雪風の姫と砂の城   作:もちもちゼリーちゃん

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幕間劇 虚無と王冠、青と白

 

 革命戦争の最後を飾った、ニューカッスルの攻城戦から二日後。

 かつて白の国(アルビオン)随一の名城と謳われたニューカッスル城は、いまや見る影もない。数多の砲撃と火の魔法、攻城用ゴーレムの拳を受けた城壁は無残に崩れ、そこかしこが焼け焦げている。

 照りつける太陽の下、腐りかけた死体と瓦礫が散乱し、動いているのは財宝漁りにいそしむ革命軍(レコン・キスタ)の兵士たちばかり。

 またどこかで金目のものでも見つかったのか、下卑た歓声と馬鹿笑いが頭に響く。

 

 人より鋭敏な己の耳を、『風』の使い手として誇りに思うことはあったが、こうも疎ましく思う日が来るとは……羽帽子をかぶった長身の貴族、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは、苦々しく舌打ちした。

 

「『風』じゃなくても気分が悪くなる場所だよ、ここは」

 

 隣を歩く緑髪の女メイジ、『土くれ』のフーケが呟いた。

 彼女もまた眉間にしわを寄せ、忌々しそうにレコン・キスタの蛮行を眺めている。

 

「意外だな。貴様は喜び勇んで宝石漁りにいくものだと思ったが。財宝を奪うのが盗賊の仕事だろうに」

「この『土くれ』を、あんな連中と一緒にしないで欲しいね。据え膳に興味はないの。わたしが好きなのは財宝なんかじゃなくて、大切なものを盗まれてあたふたする貴族の間抜け顔……というか、八つ当たりはやめてくれる?」

 

 フーケはふっと表情を和らげ、意地悪な、どこか悪戯っぽい笑みをワルドに向けた。

 

「自分の失敗を確かめるのがいやだからって、女に当たってたんじゃ世話ないね」

 

 ワルドは答えず、ますます表情を険しくした。

 

「図星だからってだんまり? これだからトリステインの男はだめなのよ。プライドばっかり高くって、情けないったらもう」

「黙れ。俺はもう、トリステインの貴族ではない」

「そりゃ今はレコン・キスタの一員だけどね。わたしがしてるのは、血と生まれの話だよ」

「黙れ」

「はいはい。仕方ない男だね」

 

 ワルドとフーケは、ニューカッスル城の端にある礼拝堂の跡地に向かっていた。

 レコン・キスタ総司令官にしてアルビオンの新たな皇帝、オリヴァー・クロムウェルの指示である。

 

 彼らの目的はふたつ。

 ひとつはアルビオン皇太子ウェールズの亡骸を確かめること。

 もうひとつは、トリステインとゲルマニアの同盟を阻む材料となる、アンリエッタの恋文を回収することである。

 ウェールズの命はワルドがその杖で奪ったが、恋文の回収は絶望的であった。

 恋文を携えたルイズは、あのモグラが掘った穴から逃げていることだろう。

 

 しかし、もしかしたら、万が一……ルイズは逃げ損ねていたかもしれない。

 勢いに乗ったレコン・キスタの軍勢によって、誰と知られることもなく殺されていたかもしれない。

 そのわずかな可能性に賭けて、ワルドはこの屈辱の地に遣わされた。

 ウェールズに宛てられたアンリエッタの恋文は、トリステインとゲルマニアの同盟阻止は、レコン・キスタにとってそれだけの価値がある代物なのだ。

 

 瓦礫の山と化した礼拝堂の跡地に辿り着くと、ワルドは呪文を唱え、軽く杖を振った。

 風の初歩の初歩の初歩、『ウインド』だ。

 優しく風をそよがせるだけの基礎呪文は、しかしスクウェアたるワルドが行使することで大きなつむじ風を起こし、瓦礫を吹き飛ばす。

 ワルドが風を吹かせる度に、礼拝堂の本来の床が明らかになってゆく。切断された左腕の袖が風にそよがれ、ぱたぱたと揺れた。

 

