「どうだ、キュルケ! 愉快だったろう、我が弟は!」
たったひとりの見送りも受けず、雪の降りしきる中庭を上機嫌で歩いてきたヨアナは、古びた馬車に乗るなりそう囁いた。
彼について馬車にあがったキュルケは、紅潮した顔でこくこくと頷く。
それから、くしゃみをした。
父に対するクルトの暴言、そして父に黙って屋敷を抜け出すという初めての経験に対する興奮から、キュルケの頬はまるで炎の塊を飲んだみたいに火照っている。
けれども真冬の冷気は少女の体温をすっかり奪っていたらしく、キュルケの小さな手はがたがたと震え、鼻から透明の鼻水が垂れていた。
「ああ、いけない、もっとこっちに……弟と一緒に温めてあげよう。そうだな、靴も脱いでしまいなさい。すぐ乾くから」
ヨアナは馬車の座席に意識を失ったままのクルトを横たえ、キュルケに微笑んだ。
キュルケは彼の隣に座り、言われた通り、雪に濡れた靴を脱いだ。靴の中まで雪が
それからヨアナにもらったマント……これもやはり、雪にまみれていた……を外し、無性に大胆な気分になっていたキュルケは、その下に着ていたドレスも頭から脱いで、薄桃色のシュミーズとショーツだけになる。
杖先に炎を浮かべていたヨアナが呆れたように笑うので、キュルケは恥ずかしくなったけれど、ぬれちゃったんだもの、と強気に呟き、つんと胸をそらした。
いけないことをしている高揚に心臓を高鳴らせたキュルケはクルトの無防備な寝顔を見つめ、素朴な疑問を口にした。
「この子、あなたの弟?」
質問の意図を掴みかねている様子のヨアナに向かって、キュルケは重ねて尋ねる。
「ほんとうは、おうじさまじゃないの?」
ヨアナは弾けるように笑った。
その笑いの衝動がおさまってから、弟の髪を優しく撫でて、呟く。
「正真正銘、私の弟だとも。こいつはな、コルパスでもこんな調子らしいのだ。以前は大人しくてつまらぬ子だったのだが、数年前から妙に
ヨアナの手つきには真実の肉親の情が籠もっていて、キュルケは己の推論が外れたことを理解する。
この子がゲルマニアの皇帝でも皇太子でもないのなら……父がヨアナに向けた罵りの言葉が、途端に現実味を持って少女の不安を呼び起こす。
「あなたのおうち、父さまにつぶされちゃう」
高揚も楽しかった気持ちもひと息に
寒さのせいではない透明な鼻水が垂れてきて、小さな手のひらでごしごしと鼻の下をこする。
キュルケは父の苛烈さを知っていた。ツェルプストーの炎は、敵と見なしたものには容赦しない。コルパスの家は父に潰され、愉快なヨアナとも、この不思議な男の子とも、きっともう二度と会えなくなってしまう。
ヨアナは穏やかな声で言った。
「うむ。潰れてしまえばいい」
キュルケはもはや、彼に答えることができなかった。
ヨアナの言葉は、まるで意味がわからない。いつも常識から外れたことばかり言う男だけれど、いまの彼は、どこか遠い異国の言葉を話しているようだった。
ヨアナはそんなキュルケに微笑み、なだめるように尋ねた。
「なあ、キュルケ。ツェルプストーでは、火の本質をなんと教える?」
ヨアナから差し出されたハンカチで鼻をかんだキュルケは、ぼんやりした頭で答える。
「はかいと、じょうねつ。すべてをやきつくせるのは、ツェルプストーの血にながれる、ほのおとじょうねつだけなの」
「そうだ。破壊と情熱。素晴らしい言葉だ。そしてクルトこそまさしく、火の本質の体現であると、私は思うのだ」
ヨアナは弟の頬を撫でながら、呟く。
「クルトが何を言っていたのか、いったい何に対して怒っていたのか、わかるかい?」
キュルケは首を振った。
彼はじっと弟に視線を注いだままで、こちらには
けれどもそれで、問題はなかった。
