とにかく今日はすることがない
安易に動けないというのが正しいだろうが
幸いと言うべきか、食料はある
日持ちもするし栄養もある携帯食料
何本かまとめて買って良かった
「......」
ソファに横たわり天井を見つめる
何かあるわけでも、何か変化があるわけでもない
狩りに行かなくていいの?
耳鳴りがうるさい
そんな陳腐な板で、我慢してていいの?
不思議と不快感は少ない
我慢は良くないと、私は思うの。
むしろ...
「フォルケ、さん。」
「...どうした。」
寝たまま頭を横に倒す
見慣れ始めたキュリンが居る
「...ぁ、いや、えっと...何でもない、です...。」
「隠すな。言ってくれ。」
「......勝手に、口から、出たんです。なんだか、このままどこかへ、消えちゃいそうで...。」
「そうか。」
そう言葉を漏らすキュリンの目元は赤かった
どこかへ消えてしまいそう、か
目線を上の方へ戻す
灯りのない天井は真っ暗だ
「...捨てないで...」
か細い声をしっかり聞き取った
ソファから起き上がり、キュリンの方を向く
これは言わなければならない
明言しておく必要がある約束だ
「捨てない。捨てるわけがない。」
「...っう、あぁ...」
よたよたとこっちへ近寄ってくる
俯いていて、顔はよく見えない
俺の服を両手で握りしめ、顔を胸にうずめてくる
服が湿った、冷たくはなかった
キュリンの背中を撫でる
そうしたほうがいいと漠然と思った
「ぁ...」
握りしめる手が弱まっていく
「...おとう...さん...。」
「......」
ーーーーー
眠ったキュリンを抱きかかえる
軽い
身長がそこまで大きくないから、それで片付けれないほどに軽かった
ベッドまで運び、ゆっくり降ろす
目尻の下がった安心を感じているようなキュリンの寝顔
...あれが寝言なのか、思わず漏れた言葉なのかは、分からない
俺に向けられたモノだとして、そんな存在になれてるのか?
人を襲い、殺し、喰らう、俺が?
迷って、道を彷徨ってしまうなら
何も考えずに真っ直ぐ進んでみない?
耳鳴り...いや、ぼやけてはいるが聞こえる
声が
ほら
目の前で寝てるよ?
無防備で、柔らかそうで、新鮮なお肉が。
キュリンをそんな目で見ているわけがない
それに、積極的に人を食べたいわけでもない
そう、しょうがないんだ
生きるために、しょうがなく、食べ始めたんだ
もっと安く、簡単に手にはいる食べ物があったら人肉なんて食べない
耳を塞ぐ
その声は頭の中に響き渡ってくる
ほんと、正直じゃない子。
必死に目を背けてて...まあいいわ。
まだ待っててあげる。
酷く頭が重い
ずっと聞いていたくなる、二度と聞きたくない声だった
ちなみにヴァルプルガチャはハーモニークレアしか出ませんでした(140連)
ヴァレンチーナ、ボニャテッリ家はお前から愛を取り上げる