愛機を黒く塗っただけなのに最強エースの帰還扱いされたとある傭兵パイロットのお話   作:Yura0628

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真相

 

 

 

「デッカ…」

 

「これ丸々国防省の区画かよ。広すぎんだろ」

 

駅から出た俺達の前に広がるのは、円形の埋め立て地の上に500mを超えるビルが立ち並び、中央には高さ1000mを超える総合管理棟が佇んでいる姿。

 

アーク連邦首都〈ルクセリア〉にある国防省の中枢に、俺とリヴィは足を運んでいた。

 

来る途中リニアモノレールの窓からも見えてたが、実際に近くで見るととんでもない規模だな。

 

「取り合えず、俺達が行くのは傭兵軍司令部だから…あのビルだ」

 

「なら早速行こう」

 

言ってリヴィが視線を向けた先、周囲で一番低い円柱型のビルへ俺は歩き出した。

 

覚悟決まるの早いな。など言いながらリヴィも横に並び、やがて俺達はビルの入り口に辿り着く。事前に聞いた話では、入り口前に案内する人間が居るはずだが、あの人か?

 

思いながら見やると、こちらと目があった軍服姿の女性が近づいてくる。

 

「お待ちしていました。ハルヤ様、ジョンソン様。私は傭兵軍司令部付きの特務官、サラ·マルティネスです。これより長官室へご案内します」

 

「分かった、よろしく頼む」

 

その後案内されるがままビルの最上階にある部屋に入ると、中には軍服を着た男が2人居り、俺達は向かいのソファへ腰を降ろすよう促される。

 

階級章は大将と少将…傭兵軍司令部の司令官か。

 

普段画面や紙面でしか見ない彼らを前に固まってしまう俺とリヴィ、だがそんな俺達の姿に僅かに笑みを浮かべ、中央に座っている人物が口を開く。

 

「良く来てくれた。ハルヤ少尉、ジョンソン少尉。私はアーク連邦傭兵軍大将、〈ピーター·ハーリング〉だ。いきなりの呼び出しに応えてくれて感謝する」

 

威厳を感じさせる声音と雰囲気だ。身なりも整ってて否が応でも高官って感じがする。この人がベケット大将ってことはもう一人が…?

 

「アーク連邦傭兵軍少将、〈ジェイク·アンダーセン〉だ。上官だからと緊張せず、気楽に接してくれ。君らは傭兵なのだから」

 

言いながらこちらへ手を差し出してくる老年の男性。いや緊張すんなって言われても…

 

俺とリヴィはおずおずと握手を交わし、再び席に座る。

 

「さて、今日君達を呼んだのは他でもない、レヴナント関連について幾つか質問、そして伝えたいことがあったからだ。だがまずは…」

 

言葉を切り、立ち上がったハーリング大将は俺達の前まで出てきて真剣な顔でこちらを見る。横のアンダーセン少将も同じようにしていた。

 

「君達の挙げた戦果について、事実のように我々に都合の良い発表をした事。並びにハルヤ少尉をレヴナントであるかのように扱った事を、心より謝罪する。本当に申し訳なかった」

 

言って頭を下げる姿からは真摯な謝罪の気持ちが感じ取ることができ、逆にそこまでさせてしまったこちらが申し訳ない気持ちになってくる。と言うか気にしてないからこそ演じてるのだし、むしろ傭兵軍司令官が軽々しく頭を下げないで欲しい…

 

「頭を上げてください。傭兵軍大将ともあろう方が1傭兵に頭を下げたなどと知られたら、他の傭兵に舐められてしまいます。また謝罪は受け取りますが、正直そこまで気にしていないと言うのが私の本音です。むしろ…いえ、これは今は関係ないですね。ともかく、私としては謝罪される程の事ではありません」

 

隣でリヴィも頷いてるし、逆に俺の性質(タチ)を調べ上げた上で応えると思ってやったなら有能とも言えるだろう。事実彼らの目的であっただろう軍の士気は鰻上りで、日々もたらされる撤退の知らせに悲壮感を持っていた市民も、希望を持って暮せている。

