めーさくでいちゃいちゃしながら昔の事を思い出すだけの話です

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第1話

足音というのはある程度人の癖が音に乗るようになっている。例えば荒々しく歩く人なら大振りな音が鳴り、気の弱い妖怪が歩く時は細々しい音を鳴らし小さく音を響かせる。華奢な女性は優雅な音を立てるはずなのに、この紅魔の館にいるメイドはそのどれにも該当せず、音を消すように門主へ近づく。

彼女が想像した通りこっくりこっくりと首でカウントを取り、帽子も今にも落ちてしまいそうな雰囲気の門主に、メイドは一呼吸置き大きな溜め息きを吐く。

そうして華美な太腿から1本のナイフを抜き門主に突き立て、小さな声で彼女に最後通告をする。

 

「5秒以内に起きないと、このナイフを貴方に刺す。いいかしら?」

 

その問いかけに答えるように門主はこっくりこっくりと俯きを繰り返し、面白がるメイドは手品のように1本のナイフから5本のナイフを取り出し、同じように突き立てる。

 

「では、今すぐ起きないと5本全てを貴方の急所に刺す。死んでも責任は取らないけど…いいかしら」

 

突き立てた鋭いナイフには殺意の籠った目が反射し、反対側にはあほ面で寝ている門主の顔が映る。子鳥のさえずりが空に響き、それを開戦の合図のように門主に目掛けナイフを投げる。

 

鈍い音が空に響き渡ったその瞬間、門主の悲痛な叫び声が綺麗な蒼空を貫き声を荒らげる。へたれこみ泣きじゃくった門主は、慣れない手つきで見慣れたナイフを抜こうとする。

見かねた優しいメイドは笑顔で刺さったナイフに手を掛けてくれる。門主からすればきっと優しく止血をしながら抜いてくれる! と思うのだろうが、優しいメイドはそうではなかった。

 

「ねぇ美鈴。

また貴方寝てたんじゃない?」

「へっ!?」

「どうせ日向ぼっこが気持ちいいとか…そうやって理由をつけようとしてるのだろうけど、そんなのどうでもいいのよ」

「あぁそうなんですか?

だったら早く刺さってるナイフ抜いて下さいよ! 私自分で抜くの怖いし嫌なんです!」

「ナイフねぇ。

5本も刺さってると少し抜くのが辛いけど…いいのかしら」

「頑張って…耐えますからァ…うぐぅ…おぇ…」

「貴方って本当に面白いわよね」

「い"ッ"…だァ!!

もっと! もっと優しく抜いて…さくやさんっ…」

「苦しんでる貴方って、いつもより敏感で面白いからずっとナイフ刺したままじゃダメ?」

「ダメに決まってんじ…!?

い"だぁッ"!"?" ん…!? ゲボッ!?」

 

メイドが3本目のナイフに手を触れると、逆流した血液が門主を襲い、流れていた鮮血は口から飛び出る。力なく左手を伸ばしメイドに必死に辛い、助けて。流石にキツいと門主は訴えるもそれを無視しメイドは三本目を抜く。

 

「う"げっ」

「貴方の血ってこんなに飛ぶのね。筋肉とかでキュってして、出血とかして抑えられないの?」

「すいません…生憎と私は器用じゃないもんで…あとで、咲夜さんの着替え…もって…」

「あら? まだ失神するのは早いわよ」

「ん"ぐっ!?」

 

心臓がボンッと跳ねる感覚で、スッと消えてしまいそうな意識が引き戻される。

肺に刺さったナイフが引き抜かれ、そこから空気の漏れる音がする。メイドはその音に興味があるのか胸の傷口に耳を当て、その微かな音を目を閉じて聞く。

小さな心臓の拍動が彼女を安心させる。殺伐とした紅魔館での事を忘れさせてくれるような、まるで母親の胸の中にいるようだった。

 

しかし現実は非情で、勿論メイドに親なんていた事はない。

 

「何してんですか咲夜さん。汚いですって」

「ううん。汚くない」

「あ〜…なるほど。そういう事」

「あら? もう分かったの? じゃあ早く私を抱きしめて? 貴方が昨日ベットの上で」

「あーッ!!!?!!?!!

わかりゃしたッ!!!!!!」

「わっ!

