ペルソナxPERSONA~Minds that Cross Time~   作:比例文

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短編時空は一部を除いて、ゲームによくある「メインストーリーの間にある寄り道時間」の出来事です。なので本編でどんだけ急いでても問題ありません(?)


短編⑧(一部台本形式)

【Welcome to Velvet Room】

 それは、スマル・プリズンをペルソナ使いたちの拠点に改造していた時のことである。

 雑多に積まれていた資材をどかしていた陽介が、異質な雰囲気を放つ二つの扉を見つけたのだ。片方は青色に、もう片方は水色に輝いている。

「なあ栄吉。この二つのドアだけなんか場違いな雰囲気するんだけど、何の部屋なんだ?」

「あ? そんなところに部屋なんか無かったはずだぜ」

「見てみろよ」

 なんだなんだと、栄吉だけではなく他の作業をしていたメンバーたちも集まってくる。

「扉に何かか書いてあるね。……『ベルベットルーム』?」

「その隣にあるのは……『回復の泉』。うえ、トリッシュの部屋だ」

 その言葉に、御影病院での借金返済の思い出が蘇った面々が一斉に顔をしかめた。

「何か嫌なことでもあったのか?」

「色々あったんだよ……」

 尚也の問いに、玲司がそれだけ答えた。

「回復の泉はともかく。ベルベットルームは誰でも入れるのかな?」

「扉が見えてるってことは、そういうことじゃないか」

「暁たちが回復したら入ってみようぜ」

 そして拠点が完成し、暁たちがショックから立ち直った後。再びペルソナ使いたちはベルベットルームの扉に手をかけた。

 

 ベルベットルームの構造は達哉と湊が居た時からそれほど変わらぬ、大きな劇場のホールのようになっていた。

 

「わぁ、これが噂のベルベットルーム!」

「きれい……」

「すご、なんか映画館のホールみたいになってる」

「絵に残しておきたいが、画材が手元にないのが悔やまれるな……」

「お前、こんなところに入り浸ってたのかよ」

「俺の時はこんなに豪華じゃなかったよ」

 初めて入るベルベットルームに思い思いの感想を述べるペルソナ使いたち。からかうような陽介の言葉に苦笑しながら悠が手を振った。

「左様。人々の心のカタチによってベルベットルームもまた姿を変えるのです。特に今回は大勢のお客人が参られるということで、特別仕様となっております」

「うお!?」

 その会話に音もなく話に割って入ってきたのはイゴールだ。大きな鼻など不気味にも見えるその外見に驚く陽介に対して、すでに慣れ親しんだ悠は動じない。

「イゴール」

「よくぞいらっしゃいました、歴代のペルソナ使いの方々。私はフィレモン様の従者にしてこのベルベットルームの主、イゴール。以後、お見知りおきを。我々はここで皆様の補佐をするよう、フィレモン様より仰せつかっております」

「知らない人、けっこう多いな。新しい住民か?」

 周囲を見回す尚也の問いに、イゴールは頷いた。

「これは失礼。こちらは住民の入れ替わりの激しい場所でもございますので、出会うのが初めてという方も多いでしょうな。まず手近な者たちから紹介いたしましょう。まず、こちらがペルソナ合体など私の仕事の手伝いをしているマーガレットとテオドア」

 イゴールのそばに立つ美女と青年が恭しく一礼する。

「そして、この部屋ですべての人の魂に捧ぐ詩を紡ぎ続ける歌い手のベラドンナと、ピアニストのナナシ、絵師の悪魔絵師」

 イゴールの言葉を受けたナナシはピアノを弾きながら、悪魔絵師は絵を書きながら会釈し、ベラドンナは変わらず歌い続けている。

「そして、心の怪盗団の皆様にはお馴染みのラヴェンツァ」

「お久しぶりです、皆さま」

 最後に紹介された少女が品よく礼をした後、そこにモルガナが飛び込んだ。

「そしてご存じ、ワガハイだ」

「モルガナも?」

「モルガナは少々特殊な事情がありましてな。今は元住民という扱いでございます。──それでは、今回は何をなさいますかな?」

 ペルソナ使いたちを見つめ、イゴールが問いかけた。

 

【<向こう側>の現在】

 

「──<向こう側>の話?」

「うん。話しづらいかもしれないけれど、聞かせてほしいの」

 舞耶の言葉に、達哉はあからさまな渋面を作った。周囲のからは感情の種類は違えど、好奇の視線を向けられていることも察せられた。達哉が口を開こうとしたところに、横から克也が身を乗り出してきた。

「そうだ! 実際<向こう側>はどうだったんだ? ライフラインは? 人は残っているのか!? 教えてくれ、達哉!」

「周防兄うるさい。みんな、手ぇ貸して」

「は、放してくれ芹沢くん! 僕は達哉の兄として──」

「あの、ですから周防刑事、少し落ち着いて……!」

 身を乗り出す克也をうららや直斗たちが押さえ込んで黙らせる。相変わらずの兄の姿に達哉はこめかみを押さえながら、改めて断りの言葉を紡ごうとすると今度はパオフゥが横やりを入れてきた。