「たいしたやつだね、あの『ガンダールヴ』は。近衛の隊長だったあんたの腕を落としちまうなんて。わたしのゴーレムをやっつけただけのことはあるね」

「ガンダールヴひとりの戦果ではない」

 

 ワルドはそっけなく答えたが、心の内では、己の言葉が欺瞞だと認めていた。

 左腕を切られたのは、青髪の少女に不意を打たれたからだ。

 しかし……一対一で戦っていたとして、俺は勝っていただろうか? あの少年が最後に見せた力は、風のスクウェアである俺を凌駕していたかもしれぬ……そう思うと、ワルドの胸には途方もない屈辱が渦巻き、ますます険しい顔になった。

 

「あんたもなかなか、いい顔するじゃないの。いつもの鉄面皮より、よっぽど可愛いよ?」

「黙れ」

 

 フーケはくすくす笑い、ワルドは冷淡な、少なくとも自分では冷淡だと思っている声で答えた。

 そのうちに風が瓦礫のほとんどを払い、始祖像と椅子の間に倒れたウェールズの亡骸が見つかった。

 この作戦で唯一の成果である皇太子の(むくろ)には目もくれず、ワルドは強く、さらに強く風を吹かせる。隣のフーケが文句を言うが、耳も貸さない。

 風が止んだのは、床の大穴……ルイズが逃げていったであろう、あの間抜けなモグラが開けた穴があらわれてからだった。

 ワルドは無言でその穴に歩み寄り、中を覗き込んだ。

 冷たい風が頬をなぶる。

 穴は地の底に、アルビオン直下の空にまで通じている。

 がらんとした礼拝堂にはウェールズ以外の骸はなく、ルイズもガンダールヴも、ここから逃げたに違いなかった。

 胸に疼く屈辱が激情となって、ワルドの顔を歪ませた。

 

「やあやあ子爵! ワルド君! どうかね、親愛なるウェールズ皇太子と、空の下の同盟を阻む、(くだん)のラブレターとやらは見つかったかね?」

 

 廃墟に似合わぬ、快活な声が聞こえてきた。

 顔を上げると、聖職者の格好をした三十代ほどの男が歩いてくるのが見えた。ワルドにこの作戦を命じた男、クロムウェルだ。

 後ろにひとり、黒いコートを着た細身の女を供につけている。

 

「閣下、申し訳ありません。皇太子は発見しましたが、やはり手紙は逃したようです。なんなりと罰をお与えください」

 

 ワルドは地面に膝をつき、頭を垂れた。

 

「気にするな。君は敵の勇将を仕留めたのだ。なんら恥じることはない。それよりも……」

 

 クロムウェルは、奇妙に言葉を濁した。

 

「そうだな、まずはそこの女性を紹介してくれたまえ。彼女もまた、君の作戦に同行した一員なのかね?」

 

 ワルドは立ちあがり、フーケを紹介した。

 

「かつてトリステインの貴族を震え上がらせた、『土くれ』のフーケにございます。作戦中、彼女は私に従い、ラ・ヴァリエール嬢の仲間の足止めを行いました。しかし、手紙を逃したのはこの私の――」

「ああ、かまわぬ。そういうことを聞いているのではないのだ」

 

 クロムウェルは軽く手を振り、ワルドを遮った。

 それから、ちらりと後ろを見た。

 まるで上官に指示を仰ぐかのようなその仕草に、ワルドは違和感を抱く。クロムウェルは気もそぞろな様子で後ろに立つ女を紹介する。

 

「ミス・シェフィールド。余の秘書だ。東方の技術に通じていてね、非常に、その、優秀な女性だ」

 

 ワルドは改めて、シェフィールドと呼ばれた女を観察した。

 歳は二十代半ば。冷たい、こちらを見下すような雰囲気。しかし貴族ではないのか、マントはつけていない。かわりに体にぴったり張り付くような黒いコートを身に纏っている。見たことのない、奇妙な服装だった。

 

