機械にだってココロはあるもん!   作:難聴系以下略

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ここまでの二人は、誰かを助けられなかったり、誰かに拒絶されたりした事で曇りましたが…同じような物を見続けたら飽きる、とは誰が言ったのか、全くもってその通りですね…ネタが…足りない…

ということで、夢を追い続ける少女達に脳を焼かれた初音ミクを御覧ください。


VOCALOID曇らせ -MORE MORE JUMP! 初音ミク編-

 

『_ここまで沢山の歌を聴いてもらえて、凄く嬉しいよ!』

『えぇ、その通りね!…でもみのりも、そして観客の皆もまだ満足しちゃダメよ?』

『分かってるよ愛莉ちゃん!だってまだ"アレ"、歌ってないもんね!』

 

その声に、その動きに、その歌に、彼女達のファンは意識を惹きつけられていた。

 

『うふふっ…!やっぱりステージに立って、皆の前でパフォーマンスを披露するのは楽しいわね!』

『そうだね。私達が楽しく演れてるのも、皆が盛り上がってくれるこそだよ。』

『さぁ!遥ちゃん、愛莉ちゃん、雫ちゃん、歌おっか!会場の盛り上がりを"爆発"させちゃおう!!』

『そうだね、みのり!…それじゃあ皆、最後の曲もしっかり付いてきてね!』

 

『『『『Supernova!』』』』

 

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-ステージのセカイ-

 

みのり達が歌っている様子を、セカイからミク達は見ていた。

「わぁ、今の動きすごーい!4人の動きがぴったり揃ってたよ!?」

「あの部分、みのりちゃん達はずっと練習してたんだよ…成功するまで帰らないって言ってたけど、うまくいって良かったな!」

「帰らないだなんて、あの子達らしいわね〜」

 

会場には、絶え間ない歓声が沸き上がっていた…

 

「……………」そんな中、ミクは彼女達を無言で見ていた。まるで心ここに非ずと言わんばかりに。

 

「…ミク?どうかした?」

「___はっ!い、いやー、ちょっと見とれちゃって…」

「本当に上手になったよね、4人共。僕も感動しちゃったよ…」

そう言いながら、満面の笑みをするKAITO。

 

「…そうだね!みんな、とっても上手になったよね…とっても…」その声には、少しの寂しさが混じっていたのかもしれない。

 

「みのりちゃん達が帰って来たら、打ち上げでもしてあげない?」リンは提案する。それなりのライブ会場でこの盛り上がりを得られた事は、これから先への飛躍への足掛かりになるだろうから。

 

「良いじゃん良いじゃん、リン!せっかくだし、サプライズにしない?みんなでみのりちゃん達を喜ばせようよ!」

「あら、楽しそうね!よ〜し、そうと決まれば早速準備しちゃいましょう!」

 

そうして、彼女達は打ち上げの準備に入る。あれやこれや、どんな事をしたら喜ぶか話している彼女達の顔は、ステージに立っている時に負けず劣らず輝いていた…

 

しかし、ミクは席を外す。「………」

「あらミク、何処に行くの?」MEIKOはミクに尋ねる。

「…ちょっと、練習にね。油断したらあの子達に追い抜かされちゃいそうでさ。…打ち上げの準備は任せるね、私、トレーニングルームにいるから…」彼女はMEIKOに顔を向けずに答えた。

「…そう?なるべく早く戻ってきてよ〜?」

 

「…あれ?メイコさん、ミクはどうしたの?」

「それが、みのりちゃん達に負けないように練習するって…」

 

それを聞いたKAITOは何か違和感を覚えつつも、視線をライブに集中させていた。

(まぁ…少ししたら戻ってくるんじゃないかな?)

