愛機を黒く塗っただけなのに最強エースの帰還扱いされたとある傭兵パイロットのお話   作:Yura0628

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傭兵ギルドへ

 

 

 

俺がリヴァイアサンだと勘違いされて1週間。そろそろ姿を現さないとマズいと思いリヴィと共に傭兵ギルドへ足を運んでいた。…俺は全身黒ずくめでな。

 

「何だアイツ?」

 

「真っ黒で薄気味悪ぃな」

 

こっちだって好きでやってる訳じゃないのに酷い言われようだ。取り敢えず手に入れた画像に写ってたレヴナントの格好には似せたんだが、どうも人としての彼は中々知られていないらしい。反応がイマイチ過ぎる。

 

(おいニカ、お前めっちゃ見られてるぞ)

 

(あぁ、悪い意味で注目集めてるし、さっさと済まそう)

 

リヴィを残し俺は人が並んでいない受付窓口に向かう。窓口に立っていた職員は向かってくる俺の姿を見て一瞬頬を引き攣らせたが、すぐに取り繕った。

 

「ようこそ傭兵ギルドへ。任務の受領なら登録チップを、新規登録なら申請をお願いします」

 

「新規登録を頼む。THパイロットの傭兵試験を受けたいんだが、どれだけかかる」

 

「THは今はちょうど試験待機の方がいらっしゃらないので直ぐにでも始められます。内容説明等は必要ですか?」

 

「不要だ」

 

以前ニカ・ハルヤとして受けたこの傭兵試験は主となるテストの他は基本的な国際法の筆記確認などしかない。そして俺は現役傭兵だから筆記確認は大丈夫。だが問題なのは…

 

「では早速シミュレーター室に案内します」

 

シミュレーターによる戦闘試験だ。

 

 

************

 

 

『評価試験を始めます。要望通り機体はガルムⅡ、武装はV55 インパルスブレードにRDM-5 155mmライフル砲ですね。ですがこれだけで良かったのですか?』

 

「ゴタゴタした武装は好かん…始めてくれ」

 

『分かりました』

 

-シミュレーター起動-

 

シミュレーターを起動すると、全周囲に乾いた荒野が広がり、遠方には数機のEF、そして数体の()()が映し出された。

 

戦闘試験はこの出現する敵をひたすら倒す、ただそれだけだ。しかしこの試験で出現する敵は徐々に強くなっていき、最終的には能力を弱められたネームドが出現する様になる。そしてレヴナントを演じる以上苦戦する訳にはいかないので、俺はここ1週間必死に訓練すると同時に、ある秘策を持ってきた。

 

-後方警戒-

 

「…やはりか」

 

()()()()()()、試験開始直後に背後から襲い掛かって来たEF。攻撃力は低めに設定されてるお陰で被弾しても戦闘不能判定にはならないが、多くの傭兵がこの不意打ちを喰らいその後で調子を崩してしまう。

 

この攻撃の意味は一度戦場に立ったら決して油断してはならないと傭兵に教えると同時に、初見の不意打ちを躱せるパイロットはそれだけである程度の実力があると判断する事が可能な点だ。

 

以前俺が試験を受けた時にもこの不意打ちは行われ、あの時はギリギリで反応して躱す事が出来たんだが…今回は事前に攻撃が飛んで来ると分かっていたため余裕を持って回避出来た。そしてこの後向かってくる敵の攻撃も俺の頭の中には全て入っている。…要はカンニングだ。

 

(左上…次は…真下ッ!)

 

-敵3番撃破 続けて4番撃破-

 

全方位から向かってくる敵を次々と薙ぎ倒し、さほど時間をかける事なく最後の敵に辿り着く。

 

-警告 ファイナルエネミー出現-

 

これ以前の敵は概ね不意打ち気味に襲い掛かって来ていたが、流石に最後の敵となるとシミュレーターが事前に警告を発してきた。まぁそれだけヤバい相手だって事だな。

 

-警告 方位0-0-0 距離300 高速移動物体探知-

 

一瞬の警告の後、濃蒼の機体が真正面から突っ込んできた。

 

「ッ…!」

 

咄嗟にブレードで攻撃を弾き、崩れそうになるバランスを整える。対する敵機は俺とすれ違った瞬間地面に半ば衝突するよう着地し、轟音と共に巻き上がった砂塵が視界を遮った。

 

徐々に顕になるツインアイを備えた蒼い敵機…MF-436 ガーゴイルを見やり、俺は深呼吸と同時に敵機の情報を頭に浮かべる。

 

 

アーク連邦のネームド、蒼鋼の弾丸(ブルーバレット)

 

 

レヴナントよりやや前の時期にアーク連邦の戦力の一端を担っていたネームドで、今出現したのは実際のものより速度やパワーを落とした機体だ。しかし…

 

(クッ、早い…!!)