キュルケが頷くことなど、この青年は少しも期待していなかったようだから。
「私にもわからん。さっぱりわからん。新教徒的ということはわかるのだが、どうもそれだけではない。どこか根本的なところで、弟は私と……この世界とズレている。新教徒とも、ロマリアの聖人気取りの連中とも、きっと先住の信仰とも違う。こいつの怒りは、世界そのものに向けられているようなのだ。こいつは世界を憎んでいるのだ。まったく、おかしなやつだ。かわいそうな……愉快な、愛おしいやつだよ、私の弟は」
キュルケは頷いた。
すべては理解できなくとも、ヨアナが弟に深い愛情を注いでいること、そうしてその弟がかわいそうで、愉快で……愛おしいかはわからないけれど、目が離せなくなる何かを持った存在であることを理解した。
「こいつはな、怒らずにいられないのだ。自らを火にくべるとわかっていながら、庇護すべき領民をますます窮乏させ、結果として己を許せなくなると知っていながら、君のお父さまに怒りをぶつけずにはいられなかったのだ。なあ、これこそが情熱……、いっとう素晴らしい情熱だと思わないか? 破壊と一体になった情熱! 自己破壊的な情熱だ! ああ、こいつを見ていると、我が
ヨアナは弟の頬をぐにぐにと揉みほぐした。
クルトは眠ったまま、不快そうに眉間にしわを寄せる。
「こいつを連れて、また遊びに来るよ。ミスタ・ツェルプストーはもう会ってくれぬだろうが……」
「……
キュルケはまばたきした。
父を激怒させたこの兄弟が、お屋敷にふたたびやってくるなんて。そんなことあり得るのだろうか?
「そうか。君はコルパスの家を案じてくれていたのだったな」
ヨアナは思い出したように言った。
「それに対する答えはこうだ。『うむ。潰れてしまえばいい』。そうすれば私は弟を連れて、どこへなりと行くだろう。シュペー卿から学べることは、十分に学び尽くした。あとはもう退屈なだけだ。私はクルトから学びたいのだ! そのためには、やはりコルパスが邪魔なのだ。私の弟は、優しい男だ。優しいからこそ怒るのだ。コルパスに閉じ込めていては、遠からずあの土地を、人々を愛してしまう。縛られてしまう。コルパスのために、怒りを封じる術を身につけてしまう! 自分が怒っていることさえ、忘れてしまうやも知れぬ! そんなこと……」
あ、とキュルケは呟いた。
ヨアナは口をつぐんだ。
兄の魔法で意識を奪われていた弟が、ようやくのことで目を開けたのだ。
「おはよう、クルト」
「おはよう、お兄ちゃん」
クルトは大きなあくびをして体を起こす。
目をこすり、甘ったれた声色で、
「ここ、どこ? おでかけしてるの?」
と尋ねた。
ヨアナは優しい兄の口調で答える。
「フォン・ツェルプストーのお庭だよ。このまま馬車で、コルパスのおうちに帰るんだ」
クルトは、ふうん、と頷いて、眠たそうにまばたきして……、突然、目を見開いた。
「ツェルプストー?」
「うむ。そうだ」
「ミスタ・ツェルプストーは……」
「怒って私たちを追い出してしまった。もう二度とツェルプストーの土地は踏ませぬ。コルパスの家も潰してやる、と言ってね」
クルトは蒼白になって、ぐったりと脱力した。
兄が支えているのでなければ、座席から床にずり落ちていただろう。
「なぁに、案ずるな、我が弟よ。この兄が、すべて丸く収めてやろう。シュペー卿の一番弟子、ゲルマニア最高の炉の管理責任者という肩書きは、ちょっとした権威があるのだ。子どもの粗相をなかったことにできる程度には、な」
「ヨアナ……」
クルトは潤んだ瞳で兄を見つめた。
恐ろしい剣幕で父を罵っていた姿からは想像もつかない、いかにも哀れな表情だった。
「しかし、タダでというわけにはいかんな」
