_ある夏の夜。夜になっても街から明かりが消えない、その姿はまるで不夜城。東京での、とある少女とVOCALOIDのお話...

 

暗い部屋の中、椅子に座ってデスクトップPCで作業する少女が一人。彼女は音楽を鳴らしては編集し、鳴らしては編集しを繰り返していた。

「…あ、今のメロディーいいな…でもちょっと音が浮いて聴こえるかも…ふぁぁ…」欠伸をする。

 

彼女の名前は星乃一歌。友人想いの優しい少女であり、幼馴染と共にLeo/needというバンドを結成し、今はプロとして活動しているのである。

 

そして、彼女は昔から初音ミクの曲が大好きなのである。今は、ミクを用いた曲作りに挑戦している…が、どうやら行き詰まっているようだ。

 

好物の焼きそばパンを一口食べ、一歌はまた曲作りに勤しむ。…その時、彼女のスマホから映像が立ち上がり、声が聞こえた。

「いっちー、頑張ってるね!」

「ん、リン、ありがとう。でもちょっと行き詰まってるかも…」

 

リンと呼ばれた明るい少女は、VOCALOIDであった。一歌の想いによって生まれた「セカイ」の中で、一歌や仲間達、他のVOCALOIDとバンド活動をしているのだ。

 

「でもいっちー、もう外真っ暗だよ?いっちーの目にクマもあるし、そろそろ休んだら?」心配そうだ。

「…えっ、もうこんな時間?」もう深夜1時を回っている。

「うん…。いっちー、最近頑張りすぎてると思うからさ、少しは休んだほうがあたしはいいと思うな!」

「…そうかな…。まぁとりあえず、一息つくかな…」

 

PCから目を離し、伸びをする。しかし束の間、また作曲活動を再開してしまった。

 

「え、まだするの?」リンは少し驚いているようだ。

「うん。…まだ完成してない部分がいっぱいあるから。」

「そっか…。でも無理はしないでね?もし現実世界(こっち)でいっちーが倒れでもしたら〜…あたし、どうしようもないからね?」

「うん、分かってる。…ありがとう、リン。」頷きながら答える。

 

一歌は作曲に集中しているようだ。リンとしては早く休んで欲しいのだが、一歌が頑張りたいのなら、止めるのは申し訳ないと考え、敢えて何も言わなかった。

 

「…それじゃ、またお昼ね〜!」

「うん、またね、リン。」リンの映像が切れる。

 

後にこの選択を後悔する事になるとは、リンは欠片も思っていなかった。

 

 

一歌はそれから数十分、休みなく作曲活動に勤しんでいた。

「このメロディーはちょっとしっくり来ない…ミクの声を引き立てるなら……これだ!」どうやら、納得いくメロディーが出来たようだ。

「はぁ…。よし、この調子でどんどん_」

 

 

 

瞬間、一歌の視界が暗くなる。

 

 

 

ドンッ

 

「…えっ…?」椅子から転げ落ちてしまったようだ。手足に力が入らない。

 

音を聞いたリンが再び映像を投影して一歌を呼ぶ。

ん…?いっちー、どうかし…」彼女の目に、床に倒れ込んだ一歌が飛び込む。

「い、いっちー!?どうしたの、大丈夫?ねぇ!」慌てて名前を呼ぶ。

 

倒れたまま動けない。朦朧とする意識の中、自身を呼ぶ声に反応する。

「だ、大丈夫…ちょっと、疲れちゃっただけ…だよ…」

「た、立てる?」本当なら今すぐにでも一歌を抱きかかえてベッドに寝かせたい。が、リンの姿はあくまで映像なので一歌に触ることが出来ないのだ。

 

力を入れるが…「む、無理かも……でも、大丈夫だよ、少ししたら立てるはず…!」しかし、一歌の声は弱々しく、リンの不安は募るばかりだ。

「絶対大丈夫じゃないよ!?…ど、どうしよう…」

 

