これは狸豆のどかさんの単発小説です。
11月14日に卒業する彼女の為に、今までのありがとうの気持ちを込めて作らせて貰いました。
楽しく読んでくれたら嬉しいです。


そして、のどかさん、ライバー活動お疲れ様でした!
知り合えてよかったです!
今までありがとう!

1 / 1
第1話

 何処にでもある山の中、そこには昔たぬきを神として祀る(まつる)神社があり、今はもう誰も通ってない無人の神社となっている。

 そんな無人の神社なのに、何故か人が集まっていたり、何かしら祭りをしているなどの噂も耳に入ってきている。

 

 私、篠原望(しのはらのぞむ)はそんな噂が聞こえてくる神社が気になり、この山を登っている。

 隣の県から車でここまで来たのはやはりネットの掲示板でこの噂を聞いたのだ。

 そこの山から聞こえてくる祭りの太鼓の音や笑い声はとても楽しく聞こえるが、山はとても高く、登るのが大変で誰もその祭りを見た事が無いという。

 それで私は興味を持ち、こうして向かったのだ。

 

 山を登り始める時、登山危険や熊出没という危険な看板があった。

 それは今はもう誰も登らなくなって、人の手による整備がしてないという事で、登っていく時の道が草木で覆い、歩きにくい状態となっていた。

 しかもここは人があんまりいない田舎であり、そこまで整備出来る余裕が無かったという。

 登山する事が危険である事は理解していたが、ここまで足元が見えない道を進んでいく事には驚いてしまった。

 それでも私は噂の方が気になり、慎重に歩いて神社まで進んでいた。

 

 こうして神社まで進んでいるが、もう山の中腹辺りでまだ神社は見えてこない。

 それか何となく真っすぐ進んでいたがもしかして道を間違えているかもしれない。

 そう考えれば考える程不安になり、1回スマホを開いて地図とかを見ようとする。

 

 …だめだ。電波が届いておらず、Googleを開いてもロードが長く、全然使える状態ではなかった。

 一旦来た道を戻ろうかなと思い振り返ると、この木々が多い原因で自身が通った道が分からなくなってしまった。

 

 つまり、私は今遭難してしまったのだ。

 

 遭難したという言葉だけが頭の中で覆い尽くされ、私は無事帰れるか不安と焦りに襲われそうになる。

 それに何故か霧も発生して、より登るのが危険な状態になる。

 なんて最悪な日なんだと運が悪過ぎる事に舌打ちをし、ここからどうするか私は考える。

 

 救援来るまで休める場所を探すか…

 

 それともこのまま下ってみるか…

 

 と考えていると、何処からか太鼓の音が聞こえてくる。

 ポォンポォンという楽しそうに叩いてるのが少し上の方から聞こえてくるのだ。

 

 その太鼓の叩く音に私は誰かいるのかとすぐに判断し、急いでその太鼓が鳴っている方向へ登り始める。

 もしかして助けてくれるかもしれないと一つの希望を持って急いで上がっていく。

 

 「ハァハァ…すいません!!道に迷って…」

 

 私は登りきり、その太鼓の鳴っている所へ辿り着くと驚きの光景を見てしまう。

 

 神社だ。

 あのネットに噂されていた神社が目の前にある。

 それは古く、少し赤色が黒くなっているが、神社であった。

 神社の前に祭りの屋台が沢山あり、あの太鼓も神社の前に置かれていた。

 

 そして、ワイワイと祭りを楽しむ人達がいるが、彼らにはなんと尻尾と耳ががあった。

 その尻尾と耳の形状で、たぬきの尻尾と耳だと思われるが、そんな人達はやはり見た事ないからかなり驚いてしまう。

 

 そう私が驚いていると口を開けたままになっていると、

 「あ!!人間さんだぁ!!」

 と可愛らしい声が聞こえ、私に気がついたそうだ。

 私に気付いた彼女は、彼らと同じくたぬきと耳と尻尾を生えており、緑髪の和服を着込んでいた。

 