クルトは神妙に頷いた。
「ああ……、わかってるよ、ヨアナ。すまなかった。もう二度と、あんな愚かなことはしない。俺は、だめだ。おかしいんだ。どうにも抑えが効かなくって……。でも、もうしない。ミスタ・ツェルプストーにも、他のどんな貴族にも、あんな態度を取らない。もちろんコルパスに戻ったら、マラカイとヴィルヘルムにも謝罪する。貴族らしい……この世界の貴族らしい態度を身につけると誓う」
「馬鹿者が」
ヨアナはクルトの髪をくしゃりと撫でた。
「誰がお前に、そんなつまらぬことを求めたね」
「だが……」
「私は別に、怒ってはいないよ。そうとも、怒るわけがない。お前はお前らしくあればいいのだ。お前が改善すべき点は、たったひとつだ」
なおも不安そうに兄を見るクルトに向かって、ヨアナは言う。
「私のことは、『お兄ちゃん』と呼びなさい。昔みたいに。いいね?」
ヨアナの要求の意味が、キュルケには理解できなかった。
それはクルトにも同じだったようで、彼は困惑したように首を傾げる。
「なんだ、聞けんのかね。お前がそうしたいのなら、かまわんぞ。ミスタ・ツェルプストーがコルパスを締めあげるだけだ。今年は何人、お前のために飢えて死ぬだろうな?」
「い、いや! わかった! 呼ぶ、呼ばせてもらう、お兄ちゃん!」
「よろしい。それでは、あとはこの兄に任せなさい」
ヨアナは満足した顔で頷いた。
クルトは安堵したように息を吐き、深くうなだれた。
しかし
「つぶれたらいい、じゃなかったの?」
と、拗ねた声で呟いた。
家なんかどうなってもいい、と過激なことを言ってたくせに、結局は丸く収めようと約束したヨアナに、期待を裏切られた気分だったのだ。
ヨアナはばつが悪そうに頬を掻き、
「私としては、それでもかまわん。いっそ潰れたほうがいいと思っているのだがね。しかしクルトは望んでいない。ならば仕方なかろう。中身がどうあれ、これは私の可愛い弟なのだから」
キュルケはその答えに納得できなかったけれど、それ以上、反論はしなかった。
ヨアナの意志を曲げることはできそうになかったし、彼がことを収めてくれなければ、この兄弟はもう二度と屋敷を訪れてくれないだろうと思い直したからだ。
「ところで、あの、ミス……、ミス・ツェルプストー、ですよね?」
妙にこわばった声に振り向くと、片手で顔を覆ったクルトが、
「失礼ですが、ミス……服は……?」
瞬間、キュルケは羞恥を思い出す。
彼女は濡れたドレスを脱ぎ去り、薄桃色のシュミーズとショーツだけの格好だった。
身を焦がす興奮が過ぎ去ったいま、年上の男性と同年代の男の子の前で下着姿を晒しているのは、とてつもなく恥ずかしい。
けれどもその事実を認めてしまうのは、プライドを傷つけられるような気がして、
「かわかしてるのよ」
と、すまし顔で言う。
頬が燃えるように火照っているけれど、それはヨアナが火加減を間違えているせいだ。そうに決まってる。キュルケは必死で、自分に言い聞かせた。
ヨアナがくすくす笑いをこぼして、さも愉快そうに、
「なんだクルト、お前、もう女に興味があるのか」
「ち、ちがうヨアナ……お兄ちゃん、ただ俺は、彼女があんな格好だから……」
「恥ずかしがることはない。お前は
「ちがうったら!」
早口で兄に言い返すクルトが耳まで赤くなっていることに、キュルケは気がついた。
頬の熱が、いっそう熱く、芯まで燃え尽きそうな炎となって、少女のなかを渦巻いた。
その熱っぽい視線に気づいたのか、クルトがちらりとこちらを見て……慌てて顔を
皇帝のように父を罵った男の子の情けない姿は、自分が彼を情けなくしているという事実は、たまらなく愉快だった。
「きょうみないの?」