リンの不安な声を聞いて、一歌は彼女の為に無理にでも立とうとする…が…「大丈夫だよ、ほらっ…!うっ…ゲホッ、ゴホッ…!」

涙目になり、叫ぶように「や、やめて!ダメッ!」

「ゲホッ…はぁ…はぁ…立てないか…。…ちょっと不味いかも…。リン、スマホに触れる?」

「えっ?スマホは…行けるけど…」リンは焦っている。彼女の目尻に涙が溜まっているのを見て、一歌の胸が痛む。

 

「な、泣かないで…リン。…119番に通報して、スマホを私の耳元まで持って来てくれるかな…ゲホッ…。」

「わっ、分かった!…出来たよ!」スマホを一歌の耳元に持っていく。

 

 

『こちら◯☓消防署です。火事ですか?救急ですか?』

「救急で、自宅で倒れちゃって…ゲホッ…、私の名前は_」

 

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

 

『了解しました、一歌さんのご自宅に今救急車が向かっております。隊員が到着したら隊員の指示に従ってください。』

「は、はい…ありがとうございます…。」電話を切る。

「あ、ありがとうリン…」

「い、いっちー…」依然として心配そうだ。当然と言えば当然だが…。

 

 

しかし十分程経っても、まだ救急車は疎かサイレンすら聴こえない。一歌達は知る由もないが、運悪く道中が通行止めにあい、迂回しているようだ。

 

「ま、まだかなぁ…っ!」リンはもう溜まらないと言った状態だ。そこに、一歌がある言葉を言う。

 

「…さ、寒い…」部屋にエアコンを効かせすぎたせいである。冷え切った床に倒れたままの一歌の身体はかなり冷えていた。

 

「さ、寒いの?なにか、布団を…」しかし、触れられない。目の前で寒いと言っている友達に何もしてやれない無力感が、リンを襲う。

 

一歌はぼんやりとリンを見つめる。必死に自分を助けようとしてくれているリンを見て、少し微笑む…が、微笑んでいられるほど状況は優しくなかった。

「…はぁ…はぁ…」荒い息を吐く。低体温症になりかけているのだ。「…リ、ン…」しかし、言葉とは裏腹にどんどん意識は薄れていく。

「ひっ……いっちー!!?」一歌の姿は、リンの不安感、無力感を掻き立てるには余りにも充分すぎる物だった。

 

そこで漸くサイレンの音が聞こえてくる。「あ…」

「は、はやくぅぅ…!」

 

家の扉が開き、隊員達が入ってくる。*1『救急です!大丈夫ですか?』

 

そうして、一歌は病院に搬送されて行く。リンは慌てて後を追うが、スマホからあまり離れられないのだ。「…いっちー…!」

 

 

話すのも苦しい中、何とか声を出して「あの…あのスマホも持って行ってください…お願いします…」

『分かりました。』

 

 

こうして、一歌達は病院に運ばれた…

 

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

 

1時間程経っただろうか。病院に運ばれて医師の診断を受けた一歌は、病室のベッドの上で眠っていた。

 

リンは再びスマホから姿を投影し、近くの椅子に座る。

リンの頭の中に、聞こえてきた医師の診断の言葉がよぎる。

『過労と酸欠、貧血による物だと思います。恐らく無理をしていたのでしょうか…低体温症にまでなっています…』

 

「あたしがあの時…いっちーを止めてたら…無理矢理にでも休ませてたら、こうはならなかったよね…」

リンは後悔している。何故あの時、止めなかったのか?目にクマがある事は分かっていた、無理をしている事は分かっていたはずなのに。

 

彼女は確かに人によって作られ、想いを繋ぐためにセカイに生まれたVOCALOIDだ。自分は歌う機械である事、感情も結局は創られた物だなんて事は分かっている。

…しかし、14歳の快活で優しい少女として創られたリンは、まだどこか不安定で、抱え込んでしまいそうな所があった。

 