「どうせ断るつもりなんだろうが、天野とお前の兄貴はそう簡単に諦めちゃくれねえよ。面倒ごとが増える前に、とっとと言っちまいな……」

 パオフゥの言葉を受けて、達哉は大きなため息をついた。もっともな話である。こうと決めた時の舞耶と克也の強情さは達哉が一番よく知っている。

「……<向こう側>に戻りたいとか言ったり、俺に同情をしないと約束するなら話してもいい」

 達哉のせめてもの条件付けに、舞耶をはじめ周囲ペルソナ使い一同は思い思いの表情をしながら首を縦に振った。その反応に達哉はもう一度ため息をつき、口を開いた。

「──結論を言えば、思ったより酷い状況にはなっていなかった。ライフラインのほうは問題なかったし、人間もある程度残っている」

「へぇ。どういうカラクリでそうなったんだ?」

「俺たちが戦っている間に<向こう側>の南条さん達が噂を流してくれていたんだ。それで無限の発電機とか食糧生産プラントとか、都合のいい機械がたくさん現れた」

「まるでSFの世界だな」

「『後に残るは地上の楽園』──マイヤの託宣に記されていたこのキーワードが助けになったらしい。『残るのが楽園であるなら、その環境は理想的なものだろう』と。南条さん達は最悪の事態を想定したうえで噂を流してくれていたんだ」

「人が残っていた、というのは?」

「何らかの理由で俺と同じように<こちら側>との同調に失敗したり、あえて同調を拒否した人たちが残っていた。俺はそうした生き残りの人たちと協力して生き延びている」

「だが、お前さんの様子を見てると完全な平和そのものってわけじゃなさそうだな」

 パオフゥが指摘する。パオフゥが達哉の戦いを見たのは秀尽学園の時の一度だけだったが、それだけでもわかるほどに戦い方や身のこなしが以前<こちら側>で戦っていた時よりも洗練されていた。

「……ああ。イデアリアンが生き残りの人々を襲っているんだ」

「イデアリアン?」

「託宣が成就した暁には人類は悩むことのない存在、イデアリアンに進化する──という話だったんだ。それを信じていた人や、自分の意志を保てず認知に流されてしまった人はイデアリアンになった」

「悩みのない存在。リュージみたいな?」

「オイコラ」

「それがなんで人間を襲うんだ?」

 ボケる双葉を竜司が小突く横で、暁が質問する。

「イデアリアンになった人間は、悩みどころか理性も何もなくなって、食欲のままに人を襲う怪物に変化したんだ」

「真に悩みのない存在は、悩むこともできないバケモンってか」

 皮肉に口の端を歪めるパオフゥを見て、苦い顔で達哉が首肯した。

「そういえばイデアル先生も<向こう側>に居るの? あの後アイツと一緒に消えちゃったけど」

 リサが微妙な顔で質問する。イデアル先生こと岡村真夜は<向こう側>で舞耶を殺し、託宣成就にとどめを刺した張本人だ。

「いや、<こちら側>と統合されているはずだ。<向こう側>で会ったことはないし、それらしいイデアリアンに遭ったこともない」

「イデアリアンって怪物なんだろ? 見分けなんかつくのか」

「上半身はほとんど原型を留めていないが、服や装飾品はかろうじて残ってる。兄さんたちはトリフネに出てきた怪物化した菅原陸将……あれの色違いを想像してくれ」

「うげ、アレがたくさんいるわけ?」

 達哉の言葉で思い出したうららが身震いする。菅原だったもの。ガン細胞が変化し名状しがたいグロテスクな姿となった不老不死の怪物である。その後ろではこれこれこういう怪物であると克也が丁寧に図面まで書いて説明し、他のペルソナ使いたちをげんなりさせていた。

「今は、俺を含めた戦える人間がイデアリアンと戦いながら資材調達や生き残りの人間の保護をしているところだ」

「つまり、真っ当な人類の生き残りのために絶賛サバイバル中ってことかい」

「ああ。先は見えないが、限界まで生き延びてやるつもりだ」

「あたしはそこまでお先真っ暗って感じには思えないけどね」

 疲れたように笑う達哉に、うららが声をかけた。

「なぜ?」

「だって食糧生産プラントとか、そんなご都合主義の便利グッズがあちこちにあるなら<向こう側>の復興に使えそうな装置もどこかで見つかりそうじゃない。地球をもとに戻す装置とかさ」

「そうか……そうかもしれない」

 少しだけ希望の光を見せた達哉の顔を見て、パオフゥらが笑みを浮かべる。

「言ったろ。大人になっても、ちっとは良い事はあるってな」

「……ああ」

 儚げに笑って見せる達哉の姿に、<こちら側>を生きる他のペルソナ使いたちもそれぞれ思いを巡らせた。

 

 

【ネメシスの塔・道中で】

 

千枝「こんなところで眼鏡が必要になるなんてね」

陽介「なあクマ、どうにか人数分の眼鏡を用意できないのか?」

クマ「あのねえ、簡単に言ってくれちゃうけどアレ作るの結構タイヘンなのよ?」

悠「そうなのか」

雪子「じゃあ、スペアとかは?」

クマ「いっこだけ無いことはないけども」

悠「じゃあ、それを使えば……」

達哉「貸してくれ」

クマ「ほいほい、どーぞ」

達哉(鼻眼鏡)「…………」

雪子「ぶっふ……ッ!!」

千枝「はいはい、雪子は向こうで深呼吸しましょーね」

陽介「スペアってそれかよ!?」

悠「意外と似合ってるな、鼻眼鏡」

達哉「そうか?」

りせ「だめ、周防先輩って声も渋いから余計に鼻眼鏡が際立って……!」

達哉「漢ってのはな……」

陽介「その状態でいきなり漢について語りだすのやめろ!」

雪子「あははははは!」

千枝「ひょっとして、わかっててやってる……?」

悠「周防って、意外とノリ良いのか?」

達哉「機能的に問題が無いなら、別にこれでも構わないんだが……」

陽介「こっちが気になって集中できなくなるからやめてくれ!」

ブラウン「たっちゃんズリぃ! そんな面白アイテムがあるなんて聞いてねーぞ! 俺様に使わせろ!」

完二「怒るところはそこなんスね……」

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