その国は会社を中心に回っている。
その成立と歩みをまとめてみました。

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物語 会社中心社会のあゆみ

昔、その国のほとんどの人が百姓だった。

男も女も老人も子供も、皆んな農業に従事していた。皆んな、労働者だったのだ。

彼らを支配している人もいたが、支配する人にとって重要な労働力であった農民は彼らの財産でもあったので、基本的に彼らを大事にした。戦争もあったが、支配したい側が今支配している人と武を競う為のもので、支配者達はこれを戦(いくさ)と呼んだ。その土地の大半の人たちに「自分にはここを支配するに足る力がある」と力を示すデモンストレーションの意味合いが強かった。流石に戦地となった周辺の農村では敗戦でヤケクソになった兵士達が狼藉を働くこともあったが、財産である彼らと彼らの田畑には手を出さないという暗黙のルールがあった。だから農民たちにとっては支配者なんか誰でもよかった。そりゃ戦地の略奪がない様攻め込まれない強い人、欲を言えば税金の安い人ならありがたいなと思う程度はあったけど、基本的に誰が支配者であろうと関係なく、自分達は自分達の日々の仕事を黙々とこなしたし、支配者達も彼らと彼らの田畑を守らのが自らの責務と考えていた。

しかし、海外からこの国の戦(いくさ)の作法も知らない連中が戦艦に乗ってやって来た。彼らは彼らの作る農作物ではなく、労働力として彼ら自身を欲しがった。船に乗せ、遠くの国々に売り払い、働かせようとしたのだ。

田畑を耕す為に自分達はいるし、それを守る為に国があると考えていたその国の多くの人は怒った。

支配者は民がいなければ田畑が荒れ、作物が取れなくなってしまう。

民は先祖代々守り倒して来た田畑と農業という仕事から引き離されてしまう。

多くの人が危機感を共有する。

この危機に支配側だけにとどまらず、農民達も立ち上がる。

外国人を追っ払え!

しかるに近代兵器を持つ外敵との戦力差は歴然。

国を守る為には、銃がいる、戦艦がいる。

近代武器も戦艦も今は外国人しか持っていない。

外国と商売する為にはカネがいる。

カネを生み出す為に、従来の作物を生み出す農業では賄えない。

資源の少ないその国では、物を作って売るしかない。

こうして産業が生まれた。

 

はじめはそれぞれの家で家族単位でやっていたそれは、徐々に大きくなる。大きくなると取りまとめる人が必要になる。経営者の誕生である。

経営者は自らの組織を会社と呼ぶ。

経営者はより自分の指示が通る様、会社は上意下達の武家の仕組みを導入した。

さらにより効率良く、多くの物を作る為に分業化を行う。

分業化された仕事は作業となり、働く人々は取り換えのきく部品となる。

職人という対等な立場から、従業員と経営者という上下関係が生まれた。この関係は経営者にとって都合が良かった。

経営者のは従業員に武士のように会社への忠誠を求めた。

武士といえば男の役割である。

事実、対外敵用に、来る時代彼らにも戦場に出てもらわなければならなくなるから、尚更男である必要があった。

男のみが会社に行き始めると、自然女性は家のことを任される様になったが、それすらも外敵を理由になし崩し的に行われた。

経営者達は殊更に「君たちは必死に仕事をしているんだ!戦場で働く武士の様に!」と鼓舞した。

これにより、会社という組織は同じ戦場で戦う仲間という強固な結び付きを持つようになり、社長はまるで一国一城の主の様に振る舞う様になった。

 

結局、外敵達との戦争に負ける。

しかし、その後も、上意下達の武家の仕組みを踏襲した会社は続く。

経営者にとって理想的な環境だったからだ。

戦争で大きく人数の減った労働者達は貴重だった。

しかし、経営者はせっかく築き上げてきた上下関係を崩したくない。貴重な人材とてチヤホヤ出来ないのだ。困った経営者は従業員のアフターフォローは彼らの家庭に丸投げする。その為に当時普及し始めていたテレビに金を渡して、頑固親父と従順な妻という構図をテンプレ化させる。

男達は会社での不満やストレスを家庭のせいだと思い、その発散を家庭で行う様になる。

 

そんな風に誤魔化しているうちに、隣国で内戦が起こる。

戦争が起きるとその国でどんどん物が売れた。

大量生産の為に製造拠点に人を集中させなければならないと、地方から農家の次男、三男など跡取りにならない人たちを呼び寄せる。

農家の人手が足りなくなるが、物が売れるのでカネに不自由がなくなり、外国から食料を買う事で問題を解決させた。

 