目の前で友達が無理をして倒れて、寒さに震えても彼女は何も出来なかった。しかもその友達は自身の鏡写しの存在(レン)と同じくらい大事な存在なのだ。そんな大事な友達が危険な時に目の前で見守るしかない…その無力感、やるせなさは凄まじかった。

 

そんな中、一歌が目を覚ます。「ん…リン…」

「いっちー…!良かったぁ…」

 

「ごめん、いっちー…あたし、いっちーが危険な時に、力になれなかった…」涙目だ。

目は天井を向いているが、微かに唇が動く。「…リンの…せいじゃないよ…私が…忠告を聞かずに…無理しただけだから…」

「いや…あたしのせいだよ…っ。あの時無理にでもいっちーを止めてたら、こうはならなかったはずだよ…!」苦しそうな声だ。

 

ゆっくりと目を開く。まだあまり焦点の合わない目でぼんやりと辺りを見つめ、側に座っているリンの頬を撫でようとする…が、当然触れられない。「リン…」

「ッ…!ご、ごめんね、あたし…今…」何か言いかけて、口を閉じる。映像でしかここにいれなくて、撫でる事も、手を握る事すらも出来ない。そのどうしようもない事実が、リンの幼い心を更に抉った。

「あたしが…もっ、と…早ければ…いっちーがこんなになったのも…全部…全部…!」

 

力無く手を下ろし、目を閉じる。暫く沈黙が流れた後、口を開く。相変わらず声は弱々しかった。「…ううん、それは違うよ…リンは何も悪くない…ただ、私の体力管理が甘かった、だけだよ…」

 

思い込みとは時に残酷だ。リンが一歌を大事に思えば思うほど、自分が結果的に一歌を追い詰めたと思っているリンの心は抉られていく。

「ち、がう…あたしが、もっと…誰かに、頼れって…言わなかったから…あたしが…ぜん、ぶ…」そう言うリンの顔色は悪く、汗をかいていた。

 

リンが自分のせいで悩んでいると分かっているからこそ、一歌の胸が痛む。「…そんなこと言わないで…リン。私は別に…大丈夫だから、そんなに思い詰めなくても…」出来るだけ明るく笑顔を作る。

 

「…ッ…、無理して、笑わないでよぉ…ッ!」彼女の心には、一歌が倒れたという事実は重すぎたようだ。

「あは…あはは…。あたしがもっと早く止めてれば…こんな…」

リンの目から涙がこぼれ落ちる。

 

「…それに…あた、しがいっちーのそばに、いるより…ミクぴょんが側にいたほうが…っ。…いっちーは嬉しい、よね…。セカイから、呼んでこないと…」もうリンの心はズタズタだ。

 

無理に笑顔を保とうとしていたが、リンの言葉に更に罪悪感を感じる一歌。自分の体力を見誤るなんて、しょうもない間違いを犯してしまった事でリンを追い詰めた事に、胸が痛む。

「…リン、泣かないで…私の為に泣かないで…?それにミクには__」一瞬言葉に詰まり「…後で、会えるから。…ね?」半分嘘だ。本当は今すぐにでもミクに会いたいのである。…だが、リンを傷つけるのはもっと嫌だった。

 

しかし、壊れ始めた物は簡単には直らない。

「…そう、かもね…あはは…はは…人一人助けられないVOCALOIDなんて…いっそ…消えたほうが…マシなの、かな…」

 

一歌は知っている。普段の快活で明るく元気なリンを。だからこそ、ここまで追い詰められたリンへの接し方が分からなかった。

慌ててリンの言葉を否定する。まさかリンがそんな考えを抱くとは考えていなかったからだ。しかしどうしていいか分からず、とりあえず名前を呼んでみる。

「だ、ダメだよリン。そんなこと言わないで。…リン?」

 

