愛機を黒く塗っただけなのに最強エースの帰還扱いされたとある傭兵パイロットのお話   作:Yura0628

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勝手ながら、オリバーの名前をオリビアジョンソン(愛称リヴィ)に変更、性別を女性としました。容姿は灰色のウルフカットに同じ色の瞳とします。本話以前に関しては大きな影響はないので読み返す必要はございません。


龍殺しの傭兵

 

 

 

 

『こちらベルーガ。味方の救援部隊が間も無く辿り着く。出迎えの準備をしろ』

 

「やっとか…思ったより長かったな」

 

『ここまでの連戦は流石に応えたぜ』

 

リントヴルムを撃破してから約1時間。ようやくの救援部隊到達の知らせに肩から一気に力が抜けていく。

 

あの後もゴブリンやオーク等小ぶりな魔獣からスターワイバーンなんてA級魔獣まで現れたせいで、表には出してないが内心は疲労困憊だ。

 

『国境へ向かうシャドウドレイクの大軍勢を排除してから来たらしい。まぁ十中八九ここから逃げ出した奴らだろうな。それにしても救援部隊の連中、伝説の傭兵が居るって聞いたら大はしゃぎしてたぞ。レヴナント』

 

「やめてくれ、今の俺はネームドでもなんでもないただの傭兵だ」

 

基地の仲間と()()()()()()()()()()()()()()を発しながら、俺はレーダーに映る光点へ目を向ける。

 

『来たぞ相棒』

 

遠方から飛来する無数の機影。アーク連邦現主力TH〈ストライダー〉の編隊が山脈の向こうから現れた。

 

 

アーク連邦空軍第4航空団第26戦闘飛行隊〈ポラリス〉

 

 

綺麗な編隊を組みこちらへ接近してくる彼らを眺めていると、通信機から男の声が響いた。

 

『こちらアーク連邦空軍ポラリス飛行隊、貴機らを目視で確認した。到着が遅れてすまない。後は任せてくれ』

 

「アーク連邦傭兵軍、傭兵レヴナントだ。こちらこそ逃したドレイク達を撃破してくれて感謝する。一応周辺の魔獣は全て片付けたが、奴の死体に惹かれて何が来るか分からん。注意しろ」

 

地に墜ちたリントヴルムの死体へ視線を向け、俺はポラリス隊に忠告を行う。莫大なエーテルを秘める死体は他の魔獣を誘引し、最悪魔獣のスタンピード(集団暴走)まで発展する可能性がある。

 

正規軍なら対処は出来るだろうが…危険には変わりない。

 

『了解した。それにしてもリントヴルムを2機で撃破するとはやはりネームドは凄まじいな。後で会えたことを基地の連中に自慢してやろう』

 

「はははっ、まぁ好きにしてくれ」

 

騙していることに若干の罪悪感を感じながら答え、俺は機体を反転させる。

 

「さて、俺達は帰投する。頼んだぞ」

 

『任せろ』

 

『こちらフラッシュ、君達には感謝してもしきれない。本当にありがとう』

 

ポラリスからの力強い応答とフラッシュの感謝の言葉を背に受けながら、俺達は空域から離脱するのだった。

 

 

************

 

 

『相棒、大丈夫か』

 

「何とかな…だが身体中が悲鳴を上げてやがる」

 

『スカイガードよりテイクオーバー。レヴナントを演じるのも良いが、無理だけはするな。俺もそこまで歴は長くないが無理して潰れたパイロットを大勢知ってる』

 

ベルーガの管制から外れた俺は、帰投の途中で身体が悲鳴を上げ始めたせいでリヴィとスカイガードから心配されてしまっていた。

 

やはり最強のエースを演じるのは簡単じゃない…って事か。

 

「けど俺がレヴナントを演じるお陰で、軍そして市民に希望を与えられるなら本望だ。それに困難を打破していくのは楽しいしな」

 

『後半がメインの理由だろこの戦闘狂…いやマゾヒスト。まぁどっちにしろ俺が担当する区域では肩肘張らずにいてくれ。こちらの心労も考えろ』

 