他国の戦争は終わったが、作った生産拠点は残った。

国内向けに生産ターゲットを変えるが、大家族が普通だったその国では限度があった。

テレビも冷蔵庫も、一家に一台有れば事足りるのだ。

会社は物を売る為に、家族を小さい単位に小分けしようとする。

いわゆる核家族化だ。

本社機能を都会に集中させる。コロコロ転勤させる。家族の予定を無視した出勤命令。拘束時間を不規則にして大家族の中から孤立させる。

あの手、この手で大家族を分断していった。

これにより、家電や住宅など今まで以上に物を売りつける事ができる様になった。

日本は好景気となった。

さらに物を作る必要が出来る。

更なる労働力が必要だ。

女性の社会進出を利用してやれ。

マスコミを使って働く女性をどんどん刷り込んでいった。

特にドラマで働く女性を主人公として描くと、それに憧れた女性達が我も我もと働くようになっていった。

 

しかし、今まで男たちを茹でガエルの如く徐々に苛烈な労働環境に慣れさせて来たのに、いきなり熱湯の様な労働環境に入れられた女性達は一斉に文句を言い出す。

やっと労働力が増やせると思ったら、今いる労働者に悪影響を与えようとしていると経営者は警戒する。

経営者は黙って働く労働力が欲しいのだ。

 

マスコミを使って、女性達が会社へ抱いた違和感は全て男社会のせいだと批判の的を逸らす。男社会という漠然として正体のわからない、当事者が微妙にわからない物を会社の身代わりにしたのだ。

そして、のうち、察しのいいのを取り上げ女性学者にして祭り上げる、男社会対女性の構図を作り上げる。

 

男、特に身内であるはずの夫を殊更に悪者に仕立て上げ、これが差別、あれが差別と非難する。元々、身近な話題で盛り上がる性質のある女性達はこの亭主叩きに夢中になる。

突如牙を向いた身内に世の夫達は恐怖したが、ちょうど給料が現金手渡しから銀行振込に切り替わっていて、亭主から女房に手渡しされていた月給が、奥さんからダンナに小遣いをいただくと180度関係性が入れ替わっていた事で萎縮していた世の男性陣は粛々と受け入れてしまう。

 

その後、しばらくは身内叩きで時間を稼げたが、再び女性達が会社への労働環境と待遇について不満を口にする様になる。そこで、海外からセクシャルハラスメントという言葉を輸入してきて、会社そのものではなく、直属の上司や同僚と言った狭い範囲にのみ非難が向かう様に調整した。ちょくちょく経営者にもその火種は飛んできたが、それでも、会社そのものの存在やそのあり方についてへの批判を躱す事には成功する。

 

しかし、予期せぬ事が起きる。

景気が悪くなったのだ。

仕事が一気になくなる。

好景気に任せて肥大化させた組織が、会社の足を引っ張る。

なんとしても会社を守らなければならない。

従業員をどんどん辞めさせた。

ただ辞めさせたのでは会社のイメージが悪くなる為、会社を守る為、無駄な経費を削減させた人ほど有能な経営者であるとマスコミを使って刷り込んでいった。

散々今まで広告費の名目でマスコミに金を落としてやったから、彼らは既に会社には逆らえないのだ。

 

まんまとこの策は功を制し、ただ無慈悲に人を解雇し、備品をケチケチする経営者が有能な経営者として崇められる様になる。

この状況に調子づいた経営者は、従業員達の給料もガンガン削っていく。あれだけ会社に忠誠を求めていたくせに、人件費を減らす為に、派遣社員という他社の人材まで使う様になる始末だった。

 

しかし、この方針は経営者の足枷となってしまう。

景気が悪いから成立するコストカットなので、景気が良くなったら元に戻さなくてはならない。コストカットで成り上がった経営者にとってコストカット以外の利益の上げ方など、未知の世界。あまり得意ではないのだ。

だから、経営者達は口を揃えて「今は不景気」と言い続けなければならない呪いにかかる。完全に自業自得である。

経営者はマスコミも動員して何十年も不景気を演出し続ける。

 

だが何十年も経てば景気も戻ってくる。

経営者は相変わらず不景気を言い続け、労働者はそれを真に受け続けだが、仕事が増えている以上、人手が足りなくなっていく。しかし、散々超薄給でこき使ってきた労働者は家庭を持てず、酷い少子化になっていた。

景気が上がったと言えば給料を上げなくてはいけない。

コストカットで頭がいっぱいな経営者は費用対効果が下がる事に耐えられない。

そこで、安く使える人材として外国人労働者に目をつける。

その頃には政治家も経営者に飼い慣らされていた為、技能研修という名目で安く経営者が使える様に取り計らう。

おかげで労働者達は好景気にも気付かず、今も安い賃金で働き続ける事になる。

陰で政治家と労働者をその国に送ってくれた国が急接近していたが、会社の為に見逃す事にした。

 

こうして、無事、経営者は会社を守ることに成功する。

そして、今日も世界は会社を中心に回っている。


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