…ふふっ」

「満足…すか…///」

「うーん…忘れてたけど最後のナイフが邪魔よね」

「は?

ぎゃああああああっ!?!!!?!!」

 

また叫び声が空に響き渡る。

満足そうなメイドの顔は返り血で狂気的な笑顔を露わにし、傷口から流れ出る血はもはや愛同然のように、門主の胸に顔を擦り寄っていた。

その度門主はゼェゼェと肩で息をし、抱き締める腕の力を抜かないようにしていた。

力を弱めてナイフを飛ばされたら次は無い。

そう体が危険信号を送っているのがわかるし、なによりこうして甘えられると、痛みより性欲が上回ってしまいそうになる。このメイドは狡猾だ。可愛いんだもの。自分の武器がナイフだけではないのを理解している。

 

「さくやさんって…すなおじゃないですよねぇ〜…」

「また刺すわよ」

「あっははっ…あははっ…へっ」

「大体貴方はいつも受け身なのよ。そもそも門主が外で寝るもんじゃ…美鈴? 美鈴!?」

 

体は丈夫でも精神が持たなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい声をふわふわとした感覚で聞いている。走馬灯を見ているのかと一瞬納得してしまうが、居眠りしていた自分が悪いからそれを未練には出来ないと、少しガッカリした美鈴は声のする方に顔を向ける。

「やっぱり懐かしいな」

そう小さい声で呟くと、膝を畳んで見覚えのある少女と同じ目線に並ぶ。そして頭を撫でながら泣くのを堪える女の子に、優しく説教を垂れてみる。

 

 

「お怪我はありませんか?」

「…」

「壺割れちゃったのは仕方ないですよ。

そもそもここに置いておくお嬢様が悪いですから」

「…」

「私怒ってませんよ? 私からお嬢様には言っておくから、一緒に欠片拾いませんか?」

「…うぐっ…」

 

(あぁ〜〜〜〜〜〜?!?!!

可愛い!!! 小さい咲夜ってばなんでこんな可愛いんだろう!? 下向いて泣くの堪えてるだけでこぉ〜〜〜〜〜〜んなに可愛いの世界が崩壊しますよね?! 愛らしいったらありゃしないっての!!!!!!はぁ〜!!!! 頭撫でる手も早くなっちゃうって!!!!)

 

「それとも一緒に謝りますか? そっちの方が私としては成長になると思いますよ?」

「…めぇりんがあやまって…」

「承知しました。じゃ破片…いてっ」

「!…だいじょうぶ…!?」

 

破片を拾おうとした美鈴の指先に鋭い痛みが走る。どうやら指を切ったようで鮮血が滴る傷口を少し眺めてしまった。何せこの紅魔館には誰奴も寄り付かないのだから、自分から血が流れる事なんて殆どない。改めて人間の身体というのを再認識させられる。脆い脆い身体。それよりも脆く小さい身体の咲夜は、人間なのに美鈴よりも頑張っている。だから壺の罰なんて自分が受ければいい。そう考えていた。

 

「ん…」

「ちょっと!? 汚いよ咲夜!? 私の血なんて飲んだらダメだから! ぺっ! ぺっ! ってして!?」

「…もう、ちでないの?」

「出ない、出ないよ大丈夫。本当に優しいね」

「…あたまなでないで、おさげがほどける…」

「あぁごめんね!? 困らせちゃった」

「かけら、はやくひろわないと…」

 

(そうは言うのに…

チラチラ私の手ばっかりみて、時たま頭触って…わかりやすいなぁこの子。親の顔が…あぁ 親なんてもういないか。だって…私が)

 

「仲良く他人の壺を割るなんて、とんだ従者達ね? スカーレットの名と共に育った高貴かつ気高い壺を割っておいて、貴方達何も無いと思ってるの?」

(!? いつの間にバレた!?)

「お嬢様違います!これは私が割ってしまったんですッ! 咲夜はその場に居合わせただけで──────ッ」

「ふぅん…そうなの咲夜?」

「えっ、あ…え…」

(私のせいだと言え! 言わないと貴方が酷い目に遭うから…お願い…!)

