私は廊下を走っていた。
本当は駄目だけどね。でも、今だけは目を瞑って欲しい。
だって、リーマスに魔法薬はもう必要ないはず!!
それなのにどうしてスネイプ先生があの薬を持ってきているの!?
「リーマス!!どういう事!?」
と勢いよくリーマスの部屋の扉を開ける。
「......ポッターをミス・スカーレットの元へ送り出したのはこういうことだったのか、ルーピン」
と手に魔法薬入りの瓶を持ったスネイプ先生が振り向く。
「スネイプ先生も!!説明してよ!!だって、リーマスは......」
リーマスは幼いころに人狼に噛まれ、自身も人狼になってしまったのだという秘密を抱えていた。
「君の両親のおかげだよ。僕が満月でも普通に動けているのはね」
人狼だった、はずなのだ。
私の両親が完全な人間へ戻す薬を発明し、それによってリーマスは人間へ戻った。
かつてリーマスが私にそう説明してくれた。
「でしょう!?なのに、なんで!」
「なんで、とは?」
私が何を言いたいか分かっているはずなのに、スネイプ先生は私に言えと促してくる。
「だって、それは脱狼薬でしょう?」
「ほう。見ただけで分かるのか」
スネイプ先生は、私が中身を当てた事には驚かなかった。
「いいえ。ハリーから魔法薬の特徴を聞いたときに気づいたわ」
「さすがだね、アリス」
とリーマスが弱々しく笑う。
「ハリーを向かわせれば、私がここに来ると思っていたんでしょう?一体、何が......」
何が起こっているのか分からない。
「人狼に脱狼薬を渡す。それが何か?」
それは普通の事。でも、リーマスに対して行われるのは普通ではない!
「両親の薬は不完全だったとでも?」
「薬の作成には我輩も加わっていた」
「それなら効果だって分かってるし、完璧なはずよね?」
だってスネイプ先生まで協力していたんだもの。魔法薬学のエキスパート勢ぞろいで魔法薬が完成しないわけがない。
「人狼を元に戻すのはとても難しいことなんだよ、アリス」
それは分かる。だってお父様とお母様、スネイプ先生が薬をつくるまでの間は、脱狼薬しか無かったのだから。
色んな人が更に良い薬をつくろうとしたのだろう。改良に改良を重ねても、狼になっても理性を保てる、という効果の薬までしかつくることが出来なかった。
「でも、少なくとも去年までは脱狼薬を飲んではいなかったわ!」
「我々が作った薬は効果が限定的だったのだ」
「ああ。効果は15年間。その効果が切れてしまったんだよ」
リーマスが悲しそうに笑う。
「そんな......」
えっと、リーマスは33歳だったはず。だから、薬が完成したころは18歳。お母様は一個下だったはずなので17歳。
つまり全員が学生の頃には完成させていた。......天才過ぎない?
効果15年も凄すぎる。そこまでは行けても、効果が永久に続く薬は作れなかったわけだ。
「なので脱狼薬を我輩がつくっているのだ」
とても面倒くさそうにスネイプ先生が言った。
「私に言ってくれれば良かったのに」
私だって脱狼薬ぐらい作れるんだから、頼ってくれれば良かったのに!