いや待てマゾヒストは言い過ぎだろ。俺は痛みを受けて喜んだりしねぇよ。

 

などと不満を抱えながら俺は基地上空へ到達。開かれた発進口へ向けて機体を降下させていく。

 

『ともかく相棒、レヴナントとしての最初の任務は成功してる。この調子で行こうぜ』

 

「あぁ。例え始まりが偽物でも、いつかは本物になって見せる」

 

この言葉はリヴィへの返答か、はたまた自分への言葉か。俺は自分でも分からなかった。

 

 

************

 

 

さて格納庫に戻り愛機から降りた俺は、セオドアに呼び出され基地の司令官室に居た。

 

「……マジですか」

 

「あぁ、国防省から君へ出頭命令が来ている。ニカ・ハルヤとして、だが」

 

いつかは呼ばれると思ってたけど、思ったより早かった。まぁ咎められると言うより事情説明をされたりするんだろうけど…やっぱ怖いもんは怖い。

 

「それにリントヴルムの討伐がニュースに流れてる。メディア総出でレヴナントを持ち上げてるぞ。主戦線でも兵の士気が上がって戦術的勝利を重ねているらしいし、とてつもない影響力だな。レヴナントは」

 

「情報が出回るのが早い…勘弁してくれ」

 

まだ十分強くなってないのにここまで期待されると恐ろしくて仕方ない。この状況で本物が出てきてバレるのは俺が糾弾されるだけだから全然構わないけど、本物が居ないのにバレるのはシャレにならん。

 

「ネームドの活動も沈静化してるそうだ。恐らくレヴナントと会敵したくないからだろうと司令部が言っていた。まぁなんだ…頑張れよ?」

 

「アンタのせいで余計プレッシャーが重くなったよ!」

 

幾ら困難と言っても限度がある。つい最近まで普通の傭兵だったのにいきなり戦略的抑止力を担わされるのは、流石に勘弁してほしい。

 

(てか上層部も煽すぎだっての。会ったら1回殴ってやる)

 

心の中で叫びながら俺はソファにへたりこむ。そんな俺を他所にセオドアはノックされたドアを開いた。

 

「相棒荒れてんなぁ…」

 

呑気な事を言いながら部屋に入って来たのは、パイロットスーツから軍服へ着替えたらしいリヴィ。コーヒーを片手に俺の隣に座り、口を開く。

 

「またしても広がる速度が異常だな。ポラリス隊から報告を受けたにせよ、わざわざ広報部に報道させてまで、レヴナントの戦果を広めるとは」

 

「おかげで俺への重圧がとんでもないだが」

 

「はははっ、心にもない事を言うなよ」

 

テメェ自分じゃないからって笑い飛ばすなよ…!

 

「笑ってるところ悪いが、朱色の月華(バーミリオン)も普通に話題になってるぞ。名も無きネームドって揶揄されてた人物が、本当は伝説の傭兵の弟子だったってな」

 

「…え?」

 

「今まで碌な戦果も上げず潜んでたのは、黒い亡霊(レヴナント)と訓練に明け暮れてたからじゃないのか、黒い亡霊(レヴナント)が一時引退したのは朱色の月華(バーミリオン)を鍛えるためじゃないかとか、結構言われている」

 

「ってことは…」

 

「お前にもニカ並みの期待が掛けられてるって事だな」

 

めっちゃ良い笑顔で言うセオドアに、リヴィは頭を抱えて声にならない悲鳴を上げる。ざまぁ…ではないけど、なんかスカッとした。

 

「取り敢えず、ニカは明日の早朝に出発だ。オリビアもついて行って良いらしいがどうする?」

 

「行くしかないだろ。どうせ全部分かってるなら、何かしら対価要求してやる」

 

「強かだなお前」

 

 

 

************

 

 

 

 

「まず最初に…本当に申し訳なかった」

 

「え、えーっと…」

 

「……」

 

いきなりこちらへ頭を下げる人物…()()()()()()()()を前に俺達は口を開閉させ困惑するしかなかった。

 

何でこんな事になったか。時を少し遡ろう…

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