 

緊迫した空気が流れる中、咲夜は幼さ故の悪癖なのか呆然としてしまった。それもそのはず目の前にいるのは主従関係を結んだ主人。その主人は恐ろしい表情を絶やさず、笑顔も絶やさず、今にも2人のどちらかを消そうか悩んでいるのが肌でヒリヒリと伝わる。

そして、少女は小さい声で答えた。

 

「…そう。美鈴が割っちゃったのね」

「!? ちがっ…わたっ…違う…ッ!」

「貴方の口から今ちゃんと聞こえたわよ? ぷるぷると怯えたその小さな唇から「めーりんが割りました。」って。私は正直者の貴方が大好きよ咲夜。

 

それじゃあ美鈴は借りるわね」

「待って! やだ! やだよ! 私が悪いから!」

「咲夜」

「…なに…?」

「私を庇ってくれてありがとうございます。ですが貴方まで罰を被る必要はありません。出来損ないの門主で申し訳ございません。

…それでは、また」

 

そういって人差し指を唇に当てながら楽しそうにレミリアに着いていく。まるで本当の事は口にするなと口止めして去っていったようだった。

取り残された咲夜は欠片を拾いながら、後で本当の事を言おう。自分も罰を受けようと考えていたが、そんな事よりも美鈴の方が心配であった。自分がアイツを起こす時のナイフよりも、もっと凄惨な罰をこの紅魔館の地下で受けている。そう考えるだけで鳥肌が止まらない。

自分も、地下室へ行かなければ。

 

 

「貴方って結構タフよね」

「何が…ですかっ…? あぁ…痛ッ…」

「ん〜? 精神よメンタル。

並の妖怪ならもうとっくに失神とか、気絶してんじゃないの?」

「わっかんないですねぇ…骨とか、折られちゃったらわかんないけど…そうわかんない…んぎっ!?」

「左手の薬指と中指両方一緒折ってみたわ。気分はどう?」

「はぁッ…あぁ…最高ですよ…目が冴えました…あ"ぁ"ッ"!"?」

「褒め言葉と受けとったわ、どうやら私は拷問の才もあるみたい。次は肘の間接を折るわ」

「アッハハ…ははっ…承知…しました…」

 

野太い叫び声は地下室の外まで響き、ひっそりと近づいていた少女は歩みを止める。酷く空気にこびりついた血の匂いは、肺に空気が入る瞬間身体が息を拒むほどに濃い鉄の風味が、脳に直接近づくなと訴える。

小さい口から溢れ出る嗚咽を抑え、涙を堪えどうにか奥へ奥へと歩んでいく。

 

「…ねぇ美鈴。まだ起きてる?」

「おきて…ますよぉ…」

「起きてないわね。肩の間接を外すわ」

「あ"ぁ"!"?"」

 

咲夜が扉に手を掛けた途端、骨の外れる音が扉を通して咲夜にも伝わる。それと同時に、とんでもない叫び声が奥から聞こえそれに驚き手を離す。地面に尻もちをつき、怯えた犬のようにそそくさとドアから離れる咲夜は、いつまでたっても無力な事をここに来て心底恨むのだった。

どうして自分は守られてばかりなんだろう? 自分に出来ることはメイドの仕事それだけだと。侵入してきた妖怪や人間は、咲夜が気絶させて美鈴がどこかへ持っていく。だから直接手なんて汚した事がない。本当にただのメイドなのだと。

どうか神様が居たらと。無事美鈴がここから出てくる事を祈るしかないと。そう思い身体を小刻みに震えさせ、扉の前で叫び声を聞きながら両手を合わせる。

 

神なんて、いないと分かっているのに。

 

「…こんなもんでいいかしら」

「…ぁ…」

「ごめんね美鈴。あの子の為の教材だと思って頂戴? 立派な私のメイドになるのなら、これくらいの残酷さには慣れてもらわないと」

「…」

「あら? 聞こえてないかしら。

無理もないわ。骨は折れてるし、お腹も殴りすぎてひしゃげちゃったから。

…今の貴女を咲夜が見たらどう思うでしょうね」

「…やめて…それは…だめで…す…」

「おぉ。流石にそこまでしないわよ。泣き出されても私じゃ止められないし。

パチュ呼んでくるから、少し待っ…」

「めぇりん! めぇりん大丈…夫…」

「…まだ居たなんて驚いた。

ずっと、そこに座ってたの?」

「…めぇりん…?」

「生きてるから安心して。妖怪はこんなのじゃ死なないから。」

「わっ…わたっ…わたしのせい…わたしのせい…嫌…ねぇ…めぇりん…嫌っ…いやぁ…!」

「…主人の事より先に美鈴だなんて。なんか妬いちゃうわ。二人の婚姻は認めないことにしよ」

 