「で、ミス・シェフィールド……」

 

 彼女はクロムウェルに小さく頷いた。

 クロムウェルは安心したように微笑み、ワルドに向き直る。

 どちらが秘書で、どちらが皇帝かわからないような光景であった。

 

「ワルド子爵、君の報告で、気になることがあってね」

「なんなりとお尋ねください、閣下」

「件の恋文を持ち帰ったのはラ・ヴァリエール公爵家のご令嬢。護衛には少年の剣士がいたので間違いないね?」

 

 屈辱に胸を燃やしながら、ワルドは頷いた。

 少年が『ガンダールヴ』ということは、報告していない。ルイズの『虚無』につながる情報をクロムウェルに与えてよいものか、レコン・キスタはほんとうに『聖地奪還』の理想に殉じるのか、彼は未だ判断がつきかねていた。

 それゆえワルドの左腕は、ウェールズとの戦いで落としたということになっている。

 

「で、君が戦った現場には、他にも仲間がいたそうじゃないか。グラモン家の四男と、青髪の少女。そうだね?」

「ええ、その通りです」

 

 ワルドはわずかに困惑した。

 クロムウェルが訊きたいのは、『ガンダールヴ』とルイズの虚無に関することだとばかり思っていたのだ。

 

「ギーシュ・ド・グラモン。これはまだいい。グラモン家がアンリエッタの命令に従うのは当然だ。だが、青髪の少女……余が訊きたいのは、まさにこの少女についてなのだよ」

 

 なるほど……、とワルドはようやく得心する。

 青髪は、ガリア王家の象徴である。

 それがレコン・キスタの陰謀の現場にあらわれたのであれば、ガリアの関与を疑わざるを得ない。

 アルビオンの新たな皇帝であるクロムウェルは、その事実関係を確かめに来たのだろう。

 

「その少女……ええと、報告ではタバサとか言ってたね。彼女はなぜ、我々の理想を阻んだのか。果たしてそれは、ガリア王室の指示なのか……子爵、君はどう思う?」

 

 ワルドは首を振った。

 

「あくまで私見ですが、彼女はごく個人的な事情で動いているように感じました」

 

 礼拝堂の戦いで見たタバサの瞳を、彼は思い出す。

 己の烈風で打ちのめし、もはや戦えぬとばかり思っていた小さな少女が彼に向けた、底知れぬ闘志を秘めた蒼い瞳。

 杖に縋らねば立つことさえできないほど弱っていたにもかかわらず、ただ戦い、勝利することのみを考えているかのような、まっすぐな眼差(まなざ)し。

 あれは誰かに命じられてできるものではない。

 己の意志で敵と対峙していなければ浮かべることのできない光だと、歴戦のメイジであるワルドは知っていた。

 

「それに、彼女の他にガリアの関与はありませぬ。王室に連なる者をたったひとりで戦場に送るなど、あり得ざることでございます」

「ふむ、そうだな。君の言うとおりだ。彼女に関して、他に気がついたことはあるかな?」

 

 ワルドは礼拝堂の戦いを反芻し、言った。

 

「……頼まれた、と」

「ふむ?」

 

 クロムウェルは目を細めた。

 

何故(なにゆえ)私と戦うのか問うたとき、彼女はこう答えたのです。ただひとこと、頼まれた、と」

「頼まれた? 誰に?」

「わかりませぬ。彼女の答えは、それだけでした」

 

 クロムウェルはしばし考え込むような仕草を見せたが、後ろに控えたシェフィールドがなにか耳打ちすると、朗らかな笑みを浮かべて杖を取り出した。

 

「そうだな、わからぬのであれば、訊いてみればよい」

「閣下?」

 

 クロムウェルが杖を取り出し、ワルドは反射的に身構えた。

 彼の『虚無』をその身に食らうかと思ったのだ。

 しかしクロムウェルは不気味な長い詠唱を終えると、傍らに倒れたウェールズの亡骸に杖を振る。

 すると、奇跡が起きた。

 半ば腐敗していた皇太子の肌がかつての瑞々しさを取り戻し、ワルドに穿たれた胸の穴が、まるで時間が逆行するかのように塞がっていく。

 隣に立つフーケが、ひっと後退(あとずさ)るのが聞こえた。

 