とキュルケは呟く。
無邪気に、しかしひとつまみの寂しさを加えた拗ねた声色で。
この少年にはそれが一番効くのだと、彼女は本能で理解していた。
「い、いや、そうではなく。いやたしかに興味はないのですが、あなたを傷つける意図はなくて、だからけっしてミス・ツェルプストーが魅力的ではないとかそういう意味ではなくてですね」
キュルケはクルトの隣に座り直し、彼の手を握った。
彼はびくりと身を竦ませて、自分に言い聞かせるような小さな声でぶつぶつと、
「くそ、こんな、ありえない。こんな子どもに……。からだのせいか? からだが子どもだから、歳の近い女の子に反応して……、そうだ、そうにちがいない……」
「どうして、ひとりでお話してるの? あたしのおあいて、してくださいな」
頬がくっつきそうなくらい身を寄せて、問いかける。
クルトは動かなくなってしまった。
ヨアナが笑いをこらえながら、
「こらこらクルト。フロイラインを退屈させちゃいけないぞ」
「ヨア……お兄ちゃんは黙ってろ! はやくこの子の服を乾かしてやれ! もっと火を強くしてくれよ!」
ヨアナは肩をすくめ、馬車を温めている火球を一回り大きくした。
クルトは大きく息を吐き、それからはっと気がついたようにキュルケを見て、
「すまない、急に叫んで……。俺、いや私はどうも気が短いところがあって……先ほどはあなたのお父さまにも、失礼なことを言ってしまいましたね。きっとミス・ツェルプストーもあの場にいたのですよね? 怖がらせてしまって……」
キュルケは首を振って、クルトを遮った。
「あたしにも、そうしてちょうだい」
「えっと……?」
「ヨアナや父さまにしてるみたいに、らんぼうにお話してほしいの」
キュルケはクルトの手を持ち上げて、レースのたっぷりついたシュミーズに包まれた胸に押しつける。
ぬぇ、とクルトが間抜けな声を出す。
「あなたが父さまをおこらせてるとこ、あたしもみてたわ。こわかったわ。おもしろかったわ。どきどきしたわ!」
キュルケは無抵抗なクルトの手を揺らして、シュミーズ越しに、平坦な胸のかたちをたしかめさせる。
「あたし、まだどきどきしてるみたい。ねえ、クルト、わかるかしら?」
ひええ……とクルトは呻いた。
その表情に浮かんでいるのは少女に対する怯えであり、羞恥であり、そして彼の内側にあるだろうそれ以上の何かをこらえる理性の葛藤だった。
キュルケは父を罵倒していた彼の剣幕を、声を、堂々たる態度を思い出す。
そうして、そのときのクルトが尊大で毅然としていればこそ、いま彼女の虜になっている彼の、首筋まで赤くして、汗をぐっしょりとかき、自らの手が触れている少女の胸元に目をやり……怯えて逃げるように視線を逸らして……しかし結局はそこを見つめてしまう哀れで滑稽な姿は、キュルケに非常な満足を与えた。
後に『微熱』と称されるキュルケが
馬車が大きく揺れて、キュルケはふと我に返った。
窓から外を眺めると、可愛らしい仔牛のいた牧場はとうに過ぎ去り、見渡す限りの平野が広がっている。
首都トリスタニアから離れたせいか、道はずいぶん荒れていた。
アルビオンとの戦争を控えたトリステインには、辺境の街道にまで気を回す余裕がないのだろう。
隣のタバサに目を移す。
彼女もキュルケと同じく、ぼんやりと景色を眺めている。
いつもと変わらぬ無表情を保っている彼女が、しかしほんのわずかに頬を染めていることに、キュルケは気がついた。
それは気になる男の子の過去を聞かされているから……ではなく、単純に、初心なタバサには刺激が強すぎたからだろう。
初対面の男の子の前で下着姿になって、胸を触らせるなんて。
あろうことか、その兄の目の前で。