「あ、はは…あたしがいなくなれば、いっちーもすぐ元気になるかも…ね…だって、こんなの…見たくないでしょ?…友達が…こんなに、なってるの…見るの…辛いでしょ?」

リンの声が震える。

「…そもそもっ…いっちーは…あたしの、事を友達だと…思って、くれて、る?」いよいよ、自分と一歌の関係性まで不安に感じてしまった…。

 

リンの震える声が一歌にグサリと刺さる。彼女はただ友達として自分を思ってくれているだけなのに、その事実がリンに伝わらないのが溜まらなく悔しい。

「…勿論、思ってるよ。」一瞬言葉に詰まって

「当たり前じゃん…リンは大切な友達だよ…だからそんなこと言わないで…!」

 

言葉に詰まってしまったのが行けなかった。

虚ろな笑みで「…いわせ、ちゃった…無理させて…」

震えて、涙を流しながら。

「…大事な、ともだ、ち、なんて…無理矢理…」

一歌は気づく。リンの目からハイライトが消えている事に。

 

何を言っていいか分からない。何を言っても今のリンには毒になりそうだからだ。「…ううん、本心だよ。…私が大丈夫って言ってるのに、なんでそんなに自分を責めるの…?」

 

「…あたしが、弱いから…あたしのせいで…みんなが…っ…」

あまりにも大きなストレスを受けたせいか、リンはもう_

 

「…あ…ごめん…あたしがここにいるのが一歌に悪い、よね…セカイに、戻るね…」

 

リンからあだ名ではなく「一歌」呼びされた事に驚いてしまう。…そして、悲しくなる。でも、それより今はリンを止めなければ。今セカイに行ってしまうと、二度と会えない気がしたから…。

「…ダメ、行かないで。お願い…私が悪かったんだよ。…私が耐えられなくて…倒れただけだから…ね?」混乱した顔で必死に呼び止める。しかし、コレが逆に止めを刺してしまった。

 

 

「…耐えられ、ない…?あたしが、ストレスになってたって、こと……?」ここで最悪とも言えるすれ違いが起きてしまう。いくらリンでも、こんな事を言われては…

 

意味が伝わっていないことに気づき、早口で「ち、違うの、そうじゃなくて…私がリンのせいでストレスを感じて倒れた訳じゃなくて私がっ…!…。」自分の言葉がリンに更に刺さっている事に気づき、口を閉じる。

 

「…や…よ…ら…

そう言う彼女は、涙を溢れさせていた。

「……じゃ……」セカイに戻ってしまった。

 

リンがセカイに戻ると、一歌は茫然自失とした気持ちになる。彼女の頭の中はリンの事でいっぱいだ。

「リン……ごめん…。…早く体調を整えて、どうにかしないと…!」

 

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

 

-教室のセカイ-

 

リンがセカイに戻ると、近くには休憩しているレンがいた。

「ん、お帰り。一歌の様子はどうだっ……たの…?」

リンは無言でレンに倒れ込む。

レンの服の裾を掴んで「……レ、ン…」

 

リンの様子がおかしい事はすぐに分かった。

「リン…どうかしたのか?」

しかし、レンの言葉を意に介さず、リンは一箇所を眺めていた。ガラス越しに、ミク達が楽しそうに曲を演奏している。

…その光景は、今のリンには拷問と言えるだろう。普段あの中で一番快活なリンには特に。

 

リンは泣き叫ぶ。

「…あたし、だって…あたしだってぇ……っ!」孤独な叫びがセカイに響いた…

 

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

 

『…退院おめでとうございます、くれぐれも無理はしないように。』 

「はい。ありがとうございました…。」数日後。一歌は無事退院して、さっそくセカイに向かった。

 

入院中、ずっと一歌はリンの事を考えていた。だが、身体は思うように動かないし、何より無理矢理会いに行っても更に関係が悪くなりそうで…

(これが、入院中の咲希の気持ちだったのかな…)