 

 

 

      どこかで(シル)が一滴、零れ落ちた。

 

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-現実世界・控室-

「お疲れ様、皆!練習通りに上手くいって良かったわね!」

熱気に包まれたライブが終わり、彼女達は控室で着替えをしていた。

 

「にしても、思ったよりも沢山人が来てくれたよねぇ…はわわ〜、私、ダンスの振り付けとか間違えてないかな!?」

「大丈夫よ〜みのりちゃん、私が見る分にはしっかり踊れてたわよ〜!」

「じ、自分が踊りながら周りを見る余裕があるなんて…!流石です、雫先輩!」

「うふふ、そういうのは慣れよ、慣れ!」

 

そう会話する彼女達の顔には達成感と、若干の余裕が浮かんでいた。

 

遥はそんな中でもみのりを見て、少し考え深くなる。

「…昔はみのり、1曲歌っただけでもヒーヒー言ってたのにね。今は全然余裕があるみたいだけど…」

「懐かしいなぁ〜…沢山鍛えて、歌って、踊って…気づいたら全然キツくなくなってきたの〜!」

「へぇ〜?ならみのり、明日から特訓メニュー増やすわね♪」

「あ、愛莉ちゃんそれとこれとは話が〜!」

 

その時、みのりのスマホから映像が投影され、ルカが現れる。

『皆、ライブお疲れ様〜!』

「ルカさん!ありがとうございます!」

『皆のライブ、セカイからしっかり見てたわよ〜?皆動きが揃っててカッコよかったわ!』

「あら〜、それは嬉しいわね〜。練習の成果が出たのかしら?」

 

そして、ルカは一拍置いて笑顔で話す。

『それで…、レンが皆のライブの気になった所を言いたいって言ってたから、後でセカイに来てくれるかしら?』

「は〜い!後で行きますね!」

そうして、ルカは頷いた後にスマホに戻った。

 

そんな中、遥は言う。「今更だけど、不思議だよね…VOCALOIDの皆とか、セカイが存在してるなんて…」

「でも、ミク達がいるから今の私達が成り立ってるんだから、そこは感謝しないとね!」

 

そんな中、みのりはふと考える。

(…私、もしミクちゃん達に出会えてなかったら…どうなってたんだろう?)

「ほらほらみのりー!もう皆着替え終わったわよ?」

 

愛莉の言葉に考えを止め、急いで着替える事にした。

「あわ〜!?ご、ごめんなさ〜い!」

 

(…まぁ、考えても無駄だよね!結局は過去の事なんだし…これからも、ミクちゃん達がいなくなる事なんてないはずだから!)

 

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-セカイ-

 

バタン、と音がなり、部屋の扉が閉まる。そして鍵を締め、ミクは壁にもたれかかって座り込む。

 

部屋の電気は付けていない。不思議と今のミクには眩しかったからだ。

「……はぁ…」と、溜息をした後に気づく。自分が溜息をした事にすら無意識だった。

 

アイドルはいつどこで誰に見られているか分からない。細かい所作にも気を遣わないといけないんだと、自分を律しようとするが…

「…でも…ここなら、誰も見てないよね…」

トレーニングルームは完全な閉鎖空間。他のVOCALOID達(仲間達)は勿論、想いから生まれた観客達(サイリウム)にも見られる心配はない。

 

ミクはみのり達のライブを思い返す。圧倒的な歌声、美しい踊り、一糸乱れぬ行動…正直、完璧と言って違いないクオリティの物だった。

グループが結成された時からは考えられない程完成されたライブ。あれならば、そう遠くない内に国民的なアイドルグループとして羽ばたく事も可能だろう。

 

みのり達の夢の成就。それは、彼女達の想いから生まれたミク達にとっては悲願とも言える程嬉しい物だ。皆みのり達を応援しているし、彼女達自身も楽しんでいる。…だが、何故だろうか。ミクはそのゴールが近づく度に、あまり嬉しくない感情になっていたのだ。

 

「…練習しなきゃ…あの子の先輩として…!」

そして彼女は立ち上がり、部屋を出る。

 

 

 

襟が濡れていることにも気付かずに。

 

 

 

 

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「…そろそろよ、皆。」ルカは眉間に皺を寄せて、真っ暗なステージの上に用意された椅子に座り言う。