「我輩もそう思ったが、校長からの命令だ」
「でも、つくるの大変でしょう?授業の準備もあるはずなのに」
「ああ。変わって欲しいものだ」
とスネイプ先生が笑う。
「いいですよ。校長先生に聞いてみないとですけど」
と言う訳で後日、校長先生からの許可も貰えたので、私が脱狼薬作り担当になった。
「アリスは、僕が狼になるのが怖くないのかい?」
「私が怖いと思わないために薬をつくるのよ」
月日は流れある日。
私はシリウスに、ハリーにプレゼントをあげよう、ということを書いた手紙を送った。
するとその日の午後にはシリウスがホグワーツにやって来た。
なのでリーマスの部屋で、3人で作戦会議をした。
「何を送れば喜んでくれるかしら?」
「リリーとジェームズの写真なら持っているが」
「それはもうハグリッドが渡しているわ。他にない?」
「ハリーの好きなことと言えば箒に乗ることだろ?でも、ニンバス2000は最高だからな!それを超えるものを送るのは無理だ」
とシリウスが言った。
箒......。箒と言えば、
「ニンバス2000は壊れちゃったのよ」
「なんだって!?誰にやられたんだ!」
とシリウスが勢いよく立ち上がる。
「事故よ。シリウスも見ていたクィディッチの試合で、ディメンターに襲われて、ハリーは箒を落としてしまったのよ。さすがにあの時はハリーの救助を優先したから......。それで、そのまま地上に落ちたと思ったんだけど、暴れ柳に巻き込まれちゃったみたいで。欠片しか残らなかったのよ」
「それは残念だな」
「ええ。ハリーにそれを話したら、軽く放心状態になっていたわ」
「よし!それじゃあ箒を送ろう」
ということで贈り物は箒に決まった。
「最新型はニンバス2001だよね?」
「ああ。だが、ニンバスにこだわる必要はない。もっと凄いのが出たじゃないか!!」
とシリウスが興奮気味に言う。シリウスもなかなかのクィディッチ狂いである。
もっと凄いの......?ニンバスは箒業界の中でもトップクラス。それを超えるものは......。あ、もしかして、最近発売されたあれ?
「もしかしてファイアボルト!?」
ファイアボルトはニンバスと同じ会社から出されたけど、ニンバス2000や2001とは特徴が全く違う。
ニュータイプの箒というわけだ。まだあんまり使ってる人はいない。なんせ高いし、箒は自分に合ったものをずっと使うのが普通だから、最新型が出たからと言って乗り換えることはあまりない。去年のスリザリンチームは例外だけど。
「ああそうだ!!金はあるからな!!よし、ハリーにプレゼントしよう!」
シリウスはブラック家の生き残りで、ブラック家はとってもお金持ちなのだ。
ファイアボルトはいい家じゃないと買えないぐらいの値段。今学期の教科書一式よりも高い。そんなものもためらうことなく買えてしまう。少し羨ましい。
「それで、いつ渡すんだい?」
「クリスマスにサプライズで渡しましょう!ハリーはホグワーツに残るでしょうから」
「ああ......。そうだろうな」
とリーマスが悲しそうに言った。シリウスも隣で顔を暗くした。
リリーとジェームズが生きていたら......と考えてるのかな?
「アリスは?」
「今年はホグワーツに残るわ」
ホグワーツで過ごすクリスマスも楽しいからね!
そうしてハロウィンがやって来た。去年はミセス・ノリスが石になって、一昨年はトロールに襲われたハロウィン。今のところは何事もない。これが夜まで続けば安心なのだけど。
「ハーマイオニー。そろそろ帰りましょ」
と本を閉じて、隣でまだ読書に没頭しているハーマイオニーに声をかける。
ハーマイオニーは図書室の時計を見て、
「もうこんな時間!?急ぎましょ」
と立ち上がった。
「アリスがさっき読んでた本、面白かった?」
「うーん。ちょっと説明が回りくどかったわね」
と話しながらグリフィンドール寮へ急ぐ。
すると途中でグリフィンドール生が階段に集まっているところへ着いた。
その中にはハリーとロンもいる。
「やあハーマイオニー、アリス」
「どうしてみんな寮に入らないの?」
とハーマイオニーがハリーに聞いたが、
「さあ」
とハリーは首を傾げた。
どうしたんだろう......と思っていると、
「どいてくれ、さあどいてどいて!!僕は監督生だ!」
とパーシーが先生たちを引き連れてやって来た。