 

だが、自分から動かなければ状況は変わらないのだ。

セカイに来た一歌は、急いでリンを探す。

 

「リン…どこ…?…レン!リンがどこにいるか分かる…?」

「一歌!…リンは、屋上で…」

「分かった、屋上だね?ありがとう!」

「あっ、ちょっと!?」

止まれない。一刻も早くリンに会わなければ。

 

屋上で、この数日リンはずっと自分を責め続けていた。ずっと、ずっと泣いていたのだ。

「……っ…ごめんなさい……ごめんなさいっ…」

 

「_リン!」急いで駆け寄る。…リンの声は枯れていた。VOCALOIDが声を枯らすなんて、いったいどれだけの間泣いていたのか…あまりに痛ましい光景に、一歌は胸が詰まる。

 

「…ぁ……一歌…?…っ!」驚きと喜び、そして…絶望がリンを包む。

「…ご、めんなさい…!あ、たし…あた、し…っ!」すぐに泣き崩れる。

 

一歌はリンを慎重に抱きしめる…セカイの中なら触れる。

…リンの目にはクマがあるし、腕には自傷したのか怪我もあった。…こんな状態で何日も放っていたと思うと…

「…リン、もういいよ。全部私のせいだから…」

 

「……ち…が…ぅ…わるいの、は…ぜんぶ、あた、し…あたしが、全部…」

罪悪感と自責の念に苛まれているリンに一歌の言葉は届かない。…いや、届いてはいるが、リンがそれを否定しているのだ。

「なんで、あたしに…会いに……そっ、か…ぁたしを…責めるため…か…あは、は…」

 

一歌はリンの手をぎゅっと握る。彼女の手は小刻みに震えていた。…まるで、今にも壊れてしまいそうなガラス細工のように。

「ううん、違うよ。全部私が台無しにした。リンは悪くないよ。」

 

「……う、そ…つか…ないで…あた、しなんか、どうでも…いい…か、ら…」心が荒れ狂い、激しい自己嫌悪に襲われているリンにはまだ届かない。いや、まだ否定している。

 

一歌はリンの手を絶対に離さないようにしっかりと握りしめる。

「…嘘じゃないよ、リン。…お願い、そう思わないで……リン!」

 

「…なん、で…?なんで、あたし…?」躊躇しながら

「…あたしより…ミク…とか…レン、とか…いるの、に…」

自虐的だ。リンは察している。自分が一歌の「1番」では無いことを。

 

一歌はリンの言葉に胸が痛む。だって間違ってないのだから。だが_「…リン。確かに私が一番好きなのはミクだよ?…でも、一番大事なのは…皆なんだ。」一歌の言葉に嘘はない。

 

「…はぁ…ふぅ…ふぅ……」

一歌は息が荒いリンをぎゅっと抱きしめる。

「リンは…沢山私を笑わせて…喜ばせて…助けてくれたよね?」

 

…そして、一歌が一番伝えたいこと。それは…

「…リン。私を助けてくれて…ありがとう。

 

「…ぁ……う…そ…でしょ…」リンは驚いている。そして…

 

 

「なんで……。なんで…なんでなんでなんでなんでなんで!!」

 

叫んだ後に、暫くして。

「…なんで…あたしは今、こんな気持ちなの…?」

 

一歌はリンの感情を読み取る。今のリンは自分を保つのが難しいのだろう。「ごめんね、リン…今までこんな気持ちにさせて。…病室で伝えられれば良かったのに…」一歌の目には、後悔と安堵の色が見えた。

 

「……っ…!……うぅっ……うあぁぁ!!!