 気づかれた事に驚いて警戒するが、敵意はない、むしろ久々に来た人に喜んでいるようにそのたぬきの尻尾を振っていた。

 その少女の声に他の人達も私の存在に気付き、「人間さんだぁ!!人間さんだぁ!!」と大喜びをしていた。

 

 それには私は恐怖し、後ろへ振り返って逃げようとするが、もう私の後ろに彼らが居て、

 「人間さん!人間さん!一緒に楽しも!!」

 と押されてしまい、強制的に祭りの方へ連れて行かれた。

 

 そんな彼らを知らない私に大喜びして迎え入れてくれるのがとても怖く、もしかして私はご飯にされてしまうんだろうかと心の中でビクビクしてしまった。

 

 しかし、そんな恐怖は杞憂で終わり、私に人間様、我々と一緒に楽しましょうと1人の女たぬきが祭りの浴衣を一着渡してきたのだ。

 それには私はポカンとし、とりあえず渡してくれた浴衣を神社の中で着替える事にした。

 

 その浴衣は黒色で、浴衣の先には小さな星が描かれている可愛らしく、オシャレな浴衣だと私は思った。

 私が浴衣を着終えて、神社から出ると先程浴衣を渡してくれた女たぬきが「お似合いですよ!」と褒めてくれた。

 浴衣は丁度私の身体にピッタリで、まるで自分が持っているような浴衣だと思ってしまう程だった。

 お似合いと言われて私は少し照れてしまう。

 

 「人間さん!お似合いだぁ!」

 と先に私を見つけた緑髪のたぬきの少女も居て、私の浴衣姿に目を輝かせながら言う。

 より照れくさくなってしまい、多分私の顔は少し赤くなっているのか熱く感じた。

 

 「僕がこの祭りを紹介するからついてきて!!」

 とそのたぬきの少女が私の右腕を掴んで、この祭りの屋台を紹介に連れ回される。

 とても元気よくその少女の尻尾がブンブンと振っていた。

 

 私は緑髪のたぬきの少女、狸豆のどか(たぬきまめのどか)は一つ一つの屋台の紹介を始める。

 どれも祭りにある射的屋、くじ引き屋とかもあったが、珍しい屋台もあって、焼き魚屋というのを紹介された。

 

 私がその焼き魚屋さんを興味持って見ていると、たぬきのおじさんが、

 「お!?人間さんじゃねぇか!久々に来てくれたのか!ほら!1本やるから祭りを見て回ってくれ!」

 とその屋台の焼き魚を1本サービスで貰った。

 

 それはアジで、とても脂が乗っていたのか美味しそうな匂いをしていて、ヨダレが溢れそうになる。

 のどかも「わぁ!おじさんありがとう!」と1本サービス貰え、美味しそうに食べ始める。

 

 のどかが焼き魚を噛んだ時、焼き魚からジュワと美味しそうな音が聞こえ、私は我慢出来ずにすぐに貰った1本を口に入れ噛んでみる。

 すると、1回の噛みですぐに魚の旨みが溢れるので、口の中が幸せになる。

 

 「…美味し」

 と焼き魚の予想外の旨味に驚き、ふと美味しと言葉を零し、食べ続ける。

 それにはのどかと焼き魚のおじさんはニヤニヤと笑って、美味しそうに食べている私を見ていた。

 こうしてのどかと一緒に屋台を見て回り、まるで子供に戻ったかのようにこの祭りを楽しんだ。

 

 ただいま結構屋台を回り、神社でのどかと一緒に座って休んでいた。

 その時、私はふとある疑問を浮かべ、のどかへ聞いてみる。

 

 「ねぇのどかちゃん、君たちはどうして私みたいなただの人間をここまで親切にしてくれるの?」

 そう、異常まで私という人間を親しくしてくれる。

 焼き魚屋だけでなく、他の屋台の食べ物だって1本サービスで貰ったり、射的などの遊びもお金とか無しで遊ばしてくれる。

 だからこれには流石に疑問になり、こうしてのどかへ聞いたのだ。

 