「そうだね。いよいよだよ…」ミクは同じく、眉間に皺を寄せ険しい顔で言う。

「うん。…準備は万端、手筈通りに。」レンは足で胡座をかいて、それでいて深刻な表情で言い放った。

「みのりちゃん達、どんな反応するかな!?まさかあたし達がサプライズを考えてるなんて思ってm」そこまで言って、MEIKOに口を押さえられる。

「ちょ、何す_」「来たわよ!」

 

みのり達はセカイに来た…のだが、何故かセカイ全体がとても暗い。

「あ、あれ?なんでこんなに暗いんだろ…?」

「…あ、あそこにカイトさんがいるよ。」

 

KAITOは彼女達を呼ぶ。

「みんな、いるかな?…それじゃあ…」

 

パァン、とクラッカーの音が響き渡り、明かりが付いく。

「「「「「「ライブお疲れ様!!」」」」」」

 

ステージにはテーブルと椅子が用意されていて、テーブルの上には美味しそうな食べ物や、ぬいぐるみなどが並べられていた。

「わお、これは凄いわね?どれも美味しそうじゃない!」

「あら〜、サプライズだなんてとっても嬉しいわ!」

 

「ふふふっ♪あたしが考えたんだよ!」

リンは自慢げに語る。サプライズが成功して嬉しそうだ。

「そうなんだ!ありがとう、リン。…今日はチートデイじゃないんだけど、無碍にするのは酷いから…美味しく頂くね!」

なお、そう語る遥の目はペンギンのぬいぐるみに釘付けであった。

 

「私、凄く嬉しいかも!…でもせっかく用意してくれたなら、もっともっと楽しいパーティーにしたくない!?」

「おっ、みのりちゃんのその目は…歌いたいって感じだな?」

レンがそう言うと、みのりは満面の笑みで頷いた。

 

「なら、私達も歌っていいかしら?」

「勿論だよルカさん!他の皆も一緒に歌おう!」

そうして、彼女達は皆で歌うようだ(裏方で演出をするKAITOを除いて)。そんな中、ミクはこう言った。

「私は…皆の成長を見るために、ここで聴いてるね!」

「ミクちゃんにそう言われちゃったら緊張するよー…」

「みのり、もう何回も経験して来た事でしょ?…ミク、私達の最高の歌を聴かせて上げる!」

 

そして、彼女達は歌を歌い始める。ミクは最初こそ楽しく聴き、踊りや演出を観ていたが…だんだんと胸が痛んでくるような感覚に陥っていた。

 

しかし、彼女はその理由は分からないし、せっかくのみのり達の打ち上げの時に心配させたくなかったので、無理して笑みを浮かべていた。

 

流石はアイドルと言った所。幸か不幸か、その嘘の笑みは(苦しみは)誰にもバレなかった。

(なんで…胸が痛いんだろう…。こんなに楽しいステージなのに…)

 

そして彼女達は歌い終わり、汗を流しながら感想を言い合う。

「いい動きだったね、皆!希望を届けたいって言う皆の想いが、踊ってる僕にまで伝わってきたよ。」

「レン君にそう言って貰えると自信が付くわね〜!」

 

そんな中、みのりはふと言う。

「…誰かの希望に…夢になれるようなアイドルに、近づけてるかな?」

 

遥は微笑みを浮かべ、こう返す。

「みのりが自分の夢に近づいているなら、そうなんじゃない?…私も前のグループにいた時は、そう悩んだことがあったけど…今は、着実に夢に向かって進めてる気がするんだ。」

 

リンは遥に続けて言う。

「つまり、みのりちゃんが自信を持ってやれてたら、みのりちゃんの想いも皆に伝わっていく…って事?」

「そう言う事だよ、リン!」

 

 

 

「…自分の、夢__……ッ!?」

 

彼女達の希望が詰まったこの会話、しかし、ミクには鋭いナイフの様に刺さったようだ。

 

それを聞いたミクは彼女達に悟られないように、足早に先程の部屋に向かって行った。…その表情に、笑みは無かったが…

 

しかし、KAITOは偶然部屋に向かっているミクを見つけた。いや、見つけてしまった。

「…ミクちゃん…?」

 