 

感情が爆発したリン。赤子のように、一歌に支えられて大声で泣き叫び…次第に声は小さくなっていく。

 

「……それ……でも…結局、あたしは一歌のストレスで…」まだ勘違いしている部分がある。

 

あの勘違いはリンのボロボロな心を更に切り裂いてしまったのだろう。「違うよ、リン。私は、リンの事はストレスなんかじゃなくて…」言葉を止めて「…好き、だよ」

 

「…………………ぇ……ほんと…?」リンは戸惑っている。

 

「あはは、なんか告白みたいになっちゃったね…でも…私はミクと同じぐらい、リンの事が好きだよ。」真摯な眼差しでリンを見る。

 

「…ほんとのほんとの…ほんと…?」

まだ信じられないリン。だが、その声には喜びが混ざっていく。

「………………っ!」一歌が頷くと、リンは一歌の腕の中に飛び込んでしまう。

 

「………ぅぅ……!」リンは静かに泣いていた。今度は、嬉し泣きだ。

 

一歌は、腕の中で泣く小さな少女(歌い手)を見て、後悔してもしきれない気持ちになる。正直、リンをVOCALOIDとして見ていた所はあった。だが実際はどうだ。年下の、こんなにも可愛らしく…壊れやすい少女にこんな思いをさせてしまっていた。

 

暫くして、落ち着いてきたリンが言う。

「…あたし、勘違いしてた…てっきりミクが好きな一歌だから、同じVOCALOIDのあたし達にもこんなに優しくしてくれてるとばかり…」

 

「違うよ、リン。私は_」深呼吸をして。

「…私はリンの事が大好きだよ。ミクとは違って、どこまでも明るくて快活な君が…笑顔の似合うリンが大好きなんだ。…ちょっと恥ずかしいな…」

…これがどれほど遅くなった言葉なのか、一歌は分かっている。ミクもリンも、他のVOCALOID(友達)も…一歌にとっては、最高の友達なんだから。

 

「ッ……一歌ぁっ…!」再び涙目で

「あたし、すごく嬉しい…!こんなに素敵な友達がいて、こんなにあたしの事を考えてくれて…!」

 

頭を撫でながら「もう、可愛い顔が涙で台無しだよ?…迷惑かけてごめんね、お詫びにミカン買ってくるよ。」

 

目を輝かせて「えっ、ミカン!?一歌…いや、いっちー…!やっぱり最高!楽しみに待ってるよ♪」

先程の暗さは何処へやら、今のリンの目には輝きが灯っていた。

 

その目に、その姿に、一歌は確かな喜びを感じた。

彼女の目標は人と人を「繋ぐ」こと。

 

世界を広くみれば、この出来事は、友情は些細な事かもしれない。だが…、自身の手でその一歩を踏み出せたことに、一歌は喜んだのだ。

 

一歌はその感謝を伝えようと、リンに話しかけようとして…

「ねぇ、リン。本当に_」…言うことを止めた。

この言葉は、今言うべき事ではないのだろう。一歌の目標の達成には、まだまだ沢山の時間と、努力が必要なのだから。

 

「…?いっちー、どうしたの?」リンは首を傾げる。

 

でも、代わりに一つ言えることはあった。「…これからも、私達と…誰かの想いを繋げるような、曲を演奏してくれる…?」

 

…リンの回答は、ここに綴るまでもないだろう。一歌はその返事に希望を見いだして、リンと握手をした。

 

 

 

もう二度と、離さないように。

 

 

 

これは、一人の少女とVOCALOIDの(優しい歌い手の)、友情の物語_

         〜THE END〜

 

 

*1
音声認識型で、事前にリンの声も登録されていた為鍵が空いている。





この話は、普段誰かの悩みを落ち着いて聞くことが出来るミクやレン、ルカやMEIKO、KAITO…5人の誰かではなく、リンが一歌の側にいたからこそ起きた悲劇でもあります。

ですが、この辛い経験を乗り越えた二人なら、最高の音楽を奏でられるのではないでしょうか?


次話を作るかは未定ですが、まだモチベはあるので恐らく次の話もあります。…にしても、リンちゃんが絶望するの書いてて楽しかっt
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