 

高速で振り下ろされるブレードを辛うじて受け止め、心の中でうめく。性能が落とされてるとはいえネームドの攻撃だ、緩い訳が無い。

 

(けどこんな所で苦戦している様じゃ、とてもレヴナントは演じれない…!)

 

スラスター全開。機体のパワーに加えてスラスターの推力で鍔迫り合いの状況から脱し、後方へ飛びながらライフルを連射すると、敵機は弾を避けながら距離を詰めてくる。

 

だが回避起動を加えた接近の速度は()()()()緩慢で、俺は口元に笑みを浮かべながらブレードを振り上げた。

 

一閃。

 

刹那、背後で巻き起こる爆発。同時にディスプレイに-オールエネミーキル-と表示がなされ、シミュレーター試験の終了が告げられた。

 

(ふぅ…どうにかなったか)

 

安堵の息を吐きながらシミュレーターから出て、俺は呆然としてる職員に話しかける。

 

「終わったぞ、次は筆記確認を頼む」

 

「わ、分かりました。着いてきてください」

 

…狙い通り、職員の視線には俺に対する畏怖の感情が見てとれた。

 

 

 

************

 

 

他国のギルドからこの国の傭兵ギルドに異動して半年になる私は、今日初めて人に対して化け物という印象を抱いた。

 

突如現れた黒ずくめの人物…レヴナントと名乗ったこの男は、A級傭兵ですら完走は簡単じゃ無いシミュレーター試験を無傷で、それも()()2()()()の速度でクリアした。

 

続く筆記確認も満点で通過…こちらはさほど珍しく無いが、シミュレーター試験の結果と併せて考えると、まず間違いなくこの男は傭兵経験がある。

 

そこで私は試験結果と共に、上司にレヴナントという男について心当たりがあるか質問してみた。

 

「レヴナント…だと…?本当にそう名乗ったのか!?」

 

「はい。書類に書かれた傭兵ネームにもレヴナントと書かれていますし、間違い無いです」

 

「そうか……あの噂は本当だったか」

 

「噂…ですか?」

 

何故か目元を押さえながら言う上司に私は聞き返す。ネットやテレビといったモノを見ないせいで噂などの類に疎いのだ。

 

「最近傭兵の間、軍関係者、果ては大手メディアやネット上で話題になってる写真があるんだ。これなんだが…」

 

言いながら端末を差し出してくる上司、画面に映っていたのは漆黒のガルムⅡが数機のロトに向かって行く写真だった。どこかで見た事ある雰囲気の機体、されど思い出せず思わず首を傾げる。

 

「このガルムⅡが何か?」

 

「お前、黒い亡霊って聞いたことあるか?」

 

「一応知識としては」

 

かつてアーク連邦に存在した最強のネームド。傭兵として各戦場を渡り歩き尋常で無い戦果を上げた…といった程度なら、他国に居た私でも知っている。だがこの写真と何の関係があるのだろうか?

 

「なら話は早い。噂の概要は、この写真に映る漆黒のガルムⅡは黒い亡霊では無いか。と言うものだ。そしてお前にレヴナントと名乗った黒ずくめの男は、恐らくこのガルムⅡのパイロット。ここまで言えば分かるな?」

 

「な…、まさかあの傭兵が黒い亡霊だとでも言うのですか!?」

 

「まぁ間違いないだろうな。レヴナントってのは奴が自ら名乗ってた名前だし、シミュレーター試験の結果を見ても、過去に奴が出した記録に迫っている。ここ数年のブランクを考えれば妥当な結果だろう。何を思ってもどってきたんだか…」

 

空いた口が塞がらないとはこの事か、私は上司の話を聞きながら、呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

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