「ああ、君は知らないのだったな。余が始祖より(たまわ)りし系統は『虚無』。そして『虚無』は、生命を操る系統なのだよ」

 

 傷が完全に塞がり、あの結婚式の日と変わらぬ顔色になったウェールズがぱちりと目を開け、何事もなかったかのように立ち上がった。

 

「おはよう、大司教。久しぶりだね」

「おはよう、ウェールズ君。しかし、余はすでに大司教ではない。皇帝なのだよ」

「それは失礼した。閣下」

 

 ウェールズは跪き、臣下の礼を取った。

 クロムウェルは手を振ってウェールズを楽にさせると、にっこり微笑んだ。

 

「折り入って、君に訊きたいことがあるのだが」

「なんなりと」

 

 鷲のように鋭い眼光を浮かべるワルドの前で、王冠の簒奪者とその本来の後継者は、昼食の相談でもするような調子で会話を続ける。

 

「君に、ガリア王家の女性との親交はあるかね? 年の頃は、そう……」

「アンリエッタ姫殿下より、五つばかり年下と存じます、閣下」

 

 ワルドは心の半分を目前の光景に奪われたまま、クロムウェルのあとを次いだ。

 

「そうだ、その年頃の青髪の少女と、親しくした記憶はあるかね?」

「おそれながら、心当たりがございませぬ。王家となれば、いずこかの園遊会でお会いしたのかもしれませぬが……」

「その園遊会で、例えば、その……関係を持ったりなどは」

 

 ウェールズは魅力的に微笑み、首を振った。

 

「ありえませぬ。私が愛するのは、我が従妹、アンリエッタ姫のみでございます」

「それでは、そのアンリエッタの友に、ガリアの少女がいたということは?」

「彼女とはあの恋文以来、何年も連絡を取っておりませぬが……私の知る限り、アンリエッタがガリア王家と親しくしたということはございませぬ」

 

 当然のように答えてゆくウェールズの姿に、ワルドは思わず口を開いた。

 

「アンリエッタを愛していたのではないのか?」

「もちろんだよ、ワルド子爵。しかし閣下がご質問なされたのだから、答えるのは臣下の義務だ」

 

 ワルドの心は、激しい嫌悪感に襲われた。

 彼自身、愛などいう感情はとうに捨て置いたつもりだったけれど……しかし、それゆえに、愛が尊いものだと知っていた。

 それをこうもたやすく踏みにじるのが、『虚無』だというのか。

 母の心を狂わせた恐るべき真実とは、このおぞましい『虚無』の力だったのか……。

 

 思考に没するワルドの前で、クロムウェルは軽薄に言う。

 

「君も知らぬのであれば、ここでこれ以上考えても仕方あるまい。余は戻るとしよう。ワルド君は別命あるまで休養を取り給え。ウェールズ君は、一緒に来るのだ。余の友人に紹介せねばならぬからな」

 

 そうして生前と変わらぬ仕草で歩いて行くウェールズを引き連れ、礼拝堂を去ろうとしたクロムウェルの後ろで、シェフィールドが何事か囁いた。

 クロムウェルは足を止めて振り返り、ワルドに尋ねる。

 

「青髪の少女について、ここにいる我々の他に、知っているものはいるかね?」

「いいえ、私が報告したのは、閣下のみにございます」

「では、外交上の戦略のため、この件については他言無用とする」

「御意」

 

 頭を垂れるワルドの前で、クロムウェルは、自身に言い聞かせるかのように呟いた。

 

「……そう、非常に高度で繊細な、外交上の戦略のために、な」

 

 

 

 