 

事情を知る人間からは俺の性質を利用したと糾弾されるかもしれないが、俺個人としてはこの行動を支持したい(戦えるなら何でも良い)

 

「そうか…だが我々は君に半強制的に巨大な重積を背負わせた。いくら()()()()()()()()()()()()()()()()()としても、謝罪しなくて良いと言う事にはならない。無論対価も用意している、何か希望があれば言って欲しい。出来る限り応えよう」

 

……ん?なんか途中でとんでもない事言ってなかったか?後半の言葉が耳に入らなかったぞ。

 

「えーっと、すみません。今レヴナント本人から提案されたと仰られました…?」

 

「あぁ言ったが………そうだったな、詳しくは話せないが彼から君へ伝言がある。『演じ切って見せろ』と」

 

待て待て待て話に着いていけない。レヴナント本人から提案されたって言うのも意味不明だし、俺へ伝言ってのも訳が分からない。レヴナントと関わったことなんかないぞ?

 

…てっきり俺が愛機を黒く塗ったら勘違いされてそれを国が利用しただけと思ってたけど、思ったよりヤバそう?

 

 

************

 

 

部屋から出ていく彼の姿を見送り、私は嘆息しながら椅子へ腰掛ける。すると何もない壁がスライドしサングラスをかけた男が出てくる。

 

「…アイツ行ったか?ピーター」

 

「出て来てる時点で確信しているだろう、〈レン〉」

 

ジェイクの言葉にそれもそうかと言って笑うのは、レヴナントの本当の正体〈レン・ホタルビ〉。私、そしてジェイクとは旧知の中である。

 

「アイツもデカくなったなぁ…背丈に関しては俺より高かったし、腕を越されるのも時間の問題だなこりゃ」

 

「お前が彼を自分自身に仕立て上げようと提案した時はとうとう耄碌したかと思ったが、実際に対面して分かった。あれは近々化ける」

 

「そりゃそうさ。()()()()()()()()んだから。まぁアイツ自身にその記憶はほとんど残ってないだろうが。でも肉体と心の奥底には眠ってるはずだ。立ち塞がった困難が強大であるほど燃える。だからこそ普通にレヴナントを演じてくれなんて言わなかった訳だしな」

 

もし彼を勝手にレヴナントに仕立て上げず、普通に演じてくれと頼んでいたらどうなっていただろうか。今回は時間が無かった上、偶々彼が勘違いされるような行為を行ったため計画を実行したが…

 

「ただ、あのタイミングで発表しないと()()()()()()()()()()()()()とはいえ、悪い事をしたな。お前らもニカを良いようにコキ使う気は毛頭無いだろうが、利用したのは事実。どこかしらで精算しねぇと…」

 

呟くように言うレン。計画の発案者である彼は、我々以上に罪悪感を感じているのかもしれない。

 

我々も戦況が劣勢だった時に、事態を打開し得る事案が飛び込んできた(黒塗りの機体が現れた)状況で、本人の意思を無視し半ばその場凌ぎで1人の青年に多大な重積を背負わせる事になった。この責任は重い。

 

「そうだな…人1人の人生を狂わせたも同然なんだ。彼への誠意と感謝を欠くわけには絶対にいかん。何を要求されようと可能な限り応える義務が我々にはある」

 

全てが明るみに出れば、私は後先考えず1人の傭兵に全てを託した無能として裁かれるだろう。…それでアーク連邦が勝利出来るなら私個人がどうなろうとも。

 

「既に賽は投げられた。我々が出来るのは彼を全力で支援する事だけだ」

 

責務を果たす。どれだけ糾弾されようがアーク連邦を勝利に導くのが私の役目だ。その上で彼を利用した事に後悔の念は無い。

 

しかし、後悔はせずとも通すべき義理はある。

 

無論これは彼だけでは無い。私の下で戦う全ての傭兵に対して、期待を裏切るわけにはいかないのだ。

 

金目当てで戦う傭兵相手に馬鹿なのかと言われるかもしれない。

 

それでも、私は———————

 

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