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ミクは、再び部屋の壁にもたれかかる。その顔はどことなく青く、まるで何かに打ちのめされたような表情だった。

 

「ぁっ……っ…ぅ…」彼女は口元を押さえ必死に嗚咽を我慢している。目元には涙が浮かんでおり、普段のスターのような輝きを発するミクは、何処にもいなかった。

 

(なんでだろう…なんで、泣きたくなってるんだろう…)

彼女自身、何故自身がこんな気持ちになっているのかさっぱり分からなかった。

 

息が苦しい。みのり達の事を考えると胸が痛くなる。

最初はもっと単純に、みのり達の夢を応援するため、彼女達の練習相手になったり、先輩として負けないように自身を鍛えたりする事が出来た。他のVOCALOIDも増えていき、彼女達のアドバイスを聞いたり、それによって成長する事で、みのり達はどんどん上手くなっていった。でも、最近は_

 

「…ミクちゃん…?大丈夫かい?」半開きのドアから、KAITOが顔を覗き込ませる。ドアの鍵を閉めるのをすっかり忘れていた。

 

「カ…カイト君…?」彼女はなんとか平静を装い、KAITOに話しかける。…まぁ、先程とは違いバレバレな演技だったが。

 

「ミクちゃんが何処かに行くのを見て、後を追ってたんだけど…何か、あったのかい?」

「…い、いや…何も無かったよ…」KAITOの言っている事が頭に入ってこない。ずっと、みのり達の事ばかり考えてしまう。

 

 

…そう。最初は些細な事から始まった。ミクは上達したみのり達の踊りを見て、感動したのだ。みのりがここまで上手くなってくれて嬉しいと言う、ごく普通の理由で。

しかし、最近は感動よりも、恐怖に近い何か別の感情…少なくとも良い感情ではない何かが勝ってしまう。みのり達の歌はどんどん上手くなり、より多くの人にその想いは届き…普通なら喜ばしい事なのだろうに、最近は、何故か彼女達を心から応援出来なくなっていた。

 

他のVOCALOID達は皆、心から応援しているのに。自分はそうではないと言う劣等感を感じる事もあった。

しかし、この感情からは抜け出せないし、何故そうなったのかもミクは分からない。……そこまで考えて、ミクの頭にある一人の仲間が浮かぶ。

 

「…ミク、聞こえてるかい?皆ミクがいなくなって少し心配してたよ、だから_」

「…ごめん、カイト君。リンちゃんを呼んできてくれる、かな…」その声色は迷いに満ちていた。

 

カイトは一瞬考えるも、その声を聞いて迷わずに頷いた。何か、ミクは考えているのだろうと思ったから。「リンちゃんを?分かったよ、少し待っててね…」そうして彼はステージに戻る。

 

ミクは息をつき、少し目を瞑る。動いてもないのに、少し疲れたからだ。

(リンちゃんなら…私と一緒に最初からあの子達を見てた、リンちゃんなら何か分かるかも…)

その想いには、希望と迷いが満ち溢れていた。

 

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「…えっ?ミクちゃんが呼んでるの?」リンは少し驚いたように、KAITOに返す。

「うん。…多分、何か悩んでいるんじゃないかな。ミクちゃんの声がいつもよりずっと、弱かったから…。」

 

リンは暫く考えた後、言う。「分かった、行ってくるよ!」

それを聞いていたみのりは、KAITO達に言う。

「ねぇ、私も行っていいと思うかな…?」

 

みのりの言葉にKAITOは、首を傾けて返す。

「どうして?」

「もし、ミクちゃんが何か悩んでるなら…私も力になりたいなって、思ったの!…だって、普段は私達の悩みを聞いてくれてるミクちゃんが何か悩んでるなら…私がその恩返しをしなきゃって、思って…」そう言うみのりの顔は、純粋にミクの力になりたいと言わんばかりの表情だった。

 

「…ミクちゃんが何を考えてるのかは、私には分からないけど…みのりちゃんのその気持ち、きっとミクちゃんは喜ぶんじゃないかな?一緒に行こうよ!」

「あっ、ただ…一旦みのりちゃんは、部屋の外にいた方が良いかもしれないね。もしかしたら、ミクちゃんはリンちゃん以外に会いたくないのかもしれないから…」

 