 その私の疑問を聞いて、のどかはシュンと顔を伏せてしまう。

 何かいけない事を言ってしまったのかと感じ、謝ろうと口を開けた時、

 「…昔は人間さん達と僕達たぬきはここで一緒に祭りをして楽しんでいたんだ」

 と、のどかは昔の事を懐かしそうに、そして、悲しそうに語り始める。

 これは私が聞かないといけない事だと感じ、謝ろうとした口を閉じて、じっくりとのどかの昔話を聞き始める。

 

 僕達はここで人間さん達と楽しんだんだ。

 人間さんから祭りの事や屋台の事を聞いて、僕達は一生懸命に考えて、僕達の祭りを作ったんだ。

 そんな祭りに人間さんは「楽しいな!!」と言ってくれて、僕達は凄く嬉しくて、このまま一緒に楽しんでいけたら良いなと思ったんだ。

 

 だけど、年数が経ち続けると、段々と祭りに来てくれる人間さん達が少なくなって、やがて誰も来なくなった。

 僕達は寂しかった。

 確かに人間と僕達は生きれる年数は違うのは分かる。

 それでも寂しかったんだ。

 

 もうこの祭りをやめようと思うたぬきもいたけど、こうして人間さん達と一緒に作った祭りを忘れたくないと思い、やめないで続けてきたんだ。

 続ける事で人間さんと一緒に楽しんだ事を忘れないようにしたいんだ。

 

 のどかはそう言った。

 それを聞いた私はやっと理解した。

 何故こうして私を迎え入れ、親切にしてくれるのかを。

 

 …純粋に嬉しかったんだな

 長年待ち続け、私という人間がまたここまで来てくれた事が、のどか達たぬきは嬉しかったんだ。

 

 そう理解した時に私の目から涙が少し落ちてしまった。

 のどかは伏せていた顔をあげ、私へ見つめ直す。

 

 「…また僕達に会ってくれる?」

 

 のどかの目はとても不安そうだった。

 きっと来てくれるか分からない不安だと私はそう思った。

 だけど私はのどか達たぬきがここまで親切にしてくれて、一緒に楽しむ事が出来たこの祭りを忘れたくない気持ちになり、

 

 「…うん、また君たちに会いたい。そして、こうして一緒に楽しみたい」

 

 と答えてしまった。

 そんな真剣に答え、のどかは不安そうにしていた目を和らげ、

 「じゃあ!約束だよ!」

 ととても良い笑顔を私へ向けてくれた。

 これからもっと話そうとした瞬間、目の前の光景がぐにゃりと曲がり、私は意識を失ってしまった…

 

 「う…うう…」

 やっと私は意識を取り戻し起き上がり、顔を上げると、

 なんと先程神社にいたのに、この山の入り口にいて、着ていた浴衣は元の服装へ戻っていた。

 

 「…え?夢だったのかな…ん?」

 私は先程夢を見ていたかと思って、自身の右ポケットに手を突っ込むと、何かが入っていた。

 それを取り出し確認する。

 

 右ポケットに入っていたのは生け花の栞だ。

 この生け花の栞はあのたぬき達の祭りで、くじ引き屋さんから手に入れた栞で、つまり夢じゃなかった。

 その生け花の栞を見ていると、のどかの約束ね!という言葉がふと思い出す。

 

 「うん、約束。そして、沢山の人達がここに来てくれるように出来たらいいな」

 

 とその時私はやりたい事を見つけた。

 それはこの神社をまた沢山の人達に来てもらいたいという事夢であった。

 

 「一体何をすればここの神社を目立つようにできるかな」

 私はこの神社の復興計画を考えながら、一旦家に帰ろうとする。

 

 そんな彼を帰る姿を山の中からたぬき達はニコニコと見つめていたという。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。