 アルビオンから遠く南東。

 青の国(ガリア)の首都リュティスはヴェルサルテイル宮殿の一角、グラン・トロワと呼ばれる壮麗な建物の奥の間で、彫刻のような美貌をたたえた男が笑っていた。

 男の名はジョゼフ。

 人口千五百万を誇るハルケギニア随一の大国、ガリアの王である。

 

 朝食の後、彼は政務を投げだして、誰も近づかぬよう臣下に言い含めると、ひとりこの部屋に閉じこもった。

 それから一時間以上の間、彼は部屋いっぱいに作られた巨大な箱庭――全長十メイル以上もある世界(ハルケギニア)の模型に夢中になっていた。

 大陸西端を走る火竜山脈やトリステインとの国境線上にあるラドグリアン湖、各国の王宮に至るまで精巧に作られたそれは、未だ完成していない。

 ゲルマニアの一部には空白が残り、水の都と呼ばれるロマリアの都市アクイレイアの彩色など、中途半端な仕上がりだ。作業の途中だったのだろう、部屋の隅には使いかけの工具や絵の具が積まれている。

 箱庭はもうじきに完成するが、ジョゼフは時折待ちきれなくなって職人たちを追い出し、己の世界をうっとりと眺めるのだった。

 

 

 ジョゼフは少年のような笑みを浮かべて部屋を歩き回っていたが、ふと気がついたように箱庭の端に駆け寄った。

 そこにはひときわ大きな島の模型――浮遊大陸アルビオンが置かれている。箱庭が完成した暁には、中に風石を入れて魔法人形(ガーゴイル)化し、本物と変わらぬ周期で空を飛ばせる予定である。

 彼はアルビオンの模型に立たせていた黒い女の人形を取り出し、そっと耳を寄せた。

 

美神(ミューズ)! 余のミューズよ! 我が姪について、詳報があるのか!」

 

 まるで人形に話しかけるかのような仕草で、彼は熱心に問いかける。

 

「そうか、そうか。麗しの皇太子殿は何も知らぬ、と……。なに、謝ることはない! 余の可愛いミューズよ! 知らぬということ自体が、多くを教えてくれるのだから!」

 

 ジョゼフは大げさなまでの笑顔を浮かべた。

 

「くくっ、『頼まれた』か。よいではないか! あのシャルロットが! 己の母と復讐にしか興味を持たぬ、人形姫とばかり思っていたが! よろこべ、シャルル! お前の娘は立派に成長しているぞ!」

 

 ガリア王は狂ったようにけたたましく笑い、それから唐突に静止して、呟く。

 

「いや、であれば、むしろ……我が姪をたぶらかした存在こそ、興味深いのかもしれぬな」

 

 人形に耳を傾けたまま箱庭の一点、姪が籍を置くトリステイン魔法学院をじっと見つめ、

 

「……やめよ。手出しは無用だ。観察にとどめておくのだ」

 

 笑みの消えた顔で、手の中の人形にそっと囁いた。

 

「余の知らぬ駒を呼び込んだシャルロットに敬意を表して、余が直々に手を指してやる。そうだ……思えば俺はここのところ、壮大な悲劇にばかり傾倒していたのかもしれぬな。派手な演出など排した、ごく小さな純粋な悲劇こそ、俺の心を痛ませてくれるのかもしれぬ。涙を流させてくれるのかもしれぬ」

 

 ジョゼフは人形をアルビオンの模型に戻しながら、また美しい微笑を浮かべ、心底楽しそうに言った。

 

「とはいえ、まずは、間近に迫った劇の準備をせねばな。これから忙しくなるぞ、余のミューズよ。大きな悲劇と小さな悲劇……歓待の用意がととのったら、我が姪とその客人を、是非とも招待してやろうではないか」

 

 ガリアの王はくすくす笑い、今にも踊りだしそうな軽やかな足取りで、盤上の世界を後にした。

 

 

 

 





アルビオン編は以上となります。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
次は始祖の祈祷書&誓約の水精霊編をまとめて投稿する予定です。

評価や感想、お気に入りなどなど読んでくれた痕跡があるとモチベになります。もし良かったらよろしくお願いします。
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