中谷秀和の飯テロ生活   作:藍色 紺

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29 重ねてつんで(ラザニア)

 幅広麺ってうまいよね。

 

 うどんも好きだけど、きし麵もおいしいし、群馬にはひもかわうどんという、ぜんぜん紐じゃない布って感じの麺がある。(うまい!)

 中華麺にもビャンビャン麺(最近コンビニにある。ありがとうコンビニ)、刀削麺なんて字を見たら、店に吸い寄せられてしまう。

 

 じゃあ、パスタは?

 パスタで一番幅が広いといえば、ラザニアだろう。

 掌くらいの幅で、もはや麺の域を超えている。ミートソースとベシャメルソース

(ホワイトソースに似てるやつ)、それにラザニア麺、チーズを何層にも重ねて、グラタンみたいに焼いたやつだ。

 大変手間のかかる料理である。

 

 普通ならミートソースを作るだけでいいところに、ベシャメルソースも作ることになるし、それらを重ねていくのも手間である。さらに言えば、単体で食べられるものを、さらに焼く手間まである。

 

 俺は、それに追加で、ラザニア麺を打つ。

 ワンモア

 ラザニア麵を打つ。

 

 そう、粉からパスタを打つ。打ちたい。打たせたまへ。

 

 みなさんには、平日、突如として「あぁ、粉こねてぇ!」となることはないだろうか?

 

 俺は、わりとある。

 毎日こつこつ仕事をする。できるときはより改良したいい仕事がしたいと、案を練り練りし、四方八方に頭を下げまくる。

 で、何か積みあがっているのはあるのだろうか。

 砂を噛むような、無味乾燥な気分が続き、自分を見失いそうな仕事のとき、こう思う。

 

「あぁ、粉こねてぇ!」

 

 その結果が、この間の餃子の皮だったり、パンだったり、ケーキにクッキーだったりするわけだ。

 とにかく小麦粉で何か作って食べれば収まるのだが、これがレベル別に危険度が増す。

 

 レベル1は、1種類のもんでいい。

 レベル2になると、パンにケーキだったりする。

 いくら食べるのが好きでも、重なると健康によろしくない。

 

 というわけで、レベル2を超した場合、品数を手間に変える。

 その結果が、ラザニアなのだ。

 

 デュラムセモリナ粉に塩、水を入れてこねる。

 デュラムセモリナ粉は小麦粉の一種で、こいつじゃなければパスタとは言えないだろう。

 うどんとスパゲティ麵は色が違うが、それはうどんが小麦粉、スパゲティ麺がデュラムセモリナ粉で作られている違いがあるからだ。

 ヤギのマークのコーヒー豆店で売られている。そう、輸入食材が豊富で、店頭でコーヒーを飲ませてくれるお店だ。何でもあるし、行くといつでも新製品があっておもしろいよね。

 

 で、こねたら、次は麺棒でのしていく。

 一度に作った方が楽だから、たいてい400gくらいの粉で作るが、のすときは分けてからのす。そして、四角に切り出す。

 幅広麺が食べたいのだから、好きなだけ広くすればいい。

 薄さだって好みにできるし、やはり自作パスタ麺は最高である。

 

 スーパーにもラザニアの板は売っているし、あれはあれでうまい。

 だが、中には乾麺より生パスタが好きな人もいるだろう。

 そういう人におすすめ。

 最近は、生パスタ麺もあっちこっちで見かけるよね。

 冷蔵だったり、冷凍だったり。

 冷蔵のも、腐る前に冷凍できるし、俺の手打ちパスタも冷凍する。

 

 できたラザニアを並べて、写真をパシャリ。

 ここまで来たら、茫然自失させていた何やかやが消えているのだから不思議だ。

 端のそろったラザニアの写真を見て、ニヤッとしいてしまう。

 

 実際には、ラザニア麺を準備してからが長い。

 これでもかと玉ねぎ、セロリを入れたミートソースを作りながら、もう片方のコンロでベシャメルソースを作る。

 無論、両方ともそこそこの量を作って、常備食にする予定。

 忙しくても、うまいもん食べれるだけでリセットできるかんね。

 

 で、ソース類ができたら、ラザニア麵をゆでる。

 作り慣れてない内は、この段階で、よくのしたはずの麺が一つの塊になってしまっていた。

 打ち粉はケチらずにつけような。お兄さんとの約束だ!

 

 生麺は短時間で茹で上がるので、プカプカ浮いてきた麺を油切りザルですくう。

 そして、ミートソース、ラザニア麺、ベシャメルソース、ラザニア麵、ミートソース、ラザニア麵、ベシャメルソ―ス、ラザニア麵と重ねていく。

 最後に、チーズをたっぷりかける。

 

 あとは、大変優秀なオーブンレンジへGo!

 片付けしながら、ミートソースに使った安物の赤ワインなぞを飲み始めるのが定番だ。

 

 焼きたてのラザニアの写真を撮る。

 たっぷり作ったそいつを、本来なら中皿に切り分けて食べるのが普通だ。

 

 だが、俺は、まるっと一人でいただきます!

 照明にフォークが光る。

 ブスッと、チーズを突き刺して、そのまま耐熱皿の奥まで到達。

 一口大のラザニアをフォークで持ち上げる。

 眼鏡が曇る。

 

 よく見えないが、きっと何層にもなったラザニアの断面が見えることだろう。

 よく冷ましたのを頬張る。

 

 もちもち、そんでいて、薄いとこがふにゃふにゃ。

 薄いとこにミートソースやベシャメルソ―スが絡まったとこなんか、うまいオブうまい。

 もちもちとふにゃふにゃのために生パスタをうっていると言ってもいい。

 

 はふはふ

 フォークがとまらない。

 たくさんあるから、何層にもなってるのを一度に食べてもよし。

 ミートソースとラザニア麺だけ食べて、野菜と肉のうま味を味わうもよし。

 ベシャメルソースの濃厚さとラザニア麵のからみを堪能するもよし。

 一食で何回も楽しめるのがラザニアだ。

 

 無味乾燥な仕事の積み重ねが、あら不思議。

 ラザニアの積み重ねを食べる方がうまいのである。

 

 あぁ、幅広麺。

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