みのりは頷く。「はい、分かりましたカイトさん!…それじゃあ、行こう、リンちゃん!」「うん!」

 

 

 

 

 

相変わらず半開きのドアを開け、リンは部屋に入る。

「ミクちゃん、私を呼んでたみたいだけど…どうかした?」

 

リンはミクの前でしゃがみ込む。

「…リ、リンちゃん…来てくれてありがとう…」

一拍置いて、彼女は言う。

「…リンちゃんは…何で、みのりちゃん達と…楽しく歌えたり、応援出来たりするの…?」

 

リンはその言葉に呆気にとられる。

「…ミクちゃんは、あの子達と歌ったりするの、楽しくないの?」

「…楽しくない訳じゃ、ないんだけど…。最近、あの子達の上手な歌とか、踊りを見てると…胸が、痛くなって…」

 

「…あー…なるほど…。私は、あの子達が上手くなる度に、置いて行かれないように沢山練習して、皆で歌うのがすっごく楽しいんだ!…ミクちゃんは、みのりちゃん達が有名になって遠くの存在になるのが嫌なのかな?」

 

ミクは声を噛み殺すようにした後、リンに答える。

「…そうかも、しれないね…。でも、それだけじゃないと思う…。」

 

その時、ミクの頭の中にフラッシュバックされる。

 

『…誰かの希望に…夢になれるようなアイドルに、近づけてるかな?』

『みのりが自分の夢に近づいているなら、そうなんじゃない?』

『みのりちゃんが自信を持ってやれてたら、みのりちゃんの想いも皆に伝わっていく…って事?』

 

「…私は、さ。このセカイ以外でも、あの子達のセカイでも有名で、皆に希望を届けられてると…勝手に思ってるん、だけど…」

ミクはリンを見て、想いを言う。

「私は…、みのりちゃん達の様に、誰かの"夢"になれても……自分の"夢"には…なれてないっ…!」

 

その言葉に、リンは絶句する。何故ならば、その気持ちが…少し分かってしまったからだ。

「…ミクちゃん、今すっごく辛そうな顔してるよ…?」

ミクの瞳からは涙が溢れ出し、僅かに嗚咽が聞こえてくる。

 

「リン、ちゃんは…っ、そう考えた事はない、の…?」

ない、と言えば嘘になる。確かにリンもそれに似た悩みを持った事はあった。

 

「…あるよ。でも、もう一回私の夢を見つめてみて_」みのり達に負けないようなアイドルになる、と言おうとしたが、声が出なかった。ミクが再び喋り始めたからだ。

 

「私、はっ…ぅっ…みのりちゃん、達に…近いようで…遠く及ばない、夢に届かない、アイドルなんだよっ…!!」

その声はとても悲痛で、ある種の叫びにも聞こえた。

 

「ミ、ミクちゃん…!」リンはミクの背中をさすって窘めようとする。

 

 

「…そんな事、ないよ…!」ミクの言葉を聴き、みのりが入ってくる。居てもたってもいられなかったようだ。

 

「み、みのり…ちゃん…?聞いてた、のっ…?」

「みのりちゃん…」

 

みのりはミクの前に座り込み、彼女の目を見て言う。「…ミクちゃんの夢って、何?」

 

みのりの単純な問い。しかし、ミクは答えられなかった。

「わ、…私の…夢?…それ、は…」何か思っている事はあるのだろう。だが、まるでそれを言葉に出来ないような、そんな表情だ。

 

みのりはこう言う。「…私達は、確かに皆に希望を届けたいっていう夢を持ってるよ?でも、まだまだ笑顔に出来てない人は沢山いるから、もっともっと頑張らなきゃいけないんだ。」

「…でも、ミクちゃんは違う。世界中の皆がミクちゃんを知ってて、ミクちゃんの歌で楽しんでる。私達なんかよりもずーっと有名で、愛されてるよ!」

 