そうぽつり独り言を呟くと、パチェを呼ぶ為血生臭い部屋を後にする。

鎖で繋がれた美鈴は生気を感じさせず、身体中は打撲痕と血流が滴っていた。そんな事に悶える様子はなく、ぎゅっと小さい身体で美鈴を抱く。

そして聴こえるように大きな声で彼女は謝り始めた。

 

「ごめんっ!!!!! めぇりんごめんね!!! わたしがっ! わたしがわるいっていえば!!!あぁ…!!! しんじゃだめ…!しなないで!!!」

「…妖怪の血は…汚いですよ…」

「そんな事ない! めぇりんは! めいりんは汚くない!!!」

「うれしいなぁ……

私の事…すきですかァ…?」

「…!うん! すき! だいすき! だから死んじゃだめ! もう私をひとりにしないでよ!お願いだから!

そうだ!息! くるしいでしょ!? ん!」

「!?」

 

この時2人の唇は初めて重なった。

人工呼吸とはいえ接吻は接吻。つま先を伸ばし必死にキスを重ね、その小さな口から漏らす空気を美鈴は零さないよう必死に受け取る。血生臭い鉄の檻は一気に愛の巣に変わり果ててしまった。

 

「女の子なら! 初めてのキスは大切にしろってあれほど伝えましたよね!? 」

「!元気になった!」

「ちょっとそこ抱きつかれると傷口広がる!!!いでででで!!!!!」

「めぇりんすき!!! だいすき!!!!!」

「あっはは…

あーあ…ありがとうございます。私も大好きですよ」

「えっへへ…えへへ…ごめん…ごめんね…」

 

「…ねぇ。入りずらい」

「あら? 私はアレ見ながらワイン飲めるわよ?」

「感性がイカれてる…美鈴割と危なかったんじゃない?」

「咲夜には慣れてもらわないと。それに美鈴がやれって」

「アイツってそんなマゾ妖怪だったの?」

「いや?

咲夜の成長に必要な痛みを背負うのは私だけでいいって。結婚は認めないわ私」

「嫉妬で親ヅラしなくていいから…治してくるから、咲夜と和解しなさいよ」

「言われなくとも」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん」

「おはよう寝坊助門主さん」

「…」

「私の顔そんなに変かしら?」

「目真っ赤だから心配かけちゃったなって」

「…うるさい」

「どのくらい寝てましたか?」

「1日だけよ。その間門番は湖の妖精がやってくれたわ。後で一緒にお礼しに行くわよ」

「それはご迷惑掛けちゃったなぁ。謝らないと。あそうだ咲夜さん! 夢であの時の…」

 

美鈴がそう言いかけた時、上に被さるように咲夜は軽くキスをする。それに答えるように目を瞑り、あの時よりも長くキスを交わし合う。

少し苦しくなって唇を離しても、次は美鈴から積極的なキスをする。少し動揺しても受け入れるのは、信頼の証だろう。

 

「今度から寝てたらキスってのはどうです?」

「それじゃ貴方の為にならないわ」

「じゃあ、今夜このキスの続きするって言ったらどうします?

…可愛い。耳赤いですよ咲夜さん」

「…もう! 焦らさないで! …時たまならいいわよ」

「いやったァ! そうと決まればさっさと準備してきます! チルノちゃん達ってお菓子喜びますかね?!」

「単純な妖怪…

私と貴方で作ればいいでしょ? 早く作らないと日が暮れちゃうわ」

 

足音はある程度人の感情を奏でる。

今の2人の足音は、幸せそうで、不安や曇りもない幸福の足音が、奇妙な館に響いている。

 




ハーメルンは初投稿です。
いつもはpixivですきなcpのss書いてます。
伸びたらこっちにちょくちょく書いたの載っけてこうかなって考えてます。
よろしくね。

めーさくマジでいいんだわ………

Twitter(X)→ @fudebako0104

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