みんなが道を開ける。
みんながどいたことで、寮の入り口が見えて、何が起こったのかが分かった。
寮の入り口に置かれた、太った貴婦人の絵が切り裂かれていた。
「まあ!!ひどいわね」
とハーマイオニーが眉をひそめた。
「誰がこんなことを......」
「レディ、何があったのか話してもらえますか?」
とマクゴナガル先生が近くの絵に避難していた、婦人に声をかける。
婦人はその絵の女性に慰められていた。
婦人は震えた声で、
「ペディクリューが......ペディクリューが寮に入れろと言ってきて......」
と言った。
「なんだって!?」
「脱獄犯がホグワーツにいるのか!?」
「わ、私、早く家に帰りたい......」
とグリフィンドール生が騒然とする。
ペディクリューはアズカバンに収容されていた囚人。ところがつい先日逃げ出したと新聞で報じられた。
まさかホグワーツにいるだなんて......。でも、なんでここに?逃げるなら海外にでも行った方がいいと思うな。
「静かに!グリフィンドール生は今晩は大広間で寝る様に!さあ、早く移動なさい!」
とマクゴナガル先生が、ざわつくグリフィンドール生に言った。
それぞれ大広間に向かって歩き出した。しかしペディクリューのことをみんな話しているので騒がしいことに変わりはないのだけど。
「どういうことかしら」
とハーマイオニーが不思議そうに言った。
「ペディクリューがグリフィンドール寮に入ろうとしたってことは確かね」
と私が言うと、
「僕たちの命を狙ってるのか?」
とロンが言った。そんなことない......と、思うけど。
「何が目的だったのか分かる証拠は無いわ。今日はもう寝ましょ」
とハーマイオニーが話を切り上げ、私達はそれぞれ割り振られた就寝スペースへ向かった。
「うん。じゃあね2人とも。こっそりで歩こうだなんて考えないでね」
とロンとハリーに言うことも忘れない。
「お見通しだな」
とロンがばつが悪そうに笑った。
私とハーマイオニーは女子の就寝スペースへ向かう。その途中、
「ねえアリス」
と声をかけられた。誰だろうと思いながら振り向くと、そこにはダフネが立っていた。
「ダフネ!!ダフネ達も大広間で寝るの?」
それは予想外だ。てっきりグリフィンドールだけ大広間で寝るのかと。
「ええ。安全かどうか分からないから、全校生徒ここで寝るんですって」
大広間にそんなキャパシティがあるとは思えないけど......。
「でも、どうして侵入しようとしたんでしょうね?捕まっちゃいません?」
とダフネの後ろから、可愛らしい声が聞こえた。ダフネの背中からひょこっと顔を出したのはダフネの妹のアステリア。
全校生徒が大広間で寝るので、ハッフルパフのアステリアがここにいるのは当然ともいえる。
「アステリアも久しぶり」
「はい!」
と笑い合っていると、
「ほら、早く寝るのです!!」
と遠くからマクゴナガル先生が注意する声が聞こえた。
「せっかくアリスと話せたのに......」
「じゃあ今度集まりましょう?」
「それが良いわ!じゃあね、2人とも。いい夢を」
と別れを告げて、2人と分かれた。
次の日には、グリフィンドールの入り口に置かれる絵は、ハドガン卿の肖像画に変わった。
ちょっと合言葉が難しいぐらいで、今までとは大して変わらない。ネビルは合言葉を覚えられなくて苦戦していたけど。
「ねえハーマイオニー。今度のホグズミード行き、行くわよね?」
今日の朝、談話室にホグワーツ行きの日が載っていた。
談話室でハリーとロンと話しているハーマイオニーに声をかけると、
「勿論よ!」
とハーマイオニーが答えた。
「おいおい、俺たちは誘ってくれないのか?」
とロンが不満げに言う。
「だって、ハリーは許可をもらう相手が叔父さんと叔母さんでしょう?許可がもらえてるわけが無いじゃない。だから2人で残りなさいよ」
ホグワーツへ行くには、親からの許可が必要で、許可用紙は去年配られていた。
だからハリーも許可を貰おうとしたはず。でも、許可をくれるような人たちだとは思えなかった。
ロンは私の言葉を聞いて、ため息を吐いた。
ハリーはそんなロンの様子を見て、
「良いよロン。僕、ここで待ってるからさ」
と寂しげに笑った。こういうことになるから、ロンに残ってって言ったのになあ。
