シルフィードのお話は(2)まで。
明日からまたクルトの視点に戻ります。
青い鱗のシルフィードは、深い暗い森の上を飛んでいた。
眼下の森とは対照的に、空は雲ひとつない快晴。
初夏の柔らかい日差しが風になぶられた体を優しくあたため、夢見心地にさせてくれる。
「太陽さん、ありがとなのね」
あくび混じりに呟いて、シルフィードは慌てて背中を振り返った。
彼女の主人である『雪風』のタバサ、大好きだけど躾に厳しい『お姉さま』は、己の使い魔に他の人間がいる場所での発声を禁じている。
シルフィードがただの風竜の幼生ではなく、滅んだはずの伝説の古代種、風韻竜だとバレたら面倒だからだ。
いつもはタバサしか乗せないシルフィードだったが、この数日は『宝探し』の冒険とやらで、タバサとその同級生たちを乗せてトリステインの各地を飛び回っていた。
背中の連中にひとりごとを聞かれていたら大変だ、またご飯抜きにされてしまう、と幼い竜は肝を冷やしたけれど……、
「……そういえば、あいつら森の手前で降ろしてたのね。心配して損しちゃった! きゅいきゅい!」
ひと安心したシルフィードは、大きな声で歌いたくなった。
しかし竜に劣らず耳の良い主人に聞き咎められたら叱られる、と思い直し、鋭い歯の並んだ口を閉じる。
風韻竜の優れた視力で森を見渡し、その奥……、奇妙にぽつんと開けた場所にある、うち捨てられた寺院を発見。これが今回の目的地。『宝の地図』に記されていたという、秘宝の隠し場所だろう。
風韻竜はばさりと羽ばたき、廃墟の上空を旋回しながら、あくびをひとつ。
いくら人間たちがのろまでも、もうじきに森を抜けて、辿り着く頃合いだろう。
「いい加減、待ちくたびれたのね。おなかすいた、おなかすいた、おなかすいた……」
言ってるうちにどんどんおなかが寂しくなって、なんだか悲しくなってきた。
秘宝はどうでもいいから、はやくすませてほしいのね……、とぶつぶつ呟いていると、廃寺院の近くの茂みに、桃色の影が見えた。
ようやく、作戦が始まるらしい。
『お姉さま』の親友、燃えるような赤髪のキュルケが買い集めた『宝の地図』。
その地図が示す場所にやってきたのは、これでもう七ヶ所目。
宝の隠し場所には、いつも化け物や猛獣がいた。
誰もが気軽に行ける場所に貴重な財宝が隠されているわけないのだから、当然と言えば当然である。
そして今回、『プリンシンバル』とかいう秘宝が眠っているという廃寺院も、そんな化け物の住み処になっていた。
シルフィードが高い空から見守るなか、寺院の扉が爆発した。
お姉さまの新しいお友達、ルイズの魔法だろう。
爆発が続けて何度も起こり、扉が完全に吹き飛ばされる。
すると寺院のなかから、怒り狂ったオーク鬼の群れが飛び出してきた。
オーク鬼は、頭が弱い代わりに腕力と生命力がめっぽう強い。そして人間の肉が……特に幼い子どもの肉が大好きという悪質な種族である。
彼らの首には、いままで食べてきただろう人間の頭蓋骨が荒縄で繋がれ、首飾りにされている。風韻竜には理解できない風習だ。
廃寺院のあった開拓村がうち捨てられたのも、きっとこのオーク鬼の群れが住み着いたせいだろう。
ぴぎぴぎ鳴きわめく十体ほどのオーク鬼の前に、五つの青銅の鎧があらわれた。
お調子者で(オーク鬼ほどではないが)頭の弱い男の子、ギーシュの操るワルキューレだ。
この短い冒険の間に、シルフィードは彼が好きになっていた。
ギーシュは昨日の夜、旅の足をつとめてくれるお礼と言って、彼女の頭に薔薇の造花の冠をかぶせてくれたのだ。
この森まで彼らを運んでいる間に冠は風に
気取り屋のいけすかない男の子と思ってたけど、意外といいとこあるのね……、とシルフィードはギーシュへの評価を改めたのだった。
そんな気さくなギーシュは、しかし、戦うのはあまり強くないらしい。
ワルキューレたちは一斉に槍を突き出してオーク鬼を攻撃するが、厚い脂肪に阻まれて、ぐにゃりと弾き返されてしまう。