幼い頃とはいえ、我ながらたいした度胸だとキュルケは思う。
「さすがに、このくらいにしとこうかしら」
キュルケは口のなかで呟いた。
耳聡いタバサはキュルケに向けて目を光らせる。もっと聞きたい、という合図。
情熱や色事に対する興味というより、これはタバサの負けず嫌いがそうさせたのだろう。
キュルケが彼女の羞恥に気づき、話を控えようとしたのを察したらしい。親友に子ども扱いされて、手加減されたのが気に食わないのだ。
キュルケは青い頭をぽんぽんと撫でる。
タバサは不満そうに目を細めるけれど、キュルケは答えなかった。
なぜって、これ以上の話を聞かせるのは、奔放なキュルケをしても恥ずかしかったからだ。
あの馬車で胸をさんざんに触らせたあと、幼い彼女はクルトにぴったりくっついて、『あなたが父さまのわるぐちをいいだしたとき、ほんとうにびっくりしたのよ』と囁いた。
それから今度は彼の手を股の間に導いて、『びっくりして、おしっこもらしちゃったの。ほら、こんどはわかる?』とショーツの隙間に指を差し込ませたのだった。
クルトは声にならぬ悲鳴をあげて、気を失った。
キュルケはヨアナと一緒に涙が出るほど笑い転げ、
それからヨアナが父とどういう交渉をしたのか、キュルケは知らない。
けれどもツェルプストーとコルパスの関係は変わらず、ヨアナはたびたびクルトを連れてキュルケを訪ねた。
父マラカイや長兄のヴィルヘルムがクルトを連れてくることもあった。
キュルケの父はけっしてクルトに会おうとしなかったが、キュルケはそのたびに大喜びで彼をおもちゃにした。
そのどれもが楽しい思い出だったが、ふたつだけ、キュルケには不満があった。
ひとつは、彼があの怒りをすっかり隠してしまったこと。不機嫌になるのはしょっちゅうだったが、あの日、父にぶつけたような激しい怒りを見せてくれることは、ついぞなかった。
もうひとつは、彼はそれから一年ほどでツェルプストーに来なくなってしまったこと。
彼の住むコルパス領がラ・ヴァリエールに奪われ、トリステインの領土になってしまったのだ。
そうして代わりに、ひとつの疑問を瞳に浮かべた。
あなたは今も、彼に情熱を向けているのか……、と。好奇心を秘めた青い瞳は、そんなことを問いかけている。
「いまはもう、ただの友達よ。なんとも思ってないわ」
微笑みとともに答えた、それは
もし彼のほうから歩み寄ってくれたなら、いまもなお、応えて良いと思っているけれど。
しかしクルトの情熱はついぞキュルケを向くことはなく、今やこの青い少女に首ったけだ。
キュルケは親友の幼げなかんばせを、やせっぽちの体を眺め、それから幼い日のクルトの慌てっぷりを思い出し、ため息とともに呟いた。
「やっぱりあいつ、小さいのが好きなだけなのかしら……」
タバサは首を傾げた。
なんでもないわよ、とキュルケは笑う。
それから親友の瞳の奥に、いまだ好奇心と疑問が輝いているのに気がついた。
それは自分が彼女に対してさんざんに向けてきたもの、友人の恋路を詮索する愉しみの光だ。
数多くいたキュルケの恋人たちの誰にも、タバサは興味を示さなかった。
他人と関わることを極端に避けてきた無口な親友が見せた意外な反応に、キュルケはまばたきする。
友人が自分と同じ愉しみを見出してくれたことは嬉しいけれど、しかしこれは、まったくの誤解である。
キュルケは少し考え、学院で再会してからのこと……クルトを誘惑し、燃やして、友達になるまでの一連の事件について、教えてあげることにした。
なぜって、この
こんなだから、都合の良い女みたいに扱われちゃうのよね……、とキュルケは胸のうちで反省し、けれどもちっとも、直す気は起きなかった。