「ギャオスの煮つけ」の誕生と発展(完結)   作:ギャオスの煮付け

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20●●/07/31 ディレクター取材 【社外持ち出し禁止】

 壁一面に貼られたガメラのポスター、棚一杯に飾られたガメラのフィギュアが映っている。

 場面が切り替わり、テーブルの上に置かれたホットプレートがアップで映し出されている。

 

「えー、今日は……K府K市にお住まいのUさんのご自宅にお邪魔しております。Uさんは界隈では有名なガメラのマニアでして、いやぁ、凄い数のガメラグッズですね。こんなにガメラのグッズが作られていたとは驚きです」

「ああ、ほどんどが自作なんですよ」

「自作ですか!?」

「ええ。まぁ、ガメラって世間ではあまり良いイメージが無いでしょう? ガメラのせいで亡くなった人も大勢いますし……勿論私のようにガメラが大好き! っていう人間もおりますけれども。だから大っぴらにグッズを作りにくいらしいんですよね。ああ、これは某メーカーの方に直接伺った話なのですが。

 なので我々マニアはこうしてグッズを自作しているんです。自給自足ってやつですよ」

「凄いですねぇ。見たこと無い写真ばかりですよ」

「そりゃそうですよ。私が自分で撮影したものなので」

「えっ?」

「ガメラの追っかけ界隈というものがあって、色々と情報交換や撮った写真の交換会なんかをしているんですよ。これはたまたま京都で撮れたものです。夜なので画像が粗くて申し訳ないのですが」

 

 ガメラを下から見上げるアングルで撮られたポスターが映る。

 

「たまたま京都でって……危なくないんですか?」

「危ないですよ。流石に死ぬかと思いました」

 

 男性は野菜や肉が載った皿をテーブルの上に載せ、ホットプレートの電源を入れた。

 ホットプレートが熱くなったのか、油を敷いて野菜や肉を並べる。

 ジューッといういい音がしている。

 

「でも、マニアってそういうものですよ。だってあのガメラが私の街に来たんですから! 撮りに行かない訳がない。でも暗すぎて上手く撮影出来なくてね。途中からビデオカメラに切り替えたんです」

「じゃあ、もしかしてあの変異体との戦いも撮影してるんですか?」

「変異体じゃなくて、イリスです」

「イリス?」

「そう名付けられたんですよ。知らないんですか? 自衛隊の報告書に書いてあったでしょう」

「す、すみません。不勉強でした」

「もちろん、撮影しましたよ。ただ、足元からなので上手く撮れなくて。臨場感はあるのですが、いまいちなにが起きてるのか分かりにくいんですよね」

「ああ、なるほど……」

 

 男性は「肉が焼けましたよ」と言ってディレクターの皿の上に肉を載せた。

 

「冷めないうちにどうぞ召し上がってください」

「ありがとうございます。……うん? なんか臭みの……いや、癖のある味ですね。羊か何かですか?」

「ガメラです」

「…………は?」

「ガメラですよ」

「……え? え? えっ、う、おえ」

 

 カメラは男性を映している。ガタガタという音がしてディレクターが慌てて離席したのが分かる。

 男性は動じる事なく焼いた肉を口運び、うんうんと頷く。

 ジャーというトイレの水を流すような音が聞こえる。

 

「……あの、今なんて?」

 

 戻って来たディレクターが尋ねると男性は顔色を変える事無く答えた。

 

「ガメラです」

「ガメラ。あのガメラ。……の肉ですか?」

「そうです」

「本当に?」

「はい」

「……」

 

 カメラが皿に載せられた肉をアップで映し出した。

 

「えーっと、どうやってこの肉を……?」

「京都駅で拾ったんですよ」

「京都駅」

「ほら、イリスとガメラが京都駅で戦ったでしょう? その置き土産というか」

「ええ?」

「ガメラの一部が落ちてたんですよ。それを回収して、冷凍保存してあるんです」

「……はぁ?」

「こっちもどうぞ」

 

 男性はホットプレートに載った白い物体をディレクターの皿に移す。

 

「……これは?」

「イリスです」

「……」

「これも京都駅で。二人が京都駅に入るのを見て、すぐに駆け付けたんですよ。流石に戦いは終わっていましたが、まだ警察も来ていないような状況でラッキーでした。現場にはイリスの死体とガメラの肉片。勿論持ち帰らない訳にはいかない。イリスの方はね、なんかイカみたいで美味しいんですよ。長いパイプみたいな、あの触手の部分です。なんか病みつきになっちゃって」

 

 画面にはホットプレートの上で焼かれる白い物体が映っている。

 

「よくガメラを食べようだなんて思いましたね」

「まぁ、ギャオスだって食べられるし。ガメラもギャオスと同じような珍味だと思えばそんなに抵抗なく食べられますよ」

「うーん……?」

「まぁ……ちょっと臭みはありますけど、許容範囲ですね」

「はぁ」

「Oさんはギャオス肉は?」

「食べますよ」

「では、イリスの方が口に合うかもしれませんね。あれはギャオスの変異体ですから」

「変異体って……食べて大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ。遺伝子組み換え食品みたいなもんですよ」

「えぇ……」

 

 男性はぱくぱくと白い物体を口に運ぶ。

 画面にはニコニコ笑いながら肉を食べる男性の姿が映し出されている。

 

「なんか暑いな」

「そんな厚着してるからですよ」

「そうかな」

 

 7月にも関わらず男性は長袖のセーターを着ている。

 

「いや、最近寒くて」

「え? 大丈夫ですか?」

「風邪かもしれません。なんか体が熱くなったり寒くなったりするんですよね」

「変な物食べてるから……」

「ん」

 

 突然男性の動きが止まり、小刻みに震えだす。

 首がカクンと変な方向に曲がったかと思うと、机の下から触手のようなものが出てくるのが確認できる。

 

「う、うわ、わ、う、Uさん! ちょ、ちょっと」

 

 ガタッという音と共にディレクターの声が遠ざかる。

 テーブルから離れたものと思われる。

 男性の体が持ち上がり、袖口から触手のようなものが出ているのが分かる。

 

「あ、あっ、ああ、ああわわ、ああ”っ」

 

 触手のようなものが伸び、カメラに当たってカメラは床に落下する。

 机の下を写したまま、画面の外で大きな物音がする。

 しばらく唸り声のようなものが聞こえていたが、やがて静かになった。

 

 映像はここで途切れている。

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