「何故、彼女を殺してしまったのだろう。」と。
「今夜は、星がよく見えそうね...」
憂鬱に縁側へと腰掛ける。
夕暮れ時の博麗神社を眺め、溜息を吐いた。
彼女が放ったあの言葉が忘れられない。
『これで何も気にせず、地獄に行ける。』
…なんて。
不意に、足音が視えたような気がした。
嫌な記憶が頭を廻っていた。
先日、異変を起こした妖怪達がいた。
里の人間に被害が出る程凶悪らしい。
最近、めっきり仕事が無くなり堕落していた私は、「どうせ新参者か大した力もない妖怪が起こしたものだろう。」と楽観視していた。
でも、現実は違った。
首謀者は『霧雨魔理沙』という妖怪だった。
「お、霊夢か。やっと来たな。」
魔法使いの目撃情報があった森の中に入ると、直ぐに彼女の姿が目に入った。
「何で、何でアンタがこんなことを...?」
「動機がどうであれ、関係ないだろ。さ、殺し合いを始めようぜ。」
彼女は、「命名決闘」ではなく「殺し合い」と確かに言った。
躊躇いもない攻撃が飛んでくる。
その弾幕に美しさなどなかった。
「ちょっと待って...」
「そりゃ、無理な話だな。」
彼女が放った弾幕を何とか避け、懐へと潜り込む。
「ッ......」
あとは一瞬の事だった。
「はは、やっぱり霊夢は強いな...」
地面に膝をつき、弱っている様子の魔理沙に近付く。
そのまま、偶然持っていた玄翁を構えた。
自分が殺される時ですら恐怖に染まらない彼女に、嫌気が差してしまった。
そんな私の目を見て彼女は言い放つ。
「これで何も気にせず、地獄に行ける。」
どこか儚げで、嫌な笑みを浮かべていて。
次の瞬間、無言で彼女の頭部を目掛け、殴打した。
ドッ。っと、鈍い音が響いた。
私は、霧雨魔理沙を殺した。
動機はない。殺すつもりなんてなかった。
唯、自分の手で彼女の命を奪い去った感覚だけが残っている。
狂っているのかもしれない。
それでも、目の前の事実に顔を向けられない。
「はは...おかしいよ、私。」
何故あんなことをしてしまったのだろう。
いつも通り、スペルカードルールを用いた決闘をすれば良かったではないか。
自責の念に駆られていく。
どうして、どうして。
何度悩んでも、何度後悔しても、もう遅い。
幻想郷には、裁判というものが存在しない。
罪、なんてものも無論生きている間は無いのだ。
何故なら全ては博麗の巫女である私に委ねられているから。
「仕方のない犠牲だった。」
どこかで、そんな言葉が聞こえた気がした。
嗚呼、きっとそうに違いない。
「元々は、魔理沙が異変なんて起こさなければ良かった。」
彼女が悪いのだ。私の所為では無い。
おかしいのは、私ではなく、霧雨魔理沙。
全部、魔理沙が悪いんだ。
「本当に?」
五月蝿い。
「お前が殺さなければ、彼女は生きていた。」
五月蝿いうるさいうるさいッ!
「悪いのは、お前じゃないか。」
私じゃない。アイツ、魔理沙が悪いんだ。
「責任から逃れられると思うな。」
急な頭痛に襲われる。
楽になりたい。そう思い立ち上がろうとした。
…が、そこに映っていたのは、見慣れたはずのドロワーズ。
まさかと思い見上げると霧雨魔理沙の姿があった。
「なあ、霊夢。もしかして苦しいのか?」
「何で、魔理沙が此処にいるの...?」
「質問に答えろよ。」
「え、嗚呼、ごめんなさい。苦しくはあるのだけれど...」
私がそう答えると、彼女は嫌な笑みを浮かべた。
確かに殺した、あの時と同じ様に。
「じゃあ、楽にしてあげようか。」
「楽、に...?」
「そう。ほら、丁度良く私はこれを持っている。」
手には、玄翁が握られていた。
息が上がっていく。
これから起こることが容易に想像できる。
嫌だ。怖い。
「お願い、辞めて。一生のお願いだから...」
「ふむ...その一生は、私にはもう無いわけだが。」
「ごめんなさい。謝るから許して...」
恐怖が一歩ずつ、ゆっくりと近づいてくる。
「許す?そんなことがあるわけ無いじゃないか。」
「......」
今更だと判っていても、自分の『罪』の重さを実感する。
ドッ。と鈍い音が響いた。
「一発で、楽になれると思うなよ?」
ドンッ。ドンッ。玄翁が当たる度に言葉にならない声が上がる。
体には何も異変がないのに、殴られたという認識だけが残る。
「はあッ...もう、辞めて...」
「何を言っている?まだ始まったばかりなんだ。辞められるわけがない。」
逃げなければ。と思案するが動けない。
痛みと恐怖に支配された身体は、完全に自由が効かなくなっていた。
「ッ...............」
数日後、人里はある話題で持ちきりになっていた。
「ねえ、知ってる?博麗の巫女が自殺だって。」
「跡継ぎはどうするのかしら?そういえば、仲が良かった魔法使いも死んだらしいわね。」
「ああ、その件なんだけど...」
私としては初の作品です。
レイマリの一つの形として、この様なものもアリですね。