みのりの言葉にあまり納得していない様子で。

「…でも、私は、自分の夢に、届かなくて…っ」

 

しかし、みのりはすぐさま反論する。

「でも、私達より沢山の人を笑顔に出来てる!…それに…、それに、私達がMORE MORE JUMPとして活動出来て、遥ちゃん達とアイドルが出来てるのも…」

 

「悩んでる私達に寄り添ってくれて、笑顔にしてくれたのもミクちゃん達じゃん!」そう言うみのりの目は透き通っていた。

 

「…で…でもっ…!!」

 

みのりはミクの手を握り、優しく言う。

「…別に、自分の夢に自分自身がなれてなくても…誰かを、笑顔に出来るんだよ?」

 

「ッ……!?…ぅ…ぅっ…」彼女は抑えていた嗚咽が溢れ出し、再び涙を流し始める。

 

みのりはミクに言い切る。

「…だからさ…そんなに、私はミクちゃんに劣等感持たないで欲しいな…はい、ハンカチ!」

 

ミクはハンカチを受け取り、涙を拭く。

「…ぁ…ありがとう、みのりちゃん…っ!」

 

少しして、落ち着いてきたミクはみのりに言う。

「…でも、やっぱり夢をハッキリさせたほうが、自信を持って歌えるんじゃないかな…」

「…まぁ、そうかもだけど…う〜ん…」

 

そう考えていた二人に、リンは提案をする。

「…あっ!ねぇみのりちゃん。ミクちゃんに歌、歌ってあげて!」

「えっ?…ど、どうして?」

「セカイの想いの持ち主の君なら…、ミクちゃんに響く歌を歌えるんじゃないかなって、思ったの!」

 

みのりは少し考える素振りをした後に、笑顔で頷いて言う。

「…分かったよ、リンちゃん!…ミクちゃん、私の声、しっかり聞いてね?」

「う、うん…!」

 

そして、彼女は歌い始める。その声はただ綺麗なだけでは無く、様々な想いが籠もっていた…

 

「……!!」ミクはその歌に感動し、聞き入っている。

「…やっぱり、いい歌だなぁ…」リンは小さな声で呟いた。

 

歌を歌い切り、みのりはミクの方を見つめる。

「ど、どうだった…?」

 

ミクは顔を上げて、言う。その顔には少し涙が流れていたが、今度は悲しさ故の涙では無かった。

「…最高だったよ…!…それに、夢も…ハッキリしたよ。」

「えっ、どんな夢!?」

 

ミクは息を吸って、しっかりと言った。

「…みのりちゃん達に並び立てるような…いや、みのり達を越えるようなアイドルになる事、だよ!」その声に、迷いは無かった。

 

みのりは顔を明るくし、ミクに抱きつく。

「わ〜!良いじゃん、その夢!やっぱりミクちゃんは明るいほうが似合うよ〜!」

「く、くすぐったいよ〜、みのりちゃ〜ん!」

 

笑っている2人を見て、リンと…こっそり部屋の外で見守っていたKAITOは、ホッと息をついた。

「「…良かったね、ミクちゃん…!」」

 

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「…あっ、みのりちゃん達、お帰りなさい!」

「なぁリン、何かあったのか?」レンはリンに聞く。

「……いや、なんでもないよ。」

「…そっか。」

 

もう皆は食事を待ちきれないといった様子。これ以上待たせるのも申し訳ないだろう。

…でも、これだけは伝えたかった。

 

「…みのりちゃん、リンちゃん。─ありがとう。」

 

ミクの言葉に一瞬きょとんとした後…二人は笑顔で、答えた。

 

「どういたしまして!」

 

その返事に、ミクは笑顔になった。随分と、久しぶりに。

 

          心からの、笑顔を。

 

 

 

     めいいっぱい皆に希望を届け続ける

         〜THE END〜





実際「置いていかれたくない」という感情を抱いている子はプロセカの中にもいると思いますが…ミクさんにそうなってもらうのも良いとは思いませんか?グヘヘ

ひとまず書きたかった物は書けたのでこれで完結です。
また機会があれば何か書くかもしれませんね。
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