「それなら私達も残るわ!」
とハーマイオニーが言う。
ハリーはハーマイオニーに首を振って、
「じゃあさ、僕にお土産をいっぱい買ってきてよ」
と言った。
「分かったわ」
とハーマイオニーは気合たっぷりと言った様子で頷いた。
お土産を買うのに、気合は必要ないよハーマイオニー......。
そしてホグズミード行きの日。今日は雪が降っていた。ロンドンの冬は冷え込む。
「寒いわね」
と思わず声に出してしまう。
「ええ。どこかお店に入りましょう?」
「ならハニーデュークスに行かないか?色んなお菓子が買えるらしいぞ」
ハニーデュークスの店内には甘い香りが漂っていた。お菓子屋さん特有の甘ったるい感じだ。でも、不快な感じではない。
店内を歩いていると、いいものを見つけた。
「ねえハーマイオニー。今度の授業用にこれをプレゼントするわ」
「それ砂糖でしょ?」
とハーマイオニーに言われる。
「バレたかー。慌てるハーマイオニーが見れると思ったんだけどなぁ」
砂糖羽ペン。ずっと手に持っていたら、段々溶けてきて、最後には無くなってしまうだろう。多分手がめっちゃべたべたする。
「それならハリーに渡そうぜ」
とロンが悪い顔をする。
「いいわね!」
私も賛成する。とその時、
「これを僕がテストに持ち込んだら大変だからやめてほしいよ」
という声が聞こえた。
「ん?」
「え?」
「今の声、ハリー、だったよな?」
3人で顔を見合わせる。ハリーはグリフィンドールの談話室にいるはずだし、空耳かな?と私が考えていると、
「そうだよ!」
と突然ハリーが現れた。
「きゃあ!!」
「ちょっと!なんでここに?」
「実は、」
ハリーが話そうとしたが、
「いったん外に出よう。バレたらただじゃすまないぞ」
とロンが提案し、私達は慌てて外に出た。
「さあハリー。どうしてか説明しなさい!」
「実はあの後、フレッドとジョージに会ってさ。僕がホグズミードに行けないってこと話したら、地図をくれたんだ」
「地図?」
私が首を傾げると、ハリーはローブから一枚の古びた地図を取り出した。
「これだよ。この地図はホグワーツにいる全員の居場所が分かるし、隠し通路も全部書いてあるんだ!」
「あの2人がこれをつくったの?」
全員の居場所を表示する魔法なんて聞いた事が無いし、絶対に難しくて高度な技術が無いと無理だ。それに隠し通路も、あの2人に城中を調べて魔法を開発する時間があったとは思えないんだけど......。
「ううん。2人が僕にこれを譲ってくれただけで、つくった人たちはここに書いてある人達みたい」
「 “ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ われら魔法いたずら仕掛け人"?聞いたことないわ」
ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ??聞いたことあるような無いような......。なんか頭に引っかかり覚えたけど、それが何かまでは思い出せない。
「あの2人はこれをフィルチの没収品の中から見つけて取って来たんだってさ」
ふーん。地図を落としちゃったってことかしら?地図で近づいてくるのが分かったはずなのに。
「へえ......。でも、だからといって、ホグズミードに来ていい理由にはならないと思うけど?」
「でも、これで4人でホグズミードを回れるんだから、いいだろ?」
とロンが笑う。
「今回だけよ?バレたらとんでもないことになるんだからね!運が悪ければ死、もっと悪ければ退学よ!!」
と私が言うとハーマイオニーが顔を赤くした。
「......アリス、私の発言を掘り返すのはやめてちょうだい?恥ずかしいわ......」
「良いかハリー。退学にならないように、絶対に透明マントを被っておけよ!」
とロンがにやにや笑う。
「うん。死より怖い退学なんて、絶対になりたくないよ」
とハリーも笑い、ハリーの姿は見えなくなった。
さあ、楽しいホグズミード観光の始まりだ。
・ホグズミード
ホグズミード村の事。三本の箒やハニーデュークスがあることで有名。近くには叫びの屋敷が立っている。
次回は楽しいホグズミード観光になるでしょうかね。
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