「ああ、そんなんじゃダメなのね! 目を! 目を狙うのね!」
しっぽを振り回して応援するシルフィードの眼下で、オーク鬼は棍棒を振り回し、次々にワルキューレを叩き壊していく。
すると突然、森の影から長大な氷の槍が飛んできた。槍はそのまま、オーク鬼を二匹まとめて串刺しにする……お姉さまの魔法だわ! かっこいい! とシルフィードはうれしくなってきゅいきゅい鳴いた。
続いて炎の球が放たれて、一匹のオーク鬼を丸焼きにする。
肉の焼ける香ばしい匂いが空まで漂ってくるような気がして、シルフィードはごくりと唾を飲む。
しかしオーク鬼を食べてはダメと言いつけられているのを思い出して、悲しい気持ちになった。
人間の子どもを食べる習性があるオーク鬼を食べるのは、いけないことらしい。
シルフィードにはその理屈がいまいちわからなかったが、もしあのオーク鬼がタバサを食べてしまったら、そのお肉を食べる気にはならないだろうな……、と不穏な想像をして、首を振った。
そんなことを考えているうちに、残ったオーク鬼たちが魔法の飛んできたほうに狙いを定めて、駆けだした。
迎撃の魔法はない。
あの巨体に通じる強力な魔法は、続けざまには放てないのだ。
シルフィードがはらはらしながら見守るなか、先頭のオーク鬼が足を滑らせた。
砂煙を巻き上げて派手に転び、起き上がろうともがいたところに大量の砂がまとわりついて拘束する。
勢いづいていた後続のオーク鬼たちも急には止まれず、倒れた仲間の体につまづいた。
その隙に砂が体積を増して、団子状になった化け物たちをまとめて縛り上げようとする。
シルフィードはほっと安心する一方で、なんだかイヤな気持ちになった。
彼女は、この砂を操る魔法が得意な男の子、クルトがきらいだった。
彼に近づくと、鱗がぴりぴり逆立つような、不思議な気配を感じるのだ。
この『宝探し』の旅で背中に乗せてあげるのもイヤだったけれど、タバサはこういうとき、使い魔の意見をまるで聞いてくれないのだった。
シルフィードが初めてクルトの存在を意識したのは、あのフーケという泥棒を捕まえにいった日。
馬車で森に向かっている一向にあいさつしたとき、鱗をぴりぴりさせる不快感に気がついた。
そのときは『なんかイヤ』という程度で、離れざまに唾をぺっと吐きかけるだけですませてやった。
彼を本格的にきらいになったのは、その晩。
舞踏会の最中に
きれいなドレスを着たご主人さまを背中に乗せて、シルフィードはご機嫌だった。
パーティを中座させられたのは可哀想だったけれど、彼女がいつもより穏やかな雰囲気をまとっていることに、シルフィードは気づいていた。
その証拠に、タバサは珍しく本を開きもせず、ぼんやりと自分の手のひらを見つめている。
「うふふ。見たのね、見たのね、見ちゃったのね、お姉さま!」
ばっさばっさと翼を鳴らし、シルフィードは歌うように言った。
「踊ってた! お姉さま、男の子と踊ってた! ねえねえ、お相手は? お相手は誰なの? いつ卵産むの? シルフィに教えてくださらない?」
「うるさい」
ぽかり、と杖で頭を殴られた。
「いたい! いたいよう!」
自慢の青い鱗のおかげで痛くもかゆくもないのだが、大好きなお姉さまに殴られると、シルフィードは気持ちが痛くなってそんなことを叫ぶのだった。
「でもめげませんわ! お姉さまが話してくださるまで、何回だって聞いてやるのね!」
シルフィードは頭を振って、自分の言葉を証明するように、誰なのね誰なのね誰なのねー! と繰り返した。
ぽかぽか頭を殴られても、無視して本を開かれても、シルフィードは口を閉じない。
そんな使い魔に根負けしたのか、タバサは本に目を落としたまま、小さく呟いた。
「クルト」
シルフィードは翼で風を掴みそこね、がくんと高度を落とした。
クルト……、馬車で唾を吐きかけてやった、なんだかイヤな感じがする、あの男の子の名前ではないか!
彼のことを思い出すと、いまだに鱗がぴりぴりして、落ち着かない気持ちになる。
「やめとくのね!」
「なにを?」
「お姉さまってば、とぼけちゃって! かわいいのね! だけどこのシルフィは見逃しませんよ。
「踊っただけ」
タバサはそんなことを言うが、シルフィードは認めなかった。
だってほんとうに踊っただけなら、学院を出てからしばらく、タバサが本を開かずにいたのはなんだったのか。
あの男の子と繋いでいただろう、自分の手のひらをぼうっと見ていたのはどういうことか。
「とにかく、シルフィは反対ですから」
「どうして?」
「ど、う、し、て、も! あんなのがお姉さまのつがいになったら、鱗が何枚あっても足りないのね!」
シルフィードはぷんすか怒っていたが、ふと、疑問が口をついた。
「でも……、あいつがどうやってお姉さまを口説いたのか、とっても気になるのね」
タバサは答えず、じっと本を見つめていた。
しかしシルフィードが何度もしつこく尋ねていると、やがて諦めたように、
「口説かれてない」
「どういうことなのね?」
「彼が、踊りたそうにしてたから」
シルフィードは、またがくんと高度を落とした。
まさか……、お姉さまから誘ったってこと?
いっつもひとりで本ばっかり読んでる、友達も赤髪のキュルキュルしかいない、無口で無表情で無愛想な、このお姉さまが?
「借りがあったから、返した。それだけ」
シルフィードはぶんぶん首を振った。
「それだけ、じゃありませんわ! だってお姉さまよろこんでたもの! じーっと手なんか見ちゃって! お姉さま、よろこんでた!」
「見てない」
「嘘おっしゃい! あいつと踊って、いったい何を話してたのね! 教えなさい! 教えるのね! じゃないとシルフィ、お姉さまをプチ・トロワまで連れて行きませんからね! きゅい!」
シルフィードは大きく羽ばたき、その場をぐるぐる旋回し始める。
使い魔の本気を悟ったのか、タバサはめんどうくさそうに呟いた。
「ドレスが……」
「ドレスが!?」
タバサは口をつぐみ、幼い風韻竜は己の失敗を悟った。
ドレスをなんて褒められたのかしら? 恥ずかしがっちゃって、かわいい! そんな浮かれた気持ちと、主人の恋路に対する好奇心、だけど相手があの男の子じゃイヤだというわがままな思いが膨れ上がって、ドレスがなんなの、なのなのねー!? と叫んで高く低く飛び回る。
タバサはそんな曲芸飛行をものともせず、本に顔を押しつけるようにして読書を続ける。こうなったご主人さまはぜったいに折れないと知っているシルフィードは、切り口を変えることにした。
「ほ、ほかには、ほかには、なにを言われたのね……!?」
「しつこい」
「しつこくてけっこうなのね! せめてひとつは教えてもらわないと、シルフィはもう前に飛べないのね!」
タバサはシルフィードをぽかりと殴った。何度も殴った。
けれども好奇心に支配されたシルフィードには、そんな攻撃届かない。
シルフィードが目を輝かせて見守るなか、タバサは短く息を吐き、自身の手をちらりと見て、
「待ってる」
なにを待ってるのね? シルフィードは首を傾げた。
「学院で待ってる、と」
そう呟いたタバサの瞳に優しい光が浮かんだのを、シルフィードは見逃さなかった。
「よろこんでる……」
竜の口からこぼれた呟きを、タバサは否定しなかった。
見かけによらず意地っ張りで負けず嫌いなお姉さまなら、こんなとき、『よろこんでない』と即座に言い返しそうなものなのに。
シルフィードはわなわな震えた。
「ダメなのね! シルフィはぜったい、ぜーったい認めません! 待ってるっていうなら、『お熱』のキュルキュルだって待ってるのね! あんな男の子、どっかにやっちゃいなさい!」
「うるさい。もうおしまい。さっさと行く」
それきりタバサは、なんにも言わなくなってしまった。
シルフィードはしばらくその場を旋回していたけれど、タバサはもう、叱りもしなければ杖で殴ることさえしなかった。
ずいぶんへそを曲げてしまったらしく、それからシルフィードが何回謝っても、逆に怒ってみても、プチ・トロワに着くまでひとことも口を聞いてくれなかった。
幼い竜は自分がしつこくしたのも棚に上げて、「あの男の子のせいなのね! やっぱりきらい! きゅいきゅい!」と夜空に寂しく繰り返した。
戦いはメイジたちの優位に進んでいた。
オーク鬼に絡みついた砂が光り、どろりとした油に姿を変える。
そこに火球が飛んできて、空まで届きそうな大きな火柱を上げた。
最初に
一気に半数以上を削られ、残る三匹のオーク鬼は恐れをなしたようだった。
彼らはじりじりと後ずさりしていたが、廃寺院のなかからもう一匹のオーク鬼が姿をあらわすと、様子が変わった。
他のオーク鬼より一回り以上も体の大きい、群れのボスらしいこの個体が棍棒を振り上げると、残る三匹も戦意を取り戻す。
足を踏みならし、上空にいるシルフィードの翼までびりびり震えるような雄叫びをあげ、タバサたちの隠れる森にふたたびの突撃を始めた。
……と、そんなオーク鬼の前に、人影が立ち塞がる。
最初の攻撃に加わらなかったワルキューレが二体。そして青銅の鎧に混じって、長剣をかついだ少年がひとり。
ゴーレムの助けがあるとはいえ、荒ぶるオーク鬼を相手に剣一本で立ち向かうなんて、ふつうは自殺行為だ。
この旅を始める前のシルフィードだったら、彼を助けるべく慌てて舞い降りていたことだろう。
けれども彼女は悠々と羽ばたき、夏の日差しを翼にいっぱい浴びながら、眼下の戦いを見守っている。
彼……サイトという使い魔の男の子がまるでふつうじゃないことを、シルフィードはよく知っていた。
おしゃべりなデルフリンガーを握ったサイトが風のように踏み込んで、剣を振るう。先頭を走るオーク鬼の首を斬り飛ばす。
残るオーク鬼たちは怯みもせず、少年が剣を振りきった隙を叩こうと棍棒を振り上げ――しかし、青銅の槍に阻まれた。
ワルキューレの攻撃は、オーク鬼を倒すには至らなくとも、気を散らすには十分な威力だ。逆に隙だらけになった巨体の懐にサイトが潜り込み、さらに二匹を切り伏せる。
残るはこの群れのボスだったであろう、一匹の大柄なオーク鬼だけ。
仲間を全滅させられたオーク鬼は怒りの雄叫びをあげ、棍棒を振り回した。
サイトは危なげなく避けるけれど、彼の隣にいたワルキューレが一撃でぺしゃんこになる。
空から見守るシルフィードにも衝撃が伝わってきそうな、すさまじい威力だ。
オーク鬼は次なる標的を潰すべく棍棒を振り上げようとして……、できなかった。
棍棒の先が砂に埋まり、がっちりと捕まえられていたからだ。
叩き潰されたワルキューレのなかには、大量の砂が詰まっていたのだ。
オーク鬼は武器を手放すか、それとも強引に持ち上げるか悩んだのか、一瞬間、動きを止めた。
サイトがその首を切り落とすには、十分すぎる時間だった。
どう、と最後のオーク鬼が倒れた。
ややあって森に隠れていたタバサとキュルケ、ルイズにギーシュ、クルト、それからメイドのシエスタが姿をあらわす。
みんなで廃寺院を探索したのち、タバサが短く口笛を吹いた。
安全を確保した、降りてきてもよい、という合図である。
シルフィードは大きな羽音をたて、寺院の前に降り立った。
「これが伝説の秘宝、『ブリーシンガメル』とやらかね? 『炎の黄金』で作られた、持ち主をあらゆる災厄から守るという」
「うっさいわね。ちょっと探したくらいでお宝が手に入ってたら、いまごろみんな大金持ちよ」
「だからって、もう七ヶ所目だぞ! 苦労して化け物どもを倒した報酬がこれじゃあ、わりにあわんこと
古びたネックレスを持ったギーシュが不満をこぼし、キュルケはつまらなそうに髪をいじっている。
険悪な雰囲気を漂わせる彼らから少し離れたところで、顔を青くしたサイトが木から大きな葉っぱをむしり、デルフリンガーについた血を拭いていた。
そんな彼の
一方、シルフィードのご主人さまは、そんな騒ぎもどこ吹く風。寺院の入り口にちょこんと腰掛け、優雅に本を読んでいた。
しばらくは、ぐだぐだしそうな気配。
おなかすいた……なんでもいいから、はやく決めてほしいのね、とシルフィードは思った。
次の目的地に向かうにしろ、今夜はここに泊まるにしろ、方針が決まらなければごはんを
おなかすいた、おなかすいた、おなかすいた……なにしろ、この廃寺院の前には、こんがり焼けたオーク鬼が何匹も転がっているのである。
おなかが寂しくなってたまらない。
シルフィードの好みからすると少し焼きすぎのきらいがあるが、激しく食欲を刺激する匂いを漂わせている。
人肉を好むオーク鬼の肉は食べちゃいけないと言われてるけれど、こっそり、ひとかじりくらい……。シルフィードは一ヶ所にまとめられたオーク鬼の死骸を見て、言い争いを続けるギーシュやサイトたちを見て、タバサが本に夢中になっているのを確かめて……、
「きゅい!?」
視線を戻すと、お肉たちが消えていた。
その原因は、地面に開いた深い大きい穴。
みんなと距離を置いていたクルトが杖を振って、魔法で死骸を埋めようとしていたのだ。
「きゅい! きゅいきゅいきゅい!!」
待つのね! シルフィのお肉!
そんな大騒ぎしたらこっそり食べるどころではないのだが、獲物を盗られた生物の本能で、シルフィードは鳴きわめいた。
「ん? どうした?」
穴に土をかぶせようとしていたクルトが、幼竜の声に気づいて詠唱を止めた。
じぃっと彼をにらみつけているシルフィードを、訝しそうに見返した。
「……そういうことか」
ややあって、彼はぽんと手を打った。
任せろ、とシルフィードに言い残し、穴の底に飛び降りる。
「きゅいぃ……!」
シルフィードは感動した。
気持ちが伝わったのだ。
きっと彼は、自分に食べさせるためのお肉を取りに行ったに違いない。
イヤなやつだと思ってたけど、少しは認めてやらなくもないのね。その
靴やシャツの袖をオーク鬼の血で汚した彼は、両腕いっぱいに骨を抱えていた。
お肉ではなく、ひからびた骨を。
彼は、オーク鬼たちが首飾りにしていた人間の頭蓋骨を集めてきたのだ。
「一緒に埋めたら、かわいそうだもんな。それにしても、よく気づいたな。シルフィードは優しいな。きっとご主人さまに似たんだな」
クルトはそんなことを言って微笑み、期待を裏切られた風韻竜は口に溜まっていた唾液をぺっぺ、ぺっぺと吐きかけた。